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労働者死傷病報告 — 「休業4日未満なら報告不要」は誤り。様式第23号はもう存在しない

結論から言うと、労働者死傷病報告は「休業が4日以上のときだけ出すもの」ではありません。労働安全衛生規則97条1項が報告義務の引き金として書いているのは「死亡し、又は休業したとき」であって、休業日数の下限はどこにも書かれていません。休業1日でも報告義務があります。

では条文に出てくる「4日」は何かというと、報告がいるかいらないかの境目ではなく、報告の出し方が2つに分かれる境目です。休業4日以上なら「遅滞なく」1件ずつ、4日未満なら四半期ごとにまとめて翌月末日までに出します。同じ「4日」でも、労災保険の休業補償給付が第4日目から出るという話とは別の条文の、別の目的の4日です。ここが混ざると「3日休んだだけだから労災保険も使わないし報告もいらない」という、二重に誤った結論に着地します。

もうひとつ、実務書やネット記事の多くがまだ更新できていない点があります。報告に使う様式第23号・第24号は、すでに労働安全衛生規則から削除されています。令和6年3月18日厚生労働省令第45号が令和7年1月1日に施行され、97条は、電子情報処理組織を使用して所定の事項を所轄労働基準監督署長に報告する、という書き方に変わりました。紙が禁止されたわけではありませんが、紙が許されている根拠も「様式第23号」ではなく、附則が置いた「当分の間」の経過措置です。この記事では、条文がいま何をどう求めているのかを、報告の範囲・出し方・罰則・保険料への影響・経理側の実務の順に整理します。

報告義務の引き金は「死亡し、又は休業したとき」。日数の下限は無い

まず条文そのものを見ます。労働安全衛生規則97条1項の書き出しは次のとおりです。

事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒(以下「労働災害等」という。)により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

「死亡し、又は休業したとき」とあるだけで、「4日以上休業したとき」とは書かれていません。1日でも休業が生じれば、この条文の適用対象に入ります。「軽いけがだから」「本人が労災を使わないと言っているから」は、報告義務を外す理由になりません。

誤解が生まれる理由もはっきりしています。4日という数字は、この条文の2項に出てくるからです。多くの解説が1項と2項をまとめて「4日以上は遅滞なく、4日未満は四半期ごと」と書くところ、途中を省略して「4日以上は報告する」だけが残り、裏返して「4日未満は報告しない」と読まれてしまう。条文の構造としては、1項で全部を拾ってから、2項が一部の出し方を変えているという関係です。

「休業」は暦日で数える日ではなく、働けなかった日

休業に当たるかどうかは、所定労働日に負傷等のために労働できなかったかどうかで見ます。したがって、けがをしたのが金曜で、土日が所定休日で、月曜から通常どおり出勤したという場合、休業日として数える日が無いこともあります。逆に、出勤はしたが医師の指示で通常の業務に就けず、賃金が支払われない日があるようなケースは判断が分かれます。境界のケースは自分で決めず、所轄の労働基準監督署に事実関係を伝えて確認してください。

「4日」は2つの経路の分かれ目。四半期報告の期限は翌月末日

97条2項が、休業4日未満の場合の出し方を定めています。

前項の場合において、休業の日数が四日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間における当該事実について、それぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、電子情報処理組織を使用して、同項各号(第九号を除く。)に掲げる事項及び休業日数を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

読み取れることは3つあります。第一に、「同項の規定にかかわらず」であって「報告を要しない」ではないこと。免除ではなく、出し方の差し替えです。第二に、期限は四半期の最後の月の翌月末日であること。1月から3月に起きた分は4月30日まで、4月から6月の分は7月31日まで、というように動きます。第三に、報告する内容が1項と少し違い、第9号(休業見込期間又は死亡日時)を除いたうえで、実際の休業日数を書くこと。四半期がすでに終わっているので、見込みではなく確定した日数を書くという理屈です。

