赴任の引越し費用は非課税?支度金・家族旅費と給与処理の確認表
国内赴任の転居旅費は、役員・従業員を通じた適正なバランスと同業種・同規模の水準を勘案し、旅行に通常必要と認められる範囲なら所得税が非課税です。「引越し代」「支度金」という名前ではなく、何に充てる支給なのかで判断します。
経理では、本人・家族の移動費、家財の運送費、生活補助を分けて確認します。実費精算なら何でも非課税、定額ならすべて給与、という分け方はできません。
この記事は、在職する従業員の国内転任に伴う転居を扱います。海外赴任、採用時や退職時の転居は対象外です。異動の人事判断は人事異動の記事に分けています。
赴任費用を分ける早見表
国内転任に伴う転居費用の確認表です。旅費の非課税範囲は、旅行に通常必要な費用かを、全役員・使用人を通じた適正な支給基準のバランスと、同業種・同規模の他社水準も勘案して判断します。
| 費用・支給の区分 | 所得税の確認 | 確認する内訳・資料の例 |
|---|---|---|
| 本人の赴任先への移動費 | 転居の旅行に通常必要な運賃等に当たるか | 辞令、旧居・新居、移動日、経路、運賃明細 |
| 同伴家族の移動費 | 転任に伴う転居との関係と、通常必要な範囲を確認 | 転居する家族、本人との移動日程、区間、私用分の有無 |
| 家財の運送費 | 転居に必要な移転料等に当たる内容・範囲か | 運送元・運送先、運送品、作業内訳、見積書・請求書 |
| 転居の旅行に伴う宿泊費 | 旅行の日程上、通常必要な宿泊か | 宿泊日、移動との関係、宿泊明細 |
| 支度金・赴任手当 | 名称では決まらない。旅費相当分と生活補助を区別 | 支給目的、算定根拠、費目別の内訳 |
| 転任の転居旅費の過大な部分 | 通常必要な範囲を超える部分は給与所得 | 通常必要額と超過額の区分・確認根拠 |
| 家族との同居までの着後滞在費 | 通常の赴任旅費のほか、同居までの日数等に応じる支給は給与所得 | 支給対象期間、通常の旅行費用との区別 |
資料欄は社内確認の例です。税法で定められた統一様式や、これだけで非課税になる書類一覧ではありません。
非課税の範囲を決める確認順序
転居の旅行との関係を確かめてから、金額の相当性を判断します。会社が負担するという社内決定と、受け取る従業員の所得税が非課税になることは別です。
所得税法の非課税所得の規定は、転任に伴う転居のための旅行に必要な支出に充てる金品のうち、その旅行について通常必要と認められるものを非課税としています。
国税庁の旅費に関する所得税基本通達は、目的・経路・宿泊の要否等から通常必要な範囲を判断し、全役員・使用人を通じた適正なバランスと、同業種・同規模の他社水準を勘案するとしています。
規程の限度内であることだけでは、通常必要な範囲の説明になりません。逆に、社内上限を超えた見積りだからという理由だけで、旅行費用の税務上の扱いまで決めることもできません。
本人・家族・家財の資料をそろえる
誰が、どこからどこへ、何のために移動するかをそろえます。以下は確認資料の整理例です。領収書があるかどうかに加え、赴任との関係が分かる記録を残します。
本人と家族の移動は日程を分けて記録する
辞令と本人の移動予定を照合し、転居のための移動か、出張や私用の旅行が混ざっていないかを確認します。家族分は、転居する家族と区間・日程を本人分とは分けて記録すると、支給の根拠を説明しやすくなります。
家族が後から転居する場合も、赴任との関係や別日程となった事情を確認します。家族分という理由だけで非課税額を確定せず、旅行の目的と通常必要な範囲を確かめます。別居中の帰省旅費は、転居のための移動と混ぜずに扱います。
引越業者の請求は作業の内訳を見る
家財の運送、荷造り、保管、処分、購入などが同じ請求に含まれている場合は、内訳を確認します。請求書全体を「引越し代」とまとめると、家財を運ぶ費用と新生活の支援を区別できなくなります。
運送品やオプション名だけで結論を出すのではなく、転居に必要な作業か、支給額が相当かを確認します。家具・家電の購入補助は家財の運送費と分け、旅費の非課税規定にそのまま含めないようにします。
支度金と着後滞在費の分け方
支度金は、使い道と算定根拠で分けます。定額支給のときも、支給目的や算定根拠を精算書に記録します。実費精算でも、領収書のある私的な支出まで非課税旅費になるわけではありません。
例えば、移動費を立替精算し、それとは別に生活用品の購入補助を支給する場合は、同じ赴任を理由に払う金銭でも費目を分けます。目的が混在する支度金は、承認時に内訳を明らかにし、確認できないまま全体を非課税旅費に振り分けない運用にします。
在職従業員の転任に伴う転居の旅行では、旅費として支給した額のうち通常必要な範囲を超える部分は給与所得となります。根拠は所得税基本通達の非課税旅費を超える部分の所得区分です。
旅行中の宿泊と同居までの生活補助を分ける
転居の旅行自体に通常必要な宿泊費と、赴任後の生活補助は区別します。宿泊施設の領収書があることだけでは、非課税かどうかは決まりません。
国税庁「源泉徴収のあらまし」の着後滞在費の説明では、通常の赴任旅費のほか、家族の同伴が不可能な転勤者に、同居までの日数などに応じて支給する着後滞在費は給与所得としています。旅費規程に基づく支給でも同じ扱いです。
規程から精算・給与処理へつなぐ
支給を決める担当者と、精算・給与を処理する担当者が同じ内訳を使えるようにします。次の表は社内の引き継ぎ例で、法定の手順や保存書類の全件を示すものではありません。
| 場面 | 記録すること | 次の担当へ渡すもの |
|---|---|---|
| 規程を読む | 対象者・家族の範囲、支給費目、実費・定額、承認方法 | 適用する規程と支給決定の記録 |
