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労災保険料率とは — 業種で35倍違う。令和8年度は据え置きで、全額が会社負担

結論から言うと、労災保険料率は会社ごとに決まるのではなく、事業の種類ごとに法令で決まっています。令和8年度は1000分の2.5から1000分の88まで、53種類が定められていて、最小と最大で35.2倍の開きがあります。そして労働者の負担はゼロで、全額が会社負担です。給与から労災保険料を引くことはありません。

実務でいちばん多い誤りは、「法定福利費はだいたい給与の15%」という目安をそのまま建設業や林業に当てはめてしまうことです。その目安は労災保険料率が1000分の3の事業を前提にしています。林業は1000分の52、金属鉱業は1000分の88なので、労災だけで数%上乗せになり、予算が合わなくなります。

この記事では、令和8年度の53業種すべての率を法令の別表そのままの並びで載せます。続けて、賃金総額からの計算方法、納期限、建設業の特例、メリット制の順に確認します。

労災保険料率は「事業の種類」で決まる

労災保険料率は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の別表第1(労災保険率表)に定められています。ここに53の事業の種類が並び、それぞれに率が振られています。会社の規模や経営状態で決まるものではなく、その事業がどの種類に当たるかだけで決まるのが基本です。

率の幅は次のとおりです。同じ「会社の保険料」でありながら、業種が違うだけで35倍以上変わります。

令和8年度 労災保険率(1000分の◯・抜粋) 金属・非金属・石炭鉱業(石灰石・ドロマイト鉱業を除く) 88 林業 52 定置網漁業・海面魚類養殖業 37 水力発電施設・ずい道等新設事業 34 建築事業(既設建築物設備工事業を除く) 9.5 食料品製造業 5.5 卸売業・小売業・飲食店・宿泊業 3 金融業・保険業・不動産業 2.5 0 20 40 60 80 労災保険率(1000分の◯)
事業の種類ごとの労災保険率(令和8年度・抜粋)。最大の金属鉱業等(1000分の88)と最小の金融・保険・不動産(1000分の2.5)で35.2倍の開きがある。数値は徴収法施行規則 別表第1。

率は災害率だけでなく、給付費用や社会復帰促進等事業の内容なども考慮して定められています。徴収法12条2項は、労災保険率を「全ての事業の過去三年間の業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害に係る災害率」などを考慮して厚生労働大臣が定める、と書いています。実績にもとづいて事後的に見直される仕組みです。

令和8年度の労災保険率表(53業種の全率一覧)

令和8年度の別表第1の53区分の基準率です。メリット制による個別の適用率は別途確認します。単位は1000分の◯で、たとえば「3」は賃金総額の0.3%を意味します。並びは法令の別表第1のままです。率は令和6年4月の改定から変わっていません(据え置きの確認)。