休業の日数いつ出すか報告する内容
死亡した場合遅滞なく97条1項各号(12項目)
4日以上遅滞なく97条1項各号(12項目)
1日以上3日以下四半期ごと・最後の月の翌月末日まで97条1項各号のうち第9号を除く11項目+休業日数
0日(休業なし)この報告は不要
就業中・事業場内の負傷等が起きた 死亡した、または休業した? いいえ はい この報告は不要 休業は4日以上か? 1〜3日 → 四半期ごと 最後の月の翌月末日まで 4日以上・死亡 → 遅滞なく
労働安全衛生規則97条1項・2項から作図。分岐は「報告するかしないか」ではなく「どちらの経路で出すか」で分かれている。

様式第23号・第24号は削除された。条文が求めているのは12の事項

いま労働安全衛生規則の様式の一覧を最後まで読むと、「様式第二十三号及び第二十四号」の行には削除とだけ書かれています。この2つは、長らく労働者死傷病報告の書式として使われてきたものです。条文上の様式としては、もう存在しません。

代わりに97条1項が本文で12の号を並べ、そこに書くべき事項を直接列挙しています。号の数は条文の木構造から数えて12個です(第一号から第十二号まで、枝番号はありません)。内容をまとめると次のようになります。

報告する事項
1号労働保険番号(建設工事の請負人の労働者の場合は元方事業者の労働保険番号)
2号事業の種類、事業場の名称・所在地・電話番号
3号常時使用する労働者の数
4号建設工事の場合は当該工事の名称
5号構内で作業する請負人の労働者の場合は当該事業場の名称
6号建設工事の請負人の労働者の場合は元方事業者の事業場の名称
7号派遣労働者の場合は派遣先・派遣元のいずれかの別と、派遣先事業場の名称・郵便番号
8号被災した労働者の氏名・生年月日・年齢・性別・職種・その職種の経験期間・傷病の名称と部位
9号休業見込期間、または死亡日時
10号外国人の場合は国籍・地域の名称と在留資格の区分(外交・公用の在留資格の者と特別永住者を除く)
11号発生日時、発生場所の所在地、発生状況、その略図、原因
12号報告年月日、事業者および報告者の職氏名

この並びを見ると、報告が求めているものの性格が分かります。11号の「発生状況及びその略図並びに原因」が中心で、その周りに、誰が被災したのか(8号・10号)、どういう指揮命令の下にいた人なのか(4号から7号)、どの規模の事業場で起きたのか(3号)という情報が置かれています。監督署は個々の会社を責めるためではなく、同種の災害がどこで繰り返されているかを把握するためにこれを集めています。略図と原因を「転倒したため」の一行で済ませると、報告としての用をなしません。

7号と10号は、書き漏らすと後から効いてくる項目です

7号は派遣労働者について、報告している事業者が派遣先か派遣元かの別を書かせます。派遣労働者が被災した場合、派遣先と派遣元の双方に報告義務があるという運用が長く行われてきた背景があり、「うちは派遣先だから派遣元が出すはず」と互いに思って両方が出さない、という抜け方があり得ます。10号は外国人労働者の国籍と在留資格で、条文の本文に明記された事項です。技能実習生や特定技能の労働者が被災したときに空欄で出すと、そこだけ差し戻される原因になります。

電子申請が原則、紙は「当分の間」の経過措置

97条1項・2項はどちらも「電子情報処理組織を使用して」報告すると書いています。これを入れたのが令和6年3月18日厚生労働省令第45号で、その附則1条は「この省令は、令和七年一月一日から施行する。」としています。令和7年1月1日以降、条文上の原則は電子申請です。

では紙はどうなったのか。同じ附則の3条が、次のように書いています。

事業者は、当分の間、第五条の規定による改正後の労働安全衛生規則(以下「新安衛則」という。)第九十七条第一項に規定する方法による同項の報告に代えて、同項各号に掲げる事項を記載した書面により当該報告をすることができる。

