労災の休業補償 — 「8割」は1つの給付ではない。60%は請求、20%は申請、最初の3日は会社が払う
結論から言うと、労災で休んだときに支給されるのは、給付基礎日額の80%です。ただし休んだ初日からではなく、4日目からです。
そして、この「80%」を1つの給付だと思っていると、実務で必ずどこかで詰まります。80%は、根拠法令の違う2つの制度を足した数字だからです。60%は労働者災害補償保険法14条1項の休業補償給付という保険給付で、残りの20%は特別支給金支給規則3条1項の休業特別支給金——こちらは保険給付ではなく、労災保険法29条1項の社会復帰促進等事業として支給されるものです。条文の動詞まで違っていて、保険給付は「請求」、特別支給金は「申請」と書き分けられています。
もう1つ、給与計算の担当者が見落としやすいのが最初の3日間(待期期間)です。ここは労災から1円も出ません。業務災害であれば会社が労働基準法76条の休業補償(平均賃金の60%)を行うことになりますが、通勤災害には、会社の補償責任についての法令上の規定がありません。つまり同じ「労災」でも、最初の3日の扱いが正反対になります。この記事では、条文と厚生労働省のリーフレットの両方から、金額・待期・手続・税金の扱いを整理します。
いくら出るのか(結論と早見表)
支給の要件は3つです。厚生労働省のリーフレットは「①業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養のため、②労働することができないため、③賃金を受けていない、という3要件を満たす場合に、その第4日目から、休業(補償)等給付と休業特別支給金が支給されます」としています。
単一の事業場で働いている人の場合
- 休業補償給付(業務災害)・休業給付(通勤災害)= 給付基礎日額の 60% × 休業日数
- 休業特別支給金 = 給付基礎日額の 20% × 休業日数
- 合計 80%。ただし支給されるのは休業4日目から
給付基礎日額ごとの1日あたりの金額は次のとおりです。
| 給付基礎日額 | 休業補償給付(60%) | 休業特別支給金(20%) | 1日あたり合計(80%) |
|---|---|---|---|
| 6,000円 | 3,600円 | 1,200円 | 4,800円 |
| 8,000円 | 4,800円 | 1,600円 | 6,400円 |
| 10,000円 | 6,000円 | 2,000円 | 8,000円 |
| 12,000円 | 7,200円 | 2,400円 | 9,600円 |
| 15,000円 | 9,000円 | 3,000円 | 12,000円 |
| 20,000円 | 12,000円 | 4,000円 | 16,000円 |
なお、事業主が同一でない複数の事業場に同時に使用されている複数事業労働者の場合は、複数の就業先に係る給付基礎日額に相当する額を合算した額を土台にして、同じく60%と20%を計算します。
「8割」の正体 — 根拠の違う2つの給付
1階部分は休業補償給付です。労働者災害補償保険法14条1項が、日数の起算と率をまとめて定めています。
休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする。
2階部分が休業特別支給金です。こちらは労災保険法本体ではなく、労働者災害補償保険特別支給金支給規則という厚生労働省令の3条1項にあります。
その額は、一日につき休業給付基礎日額(法第八条の二第一項又は第二項の休業給付基礎日額をいう。以下この項において同じ。)の百分の二十に相当する額とする。
ここが競合の解説で落ちやすい一段
特別支給金は保険給付ではありません。労災保険法29条1項は、政府が「社会復帰促進等事業として、次の事業を行うことができる」として、2号に「被災労働者の療養生活の援護……その他被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業」を挙げています。休業特別支給金はこの枠組みの中で支給されるもので、保険給付の一覧(12条の8第1項が並べる療養補償給付・休業補償給付・障害補償給付・遺族補償給付・葬祭料・傷病補償年金・介護補償給付の7つ)には入っていません。この区別は、あとで見る課税の根拠のところで効いてきます。
条文の言葉づかいも揃っていません。保険給付について労災保険法12条の8第2項は「補償を受けるべき労働者若しくは遺族又は葬祭を行う者に対し、その請求に基づいて行う」としているのに対し、特別支給金支給規則3条1項は「当該労働者に対し、その申請に基づいて支給するものとし」と書いています。実務では同じ様式に両方を書いて同時に出すため意識されにくいのですが、法律上は別々の行為です。
最初の3日間は労災から出ない
14条1項が「第四日目から」と書いているとおり、休業の1日目から3日目までは労災保険の支給対象外です。この3日間を待期期間といいます。では、その3日間は誰が払うのか。厚生労働省のリーフレットが正面から答えています。
