株主総会議事録 — 会社法は署名も押印も求めていない。それでも押すのは、株主総会で代表取締役を定めた就任の変更登記が押印を前提にしているから
結論から言うと、株主総会議事録に署名や押印をする義務は、会社法にも会社法施行規則にもありません。議事録を作る義務(会社法318条1項)と、何を書くかの一覧(会社法施行規則72条3項)はありますが、誰が署名するか・誰が押印するかは、条文のどこにも書かれていません。
これは書き忘れではありません。同じ会社法の中で、取締役会議事録には、書面で作ったときの署名または記名押印が明記されているからです(会社法369条3項)。片方に書いてあって片方に書いていない以上、株主総会議事録に押印が要らないのは意図された差だと読むのが自然です。
それでも実務で代表印や個人の実印を押すのは、会社法ではなく登記の側が押印を前提にしているからです。株主総会で代表取締役を選んだときの変更登記では、議長と出席取締役が議事録に押した印鑑について、市町村長の作成した証明書(印鑑証明書)を添付することが求められます(商業登記規則61条6項1号、ただし変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑と同一なら証明書は不要)。会社法上は不要なのに登記実務では必要になることがあるという、条文をまたいだねじれがここにあります。
- 作る義務は会社法318条1項。中身は法務省令=会社法施行規則72条3項の6つの号
- 署名・押印の定めは無い。取締役会議事録は、書面で作ったときは会社法369条3項で出席した取締役及び監査役が署名または記名押印(電磁的記録なら同条4項の代わりの措置)。この非対称は条文どおり
- それでも押すのは、株主総会で代表取締役を定めた就任の変更登記のため。商業登記規則61条6項1号(議長と出席取締役が議事録に押した印鑑の印鑑証明書。変更前の代表取締役または代表執行役(取締役を兼ねる者に限る)の届出印と同一なら不要)
- 株主総会の決議を要する登記は、議事録だけでは足りない。株主リスト(商業登記規則61条3項)が別に要る。その決議で行使できる議決権の割合が上位の株主のうち、10名と、3分の2に達するまでの人数の、少ない方(10位までの側を採る場合で、同順位で10名を超えるときはその全員)
- 備置きは株主総会の日から本店10年・支店5年(支店は免除あり)。支店は写しでよく、電磁的記録で作り、電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使って回線経由で支店の電子計算機のファイルに記録し、支店で閲覧・謄写の請求に応じられるようにする措置をとれば支店備置きは不要(会社法318条2項・3項、会社法施行規則227条)
- 決議を省略したとき(会社法319条)は議事録の記載事項が変わる。議事の経過も議長も出席役員も書かない(会社法施行規則72条4項1号)
- 取締役などが法令に違反して議事録に書くべき事項を書かない・虚偽を書く・議事録を置かないと100万円以下の過料(会社法976条7号・8号、その行為について刑を科すべきときを除く)
この記事のいちばん踏み込んだところは、株主総会で代表取締役を定めた就任の変更登記で議事録の押印が前提になる根拠が、会社法ではなく法務省令の、しかも登記申請の添付書面の条文(商業登記規則61条6項1号)にあるという点です。会社法だけを読んでも、押印を求める条文には到達できません。
議事録に書く6つのこと — 会社法施行規則72条3項
会社法318条1項が定めているのは、議事録を作ることです。
株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。
会社法318条1項です。中身は法務省令に投げられており、その受け皿が会社法施行規則72条です。まず形式について、同条2項がこう定めます。
株主総会の議事録は、書面又は電磁的記録をもって作成しなければならない。
紙でも電子でもよいと条文が正面から書いています。そして開催した総会で書くべき事項が、同条3項に6つの号で並びます(3号の中にはイからヨの細目があります)。
| 号 | 書く事項(要約) | 実務で落としやすい点 |
|---|---|---|
| 1号 | 開催された日時および場所(その場所にいない取締役・執行役・会計参与・監査役・会計監査人・株主が出席したときは、その出席の方法を含む) | その場所にいない役員や株主がオンラインで出席したときは、その出席の方法まで書く |
| 2号 | 議事の経過の要領およびその結果 | 条文は要領であって逐語録ではない。発言の全文を残す義務は無い |
| 3号 | 会社法の特定の規定により述べられた意見・発言があるときは、その内容の概要 | 監査役の意見など。イからヨまで15の規定が名指しされている |