4条が同じことを2項の四半期報告について定めています。つまり紙で出すことはいまも認められています。ただし、ここが実務で効いてくる点なのですが、紙の根拠は「様式第23号を使うこと」ではなく「同項各号に掲げる事項を記載した書面」であることです。求められているのは様式番号ではなく、12項目が書かれていることです。

そしてこれは「当分の間」の経過措置です。期限は書かれていませんが、経過措置である以上、いつか終わることが予定されています。手元に古い様式第23号の用紙が残っている、あるいは社内の手順書が「様式第23号に記入して提出」で止まっている会社は、いまのうちに電子申請の手順に切り替えておくほうが安全です。切り替えの実務としては、報告を出す担当者のアカウントと、1号の労働保険番号・3号の常時使用する労働者の数を誰が持っているかを、事故が起きる前に決めておくことが要になります。事故の当日に「IDが分からない」で止まるのがいちばん困ります。

対象の範囲 — 労災保険の請求とは連動しない

97条1項が対象にしているのは「労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒」です。この書き方から、次の2つが読み取れます。

ひとつは、対象が労災保険の給付対象と一致しないということ。条文は労働災害を「その他」で受ける形に書いており、労働災害を例として挙げたうえで、就業中または事業場内等における負傷・窒息・急性中毒という、より広い範囲を指しています。労災保険の給付を請求するかどうか、業務上と認定されるかどうかは、この報告の要否を決めていません。本人が健康保険で治療した、会社が治療費を負担した、というケースでも報告義務は消えません。

もうひとつは、通勤の途中で起きた災害は、この条文の書き方からは外れて読めるということです。通勤途上は「就業中」でも「事業場内若しくはその附属建設物内」でもないためです。通勤災害は労災保険の給付対象ではありますが、それと労働者死傷病報告の対象かどうかは別の条文の話になります。通勤災害と業務災害の違いは給付の名前だけではないので、あわせてご確認ください。

ただし、境界のケースを自分で切らないでください

出張中、社用車での移動中、テレワーク中の自宅での負傷、休憩時間中の事業場内での負傷など、「就業中」「事業場内」に当たるかどうかが一義に決まらない場面は実際にあります。この記事は条文の書き方を示したものであって、個別の事案の当てはめではありません。判断に迷う事案は、所轄の労働基準監督署に事実関係を伝えて確認するのが確実です。迷ったときに報告して困ることはありませんが、迷ったまま出さないと後で困ります。

労災保険の給付請求とは別の手続き

実務でいちばん混乱するのが、この報告と労災保険の請求の関係です。整理すると、次のようにまったく別の手続きです。

労働者死傷病報告労災保険の給付請求
根拠労働安全衛生規則97条労働者災害補償保険法
誰が出すか事業者被災した労働者(または遺族)
誰に出すか所轄労働基準監督署長所轄労働基準監督署長
何のために災害の把握・再発防止の行政資料療養費・休業補償などの給付を受けるため
相手が拒んだら事業者の義務なので、労働者の意向で免除されない本人が請求しなければ給付は行われない
出さないと罰則の対象になり得る(後述)給付が受けられない

ここから出てくる帰結が重要です。労働者が「労災は使わなくていい」と言っても、事業者の報告義務は残ります。逆に、労災保険の休業補償給付を請求したからといって、それで労働者死傷病報告を出したことにはなりません。提出先が同じ労働基準監督署なので同一視されがちですが、片方を出しても、もう片方は出ていません。

労災保険の給付額そのものについては労災の休業補償の記事で詳しく扱っています。ここでは、報告の話とつながる範囲だけ触れておきます。労災保険法14条1項は次のように定めています。

休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする。

ここにも「第四日目」が出てきます。これが混乱の正体です。報告の経路が分かれる4日(安衛則97条2項)と、労災保険の給付が始まる4日目(労災保険法14条1項)は、数字が同じだけで、根拠も目的も違います。前者は書類の出し方、後者はお金の話です。

