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暗号資産(仮想通貨)の税金 — 原則は雑所得・総合課税。FXと違って分離課税は使えない

結論から言うと、暗号資産の売買などで生じた利益は、原則として雑所得(その他雑所得)に区分され、総合課税で給与などほかの所得と合算して課税されます。所得税の税率は所得税法89条の表のとおり5%から45%までの累進で、これに住民税が加わります。株式やFXのような一律の分離課税ではありません。

そして実務で最も誤解が多いのが、次の3つです。①「円に換えていないから課税されない」は誤りです— 商品の購入に使った場合も、暗号資産どうしを交換した場合も、その時点で所得を計算します。②所得区分は雑所得で固定ではありません— 国税庁のFAQは、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合に、帳簿書類の保存の有無で事業所得と業務に係る雑所得に分かれるとしています。この300万円は「儲け」ではなく「売った総額」です。③損失は他の所得と通算できず、翌年に繰り越すこともできません(所得税法69条・70条)。

もうひとつ、条文まで下りて初めて見えることがあります。暗号資産の証拠金取引は、FXと同じ「金融商品先物取引等」に当たるのに、租税特別措置法41条の14が「暗号等資産に係るものを除く」と名指しで除いているため、申告分離課税の対象になりません。しかも2026年8月12日に施行された金融商品取引法・資金決済法の改正(令和8年法律第64号)を経てもこの条文は変わっていません。以下、条文の原文から確認できることと、確認範囲を超えるため断定を避けたことを分けて示します。

結論 — 原則は雑所得・総合課税

国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」の2-2は、「暗号資産取引により生じた利益は、所得税の課税対象になり、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます」としています。理由として「暗号資産取引により生じた損益は、邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益と認められます」と説明されています。

雑所得は、所得税法35条1項が「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得」と定義する、いわば受け皿の区分です。その金額は同条2項2号のとおり「総収入金額から必要経費を控除した金額」で計算します。

総合課税なので、給与所得などと合算した課税総所得金額に対して、所得税法89条の税率表が適用されます。

所得税の税率(所得税法89条1項の表・課税総所得金額の区分ごと)
課税総所得金額の区分税率
195万円以下の金額5%
195万円を超え330万円以下の金額10%
330万円を超え695万円以下の金額20%
695万円を超え900万円以下の金額23%
900万円を超え1,800万円以下の金額33%
1,800万円を超え4,000万円以下の金額40%
4,000万円を超える金額45%

この表は区分ごとに税率を掛けて合計する超過累進の形です。課税総所得金額の全体に最高税率が掛かるわけではありません。上表に加えて復興特別所得税と住民税がかかりますが、その税率の根拠条文は本記事では確認していないため、ここでは所得税法89条の税率のみを示しています。

円に換えなくても課税される — 3つのタイミング

「日本円に出金していないから、まだ税金の話ではない」という理解は誤りです。FAQは、次のいずれの場面でも所得を計算するとしています。

購入する 課税なし 持ち続ける 課税なし ここから先は、その時点で所得を計算する ① 売却する(日本円などに換える) 売却価額 − 譲渡原価 − 手数料など=所得 ② 商品やサービスの購入に使う 買ったものの価額を譲渡価額として計算する ③ 別の暗号資産と交換する 円に換えていなくても、交換した時点で計算する ③の例(FAQ 1-3): 400万円で4BTCを購入 → 1BTCを払って40XRPを取得 (30,000円×40XRP)−(400万円÷4BTC)×1BTC = 20万円の所得
図1: 課税されるのは「買ったとき」でも「持っているとき」でもなく、売却・使用・交換の時点。円に戻していなくても②③は課税の対象になる。

FAQ 1-3の設例は、4月2日に400万円で4BTCを購入し、11月2日に40XRP(1XRP=30,000円)を取得する決済として1BTCを支払った、というものです。ここで支払った1BTCの譲渡原価は「400万円÷4BTC×1BTC=100万円」、リップルの購入価額120万円が譲渡価額に当たるので、差額20万円が所得になります。円に戻していないのに課税所得が生じている点が、この設例の要点です。

