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請求書の書き方 — 出す義務を定めた法律は無い。それでも支払期限・時効・保存は条文で動く

結論から言うと、請求書の書式を定めた法律はなく、請求書を出せと命じる条文もありません。契約は口頭でも成立し(民法522条2項)、代金を払う義務は請求書が届いたから生じるのではなく、契約で決めた期限が来たときに生じます(民法412条1項)。請求書は法的には「履行の請求」という行為を紙やPDFにしたもので、書き方は商慣行の側にあります。

ところが「書き方は自由」で済まないのが請求書の面倒なところです。支払期限を書かなかった請求書は、届いた時から相手を遅滞に陥らせます(412条3項)。払われなければ年3%の遅延損害金を損害の証明なしに請求でき(419条・404条)、一方で請求書を送り続けても時効は止まりません。催告で止まるのは6か月だけで、2通目以降の催告には効力がありません(150条)。消費税法は57条の4で「請求書、納品書その他これらに類する書類」をインボイスの器として名指しし、保存の条文は法人と青色申告者の列挙に「請求書」という語が無く、白色申告者の列挙にだけ在るという、見積書・納品書と鏡像の構造をしています。

この記事は、先に実務で書く項目を記入例つきで示し、そのあとで「その項目が条文のどこに効くか」を民法・消費税法・税法の保存規定・印紙税法・電子帳簿保存法の順に整理します。インボイスの記載事項6項目そのものの解説は 領収書の書き方インボイス制度とは が持っているので、本記事では表1枚にまとめて譲ります。

実務で書く項目と記入例 — 条文が効く項目はどれか

請求書に書く項目は、商慣行として書くものと、条文の効き方から書いておかないと後で困るものに分かれます。まず全体を表にします。

項目位置づけ理由・根拠
宛名(相手の氏名・名称)インボイスなら必須消費税法57条の4第1項6号。簡易インボイス(2項)には宛名の号が無い
発行者の氏名・名称と登録番号インボイスなら必須同1項1号。免税事業者は登録番号が無いので書けない
取引年月日(または対象期間)インボイスなら必須同1項2号。月まとめ請求は「一定の期間」でよい
取引の内容(軽減税率の対象ならその旨)インボイスなら必須同1項3号
税率ごとに区分した合計額と適用税率インボイスなら必須同1項4号。税抜・税込どちらでもよいが税率ごとに分ける
税率ごとの消費税額等インボイスなら必須同1項5号。端数処理は税率ごとに1回(端数処理の記事
発行日・請求書番号商慣行法定ではないが、納品書と2枚で1つのインボイスにするときは番号で相互参照する(納品書の記事
支払期限実質的に必須書かないと民法412条3項で「請求を受けた時」から遅滞=届いた瞬間が期限になる。取適法の取引は受領日から60日が上限(3条)
振込先・振込手数料の負担商慣行(ただし影響あり)売手負担は取適法の取引では違反になりうる(振込手数料の勘定科目)。実際の金額は銀行・口座区分で異なる(銀行別 振込手数料一覧
源泉徴収税額任意(書く義務は無い)所得税法204条の義務は支払者側。ただし報酬と消費税を区分して書くと税抜で源泉できる(国税庁No.6929)
押印不要民法522条2項。印紙税の通則5も署名を欠く文書を契約書に含めうるとするので、押印の有無で税が決まるわけではない

記入例として、デザイン業を営む個人事業主(適格請求書発行事業者)が、法人の顧客にロゴ制作費を請求する場合を置きます。デザインの報酬は所得税法204条1項1号の源泉徴収の対象なので、請求書で報酬と消費税を区分しておくと、支払側は税抜の10万円を基礎に源泉徴収できます。

記載欄記入例効いている条文
宛名株式会社○○ 御中消費税法57条の4第1項6号
発行者△△デザイン事務所 登録番号 T1234567890123同1項1号
発行日・請求書番号2026年8月31日 No.2026-0831-01商慣行
取引年月日・内容2026年8月20日 ロゴデザイン制作一式同1項2号・3号
税抜合計・税率100,000円(10%対象)同1項4号
消費税額等10,000円同1項5号
税込合計110,000円
源泉所得税(参考)10,210円(100,000円×10.21%)所得税法204条・No.6929
差引お振込額99,790円
支払期限・振込先2026年9月30日まで ○○銀行○○支店 普通 1234567 ※振込手数料は貴社負担でお願いします民法412条1項(確定期限)

