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出向の税務 — 給与負担金は消費税の課税仕入れにならない。「経営指導料」に名前を変えても同じ

結論から言うと、出向先が出向元に払う「給与負担金」は、出向先におけるその出向者に対する給与として扱われます(法人税基本通達9-2-45)。給与なので消費税はかかりません。ここまでは多くの記事が書いています。ただ、その先に実務で効く一段があります。

控除できない根拠は、通達ではなく法律のかっこ書きです。消費税法2条1項12号は課税仕入れを定義するときに、役務の提供から「所得税法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等を対価とする役務の提供」を明示的に除いています。つまり給与負担金は、税率0%の取引でも非課税取引でもなく、そもそも課税仕入れの定義に入っていません。だから出向元から適格請求書(インボイス)を受け取っても、仕入税額控除はできません。インボイスがあるかどうかは、この結論に一切影響しません。

そしてもう一つ。「経営指導料」「業務委託料」など別の名義で払っても、実質的に給与負担金の性質を持つ金額なら同じ扱いになると、法人税・消費税の両方の通達が注書きで明記しています(法基通9-2-45(注)1・消基通5-5-10(注))。請求書に書いてある名前では決まりません。月40万円の給与負担金を「経営指導料」として課税仕入れに計上していた場合、年480万円(税込)で 436,363円 の仕入税額控除が否認される計算になります。

結論 — 分かれ目は「出向先と本人のあいだに雇用関係があるか」

出向・転籍・労働者派遣は、外から見ると「自社の人が他社で働く」という同じ絵に見えます。税務も労働法も、この3つを本人と各社のあいだに雇用関係があるかどうかで切り分けています。

在籍出向は、出向元との雇用関係を残したまま出向先とも雇用関係を結ぶ、二重の雇用関係です。転籍は出向元との雇用関係を終了させて出向先だけに移ります。労働者派遣は派遣先とのあいだに雇用関係がない点が決定的に違い、消費税法基本通達5-5-11はその定義を「当該他の者と当該労働者との間に雇用関係のない場合をいう」とわざわざ書き添えています。

本人と各社のあいだに雇用関係があるか 在籍出向 出向元 出向先 本人 雇用 雇用 → 二重の雇用関係 転籍 転籍元 転籍先 本人 終了 雇用 → 雇用関係は1つだけ 労働者派遣 派遣元 派遣先 本人 雇用 指揮命令 のみ → 派遣先とは雇用関係なし
3つの形の違いは「本人と各社のあいだに雇用関係があるか」に集約される。この一本の線の有無が、消費税がかかるかどうかまで決めている。

出向・転籍・労働者派遣の違いを1枚で

 在籍出向転籍労働者派遣
出向元・派遣元との雇用関係残る終了する残る
出向先・派遣先との雇用関係あるある(新たに)ない
指揮命令出向先転籍先派遣先
受け入れ側が払う金銭の消費税課税されない(給与として扱う・消基通5-5-10)—(そもそも負担金という形をとらない)課税される(派遣料は資産の譲渡等の対価・消基通5-5-11)
受け入れ側の法人税の扱い出向先における出向者への給与(法基通9-2-45)転籍先の自社給与役務の対価(外注費等)
労働者派遣法の許可不要(定義の外不要必要
「うちは出向のつもり」は基準にならない 契約書の表題や請求書の名義ではなく、本人と受け入れ側のあいだに雇用関係があるかで判定されます。出向契約を結んでいても、出向先が本人と雇用契約を結ばず、指揮命令だけを受けて働かせているなら、それは形の上では労働者派遣の定義に近づきます。消費税の結論が逆になるので、契約の実体を先に確認してください。

出向に派遣の許可が要らないのは、定義の外だから

「出向は派遣法の例外として認められている」という説明を見かけますが、条文の書き方は違います。労働者派遣法2条1号は、労働者派遣を定義する段階で出向にあたるものを除いています。

労働者派遣法2条1号(定義) 「労働者派遣」とは、自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。

つまり、受け入れ側にも雇用させることを約束している形(在籍出向)は、そもそも「労働者派遣」に当たりません。許可が免除されているのではなく、法律が想定している箱の外側にあります。免除であれば免除の要件が問題になりますが、定義の外なら要件そのものが存在しません。ここは結論が同じでも根拠がまるで違うところです。