なお、休業の初日から第3日目までを待期期間といい、この間は業務災害の場合、事業主が労働基準法の規定に基づく休業補償(1日につき平均賃金の60%)を行うこととなります。ただし、複数業務要因災害・通勤災害の場合には、事業主の補償責任についての法令上の規定はありません。
業務災害の場合の根拠は労働基準法76条1項です。
労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。
4日目以降にこの義務が消えるのは、労働基準法84条1項が「この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法……に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる」と定めているからです。労災から出る期間は会社が免れ、労災から出ない待期3日は免れない——という切り分けになっています。
通勤災害の3日間は、原則として誰からも出ない
労働基準法の災害補償は業務上の負傷・疾病を対象にした制度なので、通勤災害には及びません。上のリーフレットが「事業主の補償責任についての法令上の規定はありません」と書いているのはそのためです。通勤災害で休んだ場合、最初の3日間は、会社が任意の制度(法定外の上乗せ補償や有給休暇の充当など)を持っていない限り、無給になり得ます。
例外的な救済もあります。厚生労働省のリーフレットは、事業場の廃止または事業主の行方不明後に疾病の発生が確定した場合などで待期期間(3日間)について労働基準法に基づく休業補償を受けられないときに、休業補償特別援護金として休業補償給付の3日分に相当する額を支給する、としています。会社が倒産・消滅していて労基法76条の請求先が事実上なくなっているケースの受け皿です。
なお、この待期3日の帯にはお金とは別の義務がもう1つ乗っています。労働安全衛生規則97条の労働者死傷病報告です。同条1項は報告の引き金を「死亡し、又は休業したとき」としており、休業日数の下限を置いていません。つまり休業が1日でも報告義務は生じ、4日という数字は報告の要否ではなく、遅滞なく出すか四半期ごとにまとめて出すかという提出経路を分けているだけです。労災保険から給付が出ない1〜3日は、会社にとって「労基法76条の休業補償を払い、かつ報告も出す」帯になります。詳しくは労働者死傷病報告の記事で扱っています。
給付基礎日額は「平均賃金」。月給÷30ではない
労災保険法8条1項は「給付基礎日額は、労働基準法第十二条の平均賃金に相当する額とする」と定めています。そしてその労働基準法12条1項は次のとおりです。
この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。
ここで間違えやすいのが分母です。「その期間の総日数」であって、労働日数ではありません。暦の日数で割ります。月給制の人を「月給÷30」で計算すると、多くの場合ずれます。
月給30万円・賃金締切日が月末・5月1日に被災した場合
- 直前の賃金締切日から起算した3か月=2月・3月・4月
- 賃金総額 300,000円 × 3 = 900,000円
- 総日数(うるう年でない年)28+31+30 = 89日
- 平均賃金 = 900,000 ÷ 89 = 約10,112円(「月給÷30」の10,000円ではない)
逆に、3か月が5月・6月・7月(31+30+31=92日)にかかる人なら 900,000 ÷ 92 = 約9,783円となり、こちらは「月給÷30」より低く出ます。同じ月給でも、被災した時期によって給付基礎日額は変わります。この差は小さくありません。9,783円と10,000円の差217円は、80%で27日分なら約4,700円になります。
時給制・日給制・出来高払制の人には最低保障があります。労働基準法12条1項1号は、賃金総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60を下回ってはならないとしています。暦日数で割ると極端に低くなる働き方への手当てです。平均賃金そのものの計算については休業手当の記事で詳しく扱っています。
1年6か月を過ぎると計算の前提が変わる
労災保険法8条の2第2項は、休業補償給付等を支給すべき事由が生じた日が療養を開始した日から起算して1年6か月を経過した日以後である場合に、年齢階層ごとの最低限度額・最高限度額を適用すると定めています。裏を返せば、療養開始から1年6か月以内の期間には、この年齢階層別の上限・下限は適用されません。長期療養のケースで「去年と同じ日額のはずなのに変わった」というときは、まずここを疑います。あわせて8条の2第1項2号には、四半期ごとの平均給与額が10%を超えて変動した場合に日額を改定するスライドの仕組みも置かれています。
実際に計算してみる
給付基礎日額10,000円の人が、業務災害で30日間連続して休み、その間まったく賃金を受けなかった場合を計算します。
| 区分 | 日数 | 単価 | 金額 | 払う人 |
|---|---|---|---|---|
| 待期期間の休業補償(労基法76条) | 3日 | 10,000円 × 60% = 6,000円 | 18,000円 | 会社 |
