税金・経理・補助金ツールズ

覚書とは?契約書との違い・変更内容の書き方と経理の確認表

覚書は、当事者が合意した内容を記録する文書です。「契約書」より効力が弱いわけではなく、名称だけで契約の効力は変わりません。

既存の契約を変更するときは、原契約・変える条項・適用を始める日・当事者を対応させると、変更内容を追いやすくなります。この記事では、会社間の業務委託契約を例に、記載項目と経理への引継ぎを確認表で整理します。

下の表や文例は学習用の架空例です。法定の必須項目を網羅した様式や、個別の契約にそのまま使える完成書式ではありません。

覚書の記載項目と照合先

最初に原契約を手元に置き、変更する部分と残す部分を分けます。覚書だけ読んで分かることと、原契約と合わせて確認することを、次の表のように整理できます。

次の表は、会社間の既存契約を変更する場合の確認項目の例です。法律で一律に定められた様式ではなく、必要な記載や手続きは契約の種類・内容によって異なります。

項目書く内容の例照合するもの
表題業務委託契約の報酬変更に関する覚書変更の目的と表題が合っているか
当事者合意する会社の正式名称と締結する人原契約の当事者・今回の締結権限
原契約の特定原契約の締結日・名称・管理番号同名の別契約や更新版と取り違えていないか
変更対象変更する条項、別紙、対象業務原契約の該当箇所・別紙の版
変更内容変更前と変更後の条件、追加・削除の別報酬、税の表示、業務範囲、支払条件の整合
適用開始変更後の条件を適用する日・対象の提供分締結日、作業日、請求日、支払日の区別
変更しない事項今回変更しない部分は原契約の定めによる旨変更条項と他の条項が矛盾しないか
別紙と保管対象の別紙、締結した文書の保管先相手と同じ本文・同じ添付資料で合意したか

文化庁の「誰でもできる著作権契約マニュアル」は、合意内容を具体的に規定し、複雑な内容は別紙にまとめるなど、分かりやすくする工夫を示しています。上の表は、その考え方を契約変更の確認に使うための整理です。

原契約に「変更は当事者が署名した書面による」などの手続きがある場合は、その条項も確認対象です。先に社内決裁だけを終えても、相手との変更合意が済んだことにはなりません。

原契約を変更する架空の記載例

変更後の条件は、どの原契約の、どの条項を置き換えるのかが分かるように書きます。以下では、同じ業務を続けながら月額報酬を変更し、支払条件は変えない場面を想定します。

架空例:青葉企画株式会社が委託者、若葉事務サービス株式会社が受託者です。原契約は2026年4月1日付「事務支援業務委託契約書」で、報酬と支払条件を別の条項に定めている設定です。金額は消費税を含まない月額で、業務範囲は変更しません。

確認箇所架空例の設定・記載内容
原契約上記の事務支援業務委託契約書。管理番号は青葉側の契約台帳と照合
変更対象原契約の報酬条項にある月額報酬の定め
変更前受託者の報酬は月額12万円、消費税は別途
変更後受託者の報酬は月額15万円、消費税は別途
適用開始変更後の報酬は2026年11月1日以後の業務提供分に適用
締結日2026年10月28日に変更内容を合意して締結する設定
支払条件原契約の月末締め・翌月末払いを変更しない
その他この覚書で変更しない事項は原契約の定めによる

この架空例の変更内容は、「原契約の報酬条項に定める月額報酬を、変更後の報酬に置き換える」という対応です。実際に文案を確認する際は、「報酬条項」という説明を、原契約にある正確な条項の指定に置き換えます。

条項の一部を変えるのか、条項全体を差し替えるのかも区別します。例えば、報酬額だけを変えるつもりで支払条件を含む条項全体を書き換えると、締日や支払日まで変更したように読める文面になり得ます。

追加・削除・別紙の差替えも区別する

追加する場合は、追加先と追加する内容を示します。削除する場合は、削除対象を特定します。別紙を差し替える場合は、別紙の名称や作成日・版をそろえ、旧版と新版を取り違えない形で確認します。

「詳細は別紙のとおり」と書いたのに別紙を付け忘れると、何について合意したのかを追いにくくなります。本文と別紙をまとめた状態で確認し、相手に送った版と締結した版が同じかを見ます。