事業の種類の分類事業の種類労災保険率(1000分の)
林業林業52
漁業海面漁業(定置網漁業又は海面魚類養殖業を除く。)18
定置網漁業又は海面魚類養殖業37
鉱業金属鉱業、非金属鉱業(石灰石鉱業又はドロマイト鉱業を除く。)又は石炭鉱業88
石灰石鉱業又はドロマイト鉱業13
原油又は天然ガス鉱業2.5
採石業37
その他の鉱業26
建設事業水力発電施設、ずい道等新設事業34
道路新設事業11
舗装工事業9
鉄道又は軌道新設事業9
建築事業(既設建築物設備工事業を除く。)9.5
既設建築物設備工事業12
機械装置の組立て又は据付けの事業6
その他の建設事業15
製造業食料品製造業5.5
繊維工業又は繊維製品製造業4
木材又は木製品製造業13
パルプ又は紙製造業7
印刷又は製本業3.5
化学工業4.5
ガラス又はセメント製造業6
コンクリート製造業13
陶磁器製品製造業17
その他の窯業又は土石製品製造業23
金属精錬業(非鉄金属精錬業を除く。)6.5
非鉄金属精錬業7
金属材料品製造業(鋳物業を除く。)5
鋳物業16
金属製品製造業又は金属加工業(洋食器、刃物、手工具又は一般金物製造業及びめつき業を除く。)9
洋食器、刃物、手工具又は一般金物製造業(めつき業を除く。)6.5
めつき業6.5
機械器具製造業(電気機械器具製造業、輸送用機械器具製造業、船舶製造又は修理業及び計量器、光学機械、時計等製造業を除く。)5
電気機械器具製造業3
輸送用機械器具製造業(船舶製造又は修理業を除く。)4
船舶製造又は修理業23
計量器、光学機械、時計等製造業(電気機械器具製造業を除く。)2.5
貴金属製品、装身具、皮革製品等製造業3.5
その他の製造業6
運輸業交通運輸事業4
貨物取扱事業(港湾貨物取扱事業及び港湾荷役業を除く。)8.5
港湾貨物取扱事業(港湾荷役業を除く。)9
港湾荷役業12
電気、ガス、水道又は熱供給の事業電気、ガス、水道又は熱供給の事業3
その他の事業農業又は海面漁業以外の漁業13
清掃、火葬又はと畜の事業13
ビルメンテナンス業6
倉庫業、警備業、消毒又は害虫駆除の事業又はゴルフ場の事業6.5
通信業、放送業、新聞業又は出版業2.5
卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業3
金融業、保険業又は不動産業2.5
その他の各種事業3

上の53行は徴収法施行規則の別表第1です。自社がどの種類に当たるかの細目は、徴収法施行規則16条1項により厚生労働大臣が別に定めて告示することになっており、判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署が窓口になります。

事務所だけの会社は「その他の各種事業」1000分の3 小売業・飲食店・宿泊業も1000分の3、金融業・保険業・不動産業は1000分の2.5です。いわゆるオフィスワーク中心の会社は、この2つのどちらかに落ちることがほとんどです。ただし製造や運送を自社で行っていれば、そちらの種類で判定されます。

計算のしかた — 土台は「賃金総額」

労災保険料は、賃金総額 × 労災保険率で計算します。

計算例。「その他の各種事業」(1000分の3)で、年間の賃金総額が3,000万円の会社の場合、労災保険料は 3,000万円 × 3 ÷ 1000 = 9万円です。同じ賃金総額でも「林業」(1000分の52)なら 3,000万円 × 52 ÷ 1000 = 156万円になります。差は147万円で、業種の判定を間違えるとこれだけずれます。

徴収法11条1項は、一般保険料の額を「賃金総額に……保険料率を乗じて得た額」と定めています。同条2項の「賃金総額」とは「事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額」です。

ここで間違えやすいのが、社会保険(健康保険・厚生年金)の標準報酬月額とは土台が違うことです。労働保険の賃金総額には、保険年度内に支払が確定し実際の支払が翌年度になる賃金も含めます。したがって残業代・通勤手当・賞与もすべて含みます。標準報酬月額のような等級のあてはめや、上限・下限もありません。

労働保険(労災・雇用)社会保険(健保・厚年)
保険料の土台賃金総額(年度内の支払確定分を含む)標準報酬月額・標準賞与額
賞与の扱い賃金総額に含める標準賞与額として別に計算
上限無し等級の上限がある
労災部分の労働者負担無し(全額事業主)—

もうひとつ、賃金の集計で毎年つまずくのが役員です。労災保険は労働者を対象とする制度なので、役員に払う報酬は賃金総額に入りません。厚生労働省の年度更新の手引きに付いている賃金集計表も、記入欄の脇に「(実質的な役員報酬分を除きます)」と注記しています。賃金と役員報酬が同じ振込の場合も、台帳や内訳記録を確認し、対象となる賃金を区分して集計します。どこまでを役員報酬分とみるかは事業ごとの判断になるため、金額が大きいときは所轄の労働基準監督署に確かめるのが確実です。

役員自身と海外に出す人は「特別加入」 — 率は3種類

役員報酬が賃金総額に入らないということは、役員としての業務は原則として通常の労災保険給付の対象外ということです。ただし兼務役員等の労働者としての業務・賃金は対象になり得ます。そこを埋めるのが特別加入で、保険料率が3種類に分かれています。