| 4号 | 出席した取締役・執行役・会計参与・監査役・会計監査人の氏名または名称 | 出席した役員全員。議長だけでは足りない |
| 5号 | 議長が存するときは、議長の氏名 | 議長が存するときは、と条件が付いている。議長を置かない総会もありうる |
| 6号 | 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名 | 事務の担当者ではなく、作成に係る職務を行った取締役の氏名を書く |
上の表は条文の要約です。逐語ではありません。
1号は、かっこ書きの中に実務上いちばん重い内容が入っています。
株主総会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。第四号において同じ。)、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)
会場に居ない取締役・執行役・会計参与・監査役・会計監査人・株主が出席したなら、その出席の方法まで議事録の記載事項になるということです。テレビ会議か、電話か、ウェブ会議システムか。かっこ書きの中なので目が滑りますが、これは1号の本体と同じ強さで要求されています。
2号も、条文の言葉を正確に読む価値があります。
株主総会の議事の経過の要領及びその結果
求められているのは要領であって、発言の逐語記録ではありません。誰が何を提案し、どういう質疑があり、どう決まったか。その筋道が追える程度に書けば条文は満たします。逆に、結果だけを書いて経過を書かない議事録は、この号を満たしていません。可決した事実だけが並んだ議事録は、実は条文の半分しか答えていません。
株主数・議決権数も記録して、定足数と採決結果を照合する
開催した株主総会では、発行済株式数、議決権を行使できる株主の総議決権数、出席株主数とその議決権数を記録すると、議事の結果と照らして定足数や採決結果を後から確認できます。法務局の株主総会議事録の記載例にも、これらの欄があり、出席株主数には委任状による出席者を含めています。
この記載例は会社の実情に合わせて作成するための一例です。株主数や議決権数が、会社法施行規則72条3項に独立した必須事項として列挙されているわけではありません。定足数や可決に必要な賛成の要件は、普通決議・特別決議などの区分と定款の定めによって異なります(会社法309条)。発行済株式数を、そのまま議決権数として扱わない点にも注意が要ります。
会社法上、署名・押印は義務ではない — 取締役会議事録との非対称
会社法318条にも会社法施行規則72条にも、署名・記名押印を求める文言はありません。一方、取締役会議事録についてはこう書かれています。
取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
会社法369条3項です。同じ「議事録を作成し」までは同じ文型で、その後ろに署名の義務が続いているのが取締役会側だけ、という構造がはっきり見えます。電磁的記録で作った場合は、同条4項が署名または記名押印に代わる措置を法務省令に委ねています(電子署名)。
| 株主総会議事録 | 取締役会議事録 | |
|---|---|---|
| 作成義務の条文 | 会社法318条1項 | 会社法369条3項 |
| 記載事項の省令 | 会社法施行規則72条3項(6号)。決議・報告を省略したときは同条4項 | 会社法施行規則101条 |
| 署名・記名押印 | 定めが無い | 書面なら出席した取締役及び監査役が必要(電磁的記録は代わりの措置) |
| 本店備置き | 株主総会の日から10年(会社法318条2項) | 取締役会の日(みなし決議の日を含む)から10年(会社法371条1項) |
| 支店備置き | 株主総会の日から写しを5年(会社法318条3項、電磁的記録で所定の措置をとれば不要) | 定めが無い |
| 株主の閲覧 | 営業時間内はいつでも(会社法318条4項) | 権利行使に必要なとき、営業時間内はいつでも(会社法371条2項)。監査役設置会社(監査の範囲を会計に限定する定款の定めがある会社を除く、会社法2条9号)・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では、営業時間内ではなく裁判所の許可を得て請求する(同条3項)。著しい損害のおそれがあれば許可されない(同条6項) |
| 債権者の閲覧 | 営業時間内はいつでも(会社法318条4項) | 役員又は執行役の責任追及に必要なとき、裁判所の許可(会社法371条4項)。著しい損害のおそれがあれば許可されない(同条6項) |