職業安定法の側も同じ構造になっています。同法4条は「労働者供給」を「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させること」と定義したうえで、そこから「労働者派遣に該当するものを含まないものとする」と除いており、44条で「労働者供給事業」を禁じています。

職業安定法44条(労働者供給事業の禁止) 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

ここで条文が禁じているのは「事業」であって、労働者供給そのものではありません。単発の出向がここに当たるかどうかの線引きは条文に書かれておらず、行政解釈に委ねられています。「出向はすべて適法」とも「出向はすべて違法」とも条文からは読めないので、業として繰り返す形になっている場合は、労働局に確認するのが安全です。

労働法の側からもう一つ。労働契約法14条は、出向命令が「その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする」と定めています。出向させる権利があること自体は前提にしつつ、個別の命令が無効になりうるという構造です。

給与負担金 — 出向先の給与として扱う(法基通9-2-45)

出向者の給与を出向元がまとめて本人に支払い、出向先が自社負担分を出向元に払う。この払う金額が給与負担金です。法人税の扱いは通達がはっきり書いています。

法人税基本通達9-2-45(出向先法人が支出する給与負担金) 法人の使用人が他の法人に出向した場合において、その出向した使用人(以下「出向者」という。)に対する給与を出向元法人(出向者を出向させている法人をいう。以下同じ。)が支給することとしているため、出向先法人(出向元法人から出向者の出向を受けている法人をいう。以下同じ。)が自己の負担すべき給与(退職給与を除く。)に相当する金額(以下9−2−46までにおいて「給与負担金」という。)を出向元法人に支出したときは、当該給与負担金の額は、出向先法人におけるその出向者に対する給与(退職給与を除く。)として取り扱うものとする。

読むべきところが2つあります。1つは「出向先法人における」給与だという点。出向元への支払いなのに、税務上は出向先が自分の従業員に給与を払ったのと同じに扱われます。だから出向先では単純に損金になります。

もう1つは、「退職給与を除く」が1文のなかに2回出てくることです。給与負担金の定義からも、扱いの結論からも、退職給与だけが外されています。後述のとおり退職給与の負担金には別の通達(9-2-48・9-2-49)が用意されており、そちらは結論が違います。この2回のかっこ書きが、通達を2系統に分けている入口です。

消費税で控除できない根拠は、通達ではなく法律のかっこ書き

消費税でも同じ結論になります。消費税法基本通達5-5-10が「当該給与負担金の額は、当該出向先事業者におけるその出向者に対する給与として取り扱う」と定めています。ただ、「通達で不課税とされている」で終わらせると、なぜ控除できないのかが説明できません。

控除できない根拠は法律本体にあります。消費税法2条1項12号は、課税仕入れを次のように定義しています(要点だけ抜き出したもの)。

消費税法2条1項12号(課税仕入れの定義・抜粋) 事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(所得税法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること…

給与等を対価とする役務の提供は、かっこ書きで課税仕入れの定義から外されています。給与負担金は通達によって給与として扱われるので、このかっこ書きに入ります。結果として、

この2条1項12号のかっこ書きは、出向だけの話ではありません。外注費として払っていたものが給与と認定された場合も、同じかっこ書きで課税仕入れの定義から外れます。そちらは判定の枠組みが違い(消費税法基本通達1-1-1の「雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうか」)、さらに源泉徴収の追徴が同時に来る点が出向と異なります。詳しくは外注費と給与の区分で扱っています。

逆に、労働者派遣の派遣料は課税されます。消費税法基本通達5-5-11は「派遣料等の金銭は、資産の譲渡等の対価に該当する」と定め、その前提となる派遣の定義を「当該他の者と当該労働者との間に雇用関係のない場合をいう」と書いています。雇用関係の線が1本あるかないかで、消費税の結論が反転します。

消費税の税込・税抜と端数処理を計算する

「経営指導料」に名前を変えても結論は同じ

実務でいちばん事故が起きるのがここです。法人税・消費税の両方の通達が、名義を変えても同じ扱いになると注書きで明記しています。

2つの通達が同じことを書いている 法人税基本通達9-2-45(注)1 … この取扱いは、出向先法人が実質的に給与負担金の性質を有する金額を経営指導料等の名義で支出する場合にも適用がある
消費税法基本通達5-5-10(注) … この取扱いは、出向先事業者が実質的に給与負担金の性質を有する金額を経営指導料等の名義で支出する場合にも適用する

