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納品書とは?出す義務のない書類が、条文には名指しで登場する

結論から言うと、納品書の作成や交付を義務づける法律はありません。納めた品物の内容を買い手に知らせるための書類で、出すかどうかは契約と商慣行で決まります。ところが条文の世界で納品書が無視されているかというと逆で、消費税法57条の4は「請求書、納品書その他これらに類する書類」と、適格請求書(インボイス)になれる書類として納品書を名指ししています。

そして義務は「出す側」ではなく「もらった側」に発生します。取引に関して受け取った書類には税法上の保存義務があり、期間は法人7年(欠損金の繰越しをする事業年度分は10年)・個人5年。インボイスの一部として仕入税額控除に使うなら、消費税側の7年も重なります。さらに下請取引(2026年1月からは「中小受託取引」)では、発注側に受領の記録を作って2年保存する義務が別にあります。この記事は、その根拠条文を1つずつ確かめて整理します。

納品書を「出せ」と命じる法律は無い

取引で使う書類には、法律が交付を命じているものと、そうでないものがあります。給与明細は所得税法231条が「交付しなければならない」と命じる義務の書類で、領収書は民法486条により支払う側から請求されたら出す義務が生じます。これに対して納品書は、所得税法・法人税法・消費税法のどこを探しても、作成や交付を命じる条文が出てきません。

書類出す義務根拠
給与明細あり(支払の際に交付)所得税法231条(給与明細の見方
領収書請求されたら、あり民法486条(領収書の書き方
見積書原則なし(建設業は見積りの義務あり)建設業法20条(見積書の書き方
納品書なし命じる条文が無い
適格請求書登録事業者が交付を求められたら、あり消費税法57条の4第1項(次の章)
契約で決めれば契約上の義務にはなる
法律の義務が無いことと、出さなくてよいことは別です。基本契約書や発注書に「納品書を添付する」と定めていれば、それは契約上の債務になります。実務では検収や支払照合の起点になる書類なので、契約に交付条件を書いておくのが通常です。

それでも消費税法は「納品書」を名指ししている

納品書という名前が法律の本文に登場する代表例が、適格請求書(インボイス)を定義する消費税法57条の4第1項です。適格請求書発行事業者の義務を定めるこの条文は、次のように書いています(……は省略)。

適格請求書発行事業者は、国内において課税資産の譲渡等……を行つた場合……において、当該課税資産の譲渡等を受ける他の事業者……から次に掲げる事項を記載した請求書、納品書その他これらに類する書類……の交付を求められたときは、当該課税資産の譲渡等に係る適格請求書を当該他の事業者に交付しなければならない。

ここから読み取れることが2つあります。第一に、適格請求書とは書類の題名ではなく、記載事項で決まるということ。「請求書、納品書その他これらに類する書類」と並べているとおり、条文は納品書という形式を請求書と同格に扱っています。6つの記載事項(登録番号・年月日・内容・税率ごとの対価の額と適用税率・消費税額等・交付先の氏名又は名称。号の数は条文の木構造から機械的に数えたもの)を満たせば、題名が「納品書」でもそれは適格請求書です。この「題名ではなく記載事項」という考え方は領収書の書き方で整理したものと同じです。

第二に、交付義務が発生するのは「交付を求められたとき」だということ。つまり納品書そのものに交付義務は無く、買い手からインボイスを求められた登録事業者に、何らかの書類(納品書という形でもよい)を交付する義務が生じる、という構造になっています。

なお、交付した適格請求書には発行側にも写しの保存義務があります(同条6項)。

適格請求書、適格簡易請求書若しくは適格返還請求書を交付し、又はこれらの書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を提供した適格請求書発行事業者は、政令で定めるところにより、これらの書類の写し又は当該電磁的記録を保存しなければならない。

保存期間は消費税法施行令70条の13第1項が定めており、交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間です。納品書をインボイス(の一部)として交付するなら、その写しはこの7年の対象になります。