いずれも土台は賃金総額ではなく、本人が選んだ給付基礎日額になります。第二種のうち一人親方等の12区分の率と日額の表は一人親方労災保険の保険料と経理にあります。

第一種について、徴収法13条はさらに、労災保険率と同一の率から二次健康診断等給付に要した費用を考慮して厚生労働大臣の定める率を減じる、と書いています。厚生労働省の特別加入保険料率表は「当該事業に適用される労災保険率と同一の率である」と示しています。

法定福利費(会社負担の社会保険料)を業種を選んで計算する →

いつ・いくら納めるか — 令和8年度の納期限と延納

労災保険料は毎月の給与から引くものではないので、年に1回の「年度更新」でまとめて申告・納付します。令和8年度の年度更新は6月1日(月)から7月10日(金)までです。

期限は徴収法が直接書いています。15条1項(概算保険料)が「その保険年度の六月一日から四十日以内」、19条1項(確定保険料)が「次の保険年度の六月一日から四十日以内」。前年度分と当年度分の窓が同じ日に重なるので、1回の手続きで両方を出します。

年度更新の納期限は、口座振替にしているかどうかで変わります。両方を並べます。

令和8年度全期・第1期第2期第3期
口座振替を利用しない場合の納期限7月10日11月2日2月1日
口座振替の納付日(引落日)9月7日11月16日2月15日

3回に分けることを延納といいます。誰でも使えるわけではなく、施行規則27条1項が入口を絞っています。有期事業以外の事業で、申告書を出すときに延納の申請をし、かつ次のいずれかに当たるときです。

年度の途中で保険関係が成立した事業は、期限と延納の回数が変わります。有期事業以外の事業では次のとおりです。

委託していない場合の条文上の期限は10月31日・翌年1月31日で、上の表の11月2日・2月1日は、令和8年度のその日が土曜・日曜に当たることを踏まえた厚生労働省の案内です。事務組合に委託している場合は、条文上の期限が施行規則27条2項で11月14日・翌年2月14日へ後ろにずれます。令和8年度はこの2日も土曜・日曜に当たるので、実際の期限は委託先の事務組合か所轄の労働局の案内で確かめることになります。

延納できないものが混ざっている 分割できるのは概算保険料だけです。前年度の精算で出た確定保険料の不足額と、次に書く一般拠出金は延納できません。厚生労働省の令和8年度の手引きは「確定保険料の不足額及び一般拠出金は延納できませんので、第1期に納付してください」と書いています。3等分した額だけを見ていると、第1期の納付額が合いません。

その一般拠出金です。石綿健康被害救済法37条にもとづくもので、労働保険料とは別の負担ですが、年度更新の同じ申告書で扱います。厚生労働省の令和8年度の手引きは算定方法を「事業主が労働者に支払った賃金総額(千円未満は切り捨て)× 一般拠出金率(1,000分の0.02)」と示しています。賃金総額3,000万円なら600円です。

同条は一般拠出金の額を「一般保険料の計算の基礎となる賃金総額に一般拠出金率を乗じて得た額」と定めています。率は政令の定めにより環境大臣が厚生労働大臣等と協議して定めるもので、労災保険率表には載っていません。

令和8年度から、紙の申告書が届かない会社がある 電子申請が義務づけられている法人(資本金・出資金等が1億円を超える法人、相互会社、投資法人、特定目的会社)には、令和8年度の年度更新から紙の申告書が送られてきません。代わりに、労働保険番号やアクセスコードを載せた電子申請情報通知書などが届きます。封筒も、従来のA4サイズの緑または青ではなく定形郵便サイズの茶封筒に変わります。「毎年6月に届くあの封筒」を待っていると、期限のほうが先に来ます。

遅れたときに付くのは、追徴金ではなく延滞金

納付が遅れたこと自体にかかるのは延滞金です。10%の追徴金が付くのは、政府の認定決定を受けて納めることになったときで、遅れて自分で申告・納付したことだけで自動的に付くものではありません。

