個人年金の税金:年金額・対応保険料・源泉徴収から年間税額を検算
保険料を負担した本人が受け取る個人年金は、年金額から対応する保険料を引いた差額が、公的年金等以外の雑所得になります。将来の年金総額に代えて一括で受け取る場合は、別の扱いです。
年金から引かれる源泉徴収税は前払いで、年間の税額そのものではありません。まず支払通知で収入・対応保険料・源泉徴収税額を分け、その後に総合課税の他の所得と合わせて計算します。
以下は、本人負担の私的保険年金を毎年受け取る人の一般解説です。一括受取は一時所得の記事、公的年金は年金受給者の確定申告に分けています。
先に負担者と受取方法を分ける
| 受取の条件 | 税の扱いと確認先 |
|---|---|
| 保険料負担者本人が年金で受取 | 公的年金等以外の雑所得。本記事の設例の対象 |
| 保険料負担者本人が将来の年金総額に代えて一時金で受取 | 一時所得。一括受取の計算へ |
| 生存する保険料負担者とは別人が年金で受取 | 給付事由発生時の年金受給権に贈与税。毎年の年金の所得税も本人負担とは別計算 |
別人負担の年金は、贈与税の納税額がなくても本人負担の算式にはなりません。毎年の年金の所得税計算・相続取得は国税庁No.1620を参照してください。本記事では受給権の評価額や各年の課税部分は計算しません。
通知の収入・対応保険料・源泉税を分ける
保険料負担者本人の年金受取では、雑所得は「その年の年金額−その年金額に対応する保険料・掛金」です。根拠は国税庁No.1610です。
保険会社の支払通知などにある年金額、必要経費に当たる対応保険料、源泉徴収税額を照合します。通帳の振込額だけでは、税引前の年金額と源泉税を区別できません。
払込保険料の総額を受取初年にまとめて引く計算ではありません。通知の対応保険料が分からなければ、保険会社へ内訳を確認します。
令和8年分の架空の設例です。居住者である保険料負担者本人が、私的個人年金を年一括で受け取ります。対応保険料が通知で確定していると仮定し、他の私的年金・相続贈与取得・一時金はありません。
| 確認項目 | 設例の金額・式 |
|---|---|
| 税引前の年金年額 | 120万円 |
| 年金額に対応する保険料 | 80万円 |
| 公的年金等以外の雑所得 | 120万円−80万円=40万円 |
| 年一括支払時の源泉徴収税額 | 40万円×10.21%=40,840円 |
源泉徴収なしと非課税は別
令和8年分の私的年金を保険料負担者本人が受け取る場合、年金年額から対応する保険料・掛金を引いた残額が25万円未満なら、源泉徴収されません。これは所得税が非課税になる基準ではありません。
支払通知の源泉徴収税額は、年内の支払分を合計して確認します。
主な対象外:負担者と受取人が異なる年金は源泉徴収されず、毎年の課税部分も別計算です。
年間の所得税を同じ設例で検算する
所得税の税率は、私的年金と他の総合課税の所得を合わせ、所得控除を引いた課税所得に適用します。年金収入に税率を掛けたり、年税額へ源泉税をもう一度足したりしません。
令和8年分の同じ本人受取の設例です。課税所得は表の仮定額です。所得控除は計算済みで変動せず、分離課税・税額控除・超高所得の特例はありません。令和8年分の設例の復興特別所得税は、基準所得税額の2.1%で1円未満切捨てです。課税所得は千円未満切捨てです。表は源泉税控除前です。
| 計算項目 | 年金なしの比較 | 年金あり |
|---|---|---|
| 所得控除後の課税所得 | 200万円 | 240万円 |
| 所得税の速算式 | 200万円×10%−97,500円 | 240万円×10%−97,500円 |
| 所得税 | 102,500円 | 142,500円 |
| 復興特別所得税 | 2,152円 | 2,992円 |
| 合計(源泉税控除前) | 104,652円 | 145,492円 |
表の合計から給与・公的年金・私的年金などの源泉徴収税額と予定納税額を差し引いて、申告全体の納付・還付を計算します。表の年金なしとの比較額を、そのまま追加納付額や還付額として使うことはできません。
この設例は所得控除後からの検算です。基礎控除などを引く前の所得から計算する場合は、対象年分と所得条件に合う控除を使います。計算の根拠は国税庁No.2260 所得税の税率とNo.2020 確定申告です。
住民税は翌年度の所得割を別に計算する
住民税は前年の所得を基に翌年度に計算されます。所得税と所得控除の額が異なるため、所得税の課税所得をそのまま使う計算にはしません。