休業1日目 2日目 3日目 4日目以降 お金(労災保険法14条1項) 労災保険からは出ない(業務災害なら会社が労基法76条の休業補償) 給付基礎日額の60% 書類(労働安全衛生規則97条) 報告は必要。四半期ごと・最後の月の翌月末日まで 報告は必要。遅滞なく 上下とも「4日」で切れるが、上は支給の開始、下は提出の経路。書類の側はどの帯でも空白にならない。
労災保険法14条1項と労働安全衛生規則97条1項・2項を並べたもの。休業1〜3日の帯では労災保険から給付は出ないが、報告義務は残っている。

なお、休業1日目から3日目までを会社が負担する根拠は労働基準法76条1項です。

労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。

労働基準法84条1項が「災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる」としているので、労災保険から休業補償給付が出る4日目以降は会社の負担が外れ、労災保険が出ない最初の3日間だけ会社の義務が残る、という組み立てになっています。つまり休業1〜3日のケースは、会社にとって「お金も出る、報告も要る」という、いちばん見落としてはいけない帯なのです。

報告しなかったとき — 50万円以下の罰金と、法人も罰せられる規定

労働安全衛生法120条は、次のように始まります。

次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。

その5号が、報告に関するものです。

第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつたとき。

労働安全衛生法100条1項は、労働基準監督署長等が「厚生労働省令で定めるところにより」事業者に必要な事項を報告させることができるとする規定で、その厚生労働省令にあたるのが労働安全衛生規則です。97条は同規則の第一編 第九章 監督等に置かれています。

そして注意したいのが、条文が「報告をせず」と「虚偽の報告をし」を並べていることです。出さないことだけでなく、出したが内容が事実と違う場合も同じ扱いになります。負傷の原因を実際と違う形で書く、発生場所を事業場外にする、休業日数を短く書く、といった処理は、報告しないのと同じ土俵に乗ります。俗に労災かくしと呼ばれるものの中身はこれです。ちなみに「労災かくし」という語は、労働安全衛生法にも労働安全衛生規則にも1回も出てきません。法令用語ではなく、行政と現場が使っている呼び名です。

さらに、法122条が両罰規定を置いています。

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第百十六条、第百十七条、第百十九条又は第百二十条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

120条が明示的に含まれているので、担当者個人だけでなく、法人にも罰金刑が科されます。「担当者が忘れていた」で会社が免れる構造にはなっていません。

「労災を使うと保険料が上がる」は、多くの会社では起きない

報告を出し渋る動機として最もよく語られるのが、労災保険料が上がるという話です。これはメリット制と呼ばれる仕組みを指していますが、適用されるには規模の要件があり、小さな事業場は最初から対象外です。労働保険徴収法12条3項が、対象となる事業を3つの号で限定しています。1号と2号は次のとおりです。

百人以上の労働者を使用する事業
二十人以上百人未満の労働者を使用する事業であつて、当該労働者の数に当該事業と同種の事業に係る前項の規定による労災保険率から非業務災害率を減じた率を乗じて得た数が厚生労働省令で定める数以上であるもの

2号の「厚生労働省令で定める数」は、労働保険徴収法施行規則17条2項が定めています。

法第十二条第三項第二号の厚生労働省令で定める数は、〇・四とする。

この「労働者数×(労災保険率−非業務災害率)」の値は災害度係数と呼ばれますが、この語も徴収法・同施行規則には1回も出てきません。条文が定めているのはあくまで計算式と0.4という数値です。3号は施行規則17条3項により、建設の事業と立木の伐採の事業について確定保険料が40万円以上であること、とされています。

また労働者数の数え方も条文が決めていて、施行規則17条1項は、その保険年度中の各月の末日に使用した労働者数の合計を12で除して得た労働者数としています。繁忙期だけ人が増える事業では、ピークの人数ではなく年平均で判定されます。

事業の区分メリット制の対象になるか
年平均100人以上の労働者を使用する事業対象(徴収法12条3項1号)
年平均20人以上100人未満で、災害度係数が0.4以上対象(同2号・徴収則17条2項)
年平均20人以上100人未満で、災害度係数が0.4未満対象外
年平均20人未満(建設・立木の伐採を除く)対象外
建設の事業・立木の伐採の事業で確定保険料40万円以上対象(同3号・徴収則17条3項)