19条5項が指しているのは、申告書を出さないか記載に誤りがあると認められたときに政府が労働保険料の額を決定して事業主に通知し(19条4項)、その通知を受けた日から15日以内に不足額を納める、という場面です。

追徴金には端数と下限の定めもあります。納付すべき額の1,000円未満は切り捨ててから100分の10を掛けます。その労働保険料または不足額が1,000円未満のときは、追徴金を徴収しません(21条2項)。天災その他やむを得ない理由で納めることになった場合も徴収しません(21条1項ただし書)。

建設業等の算定特例 — 建設は請負金額×労務費率

請負による建設の事業で、賃金総額を正確に算定することが困難な場合は、請負金額に労務費率を掛けた額を賃金総額とします。

徴収法11条3項は、「厚生労働省令で定める事業については、厚生労働省令で定めるところにより算定した額を……賃金総額とする」という例外を置いています。対象は施行規則12条により、賃金総額を正確に算定することが困難な請負建設、立木の伐採、その他の林業、水産動植物の採捕・養殖です。立木の伐採では素材の生産量を使う特例もあります。

このうち建設について定めるのが施行規則13条1項で、請負による建設の事業については「請負金額に別表第2に掲げる率を乗じて得た額を賃金総額とする」と定めています。この率が労務費率です。

なお、ここでいう請負金額は税抜きです。施行規則4条1項6号が建設の事業の請負金額を「消費税及び地方消費税に相当する額(以下「消費税等相当額」という。)を除く。以下同じ」と定義していて、13条の請負金額もこの定義で読みます。税込みの請負代金をそのまま掛けると、賃金総額が過大になります。

下請けを多数使う建設現場では、元請けが払った賃金だけを集計しても実態に合わないため、請負金額から逆算する方式が採られています。令和8年度の労務費率は次のとおりです。

事業の種類請負金額に乗ずる率(労務費率)
水力発電施設、ずい道等新設事業19%
道路新設事業19%
舗装工事業17%
鉄道又は軌道新設事業19%
建築事業(既設建築物設備工事業を除く。)23%
既設建築物設備工事業23%
機械装置の組立て又は据付けの事業(組立て又は取付けに関するもの)38%
機械装置の組立て又は据付けの事業(その他のもの)21%
その他の建設事業23%
支給材・貸与機械器具の取扱い 施行規則13条2項1号では、支給物の価額や機械器具の損料に相当する税抜額を請負代金に加算します。ただし、厚生労働大臣が指定する事業の指定支給物は加算から除外されます。

メリット制 — 非業務災害率を除く部分を最大±40%調整

ここまで「率は事業の種類で決まる」と書いてきましたが、一定規模以上の事業には例外があります。それがメリット制(徴収法12条3項)です。労災の発生が少ない事業は率が下がり、多い事業は上がります。

判定に使うのは収支率で、ざっくり言えば「支払われた保険給付等の額」÷「納めた保険料のうち業務災害に対応する部分」です。条文は、この割合が100分の85を超えるか、100分の75以下である場合に、率を100分の40の範囲内で引き上げ・引き下げできると定めています。収支率75%超85%以下の帯では動きません。

メリット制 — 収支率で非業務災害率を除く部分が最大±40%動く(立木の伐採の事業以外) +40% +20% +0% -20% -40% 増減なし 75%超85%以下 0 25 50 75 85 100 125 150 収支率(%)
メリット制による労災保険率の増減(立木の伐採の事業以外の事業)。収支率が75%以下で引き下げ、85%超で引き上げ。増減幅は徴収法施行規則 別表第3による最大±40%。収支率75%超85%以下は増減なし。

実際の増減幅は施行規則の別表第3が段階的に定めています。収支率10%以下なら40%減、10%超20%以下なら35%減……と5%刻みで動き、150%超で40%増が上限です(立木の伐採の事業は幅がやや狭く、最大35%)。