同じ令和8年分の私的年金を使う令和9年度の設例は、課税年度の元日に東京23区内に住所がある居住者について、所得割の調整措置を適用せず、税額控除前所得割を特別区民税6%・都民税4%で計算します。所得控除後の課税所得を表のとおり別に仮定し、所得控除は変動しません。設例の課税所得に千円未満の端数はありません。
| 区分 | 所得割の計算 |
|---|---|
| 年金なしの比較 | 240万円×合計税率=24万円 |
| 年金あり | 280万円×合計税率=28万円 |
| 年金による増加 | 28万円−24万円=4万円 |
住民税の納付総額ではありません。調整控除などの税額控除、均等割、森林環境税は含めていません。私的年金から引かれた所得税の源泉税を、この住民税所得割から差し引くものでもありません。
非課税判定や所得に連動する保険料・扶養への影響も、上の所得割の増加だけでは判定できません。家族構成や自治体の条件は住民税非課税のボーダーで確認してください。
申告前に通知と他の所得をそろえる
源泉徴収の有無だけでは確定申告の要否は決まりません。年金の雑所得を整理したうえで、他の所得・所得控除・申告不要制度に照らします。
| 資料 | 確認すること |
|---|---|
| 保険証券・保険料の支払記録 | 実際の保険料負担者と受取人が同じか |
| 年金の支払通知など | 税引前の年金額、対応保険料、源泉徴収税額 |
| 給与や公的年金の源泉徴収票 | 私的年金以外の所得・源泉徴収税額 |
| 控除証明書など | 所得控除・税額控除に使う条件と金額 |
公的年金を受け取っている人も、私的保険年金の雑所得を公的年金等の収入へ混ぜません。公的年金の申告不要制度でいう「公的年金等以外の所得」の側を確認します。要件の全体は年金受給者の確定申告にまとめています。
申告の準備から提出までの流れは確定申告のやり方を参照してください。保険料を払った年の所得控除と、年金を受け取った年の必要経費は別の計算です。
保険料を支払った年の控除は生命保険料控除計算機へこの計算機は支払保険料の所得控除用です。受取年金の雑所得や、本記事の年間税額を計算するものではありません。
本人負担の私的保険年金を年金で受け取る場合、通知の年金額から対応保険料を差し引きます。総合課税の他の所得と合わせて年税額を計算し、源泉税は前払いとして精算します。翌年度の住民税は別に確認します。
よくある質問
個人年金に公的年金等控除は使えますか?
本人が保険料を負担して受け取る私的保険年金は、公的年金等以外の雑所得です。公的年金等控除を使う計算ではなく、年金額に対応する保険料・掛金を必要経費として差し引きます。
源泉徴収されていなければ申告不要ですか?
それだけでは決まりません。本人負担の私的年金で源泉徴収がなくても、雑所得を他の所得と合わせて申告要否を確認します。給与所得者や公的年金受給者の申告不要制度は、それぞれの要件によります。
対応保険料は払込保険料の総額ですか?
払込総額とは区別します。本人が保険料を負担して年金で受け取る私的保険年金の雑所得では、その年に受け取った年金額に対応する払込保険料・掛金を差し引きます。支払通知の対応保険料を確認します。
源泉徴収された税金は戻りますか?
申告全体で既納付税額が年間の税額を超えていれば、還付の対象です。還付申告書は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。ただし、期限内申告が要件となる特例は、還付申告でも法定申告期限までの提出が必要です。期間・手続は国税庁No.2030 還付申告を参照してください。
関連記事・ツール
出典
所得の区分と源泉徴収は国税庁No.1610、年間の精算はNo.2020を参照しています。
- 国税庁「保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金」:雑所得、対応保険料、源泉徴収、別人受取の扱い。
- 国税庁「相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係」:相続・贈与取得の別計算。
- 国税庁「所得税の税率」:課税所得の端数処理、速算表、復興特別所得税。
- 国税庁「手順4 税金の計算をする・復興特別所得税額」:復興特別所得税の端数処理。
- 国税庁「確定申告」、「還付申告」:年間の精算、申告不要制度、還付の期間。
- 東京都北区「個人住民税の構成」:特別区民税・都民税の所得割。
- 新宿区「納付のご案内」:前年所得への翌年度課税。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務・労務相談には応じられません。実際の判断は税務署・税理士にご確認ください。特定の商品・受取方法の推奨や投資助言を行うものではありません。