発起人とは?株式会社設立での役割・出資・責任の確認表
発起人は、株式会社をつくるために定款を作成し、株式を引き受け、出資や設立時役員の選任を進める人です。発起人というだけで、取締役や代表取締役になるわけではありません。
この記事は、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける「発起設立」を中心に、担当する行為と責任を整理します。設立時発行株式とは、株式会社の設立に際して発行する株式です。
定款の記載事項は定款の確認表、出資額と資本金の関係は資本金の記事、成立後の税務届出は会社設立後の届出で確認できます。
発起人・株主・取締役の役割の違い
設立手続を担う立場と、成立後に出資者・役員として持つ立場を分けます。発起人が経営も担う場合は、役員としての選任も確認します。
次は、株式会社の発起設立における立場の比較です。発起人が株主になるのは、出資の履行をした設立時発行株式についてです。
| 立場 | 主な役割・意味 | 混同しない点 |
|---|---|---|
| 発起人 | 定款作成、株式引受け、出資などの設立行為を担う | 設立準備を手伝う事務担当者と同じ意味ではない |
| 株主 | 発起人は出資履行済みの株式について、会社成立時に株主になる | 定款作成日や払込日だけで会社が成立するのではない |
| 設立時取締役 | 会社の設立に際して取締役となる者 | 発起人と兼ねることはできるが、法人自体はなれない |
株式会社は、本店の所在地で設立登記をすることで成立します。発起人は、その成立時に出資履行済みの設立時発行株式の株主となります(会社法49条・50条)。
誰が発起人になれるか
個人のほか、法人もその目的の範囲内で発起人になれます。単独でも、複数で共同しても株式会社を設立できます。
各発起人は、株式会社の設立に際して、設立時発行株式を1株以上引き受けなければなりません(会社法25条)。書類作成だけを手伝い、株式を引き受けない人を、この意味での発起人として扱いません。
| 候補者 | 確認すること |
|---|---|
| 個人 | 引き受ける株式、出資内容、定款に記載する氏名・住所 |
| 法人 | 法人の目的の範囲、出資を決める権限、定款に記載する名称・住所 |
| 未成年者 | 法定代理人の同意など、出資行為を有効に行うための条件 |
未成年者の法律行為は、単に権利を得る・義務を免れる行為や処分許可財産の例外を除き、法定代理人の同意が必要です。目的を定めて処分を許された財産はその目的の範囲内で、目的を定めずに許された財産は自由に処分できます。出資への当てはめと必要な証明書類は、公証人・登記の専門家に確認します(民法5条)。
法人そのものを設立時取締役にすることはできません。出資する法人と、設立時取締役に選任する個人を分けて確認します(会社法39条・331条)。
外国籍・海外居住者の署名や住所の証明、未成年者の手続書類は、具体的な事情で確認が必要です。印鑑登録の扱いだけから、発起人の資格を一律に決める説明はしていません。
定款と株式を決めるときの確認表
定款を作ることと、株式の割当て・払込額を決めることを対応させます。定款に定めた内容があるかを先に確認し、別の決定を重ねる必要があるかを分けます。
次は、株式会社の発起設立で発起人が確認する事項です。株式の割当て等は普通株式を想定し、種類株式の内容設計は含めていません。
| 事項 | 必要な決定・作成 | 記録の確認例 |
|---|---|---|
| 設立時定款 | 発起人が作成。書面は発起人全員が署名または記名押印 | 氏名・名称と住所、署名等の漏れ |
| 電子定款 | 書面の署名等に代わる、法務省令所定の措置をとる | 単なるPDF保存と電子定款の作成を区別 |
| 各発起人に割り当てる設立時発行株式の数 | 定款に定めがない事項を決めるには発起人全員の同意 | 発起人別の割当てと同意した内容 |
| 株式と引換えに払い込む金銭の額 | 定款に定めがない事項を決めるには発起人全員の同意 | 各発起人の払込額との一致 |
| 成立後の資本金・資本準備金の額に関する事項 | 定款に定めがない事項を決めるには発起人全員の同意 | 払込額と資本金の額の混同がないか |
株式会社の設立時定款は公証人の認証を受けなければ効力が生じません。認証の要否は会社法30条、株式等の決定は32条で分けて確認します。
発起人の報酬や会社負担の費用も確認する
会社成立により発起人が受ける報酬・特別の利益は、発起人の氏名または名称とともに設立時定款に記載・記録しなければ効力が生じません。会社が負担する設立費用にも定款記載が必要ですが、認証手数料その他法務省令所定の費用は除かれます(会社法28条)。
設立準備の領収書を集める際は、支払った人、支出の内容、会社に負担させる根拠を対応させます。誰かが立て替えたという事実だけで、会社負担になると扱わないための社内確認です。