「一時的に必要な暗号資産」は平均単価の計算に含めない

所得税法施行令119条の2第2項は、平均単価を計算する際の「取得」には、暗号資産を購入・売却したり、種類の異なる暗号資産に交換したりしようとする際に一時的に必要なこれら以外の暗号資産を取得する場合の取得を含まないとしています。たとえば日本円から目的の銘柄に直接行けず、いったんビットコインを経由するような場合の、その経由分がこれに当たります。FAQ 1-3の設例にも「上記取引は一時的に必要な暗号資産を取得した場合には該当しないケースである」という注記が置かれています。

収入金額300万円を超えると所得区分が分かれる

ここが、多くの解説記事が「暗号資産は雑所得」で止めてしまうところです。FAQ 2-2(令和7年12月更新)は、原則を雑所得としたうえで、ただし書きで分岐を設けています。

ただし、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合には、次の所得に区分されます。
・ 暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がある場合・・・原則として、事業所得(注)
・ 暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がない場合・・・原則として、雑所得(業務に係る雑所得)

注記では「暗号資産取引に係る帳簿書類の保存があったとしても、暗号資産取引に営利性が認められない場合などには、事業所得に該当するかどうかを個別に判断することとなります」とされています。またFAQは、暗号資産取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合(例として、事業所得者が事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として使用した場合)は事業所得に区分される、とも述べています。

その年の暗号資産取引に係る収入金額 =売却などの総額。利益の額ではない 300万円以下 300万円を超える 雑所得 (その他雑所得) 帳簿書類の保存あり 原則 事業所得 帳簿書類の保存なし 業務に係る雑所得 ※ 帳簿があっても営利性が認められない場合などは、事業所得に当たるかを個別に判断する(FAQ 2-2 注)
図2: 所得区分の分岐。判定の入口は利益ではなく「収入金額」であり、300万円を超えた側でさらに帳簿書類の保存の有無で分かれる。
この300万円は「儲け」ではなく「売った総額」

雑所得の金額は所得税法35条2項2号のとおり「総収入金額から必要経費を控除した金額」で、譲渡原価は必要経費の側に入ります(FAQ 2-3)。つまり収入金額は控除前の売却総額です。たとえば年間で500万円ぶんを売却し、譲渡原価と手数料が480万円で利益が20万円だった場合、利益は20万円でも収入金額は500万円なので300万円を超えます。「たいして儲かっていないから関係ない」という理解では、判定を取り違えることになります。実際、FAQ 2-4の設例でも年間の売却総額は5,295,000円で、所得金額は2,189,000円です。

譲渡原価 — 総平均法と移動平均法で金額が変わる

暗号資産を継続的に売買している場合、売った分の原価をいくらとみるかを決める必要があります。所得税法48条の2は暗号資産の譲渡原価と評価の方法を定め、その具体的な方法を所得税法施行令119条の2が総平均法移動平均法の2つとしています。

FAQ 2-4は、同じ取引でこの2つの方法を比べた設例を置いています。3月1日に4BTCを1,845,000円で購入、6月20日に2BTCを1,650,000円で購入、7月10日に2BTCを2,400,000円で売却、9月15日に0.5BTCを542,800円で購入、11月30日に3BTCを2,895,000円で売却(売買手数料は考慮しない)というものです。

同じ取引でも譲渡原価は一致しない(FAQ 2-4 の設例。売却総額 5,295,000円・購入総額 4,037,800円/6.5BTC)
評価方法考え方譲渡原価所得金額
総平均法 年初の評価額とその年の取得価額の総額を、総量で割って年間ひとつの単価を出す 3,106,000円 2,189,000円
移動平均法 取得のつど単価を改定し、売却時点の単価で原価を計算する 3,080,200円 2,214,800円
25,800円 25,800円

総平均法では、取得価額の総額4,037,800円を総量6.5BTCで割った621,200円が年末時点の1単位当たり取得価額になります。年末保有は1.5BTCなので年末評価額は931,800円、譲渡原価は「4,037,800円 − 931,800円 = 3,106,000円」です。移動平均法では、7月10日の売却時点の単価582,500円で2BTC分1,165,000円、11月30日の売却時点の単価638,400円で3BTC分1,915,200円、合計3,080,200円が譲渡原価になります。同じ売買をしていても、方法が違えば所得金額が25,800円変わります。

