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eMAXIS Slimオルカン vs 楽天・プラス・オルカン|費用と実績を比較

全世界株式(オール・カントリー)に連動する人気の2本は、目に見える信託報酬の差と、実際の基準価額の差が、大きさも向きも一致しませんでした。信託報酬は楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンドが年0.0561%、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が上限で年0.05775%で、楽天・プラスのほうが0.00165ポイント安い(eMAXIS Slimの目論見書が示す実質信託報酬率の例0.05755%と比べても0.00145ポイント安い)。ところが両社が公開している基準価額をまったく同じ期間で並べると、2023年10月27日から2026年9月11日までの累積騰落率はeMAXIS Slimが93.72%、楽天・プラスが92.73%でした。

100万円を同じ日に入れていたとすると、いまの評価額は1,937,223円と1,927,348円で、差は9,875円です。年率に直した差は+0.224ptで、信託報酬の料率差とは桁が違います。楽天・プラスが設定された直後の期間を外しても差は残り、後ろの起点では年率+0.079pt〜+0.120ptでした。

この記事は、どちらを買うべきかを勧めるものではありません。信託報酬の数字の順番と、費用などを差し引いた後の基準価額の順番は、必ずしも一致しないことを、公開資料と実績から確かめる記事です。差がどこから来るのかも、書類に書かれている範囲で整理します。

同じ期間で並べた結果

項目eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド
信託報酬(税込年率)0.05775%(純資産総額に応じた段階制の上限)0.0561%
総経費率(直近の対象期間)0.07061%(2025年4月26日〜2026年4月27日)0.08%(2024年7月17日〜2025年7月15日・小数第2位で四捨五入)
購入時手数料/信託財産留保額ありません/ありませんありません/ありません
分配金再投資基準価額(2023年10月27日)19,163円9,924円
分配金再投資基準価額(2026年9月11日)37,123円19,127円
累積騰落率93.72%92.73%
年率換算25.863%25.639%
100万円を2023年10月27日に入れた場合1,937,223円1,927,348円

期間は2.87年、両方に基準価額がある702営業日です。どちらも分配金を出していないので、分配金再投資基準価額と基準価額は同じ値になっています。1年ごとに区切ると、差は次のとおりでした。

期間eMAXIS Slim楽天・プラス
2023年10月27日〜2024年10月25日37.79%37.33%+0.45pt
2024年10月25日〜2025年10月24日19.99%19.85%+0.14pt
2025年10月24日〜2026年9月11日(途中)17.18%17.10%+0.08pt
+0.45pt2023/10〜2024/10+0.14pt2024/10〜2025/10+0.08pt2025/10〜2026/9※差=eMAXIS Slim の騰落率 − 楽天・プラスの騰落率(分配金再投資基準価額)。※は途中
1年ごとに見ると、どの区間もeMAXIS Slimが上回り、差は年を追って縮んでいる。

信託報酬に出てこないコストの層

投資信託で投資家が負担するコストは、交付目論見書の「信託報酬」の1行だけではありません。実際には次の層に分かれています。

  1. 信託報酬 — 交付目論見書に年率で書かれている、いちばん目に入る費用
  2. その他費用 — 監査費用・保管費用など。信託報酬と合わせたものが総経費率で、年1回の運用報告書で実績が出る
  3. 売買委託手数料・有価証券取引税 — 総経費率の計算から除かれている
  4. 配当にかかる外国の税金 — 投資先の国で差し引かれる分
  5. 為替ヘッジのコスト — ヘッジを行う商品だけ。費用の欄ではなく、日米の金利差として基準価額に効く
  6. レバレッジの資金調達コスト — レバレッジ型だけ。先物や債券の価格に織り込まれる

このうち3番目は、両社の書類にはっきり書かれています。三菱UFJアセットマネジメントの交付目論見書は、総経費率を「当期間の運用・管理にかかった費用の総額(原則として購入時手数料、売買委託手数料および有価証券取引税を除く。消費税等のかかるものは消費税等を含む。)」から計算すると書き、楽天投信投資顧問の交付目論見書も「原則として、購入時手数料、売買委託手数料および有価証券取引税を含みません」と書いています。総経費率ですら、売買にかかるコストは入っていないということです。