つまり年平均20人未満の一般の事業では、労災保険を使っても自社の労災保険率は動きません。労災保険率は業種ごとに厚生労働大臣が定めるもので、1社の事故が業種全体の料率に与える影響は、実務上は無視できる大きさです。報告を出さない動機として語られている不利益が、そもそも自社には発生しないということは、判断の前に確かめる価値があります。

建設業は人数が少なくても対象になり得ます

3号の要件は労働者数ではなく確定保険料の額(40万円以上)です。建設の事業と立木の伐採の事業では、少人数でも請負金額が大きければ対象に入ります。人数だけで「うちは関係ない」と判断しないでください。なお、対象に入る場合でも、メリット制は連続する3保険年度の収支率で増減を決める仕組みなので、1件の事故が直ちに翌年度の保険料に跳ね返るわけではありません。

経理側の実務 — 12項目の出どころと、記録の保存年数

労働者死傷病報告そのものは労務の書類ですが、12項目のうちいくつかは経理が持っています。1号の労働保険番号と3号の常時使用する労働者の数は、労働保険の年度更新で毎年扱っている数字です。事故の当日に探し始めると時間を取られるので、年度更新の控えと同じ場所に置いておくのが確実です。2号の「事業の種類」も、年度更新の申告書に書いている事業の種類と同じ考え方で決まります。

次に、書類の保存です。労働基準法109条は次のように定めています。

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

ただし本則の5年がそのまま動いているわけではありません。同法143条1項が読み替えを置いています。

第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。

したがって、現在の実務上の保存期間は3年、将来的には5年に戻ることが予定されているという状態です。災害補償に関する書類はこの条文の対象に明記されているので、報告の控え・治療の記録・休業日数の根拠・本人とのやり取りは、少なくとも3年、可能なら5年で残すという運用にしておけば、読み替えが終わったときに手当てが要りません。

お金の処理については、休業1〜3日の会社負担分(労働基準法76条の休業補償)が生じます。これは会社都合の休業手当とは根拠も課税関係も別の支出です。金額の計算と税務上の扱いは労災の休業補償の記事で扱っていますので、そちらをご覧ください。会社負担分をいくらとして起票するかは、平均賃金の計算に依存します。

法定福利費の計算 — 労災保険料を含む会社負担額をその場で計算する

よくある質問

Q. 労働者が「労災にしなくていい」と言っています。それでも報告は必要ですか?

A. 必要です。労働者死傷病報告は労働安全衛生規則97条が事業者に課している義務で、被災した労働者の意向によって免除される仕組みにはなっていません。労働者が労災保険の給付を請求するかどうかは労働者側の選択ですが、それとこの報告は別の手続きです。本人が健康保険で治療した場合も、会社が治療費を負担した場合も、就業中または事業場内の負傷等によって死亡または休業した事実があるなら報告の対象に入ります。むしろ、労災保険を使わない処理をしたときほど、報告を出しておくことで後の説明がしやすくなります。

Q. 休業が2日でした。四半期報告の期限はいつになりますか?

A. 休業が4日に満たないので四半期ごとの報告になり、期限はその四半期の最後の月の翌月末日です。1月から3月に起きた分は4月30日まで、4月から6月の分は7月31日まで、7月から9月の分は10月31日まで、10月から12月の分は翌年1月31日までとなります。報告する内容は97条1項の各号のうち第9号(休業見込期間または死亡日時)を除いたものと、実際の休業日数です。すでに四半期が終わってから出すので、見込みではなく確定した日数を書くことになります。同じ四半期に複数の事案があれば、それぞれについて報告します。