もう1つ、取締役会側にだけある効果があります。会社法369条5項は、取締役会の決議に参加した取締役であって議事録に異議をとどめない者は、その決議に賛成したものと推定すると定めています。決議に参加した取締役は、議事録に異議を残さなければ賛成したものと推定されるという重い効果です。株主総会議事録には、これに対応する規定がありません。署名義務の有無と、この推定規定の有無は、セットで理解すると筋が通ります。
それでも押す理由 — 商業登記規則61条6項1号
では、なぜ実務では議事録に押印するのか。答えは登記にあります。まず、決議を要する登記に議事録が要ることを定めているのが商業登記法46条2項です(みなし決議のときは同条3項の書面が議事録に代わります)。
登記すべき事項につき株主総会若しくは種類株主総会、取締役会又は清算人会の決議を要するときは、申請書にその議事録を添付しなければならない。
役員の変更、商号や目的の変更、増資、本店移転。登記事項を開催した株主総会で決めたなら、その議事録が申請書の添付書面になります(みなし決議なら、議事録に代えて、その場合に該当することを証する書面)。
そのうえで、商業登記規則61条6項が、代表取締役または代表執行役の就任による変更登記について、代表者を定めた方法の区分に応じた印鑑の証明書の添付を求めます(その印鑑が変更前の代表取締役または代表執行役(取締役を兼ねる者に限る)の届出印と同一なら不要、後述のただし書)。株主総会で代表取締役を定めた場合について、同項の柱書・ただし書・1号はこうです。
代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑
株主総会で代表取締役を定めた就任の変更登記では、議長と出席した取締役が議事録に押印してあることを前提に、その印鑑の証明書を出せ(変更前の代表取締役または代表執行役(取締役を兼ねる者に限る)の届出印と同一なら不要)、と書いてあります。押していなければ、証明のしようがありません。会社法が押印を義務づけていないのに、株主総会で代表取締役を定めて変更登記をするときに押さざるを得ないのは、この1行のためです。
商業登記規則61条6項には、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでないというただし書があります。変更前の代表取締役が届け出ている印鑑(いわゆる会社実印)と同じ印鑑が押されていれば、印鑑証明書は不要ということです。かっこ書きで取締役を兼ねる者に限ると絞られている点に注意が要ります。
なお、代表取締役を取締役会で選定した場合は同項3号、取締役の互選で定めた場合は同項2号が、それぞれ別の書面の印鑑を指しています。どの機関で代表取締役を決めたかによって、印鑑証明書を付ける相手の書面が変わるという作りです。
株主総会の決議で登記するときは議事録だけでは足りない — 株主リスト
ここが実務でいちばん躓きます。株主総会の決議を要する登記をするときは、議事録(みなし決議なら、それに代わる書面)に加えて「株主リスト」が要ります。根拠は商業登記規則61条3項で、その決議で行使できる議決権の割合が上位の株主のうち次の人数について、氏名または名称・住所・持株数・議決権数・議決権割合を証する書面を添付せよ、と定めています(法務局の記載例の注では、種類株式発行会社は株式の種類と種類ごとの数も記載)。
| 号 | 人数の決め方 |
|---|---|
| 1号 | 十名 |
| 2号 | 議決権割合の多い順に加算して、加算した割合が3分の2に達するまでの人数 |
条文は次に掲げる人数のうちいずれか少ない人数と書いています。その決議で行使できる議決権の割合が高い順に、10名と、3分の2に達するまでの人数を両方数えて、少ない方を採るという読み方です。10位までの人数の方を採る場合で、同順位の株主がいて10位までが10名を超えるときは、その全員を記載します(法務局の記載例の注)。
実務上の効き方は、はっきりしています。1人の株主がその決議で行使できる議決権の3分の2以上を持つ会社なら、株主リストに載るのはその1人だけです(2号の人数が1名になり、10名より少ない)。逆に、上位10名を足しても3分の2に届かなければ、10名(同順位があればその全員)まで書くことになります。
さらに条文のかっこ書きが効きます。3項は、議決権について当該決議(会社法第三百十九条第一項(同法第三百二十五条において準用する場合を含む。)の規定により当該決議があつたものとみなされる場合を含む。)において行使することができるものに限ると書いています。決議を省略した(みなし決議の)ときも株主リストは要る、ということが、かっこ書きの中で手当てされています。
備置きは株主総会の日から本店10年・支店5年。支店は「写し」(免除あり)
会社法318条2項と3項が、置き場所と期間を分けて定めています。
