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寄付金控除は「所得控除」と「税額控除」の選択制|40%上限・2,000円と、所得税額25%枠の共有

結論から言うと、寄付をしたときの所得税の減り方には2つの経路があります。所得から差し引く所得控除(所得税法78条)と、計算した税額から直接差し引く税額控除(租税特別措置法41条の18・41条の18の2・41条の18の3)です。

そしてどちらを使えるかは、寄付をした側ではなく寄付先で決まります。国や地方公共団体への寄附は所得控除だけ。認定NPO法人や証明を受けた公益社団法人などへの寄附は、所得控除と税額控除のどちらかを選べます。選べる場合、多くの人は税額控除のほうが有利になりますが、逆転する所得帯もあります。その分かれ目まで、条文と実数で追いかけます。

ふるさと納税も寄附金控除の一種ですが、住民税側に「特例控除」という3階部分が乗る点が他と大きく違います。上限額の考え方はふるさと納税だけ別に整理してあります → ふるさと納税の計算方法(控除の3階建て)

なお、法人が地方公共団体へ寄附する企業版ふるさと納税は、名前が似ているだけで別の制度です。個人のように所得控除と税額控除を選ぶのではなく、法人税法37条3項1号による全額損金算入の上に、租税特別措置法42条の12の2と地方税法附則による税額控除が重なる二階建てになっています。返礼品が受けられない点、1回あたり10万円以上でなければならない点、本社のある自治体には寄附できない点も個人側と違います → 企業版ふるさと納税 —「最大6割」は40%+10%+20%ではない

結論:経路は寄付先で決まる

まず全体像です。所得税法78条2項が定める特定寄附金に当たれば所得控除が使えます。そのうえで、租税特別措置法が定める一部の寄付先については、所得控除に代えて税額控除を選べます。

寄付先所得控除税額控除根拠
国・地方公共団体所法78条2項1号
財務大臣が指定した寄附金(指定寄附金)所法78条2項2号
特定公益増進法人(公益社団・財団、学校法人、社会福祉法人など)△ 証明を受けた法人のみ40%所法78条2項3号・所令217条/措法41条の18の3
認定NPO法人・特例認定NPO法人○ 40%措法41条の18の2
政党・政治資金団体など○ 30%措法41条の18
認定を受けていないNPO法人特定寄附金に当たらない

表の「△」が実務でいちばん取り違えられるところです。特定公益増進法人であることと、税額控除が使えることは別の話です。この点は後半で条文に当たります。

所得控除(所得税法78条):40%上限から2,000円を引く

所得税法78条1項の計算式は、実質的に次の1本です。

寄附金控除額 = min(その年に支出した特定寄附金の合計額, 総所得金額等 × 40%)− 2,000円

ここで押さえておきたいのは、40%は「控除率」ではなく「上限」だという点です。条文は「当該合計額がその者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の四十に相当する金額を超える場合には、当該百分の四十に相当する金額」と書いています。寄附額のうち40%が戻ってくるという意味ではありません。

また2,000円は年に1回だけ引きます。寄付1件ごとではありません。後で見る税額控除の条文も、所得控除側で2,000円を使い切っていれば「二千円から当該特定寄附金等の金額を控除した残額」と書いて、二重に引かせない作りになっています。

特定寄附金の4類型(78条2項)

①国・地方公共団体(港務局を含む)②広く一般に募集され、緊急を要する公益の増進に充てられるものとして財務大臣が指定したもの ③別表第一に掲げる法人などのうち政令で定めるものへの、その主たる目的である業務に関連する寄附金 ④公益信託の信託財産とするために支出した、その信託事務に関連する寄附金。③の「政令で定めるもの」は所得税法施行令217条が列挙しており、独立行政法人、公益社団法人・公益財団法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人などが入ります。

税額控除は3種類。控除率は30%と40%

税額控除は3つの条文に分かれていて、控除率と適用期限が違います。いずれも所得控除との選択制で、条文上も「同条第一項の規定の適用を受けるものを除く」「次項の規定の適用を受ける場合を除く」という形で、同じ寄附を二重に使えないようにしてあります。