| 休業補償給付(労災法14条1項) | 27日 | 10,000円 × 60% = 6,000円 | 162,000円 | 労災保険 |
| 休業特別支給金(支給規則3条1項) | 27日 | 10,000円 × 20% = 2,000円 | 54,000円 | 労災保険 |
| 合計 | 30日 | — | 234,000円 | — |
30日分の賃金を10,000円 × 30 = 300,000円とすると、受け取れるのは 234,000円=78.0% です。「労災は8割出る」と言われますが、待期3日が60%止まりなので、30日休んだときの実際の割合は80%をやや下回ります。休業期間が短いほどこの差は大きくなります。
同じ条件で通勤災害だった場合は、会社が払う18,000円がありません。
| 災害の種類 | 待期3日 | 4日目以降27日 | 合計 | 30日分の賃金に対する割合 |
|---|---|---|---|---|
| 業務災害 | 18,000円(会社) | 216,000円 | 234,000円 | 78.0% |
| 通勤災害 | 0円(法令上の規定なし) | 216,000円 − 200円 | 215,800円 | 71.9% |
通勤災害の200円は一部負担金です。厚生労働省のリーフレットは「通勤災害により療養給付を受ける場合は、初回の休業給付から一部負担金として200円(日雇特例被保険者については100円)が減額されます」としています。窓口で現金を払うのではなく、初回の給付から差し引かれる形です。
業務外の病気・けがなら、健康保険の傷病手当金です → 傷病手当金 計算機一部だけ働いた日・通院した日
「午前中だけ通院して午後は出社した」という日も、賃金を受けない部分について対象になります。厚生労働省のリーフレットは「例えば通院のため、労働者が所定労働時間のうち一部を休業した場合は、給付基礎日額から実際に労働した部分に対して支払われる賃金額を控除した額の60%に当たる額が支給されます」としています。労災保険法14条1項ただし書がこれを部分算定日と呼んでいます。
給付基礎日額10,000円・その日の実労働に対する賃金4,000円のとき
- 控除後の額 = 10,000 − 4,000 = 6,000円
- 休業補償給付 = 6,000 × 60% = 3,600円
- 休業特別支給金 = 6,000 × 20% = 1,200円(支給規則3条1項ただし書も同じ控除後の額を使う)
- その日の受取合計 = 4,000(賃金)+ 3,600 + 1,200 = 8,800円
ここで注意したいのは、控除するのは「給付基礎日額の60%」からではなく、「給付基礎日額」からだという点です。先に60%を掛けてから賃金を引く(10,000 × 60% − 4,000 = 2,000円)と、金額が大きくずれます。条文は控除を先、率を後の順で書いています。
請求の手続と、2年の時効
請求書の様式は災害の種類で分かれます。
| 災害の種類 | 請求書 | 様式 |
|---|---|---|
| 業務災害・複数業務要因災害 | 休業補償給付・複数事業労働者休業給付支給請求書 | 様式第8号 |
| 通勤災害 | 休業給付支給請求書 | 様式第16号の6 |
提出先は所轄の労働基準監督署長です(会社経由でも本人からでも構いませんが、請求書には事業主の証明欄があります)。休業が長期にわたる場合は1か月ごとの請求が一般的です。休業特別支給金の支給申請は、原則として休業(補償)等給付の請求と同時に行うことになっており、様式も同一です。前述のとおり法律上は別の行為ですが、書類としては1枚で足ります。
時効の起算点が独特なので、経理・労務の担当者は押さえておく価値があります。
休業(補償)等給付は、療養のため労働することができないため賃金を受けない日ごとに請求権が発生します。その翌日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅しますのでご注意ください。
「休業が終わってから2年」でも「事故の日から2年」でもなく、1日ごとに請求権が立ち、日ごとに時効が進みます。長期の休業を後からまとめて請求しようとすると、古い日から順に落ちていくことになります。
添付書類は、同一の事由で障害厚生年金・障害基礎年金等を受けている場合の支給額を証明する書類、所定労働時間の一部について休業した日が含まれる場合の別紙2、複数事業労働者の場合の別紙1〜別紙3などです。なお第2回目以降の請求が離職後である場合には、事業主による請求書への証明は必要ありません。
税金の扱い — 非課税の根拠は1本ではない
受け取った側で所得税がかかるかどうかは、どのお金かによって根拠条文が変わります。ここが、この記事でいちばん経理寄りの一段です。
まず休業補償給付。労災保険法12条の6が公課を禁じています。
租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として課することはできない。