総平均法 — 年間でひとつの単価 621,200円/BTC(4,037,800円 ÷ 6.5BTC)を、7/10 と 11/30 の両方に使う 3/1 6/20 7/10 売却 9/15 11/30 売却 移動平均法 — 取得のつど単価を改定する 461,250円 582,500円 →7/10に使用 582,500円 638,400円 →11/30に使用 3/1 6/20 7/10 売却 9/15 11/30 売却 譲渡原価 3,106,000円(総平均法)/ 3,080,200円(移動平均法) = 差 25,800円
図3: どちらが少なくなるかは値動きの順序で決まる。この設例では総平均法のほうが譲渡原価が大きく所得が小さいが、逆になる並びもあるため一般化はできない。

この設例で総平均法のほうが所得が小さくなったのは、この価格の並びだからです。どちらの方法が有利かは取得と売却の順序と価格によって変わるので、方法の優劣を一般化することはできません。

手取り計算機で、総合課税の税負担の目安を確かめる →

届出をしないと方法が自動で決まる(個人と法人で逆)

総平均法と移動平均法は自由に選べますが、選ぶには手続が要ります。FAQ 2-5によれば、①初めて暗号資産を取得した場合、②異なる種類の暗号資産を取得した場合には、その取得した年分の確定申告期限(原則として翌年3月15日)までに、納税地の所轄税務署長に「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」を提出することとされています。評価方法は暗号資産の種類(名称)ごとに選定します。

そして重要なのが、届出をしなかった場合の扱いです。所得税法施行令119条の5第1項は、届出がない場合によるべき方法を「第119条の2第1項第1号に掲げる総平均法により算出した取得価額による評価の方法とする」と定めています。FAQ 2-5の注2も「評価方法の届出書の提出がない場合には、評価方法は『総平均法』になります」としています。

個人は総平均法、法人は移動平均法 — 法定の初期値が逆になっている

法人税法施行令118条の6は、法人税法61条1項2号に規定する政令で定める方法を「第1項第1号に掲げる移動平均法とする」としています。つまり、届出や選定をしないまま放置したときに適用される方法は、個人は総平均法・法人は移動平均法で、向きが逆です。FAQ 1-3の注1も「選択しない場合、個人においては総平均法、法人においては移動平均法」と明記しています。個人事業から法人化した場合など、両方を扱う場面では取り違えやすいところです。

いったん決まった方法を変えるにも手続が要ります。FAQ 2-6によれば、変更しようとする年の3月15日までに「所得税の暗号資産の評価方法の変更承認申請書」を提出して承認を受ける必要があり、これは届出をせず総平均法になっていた場合も同じです。さらに注2として、変更前の評価方法を採用してから相当期間(特別の理由がない場合には3年)を経過していないときや、変更後の方法では所得金額の計算が適正に行われ難いと認められるときは、申請が却下される場合があるとされています。なお、申請した年の12月31日までに承認または却下の通知がないときは、その日に承認があったものとみなされます。

つまり、年末に一年の損益を見てから有利なほうを選び直す、という使い方はできません。方法は原則として事前に決めるものであり、変更にも3年の目安が置かれています。

FXとの決定的な違い — 条文が名指しで除いている

「FXが20%程度の分離課税なら、暗号資産の証拠金取引も同じでは」という疑問は自然なものですが、答えは異なります。FAQ 2-12は次のように説明しています。

暗号資産の証拠金取引による所得については、租税特別措置法に規定する申告分離課税(先物取引に係る雑所得等の課税の特例)の適用はありませんので、総合課税により申告していただくことになります。(中略)暗号資産の証拠金取引は、FXと同様に金融商品先物取引等に該当するものの、租税特別措置法の規定により、申告分離課税の対象から除かれています。

この「除かれている」の中身を条文で確かめると、租税特別措置法41条の14第1項が定める「先物取引」の定義のうち金融商品先物取引等について、市場デリバティブ取引・店頭デリバティブ取引のいずれにも「同条第二十四項第三号の二に掲げる暗号等資産(中略)に係るものを除く」というかっこ書きが置かれています。該当しないのではなく、いったん該当したうえで、条文が名指しで外しているという構造です。

同項本文は、対象となる先物取引の差金等決済に係る所得について「他の所得と区分し」て「百分の十五に相当する金額に相当する所得税を課する」としています。暗号資産はこの15%の枠組みから外されているため、前掲の5%から45%までの累進税率が適用されることになります。