±40%がかかるのは「労災保険率そのもの」ではない 条文は「労災保険率から非業務災害率を減じた率を……引き上げ又は引き下げた率に非業務災害率を加えた率」と書いています。つまり増減の対象は、労災保険率から非業務災害率を差し引いた残りです。非業務災害率は、複数業務要因災害・通勤災害・二次健康診断等給付などに対応する部分で、施行規則16条2項が「千分の〇・六」と定めています。そこを±40%した後で、非業務災害率を足し戻します。したがって最終的な労災保険率の変動幅は、40%よりも小さくなります。

メリット制の対象は、条文上基準日に労災保険関係成立後3年以上を経過し、連続する3保険年度のいずれでも一定規模がある事業です。徴収法12条3項が3つの入口を挙げ、その「厚生労働省令で定める」部分を、施行規則17条が実数で埋めています。

入口(徴収法12条3項)規模の条件(徴収法施行規則17条)
1号 100人以上の労働者を使用する事業労働者数が100人以上(1項)
2号 20人以上100人未満の労働者を使用する事業労働者数が20人以上100人未満、かつ「労働者数 ×(労災保険率 − 非業務災害率)」が0.4以上(2項)
3号 そのほか厚生労働省令で定める規模の事業建設の事業と立木の伐採の事業について、その保険年度の確定保険料の額が40万円以上(3項)

労働者数は、各月の末日(賃金締切日があるならその直前の賃金締切日)に使用した労働者数を合計し、12で割った数です。船きよ・船舶・岸壁・波止場・停車場・倉庫における貨物の取扱いの事業だけは、延労働者数を所定労働日数で割って数えます。

2号は、人数だけでなく率も見ているところが要点です。労災保険率が低い業種ほど積が小さくなるので、同じ人数でも対象から外れます。数人規模の会社は原則として対象外で、率は別表第1のままです。

2号の積は、非業務災害率の千分の0.6を使って手で出せます。「その他の各種事業」(1000分の3)なら (3 − 0.6) ÷ 1000 = 0.0024 なので、0.4 に届くのは 0.4 ÷ 0.0024 ≒ 167人。2号の上限(100人未満)を超えてしまうので、事務系の会社は2号では入りません(100人に達した時点で1号で入ります)。

林業(1000分の52)なら (52 − 0.6) ÷ 1000 = 0.0514 で、0.4 ÷ 0.0514 ≒ 7.8人。2号の下限である20人に達した時点で条件を満たします。2号が効くのは率の高い業種だけだ、ということです。

労災保険率決定通知書 電子申請が義務づけられた法人への令和8年度送付案内では、メリット制が適用される事業場に労災保険率決定通知書を送るとされています。

特例メリット制 — 増減の範囲が広がる

徴収法12条の2に特例メリット制があります。安全衛生の措置を講じて申告した事業主について、増減の範囲が100分の40から100分の45に広がります。安全衛生への投資を率で報いる仕組みです。

令和8年度の率は据え置き — 令和6年4月の改定から変わっていない

令和8年度に適用される労災保険率は、令和6年4月の改定内容がそのまま続いています。令和6年4月以降に作った料率表をそのまま使えます。

根拠は2つあります。

労災保険率表には「令和6年4月1日施行」と記載され、令和8年度の案内でも参照されています。労務費率は令和8年度の事業主向け資料でも確認できます。

労災保険率はおおむね3年ごとに見直されるのが通例で、直近の改定は令和6年4月1日でした。「今年の率は変わったのか」は毎年たしかめる必要があります。

ただし雇用保険料率は別の話 労働保険料は労災保険料と雇用保険料の合算で、雇用保険料率は毎年度見直されます。労災が据え置きでも、雇用保険側が動けば労働保険料の合計は変わります。徴収法12条1項1号は、両方に保険関係が成立している事業の保険料率を「労災保険率と雇用保険率とを加えた率」と定めています。

なぜ全額会社負担なのか — 条文は雇用保険だけを名指ししている

労災保険料に労働者負担がないことは広く知られていますが、その根拠を条文で見ると分かりやすくなります。負担を定めているのは徴収法31条です。同条1項1号は、労災保険と雇用保険の両方が成立している事業について、被保険者が負担する額を「当該事業に係る一般保険料の額のうち雇用保険率に応ずる部分の額」を出発点に計算すると定めています。