株式会社は、株主総会の日から十年間、前項の議事録をその本店に備え置かなければならない。
株式会社は、株主総会の日から五年間、第一項の議事録の写しをその支店に備え置かなければならない。ただし、当該議事録が電磁的記録をもって作成されている場合であって、支店における次項第二号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として法務省令で定めるものをとっているときは、この限りでない。
読み分けるべき点が3つあります。
- 期間が違う。株主総会の日から本店10年、支店5年(支店は電磁的記録で作り、会社法施行規則227条の措置をとれば不要)
- 置くものが違う。本店は議事録そのもの、支店は写し
- 起算日は株主総会の日。作成した日でも、承認された日でもない
3項のただし書は、電磁的記録で作っていて、支店で閲覧・謄写の請求に応じられる措置をとっていれば、支店に置かなくてよいという免除です。その措置の中身を定めているのが会社法施行規則227条で、会社の電子計算機を電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使い、その内容を支店の電子計算機のファイルに記録する方法だ、としています。要するに、電磁的記録の議事録を電気通信回線を通じて支店の電子計算機のファイルに記録して、支店で閲覧・謄写の請求に応じられるようにしてあれば、支店に写しを置かなくてよいということです。
同条は1号で会社法31条4項(定款)、2号で会社法318条3項(株主総会議事録の写し)、3号で会社法442条2項(計算書類等の写し)を並べて挙げています。定款・議事録・計算書類で同じ免除の作りを共有しているので、支店の紙を1つ減らすなら、この3つはまとめて設計するのが効率的です。
誰が見せろと言えるか — 株主総会と取締役会で違う
会社法318条4項は、株主及び債権者が、営業時間内はいつでも閲覧または謄写を請求できると定めています。理由の説明も、裁判所の許可も要りません。紙なら書面またはその写しの閲覧・謄写、電磁的記録なら法務省令で定める方法により表示したものの閲覧・謄写、と1号・2号で分かれています。
これに対して、親会社社員(親会社の株主等)は、同条5項によりその権利を行使するため必要があるときに、裁判所の許可を得て請求することになります。ここだけハードルが上がります。
そして先の表のとおり、取締役会議事録は株主に対してもハードルが高いのが対照的です。会社法371条2項は株主の請求をその権利を行使するため必要があるときに限り、同条3項は、監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では、この規定の適用について営業時間内は、いつでもを裁判所の許可を得てと読み替える、としています。監査役の監査の範囲を会計に限定する定款の定めが無い監査役設置会社なら、中小企業でも、株主が取締役会議事録を見るには裁判所の許可が要るということです。
さらに会社法371条6項は、閲覧・謄写により会社やその親会社・子会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、裁判所は許可をすることができない、と定めています。株主総会議事録には、これに当たる制限がありません。
決議を省略したとき — 議事録の記載事項が変わる
株主が数人しかいない会社では、実際に集まらず、会社法319条1項の決議の省略(いわゆる書面決議・みなし決議)で済ませることがあります。取締役または株主が提案し、議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録で同意すれば、その提案を可決する旨の決議があったものとみなされます。
このとき、議事録の記載事項は通常の総会とは変わります。会社法施行規則72条4項1号が、みなし決議の場合に書く事項として次の4つを挙げています。
| 書く事項(要約) | |
|---|---|
| イ | 決議があったものとみなされた事項の内容 |
| ロ | イの事項の提案をした者の氏名または名称 |
| ハ | 決議があったものとみなされた日 |
| ニ | 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名 |
上の表は条文の要約です。逐語ではありません。
議事の経過も、議長の氏名も、出席役員の氏名も、書く事項に入っていません。集まっていないのだから当然ですが、通常の議事録のひな型の議長欄・出席役員欄をそのまま埋めると、存在しない議長と存在しない出席役員を書くことになります。これは会社法976条7号の「記載すべき事項を記載せず」ではなく、事実と異なる記載=虚偽の記載の側の問題になりえます。みなし決議には、みなし決議用の書式を使ってください。