FXと暗号資産の証拠金取引(本記事で条文まで確認した範囲)
FX(店頭・市場)暗号資産の証拠金取引
金融商品先物取引等に当たるか当たる当たる(とFAQは説明)
措法41条の14の対象か対象かっこ書きで除外
課税方法申告分離課税(所得税15%)総合課税(所得税5〜45%)

上表の税率は所得税のみです。一般に「20.315%」として説明される数値は復興特別所得税と住民税を含んだものですが、その根拠条文(復興特別所得税・地方税法)は本記事では確認していないため、ここでは措置法41条の14第1項の「百分の十五」と所得税法89条の税率表のみを示しています。

損失は通算も繰越もできない

暗号資産の取引で損失が出た場合、給与所得などから差し引くことはできません。FAQ 2-11がそう述べており、条文でも確かめられます。

所得税法69条1項は、他の所得から控除できる損失を「不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額」に限っています。雑所得はこの4つのいずれでもないため、損益通算の対象になりません。

翌年以降への繰越もできません。繰越控除を定める所得税法70条1項の対象は「純損失の金額」ですが、その純損失の金額は、所得税法2条1項25号が「第69条第1項(損益通算)に規定する損失の金額のうち同条の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額」と定義しています。雑所得の損失はそもそも69条1項の損失の金額に当たらないので、純損失を構成せず、70条の繰越控除にも乗りません。

ただし雑所得どうしの内部では相殺される

所得税法35条2項2号は、雑所得の金額を「その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額」としています。同じ年の雑所得の中で収入と必要経費を通算した結果として金額が決まるため、雑所得の枠内で差し引きが生じること自体は、この条文の計算構造から導かれます。ここで述べているのは所得税法35条2項の計算方法であり、異なる区分の所得との通算(69条)とは別の話です。

マイニング・分裂・取得価額が分からない場合

マイニング・ステーキング・レンディング(FAQ 1-7)。これらにより暗号資産を取得した場合、その取得時点の価額(時価)が総収入金額(法人税では益金の額)に算入され、要した費用が必要経費(損金の額)に算入されます。受け取った時点で所得が生じるという点が要点です。

分裂(分岐)で新しい暗号資産を取得した場合(FAQ 1-6)。取得した時点では課税対象となる所得は生じません。FAQは、分裂時点では取引相場が存在せず価値を有していなかったと考えられることを理由として挙げています。そしてその新たな暗号資産の取得価額は0円になります。つまり課税が消えるのではなく、売却または使用した時点まで繰り延べられ、そのとき売却価額の全額が所得の計算に乗ることになります。

取得価額や売却価額が分からない場合(FAQ 2-7)。国内の暗号資産交換業者を通じた取引については、国税庁が交換業者に交付を依頼している「年間取引報告書」で年中購入数量・購入金額・売却数量・売却金額を確認できます。手元にない場合は交換業者に再交付を依頼することとされています。国外の交換業者や個人間取引については、銀行口座の入出金や取引履歴・取引相場から確認する方法が示されています。

それでも分からないときは売却価額の5%

FAQ 2-7は「売却した暗号資産の取得価額については、売却価額の5%相当額とすることが認められます」としています。挙げられている例は、ある暗号資産を500万円で売却した場合に、取得価額をその5%である25万円とするというものです。この場合、差額の475万円が所得の計算の基礎になります。取得価額が実際にはこれより大きかったとしても、記録がなければ所得は大きく計算されることになります。なおFAQはこの取扱いの根拠として所得税基本通達48の2-4を挙げていますが、本記事では同通達の原文は確認していません。

非居住者の場合(FAQ 1-8)。外国に居住する方が日本の暗号資産交換業者に保有する暗号資産を譲渡して生じた所得は、国内源泉所得となる資産の譲渡による所得の限定列挙に含まれないため、所得税の課税対象とされていません。FAQは注記で「源泉徴収の対象ともされていません」とも述べています。外国法人についても同様とされています。

法人・相続贈与・消費税での扱い

法人が保有する場合。法人税法61条は、内国法人が保有する短期売買商品等の譲渡損益および時価評価損益を定めており、その「短期売買商品等」には、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した資産として政令で定めるもの(有価証券を除く)に加えて、資金決済に関する法律に規定する暗号資産が含まれています。個人の雑所得とは体系が異なり、期末時価評価の論点が出てきます。ただし本記事では、期末時価評価の要件、活発な市場が存在する暗号資産の判定、特定自己発行暗号資産・特定譲渡制限付暗号資産の各要件については確認しておらず、扱っていません。