出資から設立時役員の選任へ
出資は、引き受けた内容どおりに履行します。金銭出資の発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、出資に係る金銭の全額を、発起人が定めた銀行等の払込取扱場所で払い込みます。
現物出資では、引受け後遅滞なく、出資に係る金銭以外の財産の全部を給付します。登記・登録など第三者への対抗要件に必要な行為は発起人全員の同意により会社成立後に行えますが、財産の給付そのものを自由に先送りできる規定ではありません(会社法34条)。
監査等委員会を置かない発起設立では、出資履行完了後遅滞なく設立時取締役を選任しますが、定款指定の者は出資完了時に選任されたものとみなされます(会社法38条)。
監査役・会計参与・会計監査人の設置や監査等委員会の採用に応じ、ほかの設立時役員等の選任も確認します。定款指定によるみなし選任は、これらにも規定されています。
人数の多数決と、議決権の多数決を分ける
普通株式のみで単元株制度や選任の特則がない発起設立では、設立時役員等の選任を、出資履行済み株式に係る発起人の議決権の過半数で決めます。定款に定めがない株式割当て等を決める全員同意とは異なります(会社法40条)。
引き受ける株式の内容と、出資履行の記録を合わせて確認します。
種類株式では、選任についての議決権制限、種類別の選任、追加の決定を要する定めなどを別途確認します(会社法41条・45条)。
設立時取締役は、選任後遅滞なく出資履行の完了や設立手続の法令・定款適合などを調査します。監査役設置会社では設立時監査役も調査を担い、違反や不当な事項を認めた場合は発起人への通知が必要です(会社法46条)。
発起人の責任は、誰への責任かで分ける
設立手続が終わっても、設立行為に関する責任が消えるわけではありません。現物出資の評価不足、仮装出資、任務懈怠、会社不成立を分けて確認します。
会社・第三者への損害賠償と、不成立時の負担
次は、株式会社の発起人について、設立行為に関する損害賠償と不成立時の負担をまとめた表です。会社に対する賠償と第三者に対する賠償では、責任が生じる要件が異なります。
| 相手方・場面 | 条件と責任 | 根拠 |
|---|---|---|
| 会社に対する損害賠償 | 発起人が設立について任務を怠り、それによって会社に生じた損害を賠償 | 会社法53条 |
| 第三者に対する損害賠償 | 発起人の職務について悪意・重大な過失があり、それによって第三者に生じた損害を賠償 | 会社法53条 |
| 株式会社が成立しなかった場合 | 発起人が連帯して設立に関する行為の責任を負い、設立に関して支出した費用を負担 | 会社法56条 |
発起人・設立時取締役・設立時監査役のうち、他の者も同じ損害の賠償責任を負う場合、その責任を負う者は連帯債務者となります。共同発起人だから責任を人数で割れる、という意味ではありません(会社法54条)。
現物出資の評価不足は、成立時の価額で確認
現物出資財産等の評価は、会社成立時の価額を定款記載額(定款変更があれば変更後の価額)と比べます。著しい不足がある場合の支払義務と免責は、次の表で対象者ごとに確認します。
ここでの財産には、金銭以外の財産を出資する現物出資のほか、成立後に会社が譲り受けると約した財産引受けの財産も含みます。金銭の払込みをしていない問題と、現物財産の評価が不足する問題を混同しません。
次は、会社成立時に現物出資財産等の価額が定款価額に著しく不足する場合の、会社法52条の支払義務と免責の区分です。定款変更があれば変更後の価額と比較します。
| 対象者 | 確認する扱い |
|---|---|
| 現物出資をした発起人・財産引受けの譲渡人である発起人 | 会社に対し連帯して不足額を支払う。検査役調査や注意を怠らなかったことの証明による、下の免責は使えない |
| それ以外の発起人・設立時取締役 | 会社に対し連帯して不足額を支払う。ただし、検査役の調査を経た場合、または職務上注意を怠らなかったことを証明した場合は免責 |
| 財産価額の相当性を証明した者 | 義務を負う者と連帯して不足額を支払う。ただし証明について注意を怠らなかったと証明すれば免責 |
払込みを仮装した場合は、出資の履行が問題になる
金銭の払込みを仮装した発起人は、会社に対して、その仮装した出資に係る金銭の全額を支払う義務を負います。現物給付を仮装した場合は財産全部の給付、会社が代わりに金銭を請求した場合はその価額相当額の全額支払が必要です。
仮装した発起人は、所定の支払・給付等がされるまで、その仮装した株式について設立時株主・株主の権利を行使できません。会社の成立だけで問題が解消するわけではありません(会社法52条の2)。
仮装に関与した他の発起人・設立時取締役にも、省令所定の範囲で支払義務があり、仮装した本人以外は無過失の証明による例外があります。仮装株式等の譲受人には、悪意・重大な過失がなければ権利行使を認める別の規定があります。
