預かり証の書き方|記載項目・文例と返還時の確認表
預かり証は、預かった内容と保管・返還の条件を記録する書類です。金額や品名だけでなく、預かる目的、物の状態、返す相手と方法を明らかにします。以下の記載項目と文例は、会社間の保管を想定した実務例です。法定の必須項目を並べたものではありません。
受け取った事実の記録は受領書の解説、預り金の仕訳は預り金の解説で扱います。本稿では、預かった後の管理と返還までを確認します。
預かり証に記載する項目
預かる時点で、対象と返還の条件を同じ書類で確認できるようにします。既存契約に保管条件がある場合は、その契約名や管理番号も対応させます。
次は会社間で物品・書類・金銭を保管する場合の記載項目の例です。取引の内容や相手の指定に合わせて調整します。合意した内容と実際の受領内容は分けて記録します。
| 項目 | 記載・確認する内容 |
|---|---|
| 表題・管理番号 | 預かり証/物品預かり証など。控えと返還記録を結ぶ番号 |
| 預け主・預かる側 | 会社名、部署、担当者、所在地、連絡先。誰のために預かるか |
| 預かり日・受領確認 | 実際に受け取った日。受領した内容と担当者を確認できる記名等 |
| 対象の明細 | 金額と名目、物品の品名・型番・数量・状態、書類名・原本か写しか |
| 預かり目的 | 保管、修理のための受入れ、内容確認など。使用する範囲も確認 |
| 保管条件 | 保管場所、使用の可否、第三者に保管させる条件、費用の取決め |
| 返還条件 | 返還予定、連絡先、受取人の確認方法、引渡し方法、費用の負担 |
| 異常時の連絡 | 破損・紛失・保管条件の変更があったときの窓口と対応の協議方法 |
寄託は、物の保管を委託し、相手方が承諾することによって効力を生じます(民法657条)。預かり証は、実際に何を受け取り、どの条件で保管を引き受けたかを後で確かめるために使います。
金銭・物品・書類の記載例
物品は状態、書類は原本の区別、金銭は目的と使用の可否を具体的にします。次の表は、そのまま書式の欄に移せる文例です。
以下は架空の会社間取引の記載例です。数量・状態・保管方法も例示であり、実際に確認・合意した内容へ置き換えます。金銭例は、封印した現金を開封・使用せず保管し、そのまま返す想定です。
| 対象 | 明細・預かった旨 | 保管・返還の条件 |
|---|---|---|
| 金銭 | 封印済み現金袋を保管のために受領。封筒記載額は金30,000円。内容金額は未確認 | 開封・使用はしない。合意した保管場所で管理し、指定担当者へ封印状態を照合して返す |
| 物品 | 卓上スキャナー AS型・管理番号A、2台を保管のため受領。底面に擦り傷あり。付属品なし | 本社保管庫で保管し使用しない。返還時は管理番号・付属品・状態を照合して手渡す |
| 書類 | 事務所清掃業務委託契約書の原本1部を内容確認のため受領。添付資料は含まない | 担当部署の施錠書庫で保管し、内容確認後に預け主の指定担当者へ手渡しで返す |
共通欄には預かり日、預け主と預かる会社、連絡先、返還予定を記載します。金銭を数えて受け取った場合は、その確認額を記録します。封筒の表示額を見ただけの場合と混同しません。
例の金額欄は、印紙税の非課税を意図して空欄にするものではありません。実際に作成する金銭の預かり証は、保管契約と受取事実のどちらを証明するか、記載内容から確認します。
保管中の使用・管理条件
保管を頼まれたことと、自由に使ってよいことは別です。民法658条では、寄託物の使用には預け主の承諾が必要です。第三者に保管させる場合は、預け主の承諾があるか、やむを得ない事由があることが必要です。
金銭を契約により消費できる寄託では、同じ種類・品質・数量の物を返す扱いになります(民法666条)。本稿の金銭例は、使用せず現物を返す保管に範囲を絞っています。
無償なら保管責任がなくなるわけではない
無報酬で預かる側には、商人が営業の範囲内で受ける寄託を除き、自己の財産に対するのと同一の注意が求められます(民法659条)。商人が営業の範囲内で受ける寄託では、無報酬でも善良な管理者の注意が必要です(商法595条)。
社内運用では、書類の控えと現物を同じ管理番号で結び、保管担当・置き場所・出し入れの記録を残す方法が考えられます。異常を見つけたときは、状態を記録して預け主に連絡し、対応を協議します。
返還時の受領記録と紛失対応
社内管理上は、返還した記録と受領確認を残して完了扱いにします。預かり証を回収する運用でも、現物を返した日や受取人が分かる記録を控えに対応させます。
次は前掲の架空の物品保管例に対応する返還記録の例です。法定様式ではありません。受取人が代理人の場合は、預け主からの指示や権限も確認する運用を想定しています。
| 欄 | 記録例 |
|---|---|
| 対応する預かり証 | 物品預かり証/管理番号A |
| 返還内容・状態 | 保管例のスキャナー2台を返還。底面の擦り傷を双方で照合 |
| 返還日・方法 | 2026年11月2日/本社受付で手渡し |
| 受取人・確認 | 青葉商事株式会社 総務部 山田花子/上記物品の受領を確認する記名等 |
| 残っている預かり物 | なし。返還した明細について完了として管理 |
一部を先に返す場合は、返した明細と保管を続ける明細を分けて記録します。元の預かり証全体を返還済みとする処理は避けます。
預かり証を紛失したと言われたら
控え・受領記録・返還済みかどうかを先に照合します。書類を持ってきた人だけを見て返すのではなく、預け主への連絡、受取人や代理権の確認を行う手順を決めます。
紛失の申出を受けた場合は、管理番号、申出人、申出日、確認した資料と対応を記録する方法が考えられます。再発行する際も元の番号と再発行の履歴を対応させます。権利関係や返還先に争いがある場合は、個別の法律判断を要するため弁護士等に確認します。
