合同会社とは — 株式会社との違いと、経理・税務で変わること・変わらないこと
合同会社は、出資者(社員)が、定款で別に定めない限り自ら業務を執行する会社です。社員は全員が有限責任です。法人税は株式会社と同じ規定で計算します。経理で押さえたい主な違いは次の4つです。
- 貸借対照表の純資産の部は「株主資本」ではなく「社員資本」の区分を使い、準備金の欄がありません。
- 利益を配当しても、準備金を積む義務がありません。
- 決算公告の義務がありません。
- 業務執行社員への報酬は役員給与として扱います。
合同会社とは — 持分会社の1つ
会社法は、合名会社・合資会社・合同会社の3つを持分会社と呼んでいます(会社法575条1項)。株式会社と違い、出資者が株式を持つのではなく、会社に対する持分を持ちます。
合同会社の特徴は、次の3つです。
- 出資者を「社員」と呼ぶ。従業員のことではなく、定款に名前が載る出資者です(576条1項4号)。
- 定款で別に定めなければ、社員が業務を執行する。定款で業務執行社員を決めれば、執行する社員を絞れます(590条1項・591条)。
- 社員は全員が有限責任。定款には社員の全部を有限責任社員とする旨を書きます(576条4項)。
有限責任社員の責任は、出資の価額から既に履行した分を除いた額が限度です(580条2項)。合同会社では、社員になろうとする者が定款の作成後、設立の登記をする時までに、金銭なら全額を払い込み、金銭以外の財産ならその全部を給付します(全員の同意があれば、登記・登録など第三者に対抗するための手続きは成立後でも可:578条)。
株式会社との違いを表で比べる
違いの多くは、会社の作り方と運営の手続きにあります。
この表は2026年10月16日時点の会社法・登録免許税法の規定で比べたものです。株式会社の列は取締役会を置かない会社、登録免許税は軽減を受けない通常の設立(合併・組織変更・分割によらないもの)を前提にしています。
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 誰が経営するか | 定款で別に定めなければ社員が執行(590条1項) | 定款で別に定めなければ、株主総会で選んだ取締役が執行(329条1項・348条1項) |
| 定款の認証 | 要らない(575条に定めなし) | 公証人の認証が要る(30条1項) |
| 設立登記の登録免許税 | 資本金の0.7%、6万円未満なら6万円 | 資本金の0.7%、15万円未満なら15万円 |
| 経営者の任期 | 会社法に定めなし | 取締役に任期がある(332条) |
| 決算公告 | 義務なし | 義務あり(有価証券報告書の提出会社などを除く。440条) |
| 利益の分け方 | 定款で決められる(622条) | 株式の数に応じる(454条3項。自己株式・種類株式などの例外あり) |
| 準備金の積立て | 義務なし | 剰余金の配当のとき、準備金の合計が資本金の4分の1に達するまで積む(445条4項) |
- 登録免許税: 登録免許税法 別表第一 二十四(一)ハ・イの税率です。認定を受けた市町村の創業支援等事業計画に記載された特定創業支援等事業による支援を受けた個人が、その区域内で設立し、令和9年3月31日までに登記する場合は、資本金の0.35%(合同会社は最低3万円、株式会社は最低7万5千円)です(租税特別措置法80条3項)。
- 決算公告: 有価証券報告書を提出しなければならない株式会社には適用されません(440条4項)。公告の方法と、ウェブでの開示で代える方法は決算公告の記事にまとめています。
- 利益の分け方: 合同会社で、定款に利益と損失の一方だけの分配割合を定めたときは、両方に共通と推定されます(622条2項)。株式会社の配当は自己株式には割り当てず、種類株式・現物配当の定めによる例外があります(454条2項〜4項)。
- 準備金(株式会社): 剰余金の配当時に積む額の計算は、会社計算規則22条で確認できます。
設立費用の内訳(定款の印紙・認証手数料を含む比較)は法人成りの記事のよくある質問に、決算公告の中身は決算公告の記事にまとめています。
社員・業務執行社員・代表社員の違い
合同会社の「社員」は出資者全員を指します。そのうち経営に当たる人と、会社を代表する人を、定款で絞ることができます。
