FANG+レバとレバナスの隠れコスト — 信託報酬に出ない為替ヘッジの差を実績で推定する
結論から言うと、iFreeレバレッジ FANG+とauAM レバレッジ NASDAQ100 為替ヘッジ無しでは、目に見える運用管理費用の差は1ポイントに届きません。iFreeレバレッジ FANG+の実質的な負担の概算値が年1.275%以下、auAMが年0.4334%です。一方で、費用の欄に出ない為替ヘッジには、同じ指数の2本で実績から推定すると年3.6〜3.9ポイントに相当する差が出ていました。iFreeレバレッジ FANG+はヘッジを行い、auAMのヘッジ無しは行いません。
その推定に使ったのは、同じ運用会社・同じ指数・同じ2倍で、投資家から見た為替の取り方が違うauAMの2本です。総経費率はどちらも0.44%と表示されています(対象期間が違い、小数第2位の丸め)。2024年7月26日から2026年9月9日までの基準価額はヘッジあり85.04%、ヘッジ無し98.96%で、100万円なら139,157円の差になりました。この差から為替の動きを除くと、日ごとの足し上げで年+3.87pt、期間の始めと終わりの複利で年+3.56%が残ります。
この記事は、どれかを勧めるものではありません。為替ヘッジはコストであると同時に、円高のときに損失を抑える保険でもあります。費用の欄に出ない差がどのくらいあるかを数字にし、その評価は読む人に委ねる記事です。数字はすべて過去の実績からの推定で、計算の前提によって動きます。
目に見える費用を並べる
| 項目 | iFreeレバレッジ FANG+ | auAM レバレッジ NASDAQ100 | auAM レバレッジ NASDAQ100 為替ヘッジ無し |
|---|---|---|---|
| 運用会社 | 大和アセットマネジメント | auアセットマネジメント | auアセットマネジメント |
| 目指す値動き | NYSE FANG+指数の日々の値動きの2倍程度 | NASDAQ100指数(米ドルベース)の日々の値動きの2倍程度 | 同じ2倍に加え、純資産の1倍相当の米ドルを保有 |
| 為替ヘッジ | 行う | 行う | 行わない(為替予約取引等で純資産程度の米ドルを保有) |
| 2倍の作り方 | パフォーマンス連動債券(スター・ヘリオス・ピーエルシー発行・円建て)など | NASDAQ100指数先物の買建て | NASDAQ100指数先物の買建て+為替予約取引等 |
| 購入時手数料 | 上限2.2%(税抜2.0%)で販売会社が定める | 上限2.2%(税抜2.0%)で販売会社が定める | 上限2.2%(税抜2.0%)で販売会社が定める |
| 運用管理費用(信託報酬) | 年率0.9845% | 年率0.4334% | 年率0.4334% |
| 投資先の費用 | パフォーマンス連動債券に年率0.29%程度 | — | — |
| 実質的に負担する運用管理費用の概算値 | 年率1.275%以下 | — | — |
| 総経費率(対象期間) | 0.99%(2024年8月20日〜2025年8月18日) | 0.44%(2024年7月30日〜2025年7月28日) | 0.44%(2024年7月26日〜2025年7月28日) |
iFreeレバレッジ FANG+の交付運用報告書は、総経費率0.99%について「投資対象とする連動債券にかかる費用等を含みません」と書き、それとは別に、投資対象とする連動債券で純資産総額に対して年率0.29%程度以下の費用がかかったと書いています。見出しの0.98%に対して、書類が示す実質は1.275%以下です。
レバレッジ型で増える見えないコストの層
投資信託のコストは、次の層に分かれています。レバレッジ型では、とくに5番目と6番目が大きくなります。
- 信託報酬 — 交付目論見書に年率で書かれている、いちばん目に入る費用
- その他費用 — 監査費用・保管費用など。信託報酬と合わせたものが総経費率で、年1回の運用報告書で実績が出る
- 売買委託手数料・有価証券取引税 — 総経費率の計算から除かれている
- 配当にかかる外国の税金 — 投資先の国で差し引かれる分
- 為替ヘッジのコスト — ヘッジを行う商品だけ。費用の欄ではなく、日米の金利差として基準価額に効く