グループ会社間で「経営指導料」「業務委託料」「管理料」といった名目に丸めて請求している例は珍しくありませんが、中身が出向者の給与相当額なら、名前がどうであれ給与負担金です。課税仕入れに計上していれば、その控除は否認されます。

金額の感覚をつかむために、月40万円・年480万円(税込)を課税仕入れとして処理していた場合を計算します。

項目金額
「経営指導料」として計上していた年額(税込)4,800,000円
控除していた消費税額(4,800,000 × 10 ÷ 110・1円未満切捨て)436,363円
正しい扱い課税仕入れに当たらない(控除額 0円)

1人でこの金額です。出向者が複数いれば、そのまま人数倍になります。金額の大小ではなく、勘定科目名を根拠に判定していないかを確認してください。

較差補塡は出向元の損金 — 数字で追う

出向先の給与水準が出向元より低いとき、差額を出向元が負担することがあります。「自社で働いていない人の給与を自社が負担するのは寄附金ではないか」と心配になるところですが、通達が明示的に損金だと書いています

法人税基本通達9-2-47(出向者に対する給与の較差補塡) 出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補塡するため出向者に対して支給した給与の額(出向先法人を経て支給した金額を含む。)は、当該出向元法人の損金の額に算入する

この通達の注書きが実務では効きます。次の2つはいずれも較差を補塡するために支給したものとすると書かれており、判定の余地なく較差補塡に含まれます。

海外出向の留守宅手当が名指しされているのは、実務で迷いやすい項目だからです。「留守宅手当は出向元の損金でよいか」は、通達を読めば議論するまでもありません。

給与 月50万円・出向先の負担 月40万円 のとき 出向元 本人に給与を支払う 出向先 実際に働いてもらう 本人 出向先で働く 給与負担金 月40万円 出向先の給与として損金(法基通9-2-45) 消費税の課税仕入れに当たらない(消法2条1項12号) 給与 月50万円 源泉徴収も出向元 出向元に残る差額 月10万円(年120万円)= 較差補塡 出向元の損金 (法基通9-2-47)
年額でみると、出向元は給与600万円を損金にし、給与負担金480万円を収益に計上する。差引120万円が出向元の負担として残り、これが較差補塡にあたる。

年額で並べると、それぞれの会社の損益はこうなります。

 出向元出向先
本人に支給する給与6,000,000円(損金)
給与負担金4,800,000円(収益)4,800,000円(給与として損金)
差引の負担1,200,000円(=較差補塡・損金)4,800,000円
消費税課税売上に計上しない課税仕入れに計上しない

注意したいのは逆向きのケースです。給与負担金が出向元の支給額を超えている場合、その超える部分については「出向先法人にとって給与負担金としての性格はない」と通達が明記しています(9-2-46(注)2)。給与として損金にできる前提が崩れるので、多く払っておけばよいという話にはなりません。

出向先で役員になっている場合 — 2つを「いずれにも」満たすとき

出向者が出向先で取締役などの役員になっているとき、扱いが一段厳しくなります。給与負担金の支出が出向先における役員給与の支給とみなされ、法人税法34条(役員給与の損金不算入)の縛りがかかります。つまり定期同額給与か事前確定届出給与などに当たらなければ損金になりません。

ただし、これが適用されるのは次の2つの「いずれにも」該当するときです。片方だけでは足りません。

法人税基本通達9-2-46 が求める2つの条件 (1) 当該役員に係る給与負担金の額につき当該役員に対する給与として出向先法人の株主総会、社員総会又はこれらに準ずるものの決議がされていること
(2) 出向契約等において当該出向者に係る出向期間及び給与負担金の額があらかじめ定められていること

そして、この通達には見落としやすい注書きが2つ付いています。

順番を間違えると損金にならない 事前確定届出給与の届出には期限があります。出向者を出向先の役員にする場合、出向契約に出向期間と給与負担金の額を先に書き込み、出向先の株主総会で決議し、そのうえで出向先が届け出るという順番になります。人事が先に動いて経理があとから追いかける形になりやすい論点です。

退職給与だけ扱いが違う — 役員であっても損金

前述のとおり、9-2-45は「退職給与を除く」と2回書いています。退職給与の負担金には別の通達があり、結論が逆になります

通達場面結論
9-2-48あらかじめ定めた負担区分に基づき、出向期間に対応する退職給与の額として合理的に計算した金額を定期的に出向元に支出たとえ出向先で役員となっているときであっても、支出をする日の属する事業年度の損金
9-2-49出向者が出向元を退職したときに、出向期間に係る部分を出向元に支出引き続き役員又は使用人として勤務するときであっても、支出をした日の属する事業年度の損金
9-2-50出向先が退職給与の全部または一部を負担しない負担しないことにつき相当な理由があるときは、これを認める