相続・贈与で取得した場合(FAQ 4-1)。被相続人等から相続・遺贈・贈与により暗号資産を取得した場合には、相続税または贈与税が課税されます。FAQは、暗号資産が資金決済法上「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値」と規定されていることを理由として挙げています。

贈与した側にも所得税がかかることがある

FAQ 4-1の注記は、贈与を受けた側だけでなく渡した側にも触れています。個人が贈与(相続人に対する死因贈与を除く)または遺贈(包括遺贈および相続人に対する特定遺贈を除く)により暗号資産を移転させた場合には、所得税の計算上、その贈与または遺贈の時における暗号資産の価額(時価)を総収入金額に算入する必要があるとされています。手放して代金を受け取っていないのに所得が生じる形になる点が、見落とされやすいところです。詳細はFAQ 2-10「暗号資産を低額(無償)譲渡等した場合の取扱い」に譲られていますが、本記事では同項の内容は確認していません。

消費税(FAQ 6-1)。国内の暗号資産交換業者を通じた暗号資産の譲渡には消費税は課されません。消費税法上、支払手段およびこれに類するものの譲渡が非課税とされており、これに該当するためです。さらにFAQは、一般課税で申告する場合の課税売上割合の算出に当たって、この暗号資産の譲渡は非課税売上高に含めて計算する必要はないとしています。非課税だから分母に入る、という一般的な理解とは異なる扱いになっている点が要注意です。なお参考として、暗号資産の売買に係る仲介料として交換業者に支払う手数料は、仲介という役務提供の対価なので課税対象になるとされています。

2026年8月12日の改正で変わったこと・変わっていないこと

暗号資産の税制については「そのうち株式のような20%の分離課税になるのではないか」という見方が長く語られてきました。この点について、本記事の執筆時点で条文にどう書かれているかを確認しました。

まず、2026年8月12日に令和8年法律第64号「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」が施行されており、この改正は租税特別措置法にも及んでいます。e-Gov法令APIで取得した租税特別措置法41条の14は、リビジョン 332AC0000000026_20260812_508AC0000000064CurrentEnforced)です。

そのうえで確認できたことは次のとおりです。

ここで断定していないこと

上記で確認したのは租税特別措置法41条の14の条文と、租税特別措置法内のキーワード検索の結果です。租税特別措置法以外の法律に暗号資産の課税方法を定める規定が置かれていないことまでは確認していません。また、令和8年法律第64号の全文、および令和8年法律第12号(所得税法等の一部を改正する法律)による暗号資産関係の改正内容についても確認していません。将来の税制改正の見通しについては、本記事では扱いません。

なお、本記事が主に参照した国税庁FAQは「令和7年12月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています」と明記されており、2026年8月12日施行の改正より前の時点のものです。一方でタックスアンサー No.1524 は「令和7年4月1日現在法令等」と表示されており、そのNo.1524が参照先として案内しているFAQのほうが新しい、という関係になっています。公的な資料であっても基準日はそろっていないため、基準日を見てから引用する必要があります。

よくある質問

Q. 利益が20万円以下なら申告しなくてよいと聞きましたが、本当ですか?

A. 所得税法121条1項が「確定所得申告を要しない場合」を定めています。同項1号は、その年の給与等の金額が2,000万円以下で、1か所から給与の支払を受けてその全部が源泉徴収または年末調整の対象とされている場合において、「利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び雑所得の金額の合計額」(同項が「給与所得及び退職所得以外の所得金額」と定義するもの)が20万円以下であるときは、申告書の提出を要しないとしています。ここで注意が要るのは、この20万円が暗号資産の所得だけの金額ではなく、ほかの副収入も含めた合計額であること、給与の支払者が2か所以上の場合は同項2号の別の要件になること、そして同項ただし書が政令で定める場合を除いていることです。またこれは所得税の確定申告についての規定であり、住民税の申告が不要になるかは別の問題です(住民税の取扱いは本記事では確認していません)。

Q. 日本円に出金していなければ、税金はかからないのではないですか?

A. 出金の有無は判定の基準になっていません。国税庁FAQは、暗号資産で商品を購入した場合(1-2)と、暗号資産どうしを交換した場合(1-3)についても、その時点で所得金額を計算するとしています。1-3の設例では、400万円で購入した4BTCのうち1BTCを支払って40XRP(1XRP=30,000円)を取得したケースで、20万円の所得が生じるとされています。日本円は一度も動いていませんが、課税所得は発生しています。取引所の口座に置いたままでも同じです。