源泉所得税の行を請求書に書くかどうかは自由です。ただ、報酬10万円と消費税1万円を区分せず「110,000円」とだけ書くと、支払側は原則どおり税込110,000円に10.21%を掛けて11,231円を源泉徴収することになります(後述の 源泉徴収 の節)。区分して書くかどうかで、手元に振り込まれる額が1,021円変わります。

締め日と支払条件から支払期日を一覧で出す(支払サイト計算ツール)

請求書を出せと命じる法律は無い。それでも「請求」は民法で意味を持つ

まず前提です。契約の成立に書面は要りません。民法522条2項がこう定めています。

契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

請求書についても同じで、作成・交付を義務づける一般法はありません。見積書(見積書の書き方)や納品書(納品書とは)と同じく、様式も記載事項も商慣行で決まっています。

ただし請求書には、見積書・納品書と決定的に違う点が1つあります。「請求」という行為そのものが民法の条文に出てくることです。期限を決めていない債務は、相手から履行の請求を受けた時に遅滞に陥ります(412条3項・次節)。時効の完成を止める催告も、典型的には請求書の送付です(150条・後述)。請求書は税法上の書類であると同時に、民法上の意思表示を記録した文書でもあります。書式が自由なのは条文が無関心だからではなく、効き方が民法・消費税法・税法の保存規定・印紙税法・電子帳簿保存法に散らばっているからです。

支払期限は請求書が決めるのではない — 取適法は受領日から60日

「請求書が届いていないから払わなくていい」という言い方は、民法の構造とは合いません。支払義務がいつ遅滞になるかは412条が3つに分けて定めています。

債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

契約や発注書で「月末締め翌月末払い」のように期限が決まっていれば、その期限が来た時点で遅滞です。請求書が届いたかどうかは条文の要件に入っていません。請求書が効いてくるのは、期限を決めていなかった場合です。

債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

つまり支払期限を書かない請求書は、相手に届いた時が支払期限です。「支払期限を空欄にしておけば相手に猶予を与えた」のではなく、逆に、届いた瞬間から遅滞の責任を負わせる文書になります。実務で支払期限を必ず書くのは、相手への親切というより、いつから遅滞なのかを双方で揃えるためです。

取適法(旧下請法)の取引は、請求書の有無と関係なく受領日から60日製造委託・情報成果物作成委託・役務提供委託などで資本金の要件に当たる取引は、令和8年1月1日から「中小受託取引適正化法」と呼ばれる法律(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)の3条が支払期日を縛ります。起算点は請求書の到着日ではなく給付の受領日で、検査をするかどうかも問いません。
製造委託等代金の支払期日は、委託事業者が中小受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日(役務提供委託又は特定運送委託の場合にあつては、中小受託事業者からその委託に係る役務の提供を受けた日。以下同じ。)から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

しかも支払期日を決めていなかった場合や60日を超えて決めていた場合は、同条2項が期日を「みなし」で置きます。

製造委託等代金の支払期日が定められなかつたときは委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日が、前項の規定に違反して製造委託等代金の支払期日が定められたときは委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過した日の前日が、それぞれ製造委託等代金の支払期日と定められたものとみなす。

この法律では発注側(委託事業者)に、発注の時点で代金の額・支払期日・支払方法などを書面か電磁的方法で明示する義務があります(4条1項、公正取引委員会規則で8項目)。支払条件は受託側が請求書に書いて提案するものではなく、発注側が先に示しておくものです。改正点の全体と、フリーランス法との違いは 下請法が「中小受託取引適正化法」に に整理してあります。

納品・役務提供 取適法は ここから60日 請求書を送る 期限の定めが無ければ 届いた時から遅滞(412条3項) 支払期限 確定期限なら 到来で遅滞(412条1項) 遅延損害金 年3%(419条・404条) 催告(督促状) 6か月だけ完成猶予 2回目は効かない(150条) 5年で時効 知った時から (166条1項1号) 請求書は「履行の請求」と「催告」の証拠になるが、それ自体が時効を止め続ける効力は持たない
請求書をめぐる民法上の時系列。支払期限を決める主語は契約(または取適法)で、請求書は期限の定めが無いときに遅滞の起点になり、時効に対しては6か月の猶予を1回だけ与える。

払われなかったら — 遅延損害金は年3%、損害の証明は要らない

支払期限を過ぎても払われない場合、金銭債務には民法419条の特則があります。

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。

法定利率は404条2項が年3パーセントと定め、同条3項で3年ごとに見直される変動制になっています。どの期の利率が適用されるかは「遅滞の責任を負った最初の時点」で固定されるので、支払期限がいつだったかが利率の選択にも直結します。請求書に「支払期限を過ぎた場合は年14.6%の遅延損害金を申し受けます」のような約定利率を書いておけば、419条1項ただし書きでそちらが優先します。