納品書と請求書、2枚合わせて1つのインボイスにできる

実務でいちばん多い形は、取引の都度出す納品書と、月締めの請求書の組み合わせです。このとき、1枚の書類だけで6つの記載事項をすべて満たす必要はありません。国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(令和8年5月改訂)問65は、交付された複数の書類相互の関連が明確であり、取引内容を正確に認識できる方法 — 例えば請求書に納品書番号を記載する — で交付されていれば、複数の書類の全体で適格請求書の記載事項を満たすと整理しています(根拠は消費税法基本通達1-8-1)。

納品書(取引の都度) ・年月日(記載事項②) ・品名と数量(記載事項③) ・納品書番号 No.0013 金額や登録番号はここに無くてもよい 請求書(月締め) ・登録番号(記載事項①) ・税率ごとの額と税額(④⑤)・宛名(⑥) ・対象: 納品書No.0013ほか 番号で納品書と紐づける 相互の関連が明確 2枚の全体で1つの適格請求書(基通1-8-1)
納品書と請求書の役割分担。番号で紐づければ、2枚の全体で1つの適格請求書として扱える(国税庁Q&A問65の整理)。

逆方向の集約が「納品書兼請求書」です。1枚に6つの記載事項をすべて載せてしまう形で、題名ではなく記載事項で決まる以上、これも問題ありません。都度取引で締め請求をしない事業なら、書類を1種類に減らせます。

受け取った側で気を付けたいのは登録番号です。番号の記載があっても、実在しない番号や失効した番号では仕入税額控除の要件を満たしません。手元の納品書・請求書の番号は、次のツールでまとめて形式を検証できます。

インボイス登録番号チェック — 受け取った納品書・請求書のT+13桁をまとめて検証します

出す義務はなくても、もらったら捨てられない

納品書に関する義務の中心は、実は保存です。法人税法施行規則59条1項3号は、青色申告法人が保存すべき書類をこう列挙しています。

取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し

よく読むと、このリストに「納品書」の語はありません。列挙されているのは注文書・契約書・送り状・領収書・見積書の5つで、納品書は「その他これらに準ずる書類」として受け止められる構造です。個人の青色申告者について定める所得税法施行規則63条1項3号もほぼ同じ文言で、やはり納品書の名指しはありません。

ところが白色申告の個人について定める所得税法施行規則102条3項2号は、書きぶりが違います。

その年において法第二百三十二条第一項に規定する業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書その他これらに類する書類(自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものは、当該写しを含む。)

白色申告の条文だけが「納品書」を名指しし、代わりに見積書と注文書・契約書がリストから消えています。青色・法人のリストには見積書があって納品書が無く、白色のリストには納品書があって見積書が無い — 2つのリストは鏡像のようにずれています。見積書の書き方で「白色の個人だけ、条文の書類リストに見積書が無い」ことを確かめましたが、納品書では名指しの有無がちょうど逆向きに出ます。どちらのリストにも「その他これらに準ずる書類」(白色は「その他これらに類する書類」)という受け皿があるので、名指しの有無で保存義務の結論は変わりませんが、条文を引くときにこの違いを知らないと「リストに無いから対象外」と読み違えます。

条文誰の話か「納品書」の名指し「見積書」の名指し
法人税法施行規則59条1項3号法人なし(準ずる書類)あり
所得税法施行規則63条1項3号青色申告の個人なし(準ずる書類)あり
所得税法施行規則102条3項2号白色申告の個人ありなし(類する書類)
電子帳簿保存法2条5号電子取引の定義なし(準ずる書類)あり

保存期間は「誰が」と「何に使うか」で変わる

同じ納品書でも、保存期間を決める時計は1つではありません。まず法人税・所得税側の原則です。所得税法施行規則63条1項は、青色申告の個人についてこう定めます(……は省略)。

