iDeCoは解約できる?掛金停止と脱退一時金の違い
iDeCoは掛金を止められますが、それだけで積み立てた資産は払い戻されません。任意に掛金を止めるときは、加入者資格を喪失する手続きを取り、運用指図者として資産の運用を続けます。
現金で受け取る「脱退一時金」は、所定の要件をすべて満たす場合に限られます。掛金停止の届書と、払戻しの請求書を分けて確認してください。
掛金停止と払戻しは別の手続き
| 希望・状況 | 手続き | 積み立てた資産 |
|---|---|---|
| 今後の掛金を任意に止めたい | 加入者資格を喪失し、運用指図者へ切替え | iDeCo内で運用を続ける |
| 現金で受け取りたい | 全要件を満たす場合に脱退一時金を請求 | 裁定後に給付される |
| 老齢給付の受給時期になった | 老齢給付金の裁定請求 | 受給要件と選択した受取方法による |
口座内の商品を売却することも、銀行口座への払戻しとは違います。運用指図者は、掛金を拠出せず、すでにある資産の運用のみを行う人です。
任意の掛金停止は運用指図者への切替え
加入している運営管理機関から、加入者資格喪失届(K-015)を取り寄せ、記入して返送します。任意に掛金を止めて運用指図者になる場合の手続きです。
- 運営管理機関に、掛金停止と運用指図者への切替えを申し出る。
- 指定された届書と必要な添付書類を提出する。
- 受付状況と、どの月の掛金から止まるかを確認する。
- 切替え後の口座管理手数料と、その徴収方法を確認する。
書類の提出日だけから、次の引落しが止まるとは判断しないでください。受付締切や処理状況は契約先へ確認します。口座の残高を不足させることは停止手続きの代わりにならず、残高不足で引き落とせなかった掛金は後から追納できません。
運用指図者から掛金拠出を再開する場合は、個人型年金加入申出書(K-001)を提出するなど、再び加入者となる手続きが必要です。勤務先の企業年金の掛金変更などで、加入者のまま一時停止されている場合とは区別します。
様式と手続きは、iDeCo公式サイト「よくあるご質問」の掛金に関する案内で確認できます。
脱退一時金は全要件をそろえて確認する
次表は、経過措置の対象となる自動移換者を除く、2026年10月24日時点のiDeCo脱退一時金の要件です。すべてを満たす必要があり、期間・資産額の行だけが選択条件です。通算拠出期間は、企業型DCとiDeCoで掛金を拠出した期間を合算します。
| 確認項目 | 必要な条件 |
|---|---|
| 年齢 | 60歳未満である |
| 企業型DC | 企業型DCの加入者でない |
| iDeCoの加入資格 | iDeCoに加入できない者である |
| 海外居住と国籍 | 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でない |
| 障害給付 | 確定拠出年金の障害給付金の受給権者でない |
| 通算拠出期間または資産額 | 通算拠出期間が5年以下、または個人別管理資産額が25万円以下 |
| 資格喪失からの期間 | 最後に企業型DCまたはiDeCoの加入者資格を喪失した日から、2年を経過していない |
自動移換者で、企業型DCの加入者資格を最後に喪失した日が2016年12月31日以前の人には経過措置があります。表の要件だけで受給不可と判断せず、運営管理機関へ確認してください(公式FAQの自動移換者向け案内)。
期限ぎりぎりの書類提出を前提にせず、請求期限と受理の扱いを請求先に確認します。休日なら期限が延びるものとして、請求日を計算しないでください。
根拠は、厚生労働省「iDeCoの概要」の脱退一時金の要件です。海外居住の行は、年齢の要件と合わせた同省の表示にそろえています。
「加入できない」と「払いたくない」は違う
掛金を自分の意思で止めただけでは、脱退一時金の「iDeCoに加入できない者」という要件を満たしたことにはなりません。厚生労働省は、次の区分を示しています。
次表は2026年10月24日時点のiDeCo脱退一時金の加入不能要件です。
| 区分 | 確認する条件 |
|---|---|
| 国民年金の保険料免除 | 第1号被保険者で、申請による免除、または生活扶助による納付免除 |
| 外国籍の海外居住者 | 日本国籍を有しない海外居住者 |
| DB等の他制度の加入者(企業型DC加入者を除く) | 月額5.5万円からDB等の他制度掛金相当額を引いた額が、iDeCoの最低掛金額5,000円未満 |
DB等は確定給付企業年金などを指します。計算に使う制度上の限度額・他制度掛金相当額は、勤務先と運営管理機関の記録で確認します。適用時点の条件は、上記の厚生労働省の案内を参照してください。
たとえば、資産額が少なくてもiDeCoに加入できる人は、資産額の条件だけで脱退一時金を請求できません。退職して給与がなくなることと、iDeCoの加入資格を失うことも同じではありません。
脱退一時金の請求先と書類
掛金停止の届出だけでは、脱退一時金は支払われません。iDeCo加入中の人が脱退一時金の要件に該当する場合は、運営管理機関を通じて加入者から運用指図者へ切り替え、その手続きの完了後に裁定請求を行います。