1〜6をまとめて捉えられるのは、実際の基準価額の動きだけです。同じ指数を追う2本を同じ期間で比べれば、その差には、費用だけでなく品貸料などの収益や、為替・株価の評価時点のずれまで、すべてが含まれます。この記事の中心がその比較です。

総経費率を比べる — 精度と期間が揃っていない

信託報酬の次に見るべき数字は総経費率ですが、この2本ではそのまま比べられない事情が2つあります。

eMAXIS Slim楽天・プラス
公表の精度小数第5位まで(0.07061%=運用管理費用0.05746%+その他費用0.01315%)小数第2位まで(0.08%=運用管理費用0.06%+その他費用0.02%)
対象期間2025年4月26日〜2026年4月27日2024年7月17日〜2025年7月15日

決算日が違うため、同じ1年の総経費率はどちらの書類にも載っていません。また楽天・プラスの0.08%は四捨五入後の値なので、0.075%以上0.085%未満のどこかです。「0.07%と0.08%で、差は0.01ポイント」とは言えません

信託報酬の段階制で、実際の料率は上限より低くなるeMAXIS Slimの信託報酬は純資産総額に応じて下がる段階制で、5,000億円未満の部分が年0.05775%、1兆円以上の部分が年0.05753%です。交付目論見書には、純資産総額11兆9,000億円のときの実質信託報酬率の例として0.05755%が載っています。表の0.05775%は上限の値です。

同じ期間の基準価額で比べる方法

計算は単純です。両社が公開している日次の「分配金再投資基準価額」を取り、両方に値がある日だけを残して、起点と終点の比を取りました。

この方法は、ベンチマークの定義や決算期の違いに左右されません。投資家が実際に保有していた場合に得た結果そのものを並べているからです。

起点を変えても差は残るか

楽天・プラスは2023年10月27日に設定されたばかりのファンドです。設定直後は純資産が小さく、売買のコストが相対的に大きくなりやすい時期です。そこで起点をずらし、終点を2026年9月11日に固定して計算し直しました。

起点eMAXIS Slim楽天・プラス年率の差
2023年10月27日93.72%92.73%+0.224pt
2024年1月4日78.85%78.39%+0.120pt
2024年7月16日38.33%38.09%+0.094pt
2025年1月6日35.13%34.93%+0.106pt
2025年7月15日31.08%30.99%+0.079pt

設定日を起点にした差がいちばん大きく、設定直後の期間が差を押し上げていたことが分かります。後ろの4つの起点では年率+0.079pt〜+0.120ptの範囲で、起点を遅らせるほど小さくなる、という単調な動きではありません。それでもどの起点から見てもeMAXIS Slimが上回り、差は0になりませんでした

書類に書かれている運用の違い

差の原因を1つに特定する資料はありません。ここでは、両社の書類に書かれている違いを並べるにとどめます。

eMAXIS Slim楽天・プラス
組入先(交付運用報告書)外国株式インデックスマザーファンド83.0%、新興国株式インデックスマザーファンド12.0%、日本株式インデックスマザーファンド5.0%マザーファンド経由。組入上位に株価指数先物(買建)が並ぶ
ETF・先物の扱い(書類の記載)連動性を維持するためETFと株価指数先物取引を利用することがあり、規模や資金流出入によってはその割合が相対的に大きくなることがある
有価証券の貸付収益(品貸料)にかかる報酬の書き方品貸料のうちファンドに属するとみなした額の49.5%(税抜45.0%)以内を、委託会社と受託会社が受け取る(運用管理費用に追加)「貸付有価証券関連報酬」として、品貸料に0.55(税抜0.5)を乗じて得た額を投資信託財産から支払う

楽天・プラスの交付運用報告書は、ベンチマークとの差の要因として、マザーファンドへの継続的な資金流出入に伴う現物株式やETF、株価指数先物取引の売買執行コストの積み重なり、保管費用、投資先ETFや先物とベンチマークの動きの差、為替評価タイミングのずれ、配当課税の税率の差異、信託報酬を挙げています。いずれも、信託報酬の欄には現れない層です。

