出資とは|株式会社への払込みと会社・出資者の仕訳
出資は、会社の株式などを取得するために資金を出すことです。株式会社が新株を発行して受ける金銭出資は、借入れや売上とは区別して記帳します。
経理では、引受けの資料・払込記録・仕訳をそろえます。この記事は株式会社への金銭出資を中心に、払込前の確認表と、受入会社・出資法人の仕訳例をまとめています。
出資と融資の違い
株式会社への金銭出資は、株式を取得する対価として会社にお金を払い込むことです。
借入れでは、会社は契約に従って元本を返します。株式による出資では、貸付金のような元本返済を約束して資金を受けるわけではありません。ただし、株式の買取りや契約違反時の金銭負担については、契約を別に確認します。
| 確認する点 | 新株発行による出資 | 融資・借入れ |
|---|---|---|
| 資金提供者の立場 | 株式を保有する株主 | 返還を求める貸付債権者 |
| 会社側の記帳 | 募集事項に従い資本金・資本準備金へ | 借入金として負債へ |
| 資金提供者への支払 | 株式内容や配当決定等に従う。確定利息とは異なる | 返済・利息等の契約条件に従う |
| 確認する資料 | 株式引受けの資料、払込記録、株主名簿 | 金銭消費貸借契約、返済予定・残高 |
根拠は、会社法の株主・募集株式に関する規定と民法の消費貸借の規定です。個人が会社へ振り込んだという事実だけでは、出資か貸付けかを決められません。
「投資」は株式の取得などを含む広い言い方です。経理では呼び名よりも、契約上、何を取得し、相手に何を約束した取引なのかを確認します。
株主の責任と権利
株主としての責任は、保有する株式の引受価額が限度です。出資者が別に債務を保証している場合や、役員として責任を負う場合まで、この限度で終わるという意味ではありません。
次は株主の主な権利の整理です。権利の内容は、定款や種類株式の定めで確認します。配当・残余財産の分配は、出資元本や利益の受取りを保証するものではありません。
| 権利 | 確認すること |
|---|---|
| 剰余金の配当を受ける権利 | 株式ごとの配当内容と、会社による配当の決定 |
| 残余財産の分配を受ける権利 | 清算時に分配できる財産があるか、株式ごとの分配内容 |
| 株主総会の議決権 | 議決権を行使できる事項や制限の有無 |
根拠は会社法の株主の責任、株主の権利、種類株式の規定です。株式数や出した金額だけで、権利の内容を決めつけないようにします。
利益が出たことと、配当が実施されることは別です。配当には、会社法の剰余金配当の規定による決定と、純資産額・分配可能額などの制限の確認が必要です。
払込前にそろえる確認表
払込前に、会社が決めた募集事項と、引受人が受け取った資料を照合します。次の表は、設立済みの株式会社が金銭で新株を発行するときの、経理担当者の確認例です。
| 項目 | 確認する内容 | 資料の例 |
|---|---|---|
| 発行する株式 | 募集株式の種類・数、引き受ける相手 | 募集事項、定款、引受資料 |
| 払込金額 | 払込金額又は算定方法と、引受株数に対応する払込総額 | 決議資料、申込書又は契約 |
| 払込日程・場所 | 期日か期間か、会社が指定した銀行等の払込先 | 募集事項、払込案内 |
| 資本金等への計上 | 増加する資本金・資本準備金に関する事項 | 募集事項、計上額の確認資料 |
| 引受けの方法 | 申込み・割当て方式か、総数引受契約方式か | 申込書・割当通知又は締結済み契約 |
募集事項は新株発行の都度定めます。根拠は会社法の募集事項の決定です。決議する機関や追加手続きは、公開会社か非公開会社か、株主割当か、委任の有効範囲、種類株式や有利発行などにより確認します。
取締役会があるという理由だけで、募集事項をその取締役会だけで決められるとは限りません。また、株主総会と取締役会の両方の決議が、どの募集でも同じように必要になるわけではありません。
総数引受契約を締結する方式では、通常の申込み・割当ての規定は適用されません。募集事項の決定は別に確認し、譲渡制限株式の契約承認の要否・承認機関は定款の別段の定めも含めて、会社法の総数引受契約の特則を確認します。
この表は登記の添付書類の全件一覧ではありません。設立手続きは会社設立の記事、払込額と資本金の違いは資本金の記事で扱います。
払込みと株主になる日
金銭出資の募集株式引受人は、定めた期日又は期間内に、会社が指定した銀行等の払込場所で、引き受けた株式の払込金額の全額を払い込みます。
次は、通常の金銭出資による募集株式について、出資を履行した場合の株主となる日の区別です。払込みを要しない役員報酬の株式交付や仮装払込みは、この表