次に掲げる帳簿及び書類を整理し、起算日から七年間(第三号に掲げる書類のうち、現金預金取引等関係書類に該当する書類以外のものにあつては、五年間)……

納品書は3号の書類なので、個人は原則5年(現金の収受・払出しに際して作成されたものは7年)。白色申告も規則102条4項が書類を5年と定めています。法人は規則59条1項が3号書類も含めて7年で、欠損金の繰越しをする場合は規則26条の3第1項により、その欠損金額が生じた事業年度の帳簿書類を10年保存する必要があります。

これに消費税の時計が重なります。受け取った納品書がインボイス(の一部)として仕入税額控除の根拠になっているなら、消費税法30条7項の「帳簿及び請求書等」の保存が控除の条件で、期間は施行令50条1項が定めます(……は省略)。

法第三十条第一項の規定の適用を受けようとする事業者は、同条第七項に規定する帳簿及び請求書等を整理し、……当該請求書等についてはその受領した日……の属する課税期間の末日の翌日から二月……を経過した日から七年間、これを納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存……をしなければならない。
立場期間起算日根拠
法人7年(欠損金の繰越しをする事業年度分は10年)事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日法人税法施行規則59条・26条の3
個人(青色)5年(現金預金取引等関係書類は7年)受領した年の翌年3月15日の翌日所得税法施行規則63条
個人(白色)5年同上(63条4項を準用)所得税法施行規則102条4項
インボイスの一部として控除に使う場合7年受領日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日消費税法30条7項・施行令50条1項
発行側の写し7年交付日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日消費税法57条の4第6項・施行令70条の13
「個人は5年」で捨てると消費税側が欠ける
課税事業者の個人が納品書をインボイスの一部として保存している場合、所得税側の5年が過ぎても消費税側の7年が残っています。時計は短い方ではなく長い方に合わせるのが安全です。なお起算日も税目で違い、個人の所得税側は受領した年の翌年3月15日の翌日、消費税側は課税期間の末日の翌日から2月を経過した日です。

下請取引だけは「受領の記録」が法律の義務

納品書そのものに交付義務が無いのに対し、下請取引では発注側(委託事業者)に、納品を受けた記録を作って保存する義務があります。旧下請法 — 2026年1月1日施行の改正で題名が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称: 中小受託取引適正化法・取適法)に変わりました — の7条です(……は省略)。

委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、公正取引委員会規則で定めるところにより、中小受託事業者の給付、給付の受領……、製造委託等代金の支払その他の事項について記載し又は記録した書類又は電磁的記録……を作成し、これを保存しなければならない。

記載すべき事項は同法7条の公正取引委員会規則(令和7年公正取引委員会規則第10号)2条が定めており、受領した給付の内容とその受領日が含まれます。保存期間は同規則3条です。

書類等は、その記載又は記録をすべき事項の全部の記載又は記録をした日から二年間、保存しなければならない。

つまり、受託側が納品書を出す義務はここにもありませんが、発注側は「いつ・何を受領したか」を記録する義務を負うため、実務では受託者の納品書がその記録の素材になります。改正で何が変わったか(適用基準への従業員数の追加・手形の扱いなど)は下請法と取適法・フリーランス法の整理で扱っています。

PDFで受け取った納品書は「電子取引」

メールでPDFの納品書を受け取ると、電子帳簿保存法の「電子取引」に当たります。同法2条5号の定義です。

取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。

ここでも列挙に納品書の語は無く、「準ずる書類」で受ける構造です。電子取引に当たると、同法7条により取引情報を電磁的記録のまま保存する必要があります(印刷して紙だけ残す運用は原則できません)。検索要件などの実務は電子帳簿保存法をわかりやすく検索要件の作り方に譲ります。ファイル名や索引簿の付け方は索引簿テンプレートが使えます。

実務で書く項目 — 法定の様式は無い

納品書に法定の様式や必須記載事項はありません。実務では、発行者名・宛名・納品日・品名・数量・単価・金額・納品書番号あたりを載せるのが通常ですが、これは照合と検収のための実務要件です。役割分担で考えると整理しやすくなります。