取適法の取引では、遅延利息の率が法律と公正取引委員会規則で決まっています。6条1項がこう定め、率は令和7年公正取引委員会規則第9号で年14.6パーセントです。

委託事業者は、製造委託等代金の支払期日までに製造委託等代金を支払わなかつたときは、中小受託事業者に対し、中小受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過した日から支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に公正取引委員会規則で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。

起算点が「支払期日の翌日」ではなく「受領した日から起算して六十日を経過した日」である点に注意が要ります。支払期日を受領日から30日と決めていても、遅延利息は60日経過日から走ります。

請求書を送り続けても時効は止まらない — 催告は1回6か月だけ

売掛金のように「権利を行使することができることを知った時」がはっきりしている債権は、166条1項1号の5年で時効にかかります。

債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

請求書や督促状の送付は、民法では「催告」に当たります。催告があると時効は6か月間は完成しませんが、その猶予の間にもう一度催告しても、2回目には効力がありません。150条の1項と2項です。

催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

したがって「毎月請求書を送り直しているから時効は来ない」という理解は条文と合いません。催告で稼げるのは6か月が1回きりで、その間に裁判上の請求や相手の承認(一部入金など)といった別の手段に進まなければ、時効は完成します。請求書の控えと送付記録は、この催告の日付を証明する資料として意味を持ちます。

消費税法が「請求書」を名指しする2か所 — 30条9項と57条の4

民法の外で請求書が最も強く効いているのは消費税法です。「請求書」という語が出てくる中心は2か所あります。1つは仕入税額控除の保存要件である30条で、7項が帳簿と「請求書等」の保存を控除の条件にし、9項がその「請求書等」を定義しています。

事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。

買い手の側から見ると、受け取った請求書は「控除のための保存書類」です。もう1つが売り手の義務を定めた57条の4で、1項が適格請求書(インボイス)の器として「請求書、納品書その他これらに類する書類」を名指ししています。

次に掲げる事項を記載した請求書、納品書その他これらに類する書類(以下第五十七条の六までにおいて「適格請求書」という。)の交付を求められたときは、当該課税資産の譲渡等に係る適格請求書を当該他の事業者に交付しなければならない。

ここで3つ、実務で効く点があります。第一に、交付義務は「交付を求められたとき」に生じるので、インボイスは常に発行しなければならないものではありません。第二に、条文は「請求書」という表題を要件にしていないので、納品書でも、納品書と請求書の2枚合わせでも、記載事項を満たせば適格請求書になります。第三に、記載事項に誤りがあれば直すのは発行側の義務です(4項)。

適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付した適格請求書発行事業者は、これらの書類の記載事項に誤りがあつた場合には、これらの書類を交付した他の事業者に対して、修正した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付しなければならない。

受け取った側が請求書に手書きで追記して直す運用は、条文が想定している形ではありません。発行側には写し(または電磁的記録)の保存義務もあります(6項)。記載事項6項目の中身、簡易インボイスに宛名の号が無いこと、返還インボイスが1万円未満なら不要なことは、領収書の書き方インボイス制度とは に譲ります。登録番号の形式チェックは インボイス登録番号チェック で機械的に確かめられます。

免税事業者の請求書には登録番号が無い登録番号は適格請求書発行事業者にしか付かないので、免税事業者が発行する請求書はインボイスになりません。買い手側は経過措置(80%控除、令和8年10月からは50%)の対象として処理することになります。免税事業者側で「消費税」という行を立ててよいかは条文上の禁止はありませんが、区分して書けば次節のとおり源泉徴収の基礎が変わります。

源泉徴収 — 請求書に書く義務は無いが、書き方で税額が変わる

原稿料・デザイン料・講演料、弁護士・税理士・社労士などへの報酬を個人に支払うときは、支払う側が所得税を源泉徴収します。所得税法204条1項の義務を負うのは「支払をする者」で、請求書に源泉税額を書く義務は受け取る側にありません。

居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

それでも請求書の書き方が源泉徴収の額を変えます。国税庁タックスアンサー No.6929 は、源泉徴収の対象は原則として消費税込みの金額だとしたうえで、請求書等で報酬の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、消費税等を除いた報酬の額だけを対象としても差し支えないとしています。同ページの具体例は、税理士報酬110,000円とだけ書かれた請求書なら110,000円の10.21%で11,231円、報酬100,000円・消費税等10,000円と区分されていれば100,000円の10.21%で10,210円、というものです。