返還予定より前に返してほしいとき
通常の寄託では、預け主からの返還請求と、預かる側からの返還を分けます。返還日を記載したことだけで、それより前には返せないと決め付けないようにします。
民法662条では、預け主は返還時期を定めた場合でも返還を請求できます。ただし、期限前の請求により預かる側に損害が生じたときは、預かる側から賠償を請求され得ます。
一方、預かる側からは、返還時期の定めがなければ返還できます。時期を定めている場合は、やむを得ない事由がなければ期限前には返還できません(民法663条)。
ここは物の保管を委託する寄託の説明です。敷金など債務の担保として預けた金銭の返還条件を、この説明だけで決めるものではありません。
印紙税は契約と受取事実を分ける
紙の預かり証は、何を証明する文書かを確認します。国税庁 No.7100は、名称ではなく内容の実質で判断すると説明しています。課税事項の記載と、当事者間でそれを証明する作成目的があるかを見ます。
次は紙の預かり証の区分を検討するための入口です。非課税規定や特例、複数の区分に該当する場合の所属は別に確認します。この表だけで個別の文書の課税・税額を決定するものではありません。
| 証明する内容 | 検討する区分・確認点 |
|---|---|
| 金銭・有価証券の保管契約 | 金銭又は有価証券の寄託に関する契約書は第14号文書。受領原因の表示だけと区別する |
| 金銭・有価証券の受取事実 | 受領事実を証明し支払者に交付する文書は第17号文書を検討。売上代金か、それ以外かを分ける |
| 物品・書類だけの保管 | 金銭・有価証券の寄託契約書や受取書の区分には当たらない。請負など別の課税事項がないか確認 |
| 敷金・保証金 | 建物賃貸借の損害等を担保し、契約終了時に返還する金銭の預り証は、売上代金以外の受取書 |
印紙税法基本通達の第14号文書の取扱いは、保管目的が明らかな金融機関の預り証と、受領事実の証明を目的とする受取書を分けています。保管契約と受取事実を併記した場合は、文書全体の内容と所属の規定を確認します。
印紙税上の契約書には、契約の予約・変更・補充等を証する文書も含まれます。当事者間の了解や商慣習により契約の成立等を証する文書は、一方が作成したものや署名の欠けたものも含まれます(印紙税法別表第一の通則)。
国税庁 No.7105では、売上代金には手付けや資産の権利設定の対価も含まれます。営業に関しない受取書や少額の受取書などには、非課税の規定があります。受取書の区分に当たることと、印紙の貼付が必要になることを分けて確認します。
国税庁「賃貸借契約に基づく保証金の預り証」は、返還される保証金・敷金の例と、契約終了時に返さないと定めた額を区別しています。建物賃貸借で契約終了時に返さないと定めた保証金等の額は、権利設定の対価と同一視され売上代金になります。
文書の種類を分けて、収入印紙の金額を確認する預かり証には、対象・状態・目的と保管・返還の条件を記録します。返還時は受取人と明細を確認し、完了記録を対応させます。印紙税は、金銭の保管契約か受取事実の証明かを内容から分けます。
よくある質問
預かり証と領収書はどう違いますか?
預かり証では、預かった内容と保管・返還の条件を記録します。領収書は金銭などの受取事実を証明する書類です。ただし、預かり証にも金銭の受取事実を証明する内容があるため、名前だけで印紙税の扱いを区別できません。
預かり証には何を書けばよいですか?
預け主と預かる側、受け取った日、対象の明細、預かり目的、保管・返還の条件を確認できるようにします。本稿の表は会社間で保管する場合の実務例で、法定の必須項目を示したものではありません。
無料で預かる場合も保管義務はありますか?
無報酬の寄託でも保管義務があります。民法では自己の財産に対するのと同一の注意が求められますが、商人が営業の範囲内で寄託を受ける場合は、無報酬でも善良な管理者の注意による保管が必要です。
返還したときは預かり証をどう処理しますか?
社内運用として、預かり証と返還の受領記録を同じ管理番号で対応させます。返還日、返した明細・状態、受取人、受領確認を残す方法が考えられます。一部返還の場合は、まだ保管している明細も分けて残します。
物品だけの預かり証にも印紙が要りますか?
物品だけの保管は、金銭・有価証券の寄託契約書や受取書の区分には当たりません。ただし、修理の請負など別の課税事項を証明する文書となっていないか、記載内容を確認します。
出典
記載項目・文例・返還の管理手順は、一般の会社間の保管を想定した実務例です。特別な業種や取引の法定様式・交付義務を網羅するものではありません。
- e-Gov法令検索 「民法」寄託の規定:保管の委託と承諾、使用・第三者保管、無報酬の注意義務、返還請求・返還時期、消費寄託。
- e-Gov法令検索 「商法」受寄者の注意義務:営業の範囲内で商人が受けた寄託。
- e-Gov法令検索 「印紙税法」別表第一:文書の所属、契約書の範囲、金銭等の寄託契約書・受取書。
- 国税庁「印紙税法基本通達」別表第一の寄託契約書の取扱い:寄託の意義、預り証、敷金の預り証。
- 国税庁 No.7100「課税文書に該当するかどうかの判断」:名称ではなく内容の実質で判断すること。
- 国税庁 No.7105「金銭又は有価証券の受取書、領収書」:受取書の範囲と売上代金・非課税の区分。
- 国税庁「賃貸借契約に基づく保証金の預り証」:建物の損害等を担保する保証金・敷金の事例。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の税務相談ではありません。個別の判断は税務署・税理士等にご確認ください。