- レバレッジの資金調達コスト — レバレッジ型だけ。先物や債券の価格に織り込まれる
為替ヘッジについては、3本のうちヘッジを行う2本の交付目論見書に同じ趣旨の記載があります。auAM レバレッジ NASDAQ100の書き方では「為替ヘッジを行う際、日本円の金利が組入資産の通貨の金利より低いときには、金利差相当分がコストとなり、需給要因等によっては、さらにコストが拡大することもあります」。また同じ目論見書は、基準価額が指数の2倍の値動きから乖離する要因の一つに「配当利回りと短期金利の差」を挙げています。どちらも費用の欄や総経費率には数字として出てきません。
為替ヘッジに対応する差を実績から推定する
auAMの2本は、同じ運用会社・同じ指数・同じ2倍で、投資家から見た為替の取り方が違います。ヘッジ無しは、先物で2倍を作ったうえで、為替予約取引等により純資産程度の米ドルを保有する仕組みです。そのため、2本の差には為替ヘッジの有無だけでなく、為替予約の実装にかかる差も混ざります。運用会社が公開している日次の分配金再投資基準価額を、両方に値がある同じ期間で並べました。
| 項目 | ヘッジあり | ヘッジ無し |
|---|---|---|
| 分配金再投資基準価額(2024年7月26日) | 16,268円 | 10,000円 |
| 分配金再投資基準価額(2026年9月9日) | 30,103円 | 19,896円 |
| 累積騰落率 | 85.04% | 98.96% |
| 100万円を入れた場合 | 1,850,443円 | 1,989,600円 |
| 総経費率(表示) | 0.44% | 0.44% |
ヘッジ無しは米ドルを持つので、為替の動きの分を除く必要があります。為替には、日本銀行が公表する「東京市場 ドル・円 スポット 9時時点」を、基準価額と同じ日付で当てました(理由は次の節)。同じ期間、ドル円は153.71円から153.46円へ-0.16%動きました。
| 計算のしかた | 為替で説明できない差(年あたり) | 中身 |
|---|---|---|
| 日ごとに足し上げる | +3.87pt | (日ごとの騰落率の差の合計+9.07pt − 日ごとの為替変化率の合計+0.87pt)÷ 2.12年 |
| 始めと終わりの複利で比べる | +3.56% | (ヘッジ無しの倍率 ÷ ヘッジありの倍率 ÷ 為替の倍率)を年率にした値 |
計算のしかたで0.3ポイントほど違いますが、どちらでも年3.5ポイントを超える差が、為替の動きを除いても残りました。参考として、おおむね同じ時期の短期金利を見ると、米国3か月物財務省証券の日次平均が4.04%(2024年7月26日〜2026年9月4日)、日本のコールレートの月次平均が0.47%(2024年7月〜2026年6月)で、差は3.57ポイントでした。目論見書の「金利差相当分がコスト」と同じ向き・同じ程度の大きさですが、ここで使った金利は実際の為替予約の値ではないので、一致したとまでは言えません。
為替の当て方で結果が変わる — 東京9時を使った理由
この計算は、どの時点の為替を当てるかで結果が変わります。当初、米国の前営業日の為替(FRB H.10)を当てたところ、米国の祝日などで為替の値が無い日の扱いによって、推定値が大きく動きました。そこで2つの当て方を、実績との連動の強さで比べました。
| 為替の当て方 | 「ヘッジ無し−あり」の日次差との相関 |
|---|---|
| 日本銀行 東京9時・基準価額と同じ日付 | 0.92 |
| FRB H.10・米国の前営業日 | 0.71 |
東京9時のほうが日次差と強く連動しており、日次差を為替に回帰した傾きは0.95でした。ヘッジ無しが純資産の1倍程度の米ドルを持つという書類の説明とも合います。各ファンドが実際に使った為替レートは交付目論見書・交付運用報告書に書かれていないため、実績との連動が強いほうを採用したという判断です。
1倍ファンドを代理にした日次の追跡残差
次に、3本それぞれが「指数の日々の値動きの2倍」からどれだけずれたかを見ます。NYSE FANG+指数の日次データは無料で公開されていないため、3本とも同じ手法にそろえ、同じ指数に連動する1倍ファンドの日次騰落率を2倍したものを代理にしました。