| 支給を承認する | 赴任先、移動日、見積内訳、生活補助との区分 | 辞令、申請書、見積書、承認内容 |
| 仮払い・直接払いを行う | 支払相手、対象費目、仮払いの有無 | 支払記録、後で精算する項目 |
| 精算する | 見積りとの差、本人立替との重複、私用分・未使用分 | 確定した費目別明細と差額処理の記録 |
| 給与へ引き継ぐ | 給与として扱う支給の内容と支払時期 | 給与計算へ反映する明細・税務確認の記録 |
精算書には「赴任費用」の合計だけでなく、費目、支払先、支給目的、課税・非課税の確認結果、確認した資料を並べると引き継ぎやすくなります。仮払いと従業員の立替、会社の直接払いを突き合わせ、二重精算を防ぐ確認も入れます。
給与として扱う部分は、旅費の精算完了だけで処理を終えず、給与担当へ共有します。給与として支給する手当の扱いは所得税法の給与所得の規定も確認します。源泉徴収税額はほかの給与や適用する税額表等で変わるため、赴任費用だけでは確定しません。
源泉徴収税額の目安を確認するこのツールは、赴任費用が非課税旅費かどうかを判定するものではありません。
消費税は支払先と保存書類を確認
所得税の非課税と、消費税の非課税を混同しないようにします。国内転勤で従業員へ支給する旅費等は、全役員・使用人を通じた支給基準の適正なバランスと同業種・同規模の他社水準を勘案し、旅行に通常必要と認められる部分を消費税の課税仕入れとします。
国税庁「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」は、この課税仕入れについて、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能としています。所得税の非課税旅費だから、消費税も非課税取引にする、という処理ではありません。
会社が引越業者へ直接支払う取引は、従業員に支給する旅費等と区別して確認します。相手方からの請求書等を保存し、取引内容と適用する保存要件を確認します。従業員の領収書の有無だけで、会社の保存すべき書類を決めないようにします。
給与として支払う生活補助を、旅費の課税仕入れに混ぜないことも大切です。帳簿の科目名と、所得税・消費税の区分は別々の欄で管理すると、科目名から税区分を決める誤りを見つけやすくなります。
旅費一般の仕訳は旅費交通費の記事、旅費特例の詳しい要件は出張旅費規程と日当の記事で確認できます。
精算書の分け方の例
以下は国内転任に伴う転居の架空例です。家財運送費と本人・同伴家族の移動費を従業員へ精算し、別途の生活補助手当を支給するものとします。旅費相当分の範囲と金額は、社内の適正なバランス・同業種同規模の水準も含め通常必要と確認済み、生活補助手当は給与として支給する前提です。金額は相場や非課税限度額ではありません。
| 精算・支給の区分 | 金額 | この設例の整理 |
|---|---|---|
| 家財運送費の精算 | 120,000円 | 非課税旅費として記録 |
| 本人・同伴家族の移動費の精算 | 30,000円 | 非課税旅費として記録 |
| 旅費相当分の合計 | 150,000円 | 転居旅行の費用として管理 |
| 別途の生活補助手当 | 50,000円 | 給与担当へ引き継ぐ |
同じ振込みにまとめる場合でも、旅費相当分と給与として支給する手当の明細は分けます。振込額から源泉徴収税額を逆算するのではなく、給与担当でほかの給与との関係を確認します。
まとめ
赴任費用は、費目別の明細を人事・経理・給与担当で共有します。会社規程で支給を決めたあとも税区分の確認を分けて行い、精算まで処理を追える形で残すことが実務の要点です。
よくある質問
支度金を定額で支給すると給与課税になりますか?
定額というだけでは決まりません。在職従業員の転任に伴う転居の旅行に充てる支給かを確認し、通常必要な範囲を判断します。全役員・使用人を通じた適正な支給基準のバランスと、同業種・同規模の他社水準も勘案します。生活補助は旅費相当分と分けます。
領収書があれば家族分も非課税にできますか?
領収書だけでは決まりません。家族の移動が転任に伴う転居とどう関係するか、私用分がないかを確認します。旅費の非課税範囲は通常必要な費用かを、社内の適正な支給基準のバランス・同業種同規模の他社水準も勘案して判断します。
着後滞在費は旅費規程にあれば非課税ですか?
規程があるだけでは非課税になりません。通常の赴任旅費のほか、家族の同伴が不可能な転勤者に同居までの日数などに応じて支給する着後滞在費は、給与所得として扱われます。転居旅行自体に通常必要な宿泊費とは区別します。
所得税が非課税の赴任旅費は消費税も非課税ですか?
消費税では課税仕入れです。国内転勤で従業員へ支給する旅費等のうち、役員・従業員の支給額のバランスと同業種・同規模の水準も踏まえて通常必要と認められる部分が対象です。一定事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が可能です。
出典
- e-Gov法令検索「所得税法」非課税所得の規定
- e-Gov法令検索「所得税法」給与所得の規定
- 国税庁「所得税基本通達」旅費の非課税範囲・超過部分の所得区分
- 国税庁「源泉徴収のあらまし」給与所得の範囲・着後滞在費
- 国税庁「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」
- 国税庁「仕入税額控除の対象となるもの」
- 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」出張旅費、宿泊費、日当等
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・労務相談への回答ではありません。実際の判断は税務署・税理士等にご確認ください。