締結日・適用開始・請求月の分け方

締結日は合意して契約を結んだ日、適用開始は変更後の条件を使い始める時点です。経理へは、この区別に加えて「どの業務提供分から新条件か」を渡すと、請求月との取り違えを防ぎやすくなります。

原契約と変更内容を照合 当事者・条項・添付資料をそろえる 合意と適用開始を確認 締結日と業務の対象期間を分ける 請求・支払の設定を更新 変更後の条件と締結文書を引き継ぐ
既存契約を変更し、経理へ引き継ぐ手順の例

上の架空例は、変更後の報酬を2026年11月1日以後の業務提供分に適用し、各月の業務提供分を月末で締め、翌月初めに請求書を発行し、同じ月の末に支払う設定です。以下は日付の読み分けであり、法定の支払期限や休日の扱いを定める例ではありません。

場面架空例で確認すること
変更前の業務2026年10月の業務提供分は旧報酬。翌月の請求でも新報酬に置き換えない
変更後の業務2026年11月の業務提供分から新報酬。請求書の対象期間と照合する
変更前の請求・支払2026年10月提供分の請求書は2026年11月初めに発行し、同月末に支払う
変更後の請求・支払2026年11月提供分の請求書は2026年12月初めに発行し、同月末に支払う
経理への連絡報酬額、適用する業務提供分、変えない締日・支払条件をまとめて渡す

「来月から変更」では、作業する月、請求する月、支払う月のどれかが分かりません。「本覚書締結日から」だけでは、既に提供済みの業務をどう扱うかが残る場合もあります。対象期間や対象の発注を具体的に確認します。

過去にさかのぼる変更、月の途中の変更、既発行の請求書がある変更は、上の架空例では扱いません。適用範囲や精算方法を合意する必要があるため、締結日を実際と異なる日に書き換えて済ませず、契約担当者に確認します。

契約書・合意書との違いと原契約の関係

「覚書」「契約書」「合意書」は、題名だけで効力に序列が付くものではありません。文化庁の契約マニュアルも、これらの名称だけで契約の効力は変わらないと説明しています。

覚書は既存契約の変更以外にも使われますが、この記事は会社間の既存契約の変更を対象にしています。交渉途中の基本合意や、法的拘束力を持たせる範囲を別に定めた文書の効力は、ここでは判断しません。

「後の覚書が全部に優先する」と決めつけない

確認するのは日付の新旧だけではなく、何をどの範囲で変更する合意なのかです。原契約の変更条項や優先関係の定めを読み、変更する条項と関連する条項を対応させます。

今回変えない事項について原契約に従う旨を書いても、それだけで矛盾が解消するわけではありません。報酬に合わせて業務範囲を変えるなら、原契約の業務一覧や見積書との不一致も確認する対象になります。

過去の覚書がある場合は、それも並べます。原契約だけと比べて作ると、既に変更済みの条件を、古い条件から変更したように書いてしまうためです。現在の合意内容を確認してから、今回の変更を重ねます。

合意・押印・締結権限の確認

覚書を一方で作って送っただけでは、相手が変更を承諾したかは分かりません。民法522条は、契約内容を示した申込みに対して相手方が承諾したときに契約が成立すると定めています。

法令に特別の定めがある場合を除き、契約の成立に書面などの方式は必要ありません。ただし、合意が成立したかと、その内容を後から証明できるかは分けて考えます。法令の方式に加え、原契約に定めた変更手続きも確認します。

押印の有無だけで、変更合意の成立や有効性を断定しません。内容を承諾したことが分かる締結文書や送受信記録を、契約担当者の確認手順に沿って残します。

当事者の会社名と、合意する人の権限を見る

原契約の会社名と今回の会社名が違う場合は、誤記なのか、商号変更などの事情があるのかを確認します。別会社へ契約上の地位を移す話を、単なる担当者や宛名の変更として処理しないようにします。

代理人が締結する場合は、本人からその契約を結ぶ権限を与えられているかを、委任状などで確認します。文化庁の契約マニュアルの「契約の当事者になれるのは」にも、代理権の確認について説明があります。