制度条文控除率所得税額に対する上限適用期限
政党等寄附金特別控除措法41条の1830%25%令和11年12月31日まで
認定NPO法人等寄附金特別控除措法41条の18の240%25%条文に期限の定めなし
公益社団法人等寄附金特別控除措法41条の18の340%25%条文に期限の定めなし

いずれも計算式は(寄附金の合計額 − 2,000円)× 控除率で、100円未満の端数は切り捨てます。この切り捨ては税額控除にだけあり、所得控除の側にはありません。

そして、税額控除を選んだ場合も40%の上限は生きています。41条の18の2第2項も41条の18の3第1項も、括弧書きの中で「総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の四十に相当する金額」で頭打ちにしています。40%は所得控除だけの話ではありません。

所得税額25%の枠は「政党等」と「それ以外」で別勘定

3つとも「所得税額の25%が限度」と書いてあるので、まとめて25%だと読んでしまいがちですが、条文を読むと枠は2つに分かれています

認定NPO法人等の41条の18の2第2項には、次の括弧書きが入っています。「所得税の額の百分の二十五に相当する金額(次条第一項の規定の適用がある場合には、当該百分の二十五に相当する金額から同項の規定により控除する金額を控除した残額)」。次条=41条の18の3(公益社団法人等)です。つまりこの2つは同じ25%の器を分け合っています

一方、政党等の41条の18第2項には、この括弧書きがありません。したがって政党等の25%枠は独立しており、認定NPOや公益社団法人等への寄附で枠を使っていても、その分だけ狭くなることはありません。

その年分の所得税額 100% 枠A(独立) 政党等 上限25% 措法41条の18(控除率30%) 枠B(共有) 公益社団法人等 認定NPO法人等 措法41条の18の3(40%)を先に計算し 残りが41条の18の2(40%)の枠になる 2つ合わせて上限25% ※ どの枠でも、控除額は100円未満切り捨て。所得控除を選んだ寄附はこの枠に入らない。
所得税額25%の枠は2つある。政党等は独立、認定NPO法人等と公益社団法人等は共有(措法41条の18第2項・41条の18の2第2項・41条の18の3第1項)。

どちらが有利か:分かれ目は限界税率

選べる場合の比較は、実は単純です。所得控除で減る税額は控除額 × その人の限界税率、税額控除で減る税額は控除額 × 控除率(40%または30%)限界税率と控除率のどちらが大きいかだけで決まります。

実数で置きます。総所得金額700万円・所得控除の合計200万円で課税総所得金額500万円の人が、認定NPO法人に10万円寄附した場合です。所得税法89条の税率表で、この人の所得税額は572,500円、限界税率は20%です。

所得控除を選ぶ税額控除を選ぶ
控除の対象100,000円 − 2,000円 = 98,000円(40%上限280万円に収まる)
計算課税所得を98,000円減らす98,000円 × 40% = 39,200円
25%上限との比較572,500円 × 25% = 143,100円 > 39,200円 で収まる
減る所得税19,600円(98,000 × 20%)39,200円

この人の場合、税額控除がちょうど2倍有利です。では逆転はどこで起きるか。所得税法89条の税率表は、課税所得1,800万円超4,000万円以下で40%、4,000万円超で45%です。したがって控除率40%の制度では、課税所得が4,000万円を超える帯で初めて所得控除のほうが有利になります。控除率30%の政党等では、限界税率が33%になる課税所得900万円超で逆転します。

逆転の目安(所得税の本体だけで比べたもの)

控除率40%(認定NPO法人等・公益社団法人等)… 課税総所得金額 4,000万円超で所得控除が有利。/控除率30%(政党等)… 課税総所得金額 900万円超で所得控除が有利。復興特別所得税は基準所得税額に2.1%を乗じる形(復興財源確保法13条)なので、どちらの経路でも同じ向きに効き、有利不利の順序は変わりません。ただし所得税額の25%上限に当たる場合は、この目安より前に税額控除の効き目が頭打ちになります。