| 呼び名 | どういう人か | 登記されるか |
|---|---|---|
| 社員 | 出資者。定款に別段の定めがなければ全員が業務を執行(590条1項) | 業務を執行しない社員は登記事項にない |
| 業務執行社員 | 定款で業務を執行すると定めた社員(591条)。定めがなければ社員全員 | 氏名または名称を登記(914条6号) |
| 代表社員 | 業務執行社員のうち会社を代表する社員(599条3項) | 氏名または名称と住所を登記(914条7号) |
業務執行社員は、代表社員その他の会社を代表する者を別に定めなければ、各自が会社を代表します(599条1項・2項)。代表社員は、業務執行社員の中から、定款か、定款の定めに基づく社員の互選で決めます(599条3項)。
業務の決め方(過半数での決定や、日常の業務を他の社員の異議がなければ単独でできるか)は、業務執行社員を定めたかどうかで分かれ、定款でも変えられます。詳しくは会社法590条・591条と自社の定款で確かめてください。
定款を変えるには、定款に別段の定めがなく、業務を執行しない有限責任社員の持分譲渡に伴う変更(585条3項)でもなければ、総社員の同意が要ります(637条)。
法人も社員になれます。法人が業務執行社員になるときは、その職務を行う人(職務執行者)を選び、その氏名と住所を他の社員に通知します(598条1項)。
持分を人に譲るには、定款に別の定めがなければ他の社員全員の承諾が要り、業務を執行しない有限責任社員なら業務執行社員全員の承諾で足ります(585条)。
経理・税務で変わらないこと、変わること
結論から言うと、法人税は同じ普通法人の規定で計算し、主な違いは決算書の表示、配当・役員報酬の決まり、決算公告の義務です。
法人税は株式会社と同じ規定で計算する
法人税法は、公共法人・公益法人等・協同組合等以外の法人を普通法人としています(法人税法2条9号)。合同会社も株式会社も普通法人に当たり、法人税は同じ普通法人の規定で計算します。合同会社の資本金の決め方は資本金の記事にあります。
法人税を計算する(合同会社も株式会社と同じ計算)業務執行社員への報酬は役員給与になる
法人税法施行令71条1項3号は、合同会社の業務を執行する社員を「使用人兼務役員とされない役員」に挙げています。このため業務執行社員は、使用人分の給与を区分する使用人兼務役員の扱いを受けられません(使用人兼務役員の記事)。
業務執行社員に払う給与は、業績連動給与に当たらない退職給与などを除き、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与(いずれも法定の要件あり)のどれかに当たらないと損金になりません(法人税法34条1項)。決め方は役員報酬の決め方にまとめています。
決算書は「社員資本」で、準備金の欄が無い
合同会社は、各事業年度に貸借対照表・損益計算書・社員資本等変動計算書・個別注記表を作ります(会社法617条2項、会社計算規則71条1項2号)。これらの計算書類は、作成した時から10年間保存します(617条4項)。
貸借対照表の純資産の部は「社員資本」と「評価・換算差額等」に分かれ、社員資本は資本金・出資金申込証拠金・資本剰余金・利益剰余金の4区分です(会社計算規則76条1項3号・3項)。資本準備金・利益準備金への細分は、株式会社だけに求められています(同条4項・5項)。詳しくは貸借対照表の見方と株主資本等変動計算書の合同会社の節にあります。
利益の配当は配当日の利益額まで
合同会社は、配当額が配当をする日の利益額を超える場合、利益の配当ができません(628条)。損益分配の割合は定款で定められ、定めがなければ出資の価額に応じます。利益と損失の一方だけの分配割合を定款で定めたときは、両方に共通と推定されます(622条)。
株式会社は、剰余金を配当するとき、配当で減る剰余金の10分の1を、準備金の合計が資本金の4分の1に達するまで積みます(445条4項、会社計算規則22条)。合同会社にはこの積立ての規定が無く、純資産に準備金の区分もありません。
決算公告は要らない
決算公告を定める会社法440条1項の主語は「株式会社は」です。合同会社には決算公告の義務がありません。
設立の流れと、株式会社への組織変更
合同会社の設立は、次の順に進みます。