請求書・領収書・送り状・受領書との違い

取引の流れに沿って並べると、それぞれの書類の役割と義務の有無が見えます。

見積書 取引の前 注文書 発注 納品書 納品と同時 請求書 締め後 領収書 支払後 義務なし (建設業は別) 義務なし (下請取引は明示義務) 義務なし (受領の記録は発注側の義務) 義務なし (求められたらインボイス) 請求されたら義務 (民法486条) どの書類も、受け取った側には税法上の保存義務がある(法規則59条ほか)
取引の流れと5つの書類。交付を法律が直接命じる書類はこの中に無いが、受け取った側の保存義務は全書類に共通する。
書類出す人役割納品書との違い
請求書売り手支払を求める納品書は「何を納めたか」、請求書は「いくら払ってほしいか」。月締めなら複数の納品書を1枚の請求書が束ねる
領収書売り手受領した金銭の証明時点が違う(納品時と支払後)。領収書だけは民法486条で請求権がある
送り状売り手(運送側)荷物の内容表示実務上ほぼ同じ役割で、税法の書類リストで名指しされているのはむしろ送り状
受領書(物品受領書)買い手受け取ったことの証明向きが逆。納品書は売り手→買い手、受領書は買い手→売り手

よくある質問

Q. 納品書の発行は法律上の義務ですか?

A. 義務ではありません。作成・交付を命じる条文は所得税法・法人税法・消費税法のいずれにもありません。ただし、契約書で交付を定めていれば契約上の義務になりますし、買い手からインボイスの交付を求められた適格請求書発行事業者は、消費税法57条の4第1項により何らかの書類(納品書という形でもかまいません)を交付する義務を負います。

Q. 納品書は請求書の代わりになりますか?

A. 記載事項次第でなります。消費税法57条の4は適格請求書になれる書類を「請求書、納品書その他これらに類する書類」と定めており、題名ではなく記載事項で決まります。登録番号・年月日・内容・税率ごとの対価の額と適用税率・消費税額等・宛名の6項目が載っていれば、納品書だけでも適格請求書として通用します。

Q. 納品書兼請求書は認められますか?

A. 認められます。1枚で記載事項6項目をすべて満たす形で、複数書類方式(納品書+請求書)の逆方向の集約です。都度取引で締め請求をしない事業なら書類を1種類に減らせます。

Q. 受け取った納品書はいつまで保存しますか?

A. 法人は7年(欠損金の繰越しをする事業年度の分は10年)、個人は青色・白色とも原則5年です。ただしその納品書をインボイスの一部として仕入税額控除の根拠にしているなら、消費税法施行令50条1項により7年の保存が要ります。長い方に合わせて保存するのが安全です。

Q. 納品書に金額を書かなくても違法ではありませんか?

A. 違法ではありません。納品書には法定の様式も必須記載事項も無いので、贈答や直送で金額の無い納品書を同梱するのは普通の運用です。その場合、税率ごとの対価の額など金額に関する記載事項は請求書側で満たすことになります。

Q. PDFで届いた納品書は印刷して保存すればよいですか?

A. 印刷だけでは足りません。メール添付のPDFなどで受け取る納品書は電子帳簿保存法2条5号の「電子取引」に当たり、同法7条により電磁的記録のまま保存する必要があります。日付・金額・取引先で検索できる状態にしておく要件もあります。詳しくは電子帳簿保存法の解説記事で整理しています。

Q. 納品書と受領書はどう違いますか?

A. 向きが逆です。納品書は売り手が買い手に「これを納めました」と知らせる書類、受領書は買い手が売り手に「確かに受け取りました」と証明する書類です。なお下請取引(中小受託取引)では、受け取った側(発注側)に受領日などを記録して2年保存する義務があります。

Q. 白色申告でも納品書の保存は必要ですか?

A. 必要です。むしろ条文上「納品書」を名指ししているのは白色申告の規定(所得税法施行規則102条3項2号)だけで、受領した納品書は5年間の保存対象です。青色申告・法人の条文には納品書の語がありませんが、「その他これらに準ずる書類」として同じく保存義務があります。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の税務相談ではありません。個別のケースについては税理士等の専門家にご相談ください。

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