品貸料は「隠れた収益」で、その配分も費用の一種保有する株式を貸し出すと、貸付料がファンドの収益になります。これは基準価額を押し上げる方向に働きますが、両ファンドとも、品貸料に応じた報酬が差し引かれる仕組みです。割合と書き方は上の表のとおりで、楽天・プラスの書類は報酬の受取先までは書いていません。実際に品貸料がいくら発生したかは、交付目論見書からは分かりません。

かい離の数字は横並びにできない

運用報告書には「ベンチマークとの差(かい離)」が載っています。eMAXIS Slimは直近5期で−0.2・+0.3・−0.2・+0.2・+0.2ポイント、楽天・プラスは設定来2期で−0.2・0.0ポイントです。eMAXIS Slimの直近期(+0.2ポイント)について、交付運用報告書は内訳を外国株式インデックスマザーファンド0.3%程度、新興国株式インデックスマザーファンド0.0%程度、日本株式インデックスマザーファンド△0.1%程度とし、主なプラス要因を配当評価差異やファンドとベンチマークで適用される配当税率の差異などを含む「その他の要因」、主なマイナス要因を「組入要因」と説明しています。ただし、この数字を2本の比較には使えません

基準とする指数の定義が違えば、「ファンド−指数」の差は同じ物差しではなくなります。だからこの記事では、指数を介さず、2本の基準価額どうしを直接並べました

この比較で言えないこと

積立シミュレーターで年率の差を金額にしてみる

よくある質問

Q. 信託報酬が安いほうを選べば、コストは低くなりますか?

A. この2本では、信託報酬は楽天・プラスのほうが上限比で年0.00165ポイント安いのに、2023年10月27日から2026年9月11日までの基準価額は、eMAXIS Slimのほうが累積で+0.99pt上でした。信託報酬は負担するコストのうち1つの層にすぎず、売買委託手数料や配当にかかる税金などは総経費率にも含まれません。同じ指数を追う商品を比べるなら、同じ期間の基準価額を並べると、層を合計した差が見えます。

Q. 総経費率は信託報酬より正確なコストですか?

A. 信託報酬に監査費用や保管費用などを足した実績値なので、信託報酬より実態に近い数字です。ただし交付目論見書が明記しているとおり、購入時手数料、売買委託手数料、有価証券取引税は含まれていません。また対象期間は各ファンドの決算期ごとに違い、公表の桁数も運用会社によって違います。この2本では、eMAXIS Slimが小数第5位まで、楽天・プラスが小数第2位までの公表でした。

Q. かい離がプラスの年があるのはなぜですか?

A. eMAXIS Slimの交付運用報告書では、直近5期のうち3期でファンドの騰落率がベンチマークを上回っています。直近期の+0.2ポイントについては、主なプラス要因として、配当評価差異やファンドとベンチマークで適用される配当税率の差異などを含む「その他の要因」が挙げられ、主なマイナス要因は「組入要因」とされています。過去の各期を同じ粒度で分けた説明はこの報告書だけでは確認できません。交付目論見書には、有価証券の貸付を行った場合に品貸料がファンドの収益になることも書かれていますが、その寄与額は資料から分かりません。

Q. 楽天・プラスは設定から日が浅いので不利なのではありませんか?

A. 設定直後の期間を含めると差は大きく出ます。起点を2023年10月27日にすると年率の差は+0.224ptですが、後ろの4つの起点では+0.079pt〜+0.120ptです。ただし、どの起点から見てもeMAXIS Slimが上回っていました。今後、純資産が増えることで差が縮むかどうかは、この実績からは分かりません。

Q. 年率0.2ポイントの差はどのくらいの金額になりますか?

A. この記事の期間では、100万円が約2.9年で9,875円の差になりました。元本が大きく期間が長いほど金額は大きくなり、複利でも広がります。ただし、差は起点によって年率+0.079ptから+0.224ptまで動いており、将来も同じ差が続くとは限りません。

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出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得や売買を勧めるものではありません。当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言を行うものでもありません。本文の数値は、記載した期間・資料・計算方法による過去の実績と、その実績から計算した目安であり、将来の運用成果を示すものではありません。各ファンドの費用・運用方針は変更されることがあるため、購入を検討する場合は販売会社で最新の交付目論見書をご確認ください。投資による損失が生じた場合の責任は負いかねます。

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