目次
- 譲渡所得の税金はどう決まるか
- 所有期間は「売った年の1月1日」で数える
- 取得費 — 建物は減価償却する/分からなければ5%
- 3,000万円特別控除と10年超の軽減税率
- 相続した空き家を売ったとき
- よくある質問
- 出典
- 関連ツール
譲渡所得の税金はどう決まるか
土地・建物を売った利益は分離課税で、給与などの所得とは合算せずに、それだけで税額を出します。順番は次のとおりです。
税率の内訳は長期が所得税15%+復興特別所得税+住民税5%=20.315%、短期が所得税30%+復興特別所得税+住民税9%=39.63%です。復興特別所得税は所得税額の2.1%で、令和19年(2037年)分までかかります。住民税には復興特別所得税はかかりません。
所有期間は「売った年の1月1日」で数える
ここがこのツールを作った理由です。租税特別措置法31条1項は長期譲渡所得を「その年一月一日において所有期間が五年を超えるもの」と定めています。基準になるのは譲渡した日ではなく、譲渡した年の1月1日です。
所有期間そのものは「取得をした日の翌日から引き続き所有していた期間」です(同条2項)。1日の違いが税率区分を変えることがあるので、このツールは起算日を画面に出します。10年超の軽減税率(31条の3)も、同じく1月1日で判定します。
取得費 — 建物は減価償却する/分からなければ5%
土地は減価しませんが、建物は買った金額をそのまま取得費にできません。所有期間中の減価償却費相当額を差し引きます(所得税法38条2項)。自宅など事業に使っていなかった建物は次の算式です。
建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数 = 減価償却費相当額
この償却率は法定耐用年数そのものではなく、法定耐用年数を1.5倍した年数(1年未満切捨て)に対応する旧定額法の償却率を使います(所得税法施行令85条)。木造の住宅なら22年×1.5=33年で償却率0.031であって、22年の償却率ではありません。経過年数は6か月以上の端数は1年、6か月未満は切り捨てます。減価償却費相当額は建物の取得価額の95%が限度なので、建物の取得費が0円になることはありません。
| 構造(住宅用) | 法定耐用年数 | ×1.5 | 償却率 |
|---|---|---|---|
| 読み込み中… | |||
なお条文(措置法31条の4)が5%を認めているのは「昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた」ものに限られており、昭和28年1月1日以後に取得したものに同じ扱いが認められているのは措置法通達31の4-1によります。条文だけを読んで「昭和27年以前のものにしか使えない」と考えると誤りです。
3,000万円特別控除と10年超の軽減税率
マイホーム(居住用財産)を売ったときは、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます(措置法35条1項)。この控除は短期譲渡にも使えます。35条1項2号が短期譲渡の32条1項も読み替えているためで、「長期でないと3,000万円控除は使えない」というのは誤りです。10年超が要るのは軽減税率のほうです。
住まなくなった後でも、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば使えます。ただし前年・前々年にこの特例を受けていると使えません(実質3年に1度)。配偶者や親子など特別の関係がある人への譲渡にも使えません。
さらに1月1日時点で所有期間が10年を超えるマイホームなら、軽減税率を併用できます(措置法31条の3)。課税長期譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分が14.21%、超える部分が20.315%です。
相続した空き家を売ったとき
相続で取得した被相続人の居住用家屋とその敷地を売った場合にも、3,000万円の特別控除があります(措置法35条3項。いわゆる空き家特例)。ただし条件が細かく、次の2つは金額に直接効きます。
- その家屋・敷地を相続で取得した相続人が3人以上いるときは、控除額が3,000万円ではなく2,000万円になります(35条4項)。人数を数えずに3,000万円で計算すると税額を過少に出します。
- 譲渡対価が1億円を超えると、特例そのものが使えません(35条3項かっこ書)。1億円の判定は、分割して売った場合や共有者が別々に売った場合の合計で行います。
このほか、家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたもので区分所有建物でないこと、相続開始の直前に被相続人が1人で住んでいたこと(老人ホーム入所などの例外あり)、相続の時から譲渡の時まで事業・貸付け・居住の用に供されていないことが必要です。相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡に限られます。
この特例の適用期限は令和9年12月31日(2027年12月31日)です。これより後の譲渡についてこのツールは控除を適用せず、その旨を表示します。延長されるかどうかは改正法が成立してからでないと分からないためです。