無料ツール:ふるさと納税 上限額シミュレーション

住民税は上限30%・控除率10%で、別に判定する

ここまでは所得税の話です。住民税の寄附金税額控除は完全に別の条文で、数字も違います。

所得税住民税
根拠所法78条・措法41条の18〜18の3地方税法37条の2(道府県)・314条の7(市町村)
寄附額の上限総所得金額等の40%総所得金額等の30%
控除率所得控除/30%または40%の税額控除道府県4%+市町村6%=合計10%(指定都市は2%+8%)
対象になる寄付先特定寄附金であればよい都道府県等・共同募金会・日赤のほかは条例で指定されたものに限る

実務で効いてくるのは下の2行です。上限は所得税40%・住民税30%で違います。そして地方税法314条の7第1項3号・4号は「住民の福祉の増進に寄与する寄附金として当該市町村の条例で定めるもの」と書いています。つまり同じ認定NPO法人への寄附でも、所得税では控除できて住民税では控除できないことが起こり得ます。住んでいる自治体が条例で指定しているかどうかは、自治体の案内で確認することになります。

落とし穴:入学寄附金・「認定」のないNPO・証明の有無

①学校の入学に関する寄附は対象外。 78条2項の柱書は、特定寄附金を「次に掲げる寄附金(学校の入学に関してするものを除く。)」と定義しています。学校法人は特定公益増進法人ですが、入学に関してした寄附はこの括弧書きで最初から外れます。

②NPO法人なら何でもよいわけではない。 措法41条の18の2が対象にしているのは、特定非営利活動促進法2条3項の認定特定非営利活動法人と、同条4項の特例認定特定非営利活動法人です。認定を受けていないNPO法人への寄附は、そもそも特定寄附金に当たりません(住民税側は4号で条例指定があれば別扱いになり得ます)。

③特定公益増進法人でも、税額控除には別の関門がある。 これが冒頭の表の「△」です。措法41条の18の3第1項は、公益社団・財団法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人を挙げたうえで、「その運営組織及び事業活動が適正であること並びに市民から支援を受けていることにつき政令で定める要件を満たすものに限る」と絞っています。この政令が措置法施行令26条の28の2で、いわゆるパブリック・サポート・テストです。

パブリック・サポート・テストの中身(措置法施行令26条の28の2第1項1号イ)

次のいずれかを満たすこととされています。①実績判定期間における経常収入金額のうち寄附金収入金額の割合が5分の1以上であること。②実績判定期間の各事業年度における判定基準寄附者の数が年平均100人以上で、かつその寄附金額の総額が年平均30万円以上であること。これに加えて、財産目録等の閲覧に応じること、寄附者名簿を作成して保存していることも要件に入っています。

この要件を満たすことの証明を受けた法人は税額控除対象法人と呼ばれ、寄付をした側は証明書の写しを確定申告書に添付することになります。所得控除だけなら証明は要りませんが、税額控除を使うには要るという非対称があります。なお、いずれの税額控除も条文上、確定申告書に控除額の記載と明細書・証明書類の添付があることが適用の条件とされています(措法41条の18第3項、41条の18の2第3項、41条の18の3第2項)。

令和8年4月1日から、公益信託への寄附の位置づけが変わった

最後に、令和8年分から効いてくる変更点を1つ。e-Gov で所得税法78条の新旧の版を突き合わせると、令和8年4月1日施行の版で条文の構造が変わっています。

令和8年3月31日まで令和8年4月1日から
位置78条3項(独立した「みなし」規定)78条2項4号(特定寄附金そのもの)
対象特定公益信託(政令要件を満たすことの証明を受けたもの)公益信託
目的の絞り教育・科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるもの条文上の目的の絞りなし(信託事務に関連する寄附金であること)
対象の範囲支出した金銭寄附金(出資に関する信託事務に充てられることが明らかなものを除く)