| 本人の状況 | 提出先と書類 |
|---|---|
| iDeCoの運用指図者 | 記録関連運営管理機関(RK)へ、脱退一時金裁定請求書を提出 |
| 企業型DCの資格喪失後、企業型DCとiDeCoの両方に資産がある人 | iDeCoの運営管理機関へ、連合会用の請求書兼移換依頼書(K-016)を提出 |
| 自動移換されている人 | iDeCoの運営管理機関へ、連合会用の請求書兼移換依頼書(K-016)を提出 |
RKは口座記録や給付の裁定を扱う機関です。連絡先は、年金資産の残高通知などに記載されています。必要な添付書類は、該当する請求先から取り寄せた案内で確認します。
窓口の区分と様式は、iDeCo公式サイト「給付について」の脱退一時金の請求手続きを参照してください。企業型DCだけに資産がある退職者の手続きは、企業型DCの退職・転職手続きに分けています。
掛金停止後に確認する費用
掛金を止めても、資産を保有・運用する費用は残ります。「運営管理手数料が無料」という表示だけで、停止後の費用もすべて無料とは判断できません。
| 費用の種類 | 確認する箇所 |
|---|---|
| 運営管理機関の手数料 | 契約先の手数料表の「運用指図者」欄。金額や無料の条件を確認 |
| 事務委託先金融機関の手数料 | 資産管理に係る費用。運営管理機関の費用と分けて確認 |
| 運用商品の費用 | 投資信託の信託報酬など。保有商品によって発生する費用を確認 |
| 給付・移換などの手続き費用 | 実際に行う手続きの料金表。毎月の管理費用に混ぜない |
金額は機関や商品により異なります。比較する場合は、運用指図者として保有する期間と、集計する費用の範囲をそろえます。掛金を納める際の手数料を、そのまま停止後の月額として足さないでください。
契約先へは、「運用指図者の管理費用の合計」「資産から差し引く時期と方法」「商品にかかる費用」を分けて確認すると、費用の見落としを減らせます。費用の区分は、iDeCo公式サイト「よくあるご質問」の手数料に関する案内で確認できます。
会社の経理担当が確認すること
従業員が退職しても、iDeCoの掛金引落しが自動的に止まるわけではありません。本人から運営管理機関への届出が必要です。
会社の口座から納付する事業主払込では、会社から国民年金基金連合会へ、退職者に係る掛金引落停止依頼書(K-012)を提出します。月末退職か、それ以外かで提出時期と引落停止月が異なります。
- 本人の払込方法が個人払込か事業主払込かを確認する。
- 事業主払込なら、退職日と届書の提出時期を照合する。
- 本人にも、転職後の加入区分に応じた届出を案内する。
会社からの引落停止依頼は、従業員への払戻しを請求する書類ではありません。提出日程は、iDeCo公式サイト「よくあるご質問」の事業主向け「退職の際の手続きについて」で確認してください。
老齢・障害・死亡の給付とは分ける
老齢給付金は、所定の受給要件に基づいて請求する給付です。掛金を止めただけで受給が始まるわけではなく、受給開始年齢は通算加入者等期間などによって変わります。
障害給付金・死亡一時金も、脱退一時金とは別の給付です。具体的な対象・受取人・請求期限は、iDeCo公式サイトの各給付の案内と請求先で確認してください。
老齢一時金の退職所得控除を試算するこのツールは老齢一時金の退職所得控除などを扱い、脱退一時金の受給可否や税額は判定しません。
よくある質問
掛金を止めれば積み立てたお金は戻りますか?
戻りません。任意の掛金停止では運用指図者となり、資産はiDeCo内で運用を続けます。脱退一時金による払戻しには、所定の要件をすべて満たしたうえで、別途裁定請求が必要です。
残高が少なければ脱退一時金を受け取れますか?
残高だけでは決まりません。iDeCoに加入できないことなど、他の受給要件もすべて満たす必要があります。本人の意思で掛金を止めることと、制度上加入できないことは別です。
運用指図者の間も費用はかかりますか?
口座の管理費用や、保有商品による費用を確認する必要があります。金額は機関や商品により異なるため、契約先の「運用指図者」向けの手数料表で確認してください。
運用指図者から掛金を再開できますか?
加入資格を満たしていれば、新たに加入者となる手続きで再開できます。個人型年金加入申出書(K-001)の提出など、現在の加入区分に合う手続きを運営管理機関へ確認してください。
出典
制度・手続きは2026年10月24日時点の案内です。契約先の受付状況・手数料は個別の案内で確認してください。
- 国民年金基金連合会「よくあるご質問」:運用指図者、掛金停止・再加入、手数料、事業主払込の退職手続き。
- 国民年金基金連合会「給付について」:脱退一時金の要件・請求先、老齢・障害・死亡の給付。
- 厚生労働省「iDeCoの概要」:脱退一時金の全要件と、iDeCoに加入できない者の区分。
本記事は制度・手続きに関する一般的な情報であり、個別の事案への助言ではありません。受給資格や必要書類は運営管理機関・記録関連運営管理機関へ、税務上の取扱いは税務署・税理士へご確認ください。個別の税務・労務相談には応じられません。