次に、待期3日について会社が払う労働基準法76条の休業補償。これは労災保険からの給付ではないので12条の6は使えません。根拠は所得税法9条1項3号イと、それを受けた所得税法施行令20条1項2号です。同号は非課税とされる給付として次を挙げています。
労働基準法第八章(災害補償)の規定により受ける療養の給付若しくは費用、休業補償、障害補償、打切補償又は分割補償(障害補償に係る部分に限る。)
労働基準法76条は第八章(災害補償)に置かれた条文なので、ここに当たります。会社から払うお金ですが、給与として源泉徴収する性質のものではありません。賃金台帳・源泉徴収簿の作り方に直接効いてくる点です。
12条の6が名指ししているのは「保険給付」である
もう一度、12条の6の文言を見てください。公課を課すことができないとされているのは「保険給付として支給を受けた金品」です。前述のとおり休業特別支給金は保険給付ではありません(社会復帰促進等事業として支給されるもので、12条の8第1項の保険給付の列挙にも入っていません)。したがって、この条文の文言はそのままの形では特別支給金に及びません。休業特別支給金の課税上の取扱いについては、本記事では一次情報を確認できていないため断定を避けます(末尾の確認範囲を参照してください)。
会社側の経理では、待期3日の休業補償は法定の災害補償として費用計上します。労災保険から労働者本人に直接支払われる休業補償給付・休業特別支給金は、会社の帳簿を通りません(会社が立て替えて後で受け取る形にしていない限り、会社の収益にも費用にもなりません)。労災保険料そのものの経理は労災保険料率の記事で扱っています。
間違えやすい点
| よくある思い込み | 実際 |
|---|---|
| 労災なら8割が初日から出る | 出るのは4日目から。1〜3日目は待期期間で労災の対象外 |
| 8割は1つの給付 | 60%(保険給付)+20%(特別支給金)の二階建て。根拠法令が違う |
| 待期3日はどの労災でも会社が払う | 業務災害だけ。通勤災害・複数業務要因災害には事業主の補償責任についての法令上の規定がない |
| 給付基礎日額は月給÷30 | 労働基準法12条の平均賃金。分母は暦の総日数で、被災した時期によって変わる |
| 一部働いた日は「60%−賃金」 | 「(給付基礎日額−賃金)×60%」。控除が先、率が後 |
| 休業が終わってから2年が時効 | 賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年。古い日から順に消える |
| 業務中のけがでも健康保険で受診できる | 業務災害・通勤災害の療養に健康保険は使えない。通勤災害の記事を参照 |
| 休業手当(労基法26条)と休業補償は似たもの | まったく別の制度。休業手当は使用者の責に帰すべき事由による休業に対するもので、災害補償ではない |
よくある質問
Q. 労災の休業補償は結局いくらもらえますか?
A. 休業4日目から、給付基礎日額の80%(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)が休業日数分支給されます。給付基礎日額が10,000円なら1日あたり8,000円です。最初の3日間は労災の対象外で、業務災害であれば会社が労働基準法76条の休業補償(平均賃金の60%)を行うことになります。したがって30日休んだ場合の合計は、業務災害で234,000円、30日分の賃金300,000円に対して78.0%という計算になります。
Q. なぜ最初の3日間は労災から出ないのですか?
A. 労働者災害補償保険法14条1項が「第四日目から支給するものとし」と定めているためです。この3日間は待期期間と呼ばれます。業務災害については労働基準法76条1項の使用者の休業補償義務が残り、厚生労働省のリーフレットも「この間は業務災害の場合、事業主が労働基準法の規定に基づく休業補償(1日につき平均賃金の60%)を行うこととなります」としています。4日目以降に会社の義務が消えるのは、労働基準法84条1項が労災保険から相当する給付が行われるべき場合に使用者は補償の責を免れると定めているからです。
Q. 通勤災害でも最初の3日は会社が払ってくれますか?
A. 法令上の義務としてはありません。厚生労働省のリーフレットは「複数業務要因災害・通勤災害の場合には、事業主の補償責任についての法令上の規定はありません」と明記しています。労働基準法の災害補償は業務上の負傷・疾病を対象とした制度だからです。会社が独自に法定外の上乗せ補償を設けている場合や、年次有給休暇を充てる場合を除いて、通勤災害の最初の3日間は無給になり得ます。
Q. 給付基礎日額はどうやって決まりますか?
A. 労働者災害補償保険法8条1項により、原則として労働基準法12条の平均賃金に相当する額です。平均賃金は、算定すべき事由の発生した日以前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額です。分母は労働日数ではなく暦の総日数なので、月給を30で割った金額とは一致しません。時給制・日給制・出来高払制の場合は、賃金総額を実際に労働した日数で割った金額の100分の60という最低保障があります。
