資産管理会社とは|個人保有との違い・設立維持費・資産移転と配当の確認表
資産管理会社とは、自己・家族の不動産や有価証券などを、会社で保有・管理するために設ける法人の呼び名です。特別な会社の種類ではありません。設立の損得は、保有中の税金だけでなく、資産を移す費用と、会社から個人へ資金を戻す際の負担まで並べて判断します。
この記事は通常の株式会社・合同会社で自己・家族の資産を保有する場合の確認表です。第三者から資金を集める事業や投資法人は扱いません。登記の手順は会社設立でやること、個人事業の移行は法人成りの記事で確認できます。
資産管理会社の仕組みと個人保有との違い
会社が持つ資産と、株主・出資者個人が持つ資産は分けて考えます。自分が出資した会社でも、会社の預金をそのまま生活費の口座として扱うことはできません。資産の保有者、収入の帰属先、支出の目的をそろえるのが経理の出発点です。
会社の種類は会社法2条、会社の法人格は同法3条に定めがあります。「資産管理」は活動の目的を表す言葉で、独立した会社類型ではありません。
| 確認する点 | 個人で保有 | 会社で保有 |
|---|---|---|
| 保有者 | 本人 | 会社。本人は株式・出資持分等を持つ |
| 収入の整理 | 本人の所得区分に応じて計算 | 会社の収益として集計し、税務調整を確認 |
| 生活費への充当 | 本人の資金として管理 | 本人への給与・配当・精算等を別の取引として整理 |
| 管理の負担 | 本人の帳簿・申告資料を整理 | 法人の帳簿・決算・申告と本人側の資料を区別 |
たとえば賃貸物件を会社が買い、会社が貸主になる場合と、個人が持つ物件の管理業務だけを会社が受ける場合は違います。前者は物件の保有と賃貸収入、後者は管理契約の業務と対価を確認します。管理会社を作っただけで、個人の賃料収入が会社へ移るという整理にはしません。
同族会社の判定は家族が経営しているという呼び名だけでは決まりません。株主構成などの判定は同族会社の記事へ、個人事業を残して会社も運営する場合の帳簿はマイクロ法人の記事へ進んでください。
節税の比較は所得の種類と払出方法をそろえる
個人の最高税率と法人税の税率を引き算しても、節税額にはなりません。個人では所得の種類によって課税方法が違い、会社では法人税以外の税や維持費もかかります。さらに会社の利益を本人が使うには、払出方法ごとの課税を確認する必要があります。
個人の資産売却について、土地・建物等の譲渡と一般的な株式等の譲渡には、それぞれ分離課税の仕組みがあります。給与などと合算する所得と混同しないようにします(国税庁「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」)。
内国法人の各事業年度の所得は益金から損金を差し引いて計算しますが、個々の税務上の取扱いには別段の定めがあります(法人税法22条)。償却費以外の販売費・一般管理費等は期末までの債務確定も確認します。受取配当などの調整を確認せず、運用収入に法人税率を掛けるだけの比較にはしません。
| 比較する項目 | 先にそろえる条件 | 集める資料の例 |
|---|---|---|
| 資産の内容 | 不動産・株式等を分け、保有者を確認 | 登記事項、残高報告、取得時の契約 |
| 毎年の利益 | 売上・賃料等と、必要な費用を分ける | 賃貸借契約、年間取引報告、費用明細 |
| 税金 | 個人の所得区分と会社の税務調整を確認 | 本人の申告書、法人の試算表・申告資料 |
| 本人が使う資金 | 会社に残す分と、個人へ払う分を分ける | 生活費の予定、給与・配当等の計画 |
| 費用と保険料 | 設立時・毎年・資産移転時を区分 | 見積書、所在地、報酬・加入関係の資料 |
会社内で再び運用する資金と、毎年生活費に使う資金では、比較する現金の流れが変わります。資産総額や年収だけを入口にせず、この表の条件をそろえてから個人保有と比較します。
法人税の計算条件を確認して試算する法人税の試算だけで、地方税・維持費・個人への払出しを含めた損得が決まるわけではありません。
個人の資産を会社へ移すときの確認表
売却でも現物出資でも、個人側の課税を先に確認します。設立登記の費用と、すでに持っている資産を会社へ移す費用は別です。物件や銘柄ごとに、取得費・時価・移転方法・納税資金を一覧にします。
| 移転の形 | 個人側の確認 | 会社側の確認 |
|---|---|---|
| 個人から会社へ売却 | 資産の種類に応じた譲渡所得等、取得費・譲渡費用・売却価額 | 取得価額、支払資金、未払の場合の債務 |
| 不動産を現物出資 | 株式・持分の取得と譲渡所得課税、現金を受け取らない場合の納税資金 | 出資財産の評価と会社法上の手続、取得の記録 |
| 不動産の所有権を移す | 売却・出資の契約、借入れがある場合の金融機関との確認 | 不動産取得税、所有権移転登記の登録免許税・依頼費 |