社内での起案・承認の記録は、稟議書の記載項目と確認表で整理できます。社内の決裁と、取引先との合意・締結権限の確認を別々に残します。

覚書の収入印紙は内容で確認する

収入印紙の要否は「覚書」という名前では決まりません。紙の変更契約書については、原契約のどの事項を変更するのかを、文書の種類ごとの「重要な事項」と照らして確認します。

国税庁のNo.7127「契約内容を変更する文書」は、重要な事項を変更する文書は課税文書となり、重要な事項を含まない場合は課税文書に該当しないと説明しています。同じページの取扱い・具体例まで読んで区分を確認します。

「金額を変えないから印紙不要」「原契約と同じ印紙を貼ればよい」とは限りません。原契約が複数の号の文書に該当する場合には、変更する重要な事項に応じて変更契約書の所属を決めるためです。

例えば、国税庁の同ページには、工事代金の支払方法を変更する覚書を、請負に関する契約書として扱う例があります。「支払方法の変更なら軽微なので印紙不要」と一括りにはできません。

このページでは架空例の印紙税額を判定しません。原契約と変更文書をそろえ、課税区分・記載金額を確認してから、印紙税の早見表へ進みます。迷う場合の確認先は税務署・税理士です。

印紙税の早見表で文書の区分・税額を確認する

締結後の保管と経理への引継ぎ

締結後は、覚書を原契約と過去の変更文書に結び付けて保管します。経理には新しい条件だけでなく、対象の業務提供分と締結済み文書の場所も渡すと、請求書の確認へつなげられます。

以下はこの記事の架空例を社内で引き継ぐ際の確認表です。法定の保存要件や保存年限の一覧ではありません。

引き継ぐもの確認する内容
契約一式原契約・過去の覚書・今回の締結済み覚書・対象の別紙
適用範囲どの業務提供分・発注から変更後の条件になるか
請求確認変更後の報酬、税抜・税込の別、締日と支払条件
社内記録承認記録、更新した契約台帳、担当部署と連絡先
残る確認未合意の精算や対象期間の疑問を、確定した条件と混ぜない

契約台帳の「更新日」を書き換えるだけでは、どの請求から新条件か分からなくなります。旧条件の終了と新条件の開始を追える記録にし、締結前の案と締結済みの文書を区別します。

変更後の請求書は、請求書の記載項目も合わせて確認できます。覚書があることと、請求書の対象期間・金額がその合意に合っていることを、別の確認として扱います。

覚書を確認するときの要点

原契約を特定し、変更箇所と適用開始を対応させます。当事者と締結権限を確認し、合意後は原契約・覚書・別紙をまとめて経理へ引き継ぎます。

よくある質問

覚書と契約書は何が違いますか?

名称だけで契約の効力は変わりません。覚書という表題で既存契約の変更内容をまとめることもできます。実際の効力は合意した内容や適用される法令などによるため、題名だけで判断しません。

覚書には何を書けばよいですか?

既存契約の変更なら、当事者、原契約、変更する条項と変更後の条件、適用開始、変更しない事項などを具体的に確認します。この記事の確認表は記載例であり、法定の必須事項を網羅した様式ではありません。

覚書を送れば契約内容は変わりますか?

送付したことだけで、相手の承諾があったとは判断できません。相手との変更合意を確認し、法令の特別な方式や原契約で定めた変更手続きも確認します。

締結日と適用開始日は同じでなければいけませんか?

この記事の架空例では、変更を合意して締結する日と、新しい報酬を適用する業務提供分を分けています。実際の文書では、どの期間・取引に適用する合意かを明確にし、過去分や既発行の請求書の扱いが残る場合は契約担当者に確認します。

金額が変わらない覚書なら印紙は要りませんか?

金額が変わらないことだけでは決まりません。紙の変更契約書が、文書の種類ごとの重要な事項を変更する内容かを確認します。原契約が複数号に該当するときは、変更内容に応じた所属の確認も必要です。

次に読む

出典

確認表・図・会社名・日付・報酬は、契約変更の照合を説明するための例です。公的機関の制定様式ではありません。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務・労務相談には応じられません。個別契約の効力や文案は弁護士へ、印紙税の判断は税務署・税理士へご確認ください。

この内容をXで共有