9-2-46(役員なら34条が適用される)と9-2-48(役員であっても損金)を並べると、通達の設計がはっきりします。月々の給与負担金は役員給与の規律に取り込まれるのに、退職給与の負担金は取り込まれません。同じ「出向先が出向元に払う金銭」でも、月々の分と退職金の分では通る道が違います。役員退職金の損金算入時期の議論とも別建てになっている点に注意してください。

9-2-50も実務では効きます。出向先が退職給与を負担しないケースは、負担割合の交渉が難しい中小企業間ではよくありますが、「相当な理由があるときは、これを認める」と通達が正面から書いているので、理由を出向契約に残しておけば説明ができます。

転籍は逆 — 相手方の分を負担すると「贈与」になる

転籍の場合、退職給与の扱いは出向と反対の向きに振れます。法人税基本通達9-2-52は、転籍前の法人での在職年数を通算して退職給与を支給する場合の扱いを定めていますが、ただし書に強い言葉があります

法人税基本通達9-2-52 ただし書 ただし、転籍前の法人及び転籍後の法人が支給した退職給与の額のうちにこれらの法人の他の使用人に対する退職給与の支給状況、それぞれの法人における在職期間等からみて明らかに相手方である法人の支給すべき退職給与の額の全部又は一部を負担したと認められるものがあるときは、その負担したと認められる部分の金額は、相手方である法人に贈与したものとする。

贈与とされれば寄附金の枠に入り、損金算入限度額の計算を通ることになります。出向の較差補塡(9-2-47・出向元の損金)と、転籍の肩代わり(9-2-52ただし書・贈与)は、方向が逆です。「グループ内なのだから多めに払っておく」という運用は、出向では通っても転籍では通りません。

源泉徴収と社会保険 — 誰が源泉徴収し、標準報酬月額はどう決まるか

源泉徴収の義務者は、雇用主ではなく「支払をする者」です。所得税法183条1項は「居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない」と定めています。条文の主語は雇用関係ではなく支払の事実です。

したがって、給与負担金方式(本人への支払いは出向元がまとめて行う)なら、源泉徴収も年末調整も出向元が行います。出向先は本人に支払っていないので、源泉徴収義務は生じません。

一方、出向元と出向先がそれぞれ本人に直接支払う形をとると、両社が支払者になります。このとき扶養控除等申告書は1か所にしか出せません。所得税法194条1項は提出先を「その給与等の支払者(その支払者が二以上ある場合には、主たる給与等の支払者)」と定めており、主たる支払者以外は乙欄で計算することになります。

社会保険も、直接支払うかどうかで景色が変わります。両社から報酬を受ける場合は合算です。

条文内容
健康保険法44条3項同時に二以上の事業所で報酬を受ける被保険者の報酬月額は、各事業所について算定した額の合算額とする
厚生年金保険法24条2項同じ(各事業所について算定した額の合算額)
健康保険法施行規則1条の3第1項同時に二以上の事業所に使用され、保険者が二以上あるときは保険者を選択しなければならない
健康保険法施行規則2条1項その選択は、同時に二以上の事業所に使用されるに至った日から10日以内に届書を提出して行う
健康保険法161条1項被保険者と事業主が、それぞれ保険料額の2分の1を負担する

たとえば出向元から月10万円、出向先から月40万円をそれぞれ本人に直接支払う場合、報酬月額は合算の50万円で判定されます。片方だけの10万円で見て低い等級になると考えるのは誤りです。等級と保険料の対応は標準報酬月額の等級表で確認できます。

10日という期限は短い 健康保険法施行規則2条1項の起算点は「同時に二以上の事業所に使用されるに至った日」です。出向の開始日から10日しかありません。出向契約を結ぶ段階で、本人への支払いを出向元1本にするのか両社から出すのかを決めておくと、この届出が必要かどうかが先に分かります。