会社法319条2項は、みなし決議の日から十年間、同意の書面または電磁的記録を本店に備え置かなければならないと定めています。議事録とは別に、議決権を行使できる株主全員の同意そのものを10年残すということです。会社法976条8号が挙げる備置き義務の中に、この319条2項も入っています。
もう1つ、見落とされやすい効果が319条5項にあります。
第一項の規定により定時株主総会の目的である事項のすべてについての提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされた場合には、その時に当該定時株主総会が終結したものとみなす。
定時株主総会の議題を全部みなし決議で片付けたなら、その時点で定時株主総会が終結したものとみなされます。定時株主総会の目的である事項のすべてについて提案を可決するみなし決議が成立したときは、その定時株主総会の終結の時に任期が満了する役員の任期の切れ目は、この「みなし終結の時」になります。集まらなかったから任期が延びる、ということはありません。
登記の場面でも扱いが変わります。商業登記法46条3項は、みなし決議の場合には、前項の議事録に代えて、当該場合に該当することを証する書面を添付しなければならないとしています。議事録に加えて、ではなく、議事録に代えてです。条文の言葉の向きが実務の作業を決めるので、ここは正確に読む価値があります。
報告を省略したときの要件と議事録
決議の省略とは別に、会社法320条には報告の省略があります。取締役が株主全員に株主総会へ報告すべき事項を通知し、その事項を総会で報告しなくてよいことについて、株主全員が書面または電磁的記録で同意の意思表示をした場合に、その事項の報告があったものとみなされます。
会社法320条により報告があったものとみなされた場合の議事録には、会社法施行規則72条4項2号が定める3項目、すなわち報告があったものとみなされた事項の内容、報告があったものとみなされた日、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名を記載します。
定時株主総会に「決算後3か月以内」と書いた条文は無い
実務では「決算後3か月以内に定時株主総会」と言われますが、会社法にその期限は書かれていません。会社法296条1項が定めているのは、定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない、ということだけです。一定の時期としか書いていません。
では3か月はどこから来るのか。基準日の条文です。会社法124条2項は、基準日を定める場合には、基準日株主が行使することができる権利の内容を定めなければならないとしたうえで、その権利をかっこ書きで基準日から三箇月以内に行使するものに限ると限定しています。
多くの会社は、定款で基準日を事業年度の末日に置き、その日の最終の株主名簿に記載された株主が定時株主総会で議決権を行使できる、と定めています。基準日を事業年度末に置いた結果として、議決権の行使は末日から3か月以内でなければならなくなる —— これが実務の3か月の正体です。
つまり基準日を定めていない会社には、この3か月は当然には効きません。ただし法人税の申告期限(原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内)や、申告期限の延長の特例との関係があるので、実際の日程は税務側からも縛られます。「会社法の期限」と「税務の期限」を1つの締切だと思わないことが、日程を組むときのコツです。
招集通知の発送時期は会社法299条1項です。原則は株主総会の日の2週間前まで、公開会社でない株式会社なら1週間前まで(書面投票・電子投票を定めたときを除く)、さらに取締役会設置会社以外の株式会社なら、これを下回る期間を定款で定めることもできます(電子提供措置をとる場合は、会社法325条の4により2週間前まで)。電子提供措置をとらない限り、非公開・取締役会非設置の小さな会社ほど、条文上は柔軟になっているという作りです。
2週間前・1週間前・基準日から3か月を、実際の日付で数える(営業日・期限計算ツール)取締役などが法令に違反して議事録を作らない・置かないと100万円以下の過料(刑を科すべきときを除く)
会社法976条は、取締役などが次のいずれかに該当する場合の制裁を定めています(その行為について刑を科すべきときを除く)。柱書はこう結びます。
次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
議事録の作成・備置きに関係するのは次の2つの号です(閲覧・謄写を正当な理由なく拒んだときは4号)。