- 定款を作る。社員になろうとする者全員が署名または記名押印し、電子定款なら法務省令で定める署名・記名押印に代わる措置をとります(575条)。公証人の認証は要りません。
- 出資を履行する。定款の作成後、設立の登記をする時までに、金銭は全額を払い込み、現物出資は財産の全部を給付します(全員の同意があれば、登記・登録などの対抗要件の手続きは成立後でも可:578条)。
- 設立の登記をする。本店所在地で登記した日に会社が成立します(579条)。
設立後に税務署などへ出す届出と期限は会社設立でやることにまとめています。
合同会社は、組織変更で株式会社になれます(2条26号ロ・743条)。組織変更計画には、定款に別段の定めがなければ、効力発生日の前日までに総社員の同意が要ります(781条1項)。
まとめ
- 合同会社は持分会社の1つで、社員は全員が有限責任です。定款で別に定めなければ社員が業務を執行します。
- 法人税は株式会社と同じ普通法人として計算します。
- 純資産の部は「社員資本」の区分を使い準備金の欄が無く、決算公告の義務もありません。
- 業務執行社員は税法上の役員で、使用人兼務役員にはなれません。
よくある質問
合同会社の「社員」は従業員のことですか?
違います。会社法の社員は出資者のことで、定款に氏名または名称と住所が書かれます(会社法576条1項4号)。雇用されて働く従業員は、出資していなければ会社法の社員ではありません。
合同会社の決算書に資本準備金が無いのは誤りですか?
誤りではありません。持分会社の純資産の部は「社員資本」と「評価・換算差額等」に分かれ、社員資本は資本金・出資金申込証拠金・資本剰余金・利益剰余金の4区分です(会社計算規則76条)。資本準備金・利益準備金への細分は株式会社だけに求められています。
代表社員の報酬は役員報酬として扱いますか?
扱います。合同会社の業務を執行する社員は、法人税法施行令71条1項3号で使用人兼務役員とされない役員に挙がっています。報酬が損金になるかは、定期同額給与などの法人税法34条1項の決まりに加え、不相当に高額な部分や隠蔽・仮装した給与を損金にしない同条2項・3項も見て判断します。
合同会社に決算公告の義務はありますか?
ありません。決算公告を定める会社法440条1項は株式会社だけを対象にしています。
合同会社から株式会社に変えられますか?
変えられます。会社法の組織変更の手続きによります(会社法743条)。組織変更計画には、定款に別段の定めがなければ、効力発生日の前日までに総社員の同意が要ります(781条1項)。
出典
会社法・会社計算規則・登録免許税法・租税特別措置法・法人税法・法人税法施行令の条文をe-Gov法令検索で確認して作成。
- e-Gov法令検索「会社法」575条・576条・578条・579条・580条・585条・590条・591条・598条・599条(持分会社の設立・社員・業務執行・代表)
- e-Gov法令検索「会社法」617条・621条・622条・628条・637条(計算書類・利益の配当・定款の変更)
- e-Gov法令検索「会社法」30条・329条・332条・348条・440条・445条・454条(株式会社の定款認証・取締役・決算公告・準備金・配当)
- e-Gov法令検索「会社法」2条26号・743条・781条・914条(組織変更・合同会社の設立の登記)
- e-Gov法令検索「会社計算規則」71条・76条(持分会社の計算書類・純資産の部の区分)
- e-Gov法令検索「登録免許税法」9条・別表第一 二十四(一)イ・ハ(会社の設立の登記の税率)
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」80条3項(特定創業支援等事業による設立の登記の軽減)
- e-Gov法令検索「法人税法」2条9号・15号・34条1項(普通法人・役員・役員給与の損金不算入)
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」71条1項3号(使用人兼務役員とされない役員)
この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。具体的な申告や判断は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。