- FANG+の代理:iFreeNEXT FANG+インデックス(為替ヘッジなし・運用管理費用 年率0.7755%・総経費率0.78%・ベンチマークは税引後配当込み)
- NASDAQ100の代理:iFreeNEXT NASDAQ100インデックス(為替ヘッジなし・運用管理費用 年率0.495%・総経費率0.51%・ベンチマークは税引後配当込み)
- ヘッジありは、代理の円建て騰落率を東京9時のドル円で米ドル建てに直してから2倍と比べ、ヘッジ無しは「米ドル建ての2倍+1倍分の為替」と比べました
- 期間:2024年7月26日〜2026年9月9日(2.12年)
| ファンド | 為替ヘッジ | 代理×2に対する日次の追跡残差(年あたり) |
|---|---|---|
| iFreeレバレッジ FANG+ | あり | -9.48pt |
| auAM レバレッジ NASDAQ100 | あり | -8.97pt |
| auAM レバレッジ NASDAQ100 為替ヘッジ無し | なし | -5.11pt |
この残差は、そのままコストではありません。中には次のものが混ざっています。
- レバレッジの資金調達にあたる差 — 目論見書が乖離要因に挙げる「配当利回りと短期金利の差」など、先物や債券の価格に織り込まれる部分
- 為替ヘッジに対応する差 — ヘッジありの2本だけ
- 代理の1倍ファンド自身の費用と、指数の定義の違い — 代理は信託報酬を差し引いた基準価額で、税引後配当込みの指数を追っている。レバレッジ型の目標は米ドルベースの指数
- 先物と現物の違い、評価時点のずれなどの誤差
FANG+レバとauAMヘッジ無しで、分かっていることと分からないこと
| 要素 | iFreeレバレッジ FANG+ | auAM ヘッジ無し | 分かっていること |
|---|---|---|---|
| 目に見える運用管理費用 | 年1.275%以下(0.9845%+連動債券0.29%程度) | 年0.4334% | 交付目論見書の記載。差は約0.84ポイント |
| 為替ヘッジ | 行う | 行わない | auAMの同じ指数の2本では、ヘッジに対応する差が年3.6〜3.9ポイントと推定された。iFreeレバレッジ FANG+も同じ方向の負担が見込まれるが、同商品の実額はこの資料からは分けられない |
| レバレッジの資金調達にあたる差 | どちらも先物や債券の価格に織り込まれる | 単独では取り出せていない | |
目に見える費用の差は1ポイントに届かない一方、ヘッジを行うかどうかで生じる差は、同じ指数の2本では年3ポイントを超えていました。費用の欄だけを比べると、為替ヘッジという層を見落とします。ただし、iFreeレバレッジ FANG+のヘッジに対応する差を直接測ったわけではありません。
上の追跡残差の表で、iFreeレバレッジ FANG+(-9.48pt)とauAMヘッジ無し(-5.11pt)の差を取ることもできますが、この差をヘッジと費用に足し引きで分けることはしません。代理の1倍ファンドがFANG+とNASDAQ100で別のファンドで、費用も年0.7755%と年0.495%で違い、指数の中身も違うためです。
これとは別に起きる「日次2倍」のずれ
レバレッジ型は日々の値動きの2倍を目指すため、1年間の指数の上昇率の2倍にはなりません。たとえば指数が+10%の翌日に−10%になると、指数は0.99倍ですが、2倍型は1.2×0.8=0.96倍です。上下を繰り返すほど、この差は大きくなります。
この記事の追跡残差は日ごとの騰落率どうしを比べているので、このずれは含めていません。ただし、保有する人の結果には効きます。auAM レバレッジ NASDAQ100の交付運用報告書でも、決算期の騰落率は29.0%で、同期間のNASDAQ100指数(米ドルベース)の騰落率22.3%の2倍には届いていません。これはコストだけでなく、この日次2倍の性質も含んだ結果です。
この計算で言えないこと
- 将来も同じ大きさとは言えません。為替ヘッジに対応する差は主に日米の金利差で動くため、金利差が縮めば小さくなります
- 数字は推定です。東京9時のドル円は、各ファンドが実際に使った為替レートと同じではありません。計算のしかた(日ごとの足し上げか複利か)でも0.3ポイントほど違います