| 号 | 行為(要約) | 議事録での当てはまり |
|---|---|---|
| 7号 | 議事録などに記載すべき事項を記載せず、記録せず、または虚偽の記載・記録をしたとき | 書くべき記載事項(開催した総会は施行規則72条3項、省略したときは同条4項)が抜けている/事実と違うことを書いた |
| 8号 | 会社法318条2項・3項、319条2項などに違反して、帳簿又は書類若しくは電磁的記録を備え置かなかったとき | 株主総会の日から本店に10年置いていない/支店に写しを5年置いていない(免除措置もとっていない) |
上の表は条文の要約です。逐語ではありません。
過料は刑罰ではなく行政上の秩序罰なので、前科にはなりません。ただし科されるのは会社ではなく、取締役など976条が名指しする者です。976条の柱書は、発起人・取締役・監査役・執行役・清算人などを名指しで並べたうえで、それらの者は、と続けています。会社の経費で払うものではないという点は、押さえておく価値があります。
もう1つ。7号が挙げる書類の一覧には、議事録のほか、定款・株主名簿・会計帳簿・貸借対照表・損益計算書・事業報告などが並んでいます。議事録は、会計帳簿や決算書と同じ列に置かれているということです。経理の担当者から見ると、これはかなり実感に近い位置づけだと思います。
よくある質問
株主総会議事録に、代表取締役の印鑑を押さなければなりませんか?
会社法318条にも、記載事項を定めた会社法施行規則72条にも、署名または記名押印を求める文言はありません。したがって、会社法上の義務として押印が要求されているわけではありません。これは書き漏らしではなく、取締役会議事録については会社法369条3項が、議事録が書面をもって作成されているときは出席した取締役及び監査役はこれに署名し、又は記名押印しなければならない、と明記していることとの対比から、意図された差だと読むのが自然です。ただし、その株主総会の決議で代表取締役を定め、その就任による変更登記をする場合には話が変わります。商業登記規則61条6項1号は、株主総会の決議によって代表取締役を定めた場合の印鑑証明書について、議長及び出席した取締役が議事録に押印した印鑑と定めており、押印されていることが前提になっています(その印鑑が変更前の代表取締役または代表執行役(取締役を兼ねる者に限る)の届出印と同一なら証明書は不要、同項ただし書)。その登記の予定があるなら押しておくのが安全です。
議事録は何年保存すればよいですか?
会社法318条2項が、株主総会の日から十年間、議事録を本店に備え置かなければならないと定めています。支店については同条3項が、株主総会の日から五年間、議事録の写しを備え置かなければならないとしています。本店は議事録そのもので10年、支店は写しで5年、という二段構えです。起算日はどちらも株主総会の日であって、議事録を作成した日でも、次の総会で承認された日でもありません。なお同条3項にはただし書があり、議事録が電磁的記録で作成されていて、支店で閲覧・謄写の請求に応じられるようにする措置として法務省令で定めるものをとっているときは、支店への備置きは要りません。その措置の内容は会社法施行規則227条が定めています。
発言を全部書き起こさないと議事録になりませんか?
会社法施行規則72条3項2号が求めているのは、株主総会の議事の経過の要領及びその結果です。条文の言葉は要領であって、逐語の記録ではありません。誰が何を提案し、どのような質疑があり、どう決まったかという筋道が追える程度に書いてあれば、この号は満たします。逆に注意が要るのは反対側で、可決した結果だけを並べて経過をまったく書いていない議事録は、経過の要領という部分に答えていないことになります。結果と経過は、同じ号の中で並んで要求されています。
株主が集まらずに書面で決議したときも、同じ議事録でよいですか?
記載事項が変わります。会社法319条1項により決議があったものとみなされた場合について、会社法施行規則72条4項1号が、決議があったものとみなされた事項の内容、その提案をした者の氏名または名称、決議があったものとみなされた日、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名、という4つを挙げています。議事の経過も、議長の氏名も、出席した役員の氏名も入っていません。通常の総会のひな型の議長欄や出席者欄をそのまま埋めると、実際には存在しなかった議長や出席者を書くことになります。また、会社法319条2項により、その事項について議決権を行使できる株主全員の同意を示す書面または電磁的記録そのものを、みなし決議の日から十年間、本店に備え置く必要があります。
登記のときに議事録を出せば足りますか?