総株主の同意で免除する責任の範囲
会社法55条は、価額不足・仮装出資に関する所定の義務と会社への任務懈怠責任について、総株主の同意がなければ免除できないと定めています。第三者への賠償責任や会社不成立時の責任まで、総株主の同意で一括して免除できるとは扱いません。
経理へ引き継ぐ資料の確認例
誰が出資し、何を決め、実際に何を履行したかを資料でつなぎます。次は社内での引継ぎ例であり、登記申請の法定添付書類を網羅した一覧ではありません。
| 資料 | 対応させる内容 |
|---|---|
| 定款と株式の割当てを決めた記録 | 発起人の氏名・名称、株式の内容、引受株数、払込額 |
| 出資の履行に関する記録 | 払込先、払込人、実際の入金、現物出資があれば給付と評価の資料 |
| 役員選任に関する資料 | 定款指定か別途選任か、就任する者と決定内容 |
| 設立準備で支払った費用の明細 | 支払者、支出内容、会社負担の根拠、未精算の立替え |
| 成立を確認する資料 | 登記事項証明書などと、成立前の資料の整理先 |
法人が出資し、個人が経営する場合の確認例
例えばA社が目的の範囲内で発起人となり、個人Bを設立時取締役に選任する発起設立では、定款の発起人欄はA社の名称・住所です。出資履行済み株式について成立時に株主となるA社と、取締役となるBを、同じ欄で管理しません。
この例では、A社の出資に関する意思決定資料と払込記録、Bの選任に関する資料を分けて管理します。発起人一覧と役員一覧を同じものだと思って写すと、確認対象を取り違えます。
募集設立との違い
違いは、設立時発行株式を引き受ける人の範囲です。外部から資金が入るかだけで、設立方法を決めるものではありません。
| 方法 | 株式の引受け |
|---|---|
| 発起設立 | 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける |
| 募集設立 | 発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、引受人を募集する |
法人の投資家が発起人として参加して設立時発行株式の全部を発起人が引き受けるなら、発起設立です。募集設立の詳細な手続は本記事の対象外です(会社法25条)。
成立後の所得計画を確認する:法人税・地方法人税の簡易計算へこの計算ツールは、発起人の責任や設立登記の可否を判定するものではありません。
発起人を決めるときの要点
- 設立行為を担う発起人と、役員に選任される者を分けて確認する。
- 定款・割当てや払込額の決定・実際の出資を資料で対応させる。
- 設立行為の責任は、評価不足・仮装出資・損害賠償・不成立を分ける。
よくある質問
発起人は会社成立後に何になりますか?
出資を履行した設立時発行株式について、会社成立時に株主となります。取締役となるかは選任によります。仮装出資をした発起人は、所定の支払・給付等まで、その株式についての株主権等を行使できません。
法人を発起人にできますか?
できます。ただし、その法人の目的の範囲内か、出資を決める権限があるかを確認します。法人自体は設立時取締役になれないため、役員に選任する個人とは区別します。
発起人が複数なら、決定は人数の多数決ですか?
そのようには決まりません。定款に定めがない株式の割当て等は発起人全員の同意が必要です。普通株式のみで単元株制度や選任の特則がない設立時役員選任では、出資履行済み株式に係る議決権の過半数で決めます。
会社が成立しなければ、設立費用は誰が負担しますか?
株式会社が成立しなかった場合、発起人は連帯して設立に関する行為の責任を負い、設立に関して支出した費用を負担します。成立していない会社に、その費用を当然に負担させる扱いにはしません。
出典
制度確認日:2026年10月30日。会社法と民法の一般制度を扱っています。
- e-Gov法令検索「会社法25〜28条」:設立方法・発起人の引受け・定款の作成と記載事項
- e-Gov法令検索「会社法30条・32〜34条・38〜50条」:認証、出資、設立時役員等、会社成立と株主の地位
- e-Gov法令検索「会社法52〜56条」:価額不足、仮装出資、損害賠償、連帯責任、免除、不成立時の責任
- e-Gov法令検索「会社法331条」:取締役の資格
- e-Gov法令検索「民法5条・34条」:未成年者の法律行為と法人の能力
この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・労務相談への回答ではありません。具体的な出資・責任・登記の判断は、内容に応じて公証人・司法書士・弁護士等に、税務は顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。