つまり報酬と消費税を区分して書くかどうかで、源泉徴収される額が1,021円変わり、手取りの振込額がその分変わります。区分して書く方が受け取る側に有利で、支払う側の事務も変わりません。No.6929 の注記は、適格請求書発行事業者でない(免税事業者の)請求書でも、区分されていれば報酬の額だけを対象にしてよいとしています。外注費と給与の区分や、源泉徴収の対象になる報酬の範囲は 外注費と給与の区分 に整理してあります。

保存 — 法人と青色の列挙に「請求書」が無く、白色にだけ在る

請求書の保存期間は「7年」と説明されることが多いのですが、根拠条文を並べると期間も、そもそも「請求書」という語が在るかどうかも、主体ごとに違います。まず法人(青色申告法人)の保存書類を定める法人税法施行規則59条1項3号です。

取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し

ここに「請求書」という語はありません。白色の法人を定める67条1項1号も、個人の青色申告者を定める所得税法施行規則63条1項3号も、電子帳簿保存法2条5号の「取引情報」の定義も、同じ「注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」という列挙です。請求書は「その他これらに準ずる書類」として読み込まれます。一方、個人の白色申告者を定める所得税法施行規則102条3項2号だけが請求書を名指ししています。

その年において法第二百三十二条第一項に規定する業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書その他これらに類する書類(自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものは、当該写しを含む。)

見積書の記事で確認した「白色の列挙にだけ見積書が無い」、納品書の記事で確認した「白色の列挙にだけ納品書が在る」と、請求書も同じ鏡像の構造です。保存義務があること自体はどの主体でも変わりませんが、期間は次のとおり分かれます。

主体・法律期間起算日根拠
法人(青色・白色とも)7年事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日法人税法施行規則59条1項・2項、67条2項
個人・青色申告者5年(請求書は現金預金取引等関係書類ではないため)翌年3月15日の翌日所得税法施行規則63条1項かっこ書き・4項
個人・白色申告者5年翌年3月15日の翌日所得税法施行規則102条4項
消費税(仕入税額控除の請求書等)7年受領日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日消費税法施行令50条1項
株式会社の「事業に関する重要な資料」10年会計帳簿の閉鎖の時会社法432条2項

個人の青色申告者が5年になるのは、63条1項のかっこ書きが書類の種類で期間を分けているためです。

起算日から七年間(第三号に掲げる書類のうち、現金預金取引等関係書類に該当する書類以外のものにあつては、五年間)

領収書は現金や預金の動きに際して作られるので7年側、請求書は通常そうではないので5年側に入ります。ただし仕入税額控除の根拠として受け取った請求書には消費税法施行令50条1項の7年が重なるので、「個人は5年」で請求書を捨てると消費税側の保存要件が欠けます。

当該請求書等についてはその受領した日(同条第九項第二号に掲げる電磁的記録並びに前条第七項及び第十項の電磁的記録にあつては、これらの電磁的記録の提供を受けた日)の属する課税期間の末日の翌日から二月(清算中の法人について残余財産が確定した場合には一月とする。次項及び第三項において同じ。)を経過した日から七年間

株式会社にはさらに会社法432条2項があります。

株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。

条文は書類名を列挙していないので、請求書の控えがここに含まれるかは解釈の問題ですが、会計帳簿の記帳の裏付けになった請求書を10年保存する運用は条文より安全側です。商人一般についても商法19条3項に同じ10年の規定があります。法人の7年も、欠損金の繰越控除を受ける事業年度の帳簿書類は法人税法施行規則26条の3で10年に延びます。

印紙は要らない。ただし「領収しました」と書いた瞬間に17号文書

請求書に収入印紙は不要です。印紙税法2条が課税の対象を別表第一に掲げる文書に限っており、請求書はそこに掲げられていないためです。

別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。

注意が要るのは、別表第一の第17号が「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」を課税物件にしていて、その定義が文書の表題ではなく売上代金として受け取った金銭の受取書という内容で書かれていることです。請求書の様式に「上記金額を領収いたしました」という欄を設けて代金受領後に交付すると、その文書は表題が請求書でも内容は受取書なので、受取金額5万円以上なら印紙が要ります(5万円未満は非課税物件欄で非課税)。請求書と領収書を1枚で兼ねる様式を使うときは、ここだけ意識しておくとよいと思います。金額ごとの税額は判定機で確かめられます。

収入印紙がいくら必要かを判定する(全20号の印紙税額一覧つき)