Q. 「収入金額300万円」は、儲けが300万円という意味ですか?

A. いいえ、収入金額であって利益ではありません。雑所得の金額は所得税法35条2項2号のとおり総収入金額から必要経費を控除して計算し、譲渡原価は必要経費の側に入ります(FAQ 2-3)。したがって収入金額は控除前の金額、つまり売却などの総額です。年間で500万円ぶんを売却して利益が20万円しかない場合でも、収入金額は500万円なので300万円を超えることになります。

Q. 評価方法の届出をしていません。どうなりますか?

A. 所得税法施行令119条の5第1項により、届け出なかった場合は総平均法により算出した取得価額による評価の方法によることとされています。国税庁FAQ 2-5の注2も同旨です。なお法人の場合は逆で、法人税法施行令118条の6が移動平均法を政令で定める方法としています。届出をしていなかった状態から移動平均法に変更するには、変更しようとする年の3月15日までに変更承認申請書を提出して承認を受ける必要があり、変更前の方法を採用してから相当期間(特別の理由がない場合には3年)を経過していないときは却下される場合があるとされています。

Q. 暗号資産の証拠金取引は、FXと同じ20.315%になりませんか?

A. なりません。租税特別措置法41条の14第1項が定める金融商品先物取引等の定義には、市場デリバティブ取引・店頭デリバティブ取引のいずれについても「暗号等資産(中略)に係るものを除く」というかっこ書きが置かれています。国税庁FAQ 2-12も、暗号資産の証拠金取引はFXと同様に金融商品先物取引等に該当するものの、租税特別措置法の規定により申告分離課税の対象から除かれているため総合課税になる、と説明しています。該当しないのではなく、該当したうえで条文が名指しで除いている構造です。

Q. 損失が出た年は、翌年の利益と相殺できますか?

A. 雑所得に区分される場合はできません。繰越控除を定める所得税法70条1項の対象は「純損失の金額」ですが、所得税法2条1項25号はこれを「第69条第1項に規定する損失の金額のうち同条の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額」と定義しています。そして69条1項が挙げる損失は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つに限られており、雑所得は含まれません。したがって雑所得の損失は純損失を構成せず、繰越の対象になりません。なお所得区分が事業所得になる場合の取扱いは、本記事では確認していません。

Q. 分裂(分岐)でもらったコインは、取得価額をいくらで計算しますか?

A. 国税庁FAQ 1-6は、取得価額は0円になるとしています。分裂した時点では取引相場が存在せず価値を有していなかったと考えられるため、取得時には所得が生じず、その新たな暗号資産を売却または使用した時点で所得が生ずることとされています。取得価額が0円である以上、売却したときは売却価額がそのまま所得の計算の基礎になります。法人税についても同様に取得価額は0円とされています。

Q. 暗号資産を売ったら消費税の課税売上割合が下がりますか?

A. 国税庁FAQ 6-1は、国内の暗号資産交換業者を通じた暗号資産の譲渡について、支払手段等の譲渡として非課税であるとしたうえで、一般課税により申告する場合の課税売上割合の算出に当たって、この譲渡を非課税売上高に含めて計算する必要はないとしています。したがって、この範囲においては課税売上割合への影響は生じないことになります。ただし本記事では消費税法および同施行令の該当条文の原文は確認しておらず、確認したのはFAQの記載です。

Q. NFTやステーブルコインも同じ扱いですか?

A. 本記事では確認していないため、扱っていません。国税庁FAQには、NFTやFTを用いた取引についてはタックスアンサー No.1525-2 が、電子決済手段(いわゆるステーブルコイン)については3-2-1から3-2-4の各項が置かれていますが、いずれも本記事の確認範囲外です。暗号資産と電子決済手段は資金決済法上も別の定義(同法2条14項と同条5項1号から3号まで)に基づくものとしてFAQ冒頭で区別されています。個別の取扱いについては、顧問税理士または所轄の税務署へご確認ください。

出典

本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。記載は2026年8月16日時点で確認した法令・国税庁資料に基づいています。実際の処理にあたっては、顧問税理士または所轄の税務署へご確認ください。

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