譲渡所得の対象となる資産を居住者個人から法人へ贈与した場合や、著しく低い価額で譲渡した場合には、時価による課税の規定があります。家族の会社だから帳簿価額で移せばよい、と決めないようにします(所得税法59条)。
不動産の現物出資の譲渡収入金額は、取得した株式・出資持分の時価ですが、その価額が出資不動産の時価の2分の1未満なら、不動産の時価で計算します。境界と取扱いは国税庁「不動産を法人に現物出資したとき」で確認できます。
この節は通常の資産保有会社への移転を扱います。棚卸資産等の所得区分、寄附の承認等による特例、居住用財産の特例、消費税は別に確認が必要です。不動産取得税にも非課税・軽減があるため、取引価額に単一の税率を掛けて費用を確定しません。
不動産取得税の確認先は東京都主税局「不動産取得税」など、物件所在地の都道府県です。移転の見積りでは、本人の税金と会社の取得費用を別欄にすると、どちらが納税資金を用意するかが分かります。
会社から個人へ資金を戻す方法
役員報酬・配当・実際の立替精算や借入元本の返済は、同じ送金でも意味が違います。名目だけで選ばず、職務、株主としての権利、会社の債務など、支払う根拠と対応させます。
| 払出しの内容 | 会社で確認すること | 個人で確認すること |
|---|---|---|
| 通常の役員報酬 | 職務・決議・支給記録と損金算入要件 | 給与としての所得税・住民税、社会保険の適用と負担 |
| 非上場株式の利益配当 | 配当の決定と分配可能額、源泉徴収。利益配当は損金にならない | 配当所得としての申告、源泉税の精算 |
| 立替精算・借入元本返済 | 証憑・契約・残高と支払額が対応するか | 給与・配当・利息などが混ざっていないか |
家族保有の会社で通常の役員給与を損金にする場合は、定期同額給与・事前確定届出給与の要件を確認します。業績連動給与は、同族会社では非同族法人による完全支配関係がある場合に対象が限られます。要件を満たしても不相当に高額な部分は損金にならず、隠蔽・仮装して経理した役員給与は全額が損金不算入です。退職給与と使用人兼務役員の使用人分給与は別の扱いです(国税庁「役員に対する給与」)。
家族へ報酬を払う場合も、担当する仕事と対価の根拠を残します。同族会社を通じる行為・計算で本人等の所得税負担を不当に減少させる場合には、否認に関する規定があります(所得税法157条)。家族の人数だけで節税額を計算することはできません。
株式会社の配当では、預金があることに加え、剰余金と、配当の効力発生日における分配可能額、必要な決定を確認します(会社法453条・461条)。合同会社の利益配当の手続と同一には扱いません。
配当の例:法人内の税と個人の受取額を分ける
個人への入金額と、最終的な手取りは違います。次の例は配当支払時までの資金表です。会社の税額そのものを計算した例や、給与で受け取る場合との有利不利を示す例ではありません。
架空の内国株式会社が、令和8年中に居住者個人へ非上場株式の利益配当を払う例です。会社の現金利益と納める税金は仮定し、差額を配当します。効力発生日の分配可能額と必要な決定は満たし、手数料・源泉税の端数はなく、最終税額は未計算です。
| 段階 | 金額 | 意味 |
|---|---|---|
| 会社の現金利益 | 100万円 | 設例の出発額 |
| 会社が納める税金 | 30万円 | 税率から求めた額ではなく仮定 |
| 個人へ払う配当の総額 | 70万円 | 会社の利益配当として支払う額 |
| 所得税・復興特別所得税の源泉徴収率 | 20.42% | 地方税の源泉徴収はない |
| 所得税等の源泉徴収 | 142,940円 | 配当総額に源泉徴収率を掛けた額 |
| 支払時の個人口座への入金 | 557,060円 | 配当総額から源泉税を引いた額 |
非上場株式の配当は総合課税で、本人の他の所得、控除、配当控除の適否などを確認して税額を計算します。所得税と住民税の最終負担は、上の表では計算していません。
非上場株式配当でも少額配当には所得税の確定申告不要制度がありますが、上の例はその範囲を超える配当です。申告不要の判定や配当控除は国税庁「配当金を受け取ったとき」で確認してください。
設立費・維持費を見積もる
設立費は初回、維持費は毎年、資産移転の費用は取引時に分けて見積もります。資本金は会社へ入れる資金であり、設立手続の支払費用と同じものではありません。外注の範囲や定款の作り方によっても必要な支出は変わります。
軽減を使わない、通常の株式会社・合同会社の設立登記の税額です。申請ごとに下表で計算します。定款関係費用・専門家への報酬は含みません。
| 通常の設立登記の種類 | 税額の計算 | 別に見積もるもの |
|---|---|---|
| 株式会社の設立登記 | 資本金×0.7%と15万円の高い方 | 定款の作成・認証関係、書類取得、依頼報酬等 |
| 合同会社の設立登記 | 資本金×0.7%と6万円の高い方 | 定款の作成関係、書類取得、依頼報酬等 |