よくある質問
Q. 5年以上持っていたのに短期譲渡と言われました。なぜですか?
A. 所有期間を数える基準日が売った日ではなく「売った年の1月1日」だからです(租税特別措置法31条1項「その年一月一日において所有期間が五年を超えるもの」)。2021年5月に取得して2026年7月に売ると、売った時点では5年2か月ですが、2026年1月1日時点では4年7か月なので短期になります。短期は39.63%、長期は20.315%と税率がおよそ2倍違うため、2027年1月1日以後まで待って売れば税額はおよそ半分になります。売却時期を決める前にこの判定をしてください。
Q. 建物の取得費は買った金額をそのまま使えますか?
A. 使えません。建物は所有期間中に価値が減るため、減価償却費相当額を差し引いた額が取得費になります(所得税法38条2項)。自宅など事業に使っていなかった建物は「建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数」で計算し、償却率は法定耐用年数を1.5倍した年数(1年未満切捨て)に対応する旧定額法の率を使います。木造住宅なら22年×1.5=33年で0.031です。減価償却費相当額は建物の取得価額の95%が限度なので、建物の取得費が0円になることはありません。土地は減価しないので償却しません。
Q. 買ったときの金額が分かりません。どうなりますか?
A. 譲渡価額の5%を取得費とすることができます(措置法31条の4、措置法通達31の4-1)。3,000万円で売ったなら150万円が取得費です。加えて、実際の取得費が分かっていてもそれが譲渡価額の5%を下回るときは5%を使ってかまいません(国税庁 No.3258)。実質は「実額と5%の大きいほう」です。ただし5%で計算すると譲渡所得が大きく出るため、購入時の売買契約書・領収書・住宅ローンの資料などが残っていないかは先に確認してください。
Q. 3,000万円特別控除は長期譲渡でないと使えませんか?
A. 短期譲渡でも使えます。措置法35条1項は1号で長期譲渡の31条1項を、2号で短期譲渡の32条1項を、それぞれ読み替えているためです。10年超の所有が必要なのは軽減税率の特例(31条の3)のほうで、こちらと混同されがちです。ただし3,000万円控除は前年・前々年にこの特例(や居住用財産の買換え特例など)の適用を受けていると使えず、実質3年に1度になります。また配偶者・親子など特別の関係がある人への譲渡には使えません。
Q. 3,000万円控除と10年超の軽減税率は両方使えますか?
A. 併用できます。働く場所が違うためで、3,000万円控除(35条)は課税される金額そのものを減らし、軽減税率(31条の3)はその金額に掛ける税率を下げます。順番は「譲渡所得から3,000万円を引く→残った課税長期譲渡所得金額に軽減税率を当てる」です。軽減税率の6,000万円という区切りは、3,000万円を引いた後の金額で判定します。控除前の金額で判定すると税額を過大に計算してしまいます。
Q. 税金はいつ払いますか?
A. 所得税と復興特別所得税は、売った年の翌年2月16日から3月15日の確定申告で申告・納付します。住民税は売った年の翌年度に課税され、6月ごろに納税通知書が届いて、普通徴収なら年4回に分けて納めます(給与から天引きされている人は翌年6月以降の給与から引かれます)。売った年にすぐ引かれるわけではないので、納税資金を使ってしまわないよう注意してください。なお特別控除を使って税額が0円になる場合でも、特例の適用には確定申告が必要です。
出典
- 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号) — 31条1項(長期譲渡所得=その年1月1日において所有期間が5年を超えるもの・百分の十五)・31条2項(所有期間は取得の日の翌日から)/32条1項(短期譲渡所得=百分の三十)/31条の3第1項(10年超の居住用財産=6千万円以下は百分の十、超える部分は600万円+百分の十五)/31条の4第1項(概算取得費=収入金額の百分の五)/35条1項・2項(居住用財産の3千万円特別控除)・3項(空き家特例=令和9年12月31日まで・対価1億円超を除く)・4項(相続人3人以上は2千万円)
- 所得税法33条・38条・所得税法施行令85条 — 譲渡所得の計算と非事業用資産の減価の額(耐用年数の1.5倍・旧定額法・6月以上の端数は1年)
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 — 別表第一(住宅用の法定耐用年数)・別表第七(旧定額法の償却率)
- 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算・No.3211 短期譲渡所得の税額の計算 — 本ツールは No.3208 の計算例(譲渡価額1億4,500万円・取得費1億円・譲渡費用500万円→所得税600万円・住民税200万円)を1円まで再現することを機械で確認しています
- 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき・No.3261 建物の取得費の計算 — 概算取得費5%と減価償却費相当額の算式・95%限度
- 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例・No.3305 軽減税率の特例・No.3306 空き家を売ったときの特例
条文は e-Gov 法令検索の法令APIから取得して逐語で確認しています。実際の税額は、取得費に含められる費用の範囲・共有持分・買換え特例など個別の事情で変わります。このページは一般的な情報提供であり、申告内容を保証するものではありません。判断に迷う場合は税務署または税理士にご確認ください。
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