PDFで送った請求書は「電子取引」

メールにPDFを添付して請求書を送った場合、電子帳簿保存法2条5号の「電子取引」に当たります。

取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。

定義が「受領し、又は交付する」と両方向なので、受け取ったPDF請求書だけでなく、自社が送ったPDF請求書も対象です。同法7条により、所得税・法人税の保存義務者は電子取引の取引情報をデータのまま保存することになります。紙に印刷して保存するだけでは要件を満たしません。検索要件の満たし方と猶予措置は 電子帳簿保存法をわかりやすく、索引簿の作り方は 電帳法の索引簿テンプレート に整理してあります。

よくある質問

Q. 請求書に決まった書式や法定記載事項はありますか?

A. 請求書一般については、ありません。民法522条2項が契約の成立に書面その他の方式を要しないと定めており、請求書の作成・交付を義務づける一般法もないためです。ただし、その請求書を消費税の適格請求書(インボイス)として使うなら、消費税法57条の4第1項の6項目(発行者の氏名・名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとに区分した合計額と適用税率、税率ごとの消費税額等、相手の氏名・名称)を記載する必要があります。書式が自由なのは「一般の請求書」であって、インボイスとしての記載事項は条文で決まっています。

Q. 支払期限を書き忘れた請求書は、いつが期限になりますか?

A. 契約や発注書で期限が決まっていればその期限です(民法412条1項)。決まっていなければ、412条3項により相手が履行の請求を受けた時、つまり請求書が届いた時から遅滞の責任を負います。書き忘れたことで相手に猶予が生まれるのではなく、逆に届いた時点が期限になります。取適法の対象取引では、3条2項により支払期日を定めなかったときは受領日が支払期日とみなされます。

Q. 請求書を送り続けていれば、売掛金の時効は止まりますか?

A. 止まりません。請求書や督促状の送付は民法150条の催告に当たり、その時から6か月間は時効が完成しませんが、同条2項によりその猶予期間中にした再度の催告には効力がありません。売掛金は166条1項1号により権利を行使できることを知った時から5年で時効にかかるので、6か月の猶予の間に裁判上の請求や相手の承認(一部入金など)といった別の手段に進む必要があります。

Q. 遅延損害金は何パーセント請求できますか?

A. 約定が無ければ法定利率で、民法404条2項が年3パーセントと定め、3年ごとに見直される変動制です。どの時点の利率を使うかは419条1項により債務者が遅滞の責任を負った最初の時点で決まります。419条2項により損害の証明は要りません。請求書や契約書に約定利率を書いていればそちらが優先します(419条1項ただし書き)。取適法の対象取引では6条と公正取引委員会規則で年14.6パーセントと決まっており、起算点は受領日から60日を経過した日です。

Q. 請求書に源泉所得税の額を書く必要はありますか?

A. 書く義務はありません。所得税法204条1項の源泉徴収義務を負うのは支払をする者です。ただし、国税庁タックスアンサー No.6929 により、請求書等で報酬の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には消費税等を除いた報酬の額だけを源泉徴収の対象としてよいとされているので、報酬と消費税を分けて書くと源泉徴収される額が減ります。同ページの例では、税理士報酬110,000円と一括で書くと11,231円、100,000円と消費税等10,000円に分けて書くと10,210円です。

Q. 請求書は何年保存すればよいですか?

A. 法人は7年(法人税法施行規則59条1項・67条2項、起算日は事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日)、個人の青色申告者は5年(所得税法施行規則63条1項かっこ書き。請求書は現金預金取引等関係書類に当たらないため)、白色申告者も5年(同102条4項)です。ただし仕入税額控除の根拠として受け取った請求書は消費税法施行令50条1項で7年の保存が別に要るので、個人でも結果的に7年残すことになります。株式会社は会社法432条2項の10年も関わります。

Q. 免税事業者が請求書に消費税を書いてもよいですか?

A. 消費税法に、免税事業者が請求書に消費税相当額の行を立てることを禁じる条文はありません。ただし登録番号が無いので、その請求書は57条の4の適格請求書にはならず、受け取った側は仕入税額控除の経過措置で処理することになります。国税庁タックスアンサー No.6929 の注記は、適格請求書発行事業者以外の請求書でも報酬と消費税等が区分されていれば報酬の額だけを源泉徴収の対象としてよいとしているので、区分して書くことには源泉徴収の面で意味があります。

Q. 請求書と領収書を1枚で兼ねる様式にしてもよいですか?

A. 様式は自由なので可能です。ただし印紙税法別表第一の第17号は「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」を表題ではなく内容で課税物件としているので、代金受領後に領収の旨を記載して交付した文書は、表題が請求書でも受取書として扱われ、受取金額が5万円以上なら印紙が必要になります。請求の段階で交付する請求書そのものには印紙は不要です。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

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