よくある質問

Q. 出向元から適格請求書(インボイス)をもらえば、給与負担金でも仕入税額控除できますか?

A. できません。適格請求書は課税仕入れであることを前提とした保存要件であり、給与負担金はそもそも課税仕入れの定義から外れているためです。消費税法2条1項12号は課税仕入れの定義で「役務の提供(所得税法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)」と書いており、通達5-5-10により給与として扱われる給与負担金はこのかっこ書きに入ります。

Q. 「経営指導料」という名目で請求書をもらっています。課税仕入れにしてよいですか?

A. 実質的に給与負担金の性質を有する金額であれば、名義が経営指導料でも給与負担金と同じ扱いになります。法人税基本通達9-2-45(注)1と消費税法基本通達5-5-10(注)が、いずれも経営指導料等の名義で支出する場合にも適用がある旨を明記しています。金額の内訳が出向者の給与相当額かどうかを、出向契約と請求の根拠資料で確認するのが一般的です。

Q. 出向先が給与水準の差額を負担してくれません。出向元が負担すると寄附金になりますか?

A. 給与条件の較差を補塡するために出向者に支給した給与の額は、出向元法人の損金に算入すると法人税基本通達9-2-47が定めています。出向先が経営不振等で賞与を支給できないため出向元が支給する賞与の額、出向先が海外にあるため出向元が支給するいわゆる留守宅手当の額も、いずれも較差を補塡するために支給したものとすると同通達の注書きが明記しています。

Q. 出向者が出向先で取締役になりました。給与負担金の扱いは変わりますか?

A. 給与負担金の額につき役員に対する給与として出向先法人の株主総会等の決議がされていること、出向契約等において出向期間及び給与負担金の額があらかじめ定められていることの両方に該当するときは、給与負担金の支出が出向先における役員に対する給与の支給として法人税法34条の適用を受けます(法人税基本通達9-2-46)。片方だけでは適用の要件を満たしません。

Q. 事前確定届出給与の届出は、出向元と出向先のどちらが出すのですか?

A. 出向先法人です。法人税基本通達9-2-46(注)1は、本文の取扱いの適用を受ける給与負担金についての届出は、出向先法人がその納税地の所轄税務署長に、その出向契約等に基づき支出する給与負担金に係る定めの内容について行うこととなる、と定めています。

Q. 退職金の負担金も、出向先で役員になっていると損金にできませんか?

A. 月々の給与負担金とは扱いが分かれます。あらかじめ定めた負担区分に基づき出向期間に対応する退職給与の額として合理的に計算した金額を定期的に出向元に支出している場合は、たとえ出向先で役員となっているときであっても、その支出をする日の属する事業年度の損金に算入すると法人税基本通達9-2-48が定めています。

Q. 出向者の源泉徴収と年末調整は、どちらの会社が行いますか?

A. 所得税法183条1項は、給与等の支払をする者に源泉徴収と納付の義務を課しています。義務の基準は雇用関係ではなく支払の事実なので、本人への支払いを出向元がまとめて行っている場合は出向元が源泉徴収と年末調整を行うのが一般的です。両社が直接支払う場合は両社が支払者となり、扶養控除等申告書は主たる給与等の支払者にのみ提出します(所得税法194条1項)。

Q. 出向元と出向先の両方から給与が出ます。社会保険の標準報酬月額はどうなりますか?

A. 同時に二以上の事業所で報酬を受ける被保険者の報酬月額は、各事業所について算定した額の合算額とすると健康保険法44条3項および厚生年金保険法24条2項が定めています。保険者が二以上あるときは保険者を選択する必要があり(健康保険法施行規則1条の3第1項)、その届出は同時に二以上の事業所に使用されるに至った日から10日以内に行います(同規則2条1項)。

出典

この記事で扱っていない論点: 出向者に係る適格退職年金契約の掛金等(法人税基本通達9-2-51)、出向先が海外にある場合の国際税務(移転価格税制・恒久的施設の判定・外国人出向者の居住者判定)、グループ通算制度における取扱い、出向元・出向先が個人事業主である場合、労働者派遣事業関係業務取扱要領などの行政解釈による在籍出向の適法性の判断基準、二以上の事業所に使用される場合の保険料の各事業所への按分方法、雇用保険の被保険者資格をどちらの事業所で取得するかの判断基準。これらは本記事では一次情報を確認していないため記載していません。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。記載は2026年8月16日時点で確認した法令・通達に基づいています。実際の処理にあたっては、契約の実体と最新の法令を確認のうえ、顧問税理士・社会保険労務士にご相談ください。

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