つまり条文は雇用保険率に応ずる部分だけを名指ししていて、労災保険率に応ずる部分には触れていません。そして同条3項が、「事業主は、当該事業に係る労働保険料の額のうち……被保険者の負担すべき額を控除した額を負担する」と定めています。労働者が負担する範囲に労災が入っていない以上、残りは全部事業主、という作りです。

労災保険料は事業主負担です。 労働者の給与から本人負担分として控除するものではありません。納付は年度更新等の手続で行い、要件を満たせば概算保険料の延納もできます。

この「本人が払わない」という性質は、所得税のほうにも跡を残しています。所得税法74条2項が社会保険料を列挙するとき、労働保険に触れているのは4号の「雇用保険の被保険者として負担する労働保険料」だけで、労災保険料は列挙に入っていません。通常の労災保険料には労働者の本人負担分がありません。特別加入に係る保険料は所得税法施行令208条1号に掲げられています。本人等が負担すべき保険料を支払った場合など、所得税法74条の要件に沿って控除を判断します。

→ 一人親方労災保険の保険料と経理 — 保険料は必要経費ではなく社会保険料控除

「労災保険料率」は法令用語ではない

細かい話に見えて、資料を探すときに効いてくる点です。法令の条文に「労災保険料率」という語は出てきません。徴収法12条も、施行規則の別表第1の表題も、いずれも「労災保険率」で、「料」が入りません。

一方で、雇用保険のほうは条文でも「雇用保険率」と書かれますが、実務では「雇用保険料率」と呼ばれます。労災も同じで、現場の呼び名が「労災保険料率」、法令上の名前が「労災保険率」という関係になっています。厚生労働省の資料や法令検索で当たるときは「労災保険率表」で探すと目的の別表にたどり着きます。

徴収法11条・12条は、一般保険料と、成立している保険関係に応じた保険料率を定めています。両方の保険関係が成立する事業の率は労災保険率と雇用保険率の合計で、片方のみ成立する事業ではその保険の率を使います。

間違えやすい点

よくある理解実際
労災保険料も労使折半全額が事業主負担。徴収法31条1項は雇用保険率に応ずる部分だけを労働者負担としている
保険料は標準報酬月額から計算する賃金総額には、保険年度内に支払が確定した未払分も含めて計算する。通勤手当・残業代・賞与を含み、上限は無い
会社ごとに1つの率が決まる事業の種類ごと。1つの会社が複数の事業を行っていれば、事業ごとに判定される
建設業も賃金総額×率でよい請負建設で賃金総額を正確に算定することが困難な場合は、請負金額×労務費率。支給材・機械器具の損料は税抜額を加算(指定事業・指定支給物の除外あり)
労災を使うと必ず翌年の率が上がるメリット制の対象規模でなければ率は動かない。対象でも収支率75%超85%以下なら増減なし
申告が期限に遅れると必ず10%の追徴金が付く追徴金は政府の認定決定(徴収法19条4項)を受けたときの負担。納付を怠った場合の延滞金は、追徴金とは別のもの
概算保険料は誰でも3回に分けられる延納には金額などの条件があり、申告時の申請も要る(延納の条件)。確定保険料の不足額と一般拠出金は分割できない
アルバイトは労災保険に入らない労災保険の給付対象は労働者であり、雇用保険のような週20時間などの加入要件は無い。賃金総額にも含める
一般拠出金は労災保険料の一部石綿健康被害救済法37条にもとづく、労働保険料とは別の負担。年度更新の申告書で労働保険料と一緒に扱う

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よくある質問

労災保険料は給与から引かれますか?

引かれません。労災保険料は全額が事業主負担です(条文上の根拠)。もし控除されている場合は誤りの可能性が高く、確認が必要です。会社は年度更新の手続きでまとめて納付します。

令和8年度の労災保険料率は変わりましたか?