Q. 通院のため半日だけ休んだ日はどう計算しますか?
A. 給付基礎日額から、その日に実際に労働した部分に対して支払われる賃金額を控除した額に、60%を掛けます。休業特別支給金も同じ控除後の額に20%を掛けます。給付基礎日額10,000円でその日の賃金が4,000円なら、控除後の6,000円に対して休業補償給付3,600円・休業特別支給金1,200円となり、賃金と合わせて8,800円です。先に60%を掛けてから賃金を引くのではない点に注意が必要です。
Q. 請求はどの様式を使いますか。特別支給金は別に申請するのですか?
A. 業務災害・複数業務要因災害は様式第8号(休業補償給付・複数事業労働者休業給付支給請求書)、通勤災害は様式第16号の6(休業給付支給請求書)を、所轄の労働基準監督署長に提出します。休業特別支給金の支給申請は原則として休業(補償)等給付の請求と同時に行うこととされており、様式も同一です。法律上は保険給付が「請求」、特別支給金が「申請」と書き分けられていますが、書類としては1枚で足ります。
Q. 何年前の分までさかのぼって請求できますか?
A. 休業(補償)等給付の請求権は、療養のため労働することができず賃金を受けない日ごとに発生し、その翌日から2年を経過すると時効により消滅します。休業期間全体に対してまとめて2年が進むのではなく、1日ごとに独立して進むため、長期の休業を後からまとめて請求しようとすると古い日から順に時効にかかります。
Q. 休業補償給付に所得税はかかりますか?
A. 労働者災害補償保険法12条の6が「租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として課することはできない」と定めています。待期3日について会社が支払う労働基準法76条の休業補償についても、所得税法9条1項3号イと同法施行令20条1項2号が労働基準法第八章(災害補償)の規定により受ける休業補償を非課税の給付として挙げています。なお12条の6が名指ししている対象は条文上「保険給付」であり、休業特別支給金は保険給付ではないため、特別支給金の取扱いについて本記事では断定していません。
Q. 会社が労災を認めてくれない場合はどうなりますか?
A. 労災保険の給付を決定するのは労働基準監督署長であって、会社ではありません。請求書には事業主の証明欄がありますが、事業主が証明しない場合でも、その旨を申し出たうえで請求すること自体は可能とされています。業務上と認められるかどうかの判断は個別の事情によるため、所轄の労働基準監督署に相談してください。
Q. 待期期間の3日分すら受けられないケースはありますか?
A. 事業場の廃止または事業主の行方不明後に疾病の発生が確定した場合など、待期期間の3日間について労働基準法に基づく休業補償を受けられない場合には、休業補償特別援護金として休業補償給付の3日分に相当する額が支給される取扱いがあります。会社が消滅していて労働基準法76条の請求先が事実上なくなっているケースの受け皿です。
出典
- e-Gov法令検索「労働者災害補償保険法」(昭和22年法律第50号)第8条第1項、第8条の2第1項・第2項、第12条の6、第12条の8第1項・第2項、第14条第1項、第22条の2、第29条第1項
- e-Gov法令検索「労働者災害補償保険特別支給金支給規則」(昭和49年労働省令第30号)第3条第1項
- e-Gov法令検索「労働基準法」(昭和22年法律第49号)第12条第1項・第2項、第76条第1項、第84条第1項
- e-Gov法令検索「所得税法施行令」(昭和40年政令第96号)第20条第1項第2号
- 厚生労働省「休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続」(リーフレット)
- 厚生労働省「労災保険制度の概要、給付の請求手続等」
本記事の確認範囲は、労働者災害補償保険法上の休業補償給付・休業給付と、特別支給金支給規則上の休業特別支給金、および待期期間についての労働基準法76条の休業補償です。休業特別支給金の課税上の取扱い、待期期間の3日が連続していなければならないかどうか、年齢階層別の最低・最高限度額および休業給付基礎日額のスライド率の具体的な額、傷病補償年金への切替え(1年6か月経過後)、障害厚生年金・障害基礎年金との併給調整率(14条2項)、第三者行為災害における損害賠償との調整、および特別支給金と損害賠償の関係を扱った裁判例は確認していません。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。業務上・通勤によるものと認められるかどうか、給付基礎日額がいくらになるかは、就業の実態や賃金の支払われ方といった個別の事情によって結論が変わります。実際の請求や認定については所轄の労働基準監督署へ、賃金台帳・源泉徴収の処理については顧問の社会保険労務士・税理士へご確認ください。