Q. いまも様式第23号で提出してよいのでしょうか?

A. 紙で提出すること自体は認められていますが、根拠が変わっています。労働安全衛生規則から様式第23号と第24号は削除されており、紙が許されているのは令和6年厚生労働省令第45号の附則3条・4条が置いた経過措置によるものです。その条文は「同項各号に掲げる事項を記載した書面」による報告ができるという書き方で、様式番号を指していません。つまり求められているのは97条1項が列挙する12の事項が記載されていることです。しかもこれは「当分の間」の措置なので、いずれ終わります。手元の古い用紙を使い続けるより、電子申請の手順に移しておくほうが安全です。

Q. 報告を忘れていたことに後から気づきました。どうすればよいですか?

A. 気づいた時点で所轄の労働基準監督署に連絡し、遅れた事情を説明したうえで提出してください。条文は「報告をせず」と「虚偽の報告をし」を同じ号で並べているので、遅れを取り繕うために内容を事実と違う形にすることは、状況を悪くします。実務では、遅れた理由と、今後どう再発を防ぐかを説明できる状態にしておくことが求められます。報告が漏れていた事実そのものは消せませんので、隠すのではなく、正しい内容で速やかに出すのが唯一の道です。具体的な進め方は所轄署の指示に従ってください。

Q. 派遣労働者が派遣先でけがをしました。誰が報告するのですか?

A. 97条1項7号が、派遣労働者について、報告を行う事業者が派遣先と派遣元事業主のいずれに該当するかの別と、派遣先の事業場の名称および郵便番号を書かせる作りになっています。条文が報告者の立場を区別して記載させている以上、派遣先と派遣元のどちらか一方だけが出せば足りるという前提には立っていません。実務では双方が報告する扱いが行われてきました。危ないのは「相手が出すはずだ」と互いに考えて両方が出さないことです。派遣先と派遣元で事実関係を突き合わせ、どちらも出すという前提で動いてください。個別の取扱いは所轄の労働基準監督署に確認してください。

Q. 労災を使うと、翌年の労災保険料は必ず上がりますか?

A. 上がる仕組み(メリット制)はありますが、適用されるのは労働保険徴収法12条3項が定める規模の事業に限られます。年平均で100人以上を使用する事業、20人以上100人未満で労働者数に労災保険率から非業務災害率を減じた率を乗じた数が0.4以上の事業、そして建設の事業と立木の伐採の事業で確定保険料が40万円以上の事業です。これに当たらない事業では、労災保険を使っても自社の労災保険率は動きません。労働者数は各月末の人数の合計を12で除して判定します。対象になる場合でも、連続する3保険年度の収支率で増減を決める仕組みなので、1件で直ちに変わるわけではありません。

Q. 通勤中の事故でけがをして休業しました。労働者死傷病報告は必要ですか?

A. 97条1項が対象としているのは「就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒」で、通勤の途中はこのどちらにも当たらないと読めます。一方で、通勤災害は労災保険の給付対象なので、労働者は労災保険の請求を行うことになります。つまり給付の請求と労働者死傷病報告は連動しません。ただし、出張中や社用車での移動中など、通勤といえるのか業務中といえるのかが一義に決まらない場面があります。境界に当たる事案は自分で判断せず、所轄の労働基準監督署に事実関係を伝えて確認してください。

Q. 報告に関する書類は何年保存すればよいですか?

A. 労働基準法109条は労働者名簿・賃金台帳のほか「災害補償」に関する重要な書類を5年間保存すると定めていますが、同法143条1項が当分の間これを3年間と読み替えています。したがって現在の実務上の保存期間は3年です。ただし読み替えは「当分の間」の措置なので、いずれ5年に戻ることが予定されています。報告の控え、災害の発生状況の記録、休業日数の根拠となる資料、本人や医療機関とのやり取りは、最初から5年で残す運用にしておけば、読み替えが終わったときに何も手当てが要りません。保存年数の切り替えを後から追いかけるほうが手間がかかります。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。報告の要否、休業日数の数え方、就業中や事業場内に当たるかどうかの判断は事実関係によって変わりますので、実際の事案については所轄の労働基準監督署にご確認ください。労働保険の手続や社内規程の整備については社会保険労務士へ、会社負担分の税務上の取扱いについては税理士へご相談ください。

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