旧3項は「特定公益信託……のうち、その目的が……著しく寄与するものとして政令で定めるものの信託財産とするために支出した金銭は、前項に規定する特定寄附金とみなして」という書き方で、二重の絞りがありました。新2項4号はみなしではなく、特定寄附金の類型そのものとして書かれています。e-Gov の版で比べると、令和8年1月1日施行の版には4号が無く旧3項があり、令和8年4月1日施行の版以降は4号があって旧3項が削られています。なお78条の本文は、その後の令和9年1月1日施行版・令和10年1月1日施行版とも同一(本文のハッシュが一致)で、当面の変更予定は入っていません。

条文の構造が変わったことは e-Gov の本則で確認できますが、経過措置の詳細や、これに伴う実務上の取扱い(証明書の様式など)は、各年分の確定申告の手引きや国税庁の案内で確認することになります。

よくある質問

Q. 所得控除と税額控除は、寄付先ごとに選べますか?

A. 一般に、寄付先ごとに選べます。措置法41条の18の2第1項は「次項の規定の適用を受ける場合を除く」、41条の18の3第1項は「同条第一項の規定の適用を受けるものを除く」と書いており、同じ寄附について両方を使うことだけが禁じられています。したがって認定NPO法人への寄附は税額控除、別の公益社団法人への寄附は所得控除、という組み合わせ自体は条文上妨げられていません。ただし2,000円の控除は年に1回きりで、両方を使う場合の按分も条文の括弧書きで決められているため、実際の計算は確定申告書の様式に従うことになります。

Q. 2,000円は寄付するたびに引かれますか?

A. 引かれません。所得税法78条1項は「その年中に支出した特定寄附金の額の合計額」から2,000円を引く形で書かれており、年間の合計に対して1回だけです。税額控除の条文も、所得控除の側で2,000円を使っている場合には「二千円から当該特定寄附金等の金額を控除した残額」として、重ねて引かないようにしています。

Q. 40%の上限は、税額控除を選んだ場合にも効きますか?

A. 効きます。租税特別措置法41条の18の2第2項と41条の18の3第1項は、いずれも括弧書きの中で、寄附金の合計額が総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の40%相当額を超える場合にはその40%相当額を上限とする、と定めています。40%が所得控除だけの制限だという理解は条文と合いません。なお住民税側の上限は30%で、こちらは地方税法37条の2・314条の7に別に書かれています。

Q. 特定公益増進法人に寄付したので、40%の税額控除が使えますか?

A. 特定公益増進法人であることだけでは判断できません。租税特別措置法41条の18の3第1項は対象法人を列挙したうえで、「その運営組織及び事業活動が適正であること並びに市民から支援を受けていることにつき政令で定める要件を満たすものに限る」と絞っており、この要件を満たすことの証明を受けた法人(税額控除対象法人)への寄附に限られます。所得控除は特定公益増進法人への寄附であれば使えるので、証明の有無で使える制度が変わる形です。寄付先が証明を受けているかは、その法人が交付する受領証明書や案内で確認することになります。

Q. 政党への寄付は、いつまでこの制度が使えますか?

A. 租税特別措置法41条の18第1項は、対象期間を政治資金規正法の一部を改正する法律(平成6年法律第4号)の施行の日から令和11年12月31日までと明示しています。これに対し、認定NPO法人等の41条の18の2と公益社団法人等の41条の18の3には、条文上そうした期限の定めが置かれていません。政党等寄附金特別控除だけが期限付きの措置という違いがあります。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。寄附金控除は寄付先がどの類型に当たるか、証明を受けているかどうかで結論が変わり、住民税側は各自治体の条例によって取扱いが異なります。また、所得控除と税額控除のどちらが有利かは、その年の所得の内訳や他の税額控除の有無によっても変わります。申告にあたっては、寄付先が交付する受領証明書の記載と、お住まいの自治体の案内、および顧問税理士にご確認ください。

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