足りない場合があります。商業登記法46条2項により、登記すべき事項につき株主総会の決議を要するときは、申請書にその議事録を添付します。これに加えて、商業登記規則61条3項が株主リストの添付を求めています。書くのは、その決議で行使できる議決権の割合が高い順に、十名と、割合を多い順に加算して3分の2に達するまでの人数の、いずれか少ない人数の株主(10位までの側を採る場合で、同順位で10名を超えるときはその全員)についての氏名または名称・住所・持株数(種類株式発行会社では株式の種類及び種類ごとの数を含む)・議決権数・議決権割合です。1人でその決議で行使できる議決権の3分の2以上を持つ会社なら1名分で足ります。なお、会社法319条1項のみなし決議で登記をする場合は、商業登記法46条3項により、議事録に代えて、その場合に該当することを証する書面を添付します。
議事録を作らなかったら、何か罰則がありますか?
会社法976条が、取締役などについて、百万円以下の過料に処すると定めています(その行為について刑を科すべきときを除く)。議事録の作成・備置きに関係するのは同条7号と8号で、7号は議事録などに記載すべき事項を記載せず、記録せず、または虚偽の記載・記録をしたとき、8号は会社法318条2項・3項や319条2項などに違反して帳簿または書類若しくは電磁的記録を備え置かなかったときを挙げています。閲覧・謄写を正当な理由なく拒んだときは同条4号です。過料は刑罰ではなく行政上の秩序罰ですが、科されるのは会社ではなく、取締役など同条が名指しする者です。なお7号が並べている書類には、議事録のほかに定款・株主名簿・会計帳簿・貸借対照表・損益計算書なども入っています。
株主から議事録を見せてほしいと言われたら、断れますか?
株主総会議事録については、会社法318条4項が、株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、閲覧または謄写の請求をすることができると定めています。理由の説明や裁判所の許可は条文上の要件になっていないため、営業時間内の請求であれば応じることになります。取締役会議事録は扱いが異なり、会社法371条2項が株主の請求をその権利を行使するため必要があるとき(営業時間内)に限っているうえ、同条3項により、監査役設置会社(監査の範囲を会計に限定する定款の定めがある会社を除く)・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では、営業時間内はいつでもという部分が裁判所の許可を得てと読み替えられます。裁判所は、その閲覧・謄写によりその会社またはその親会社・子会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは許可できません(同条6項)。同じ議事録という名前でも、開示のされ方が大きく違います。
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出典
会社法、会社法施行規則、商業登記法、商業登記規則をe-Gov法令検索で条単位に確認した内容です。
- e-Gov法令検索「会社法」(平成十七年法律第八十六号)第124条(基準日)、第296条(株主総会の招集)、第299条(株主総会の招集の通知)、第325条の4(電子提供措置をとる場合の招集の通知の特則)、第309条(株主総会の決議)、第318条(議事録)、第319条(株主総会の決議の省略)、第320条(株主総会への報告の省略)、第369条(取締役会の決議)、第371条(議事録等)、第976条(過料に処すべき行為)。法令API v2 で条単位に取得
- e-Gov法令検索「会社法施行規則」(平成十八年法務省令第十二号)第72条(議事録。3項の6号と4項の2号は木構造から計数)、第101条(取締役会の議事録)、第227条(電磁的記録の備置きに関する特則)。法令API v2 で条単位に取得
- e-Gov法令検索「商業登記法」(昭和三十八年法律第百二十五号)第46条(添付書面の通則。2項の議事録、3項のみなし決議の場合)。法令API v2 で条単位に取得
- e-Gov法令検索「商業登記規則」(昭和三十九年法務省令第二十三号)第61条(添付書面。3項の株主リスト、6項の印鑑証明書と1号〜3号)。法令API v2 で条単位に取得
- 法務局「添付書面の記載例」の株主総会議事録の例(会社の実情に合わせて作成する一例)
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。実際の議事録の書きぶり、登記申請に必要な添付書面、機関設計に応じた閲覧請求の可否については、司法書士または弁護士にご確認ください。役員報酬・役員退職金の損金算入の判断については、顧問税理士にご確認ください。