- ヘッジ無しとヘッジありの差は、ヘッジだけの差ではありません。ヘッジ無しは為替予約取引等で米ドルを持つので、その実装の差も混ざります
- レバレッジの資金調達にあたる差だけを取り出すことはできていません。
- どれかが優れているという評価ではありません。ヘッジの有無、指数、値動きの大きさは、それぞれ別の判断材料です
よくある質問
Q. 為替ヘッジありとなしでは、どちらのコストが高いですか?
A. auAMの2本は総経費率がどちらも0.44%と表示されていますが、2024年7月26日から2026年9月9日までの基準価額の差から為替の動きを除くと、年3.6〜3.9ポイントの差が残りました。交付目論見書は、為替ヘッジを行う際に金利差相当分がコストになると書いています。ただし、この差にはヘッジ無しが米ドルを持つための為替予約の実装の差も混ざり、ヘッジは円高時の損失を抑える保険でもあるため、コストだけで優劣は決まりません。
Q. iFreeレバレッジ FANG+の信託報酬は0.98%ですか?
A. 運用管理費用(信託報酬)は年率0.9845%ですが、交付目論見書には、投資対象とするパフォーマンス連動債券にかかる費用として年率0.29%程度があり、それを含めた実質的に負担する運用管理費用の概算値は年率1.275%以下と書かれています。交付運用報告書の総経費率0.99%は、この連動債券の費用を含まない数字です。
Q. 総経費率が同じなら、コストは同じと考えてよいですか?
A. 同じとは言えません。総経費率には売買委託手数料や有価証券取引税が原則として含まれず、為替ヘッジの金利差や、先物の価格に織り込まれる配当利回りと短期金利の差も費用の欄に出てきません。auAMのヘッジあり・無しの2本は総経費率の表示が同じでも、為替の動きを除いて年3ポイントを超える差が残りました。
Q. レバレッジ型は長く持つと必ず損をしますか?
A. 必ずとは言えません。日々の値動きの2倍を目指すため、値動きが上下を繰り返すと指数の2倍より成績が下がり、上昇が続くと2倍を上回ることもあります。これとは別に、この記事で見た為替ヘッジや資金調達にあたる差が毎年かかります。どちらも保有期間が長いほど結果への影響が大きくなります。
Q. 為替ヘッジに対応する差は今後も年3ポイント以上ですか?
A. 分かりません。この差は主に日米の短期金利差で動き、この記事の期間では参考として米国3か月物財務省証券の日次平均が4.04%、日本のコールレートの月次平均が0.47%でした。日本の金利が上がるか米国の金利が下がれば、差は小さくなります。
出典
- 大和アセットマネジメント「iFreeレバレッジ FANG+」交付目論見書 — 購入時手数料の上限、運用管理費用(年率0.9845%)、パフォーマンス連動債券の費用(年率0.29%程度)と実質的に負担する運用管理費用の概算値(年率1.275%以下)、為替ヘッジと金利差相当分のコスト、投資対象、パフォーマンス連動債券の概要(発行体・連動対象)
- 大和アセットマネジメント「同」交付運用報告書(作成対象期間2024年8月20日〜2025年8月18日) — 総経費率0.99%とそれが連動債券の費用等を含まない旨、連動債券に年率0.29%程度以下の費用がかかった旨
- auアセットマネジメント「auAM レバレッジ NASDAQ100」「auAM レバレッジ NASDAQ100 為替ヘッジ無し」交付目論見書(使用開始日2026年4月28日) — 購入時手数料の上限、運用管理費用(年率0.4334%)、総経費率と対象期間、為替ヘッジと金利差相当分のコストの記載、乖離要因(配当利回りと短期金利の差)、運用の仕組み
- auアセットマネジメント「同」交付運用報告書(決算日2025年7月28日) — 年間の騰落率と参考指数、運用の仕組み
- 大和アセットマネジメント「iFreeNEXT FANG+インデックス」「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」交付目論見書・交付運用報告書 — 運用管理費用(年率0.7755%/0.495%)、総経費率(0.78%/0.51%)、為替ヘッジを原則として行わない旨、ベンチマーク(税引後配当込み、円ベース)
- 大和アセットマネジメント・auアセットマネジメントが各ファンドページで公開する基準価額のCSV(取得日2026年9月13日) — 分配金再投資基準価額
- 日本銀行 時系列統計データ「東京市場 ドル・円 スポット 9時時点」(FM08 FXERD01) — 円換算と為替の除去に使用
- 参考:Board of Governors of the Federal Reserve System, H.10 Foreign Exchange Rates(FRED:DEXJPUS。当て方の比較に使用)、3-Month Treasury Bill Secondary Market Rate(FRED:DTB3)。OECD の日本のコールレート(FRED:IRSTCI01JPM156N)
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