通常税率は国税庁「登録免許税の税額表」で確認できます。特例・軽減の利用可否と、設立に必要な費用の全体は別に確認します。形態選びの詳細は合同会社の記事へ進んでください。
| 維持費の項目 | 見積りで確認する内容 |
|---|---|
| 会社の税金 | 法人税・地方税、保有不動産に関する税金などを分ける |
| 記帳・決算・申告 | 自社で行う範囲、外注報酬、会計サービス等の費用 |
| 社会保険 | 事業所の適用と本人の資格を確認し、会社負担・本人負担を区分 |
| 会社運営 | 口座・事務所・契約管理、登記事項の変更などに伴う支出 |
東京都内に事務所等がある通常の株式会社・合同会社では、赤字でも法人都民税の均等割の申告・納付が必要です。金額は資本金等や従業者数などで変わり、全国一律の維持費として扱いません(東京都主税局「法人事業税・法人都民税」法人都民税Q4)。
社会保険では、被保険者となる人がいる法人事業所の適用と、役員本人の資格を分けて確認します。会社登記や肩書だけで本人が加入できると判断せず、労務・報酬などの使用関係、年齢等も確認します(日本年金機構「適用事業所と被保険者」)。
設立を決める前にそろえる資料
最初に作るのは、移す資産と資金の一覧です。会社の形を選ぶ前に、どの資産を会社へ移し、誰が日々の管理を行い、個人へどう支払うかを整理すると、登記後の資金不足や名義の食い違いを見つけやすくなります。
| 順序 | 整理すること | 残すもの |
|---|---|---|
| 資産を棚卸しする | 保有者、取得費、時価の資料、借入れ・担保を確認 | 資産一覧、契約、登記事項、取引残高 |
| 移転方法を比較する | 新規取得・売買・現物出資等の費用と税金を確認 | 評価資料、見積り、納税資金の予定 |
| 運営を決める | 出資者、職務、費用負担、報酬・配当等を整理 | 役割表、資金計画、会社形態の検討資料 |
| 設立と届出を準備する | 定款・登記・税務・社会保険の手続を確認 | 必要書類と提出先の一覧 |
| 取引後を照合する | 会社と個人の契約・入金・残高が一致するか確認 | 帳簿、契約、精算記録、申告資料 |
これは検討作業の順序例で、法定の提出書類を網羅した表ではありません。登記と届出の具体的な手順・期限は会社設立でやることで確認してください。
相続を目的とする場合は、資産の移転後に誰が株式・持分や会社への債権を持つのかも一覧にします。本記事は非上場株式の評価額や事業承継税制の適用を扱いません。会社へ資産を移せば相続税が下がる、とこの表だけから結論づけないようにします。
比較の軸は、資産の移転・保有中の収支・個人への払出しです。会社の中に残るお金と本人が使うお金を分け、税金・費用・管理負担を同じ条件で並べます。
よくある質問
資産管理会社はいくらから設立すると得ですか?
資産総額や年収だけでは決まりません。資産の種類、個人側の所得区分、移転費用、毎年の維持費と、個人へ資金を戻す際の課税をそろえて比較します。
資産管理会社は普通の株式会社と違う種類ですか?
会社法上の独立した会社種類ではありません。自己・家族の資産の保有・管理を目的に運営する法人の呼び名で、この記事は通常の株式会社・合同会社を対象にしています。
不動産を現物出資すれば、売却でないので所得税はかかりませんか?
不動産の現物出資も譲渡として所得税の課税対象になります。現金を受け取らずに株式・持分を取得するため、譲渡所得の確認とともに納税資金も見積もります。
配当を受け取るときの源泉税で、個人の税金は終わりますか?
非上場株式の配当では、源泉税が最終税額を意味するわけではありません。総合課税の対象であり、所得税の少額配当の申告不要制度の適否、他の所得や控除、住民税を別に確認します。
出典
税務の取扱いは国税庁、地方税は東京都主税局、社会保険は日本年金機構の案内を参照。会社の税額を仮定した配当例は、個人への資金の流れを示す架空例です。
- e-Gov法令検索「会社法」会社種類・法人格・剰余金配当・分配可能額
- e-Gov法令検索「法人税法」所得の計算・役員給与
- e-Gov法令検索「所得税法」譲渡所得・贈与等・同族会社等の行為計算
- 国税庁「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」
- 国税庁「不動産を法人に現物出資したとき」
- 国税庁「配当金を受け取ったとき(配当所得)」
- 国税庁「役員に対する給与」
- 国税庁「登録免許税の税額表」
- 東京都主税局「不動産取得税」
- 東京都主税局「法人事業税・法人都民税」
- 日本年金機構「適用事業所と被保険者」
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・労務相談への回答ではありません。実際の判断は税務署・税理士、年金事務所・社会保険労務士等にご確認ください。