変わっていません。令和8年度は令和6年4月の改定内容がそのまま適用されます。徴収法施行規則の別表第1は、令和6年4月1日施行版と現行版(令和8年5月21日施行版)で53行すべてが一致しています。ただし労働保険料は労災保険料と雇用保険料の合算で、雇用保険料率のほうは年度ごとに見直されるため、労働保険料の総額は労災が据え置きでも変わることがあります。

自社がどの事業の種類に当たるか分からないときは?

判断に迷う場合の窓口は事業所を管轄する労働基準監督署です。事業の種類の細目は厚生労働大臣が別に定めて告示しており、実際の判定はこの細目にもとづいて行われます。労災保険率は会社単位ではなく事業単位で決まるのが原則です。たとえば製造部門と小売部門を別の事業として扱うのか、主たる事業に一括するのかで率が変わります。

労災保険料率がいちばん高い業種と低い業種はどこですか?

令和8年度でいちばん高いのは金属鉱業、非金属鉱業(石灰石鉱業又はドロマイト鉱業を除く。)又は石炭鉱業の1000分の88です。いちばん低いのは1000分の2.5で、通信業・放送業・新聞業・出版業、金融業・保険業・不動産業、原油又は天然ガス鉱業など複数の種類が該当します。差は35.2倍です。なお全53種類の中央値は1000分の7で、事務系の事業が該当することの多い「その他の各種事業」は1000分の3です。

労災を使うと翌年から保険料率が上がりますか?

必ず上がるわけではありません。率が動くのはメリット制の対象となる事業だけで、対象になる場合でも、収支率が75%超85%以下の範囲であれば増減しません。対象は、100人以上の労働者を使用する事業など一定の規模の事業に限られます(メリット制の対象)。なお、保険料が上がることを避けるために労災を使わせない取扱いは、労働者の給付を受ける権利とは別の問題であり、認められるものではありません。

建設業の労災保険料はどう計算しますか?

請負による建設の事業で、賃金総額を正確に算定することが困難な場合は、施行規則13条1項により請負金額に労務費率を乗じた額を賃金総額とみなします。労務費率は事業の種類ごとに定められており、令和8年度は17%から38%までです(労務費率の表)。支給物の価額や貸与機械器具の損料の税抜額は加算しますが、厚生労働大臣が指定する事業の指定支給物は除かれます。

パート・アルバイトも労災保険の対象ですか?

対象です。労災保険には、雇用保険のような「週の所定労働時間が20時間以上」といった加入要件がありません。労働者として使用されていれば、労働時間や雇用期間にかかわらず給付の対象になります。パート・アルバイトに支払った賃金も、賃金総額に含めて保険料を計算します。年度更新の賃金集計では、雇用保険と労災保険で対象者の範囲がずれる点に注意が要ります。

令和8年度の労働保険料はいつまでに納めますか?

一括なら納期限は7月10日、口座振替を利用している場合の納付日は9月7日です。延納を申請して3回に分けた場合の納期限は7月10日・11月2日・2月1日、口座振替なら9月7日・11月16日・2月15日になります。ただし確定保険料の不足額と一般拠出金は延納できないため、この2つは第1期にまとめて納めます。年度の途中で保険関係が成立した事業は期限が変わります(納期限と延納)。

社長や役員の分の労災保険料はどう計算しますか?

役員に支払う報酬は賃金総額に含めないので、通常の労災保険料の計算には入りません。そのかわり労働者性がない役員は労災保険の通常の給付対象外で、必要なら特別加入を検討します。兼務役員等で労働者性が認められる部分は労災の対象となり、その賃金を賃金総額に含めます。特別加入の保険料率は3種類に分かれていて、計算の土台も賃金総額ではなく、本人が選んだ給付基礎日額になります(特別加入の率)。

出典

労働保険の保険料の徴収等に関する法律および同法施行規則の条文・別表(e-Gov法令検索)を読んで確認。

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。労災保険率は事業の種類の判定によって決まり、判定が変わると保険料が大きく変動します。自社の事業の種類の判定、メリット制の適用の有無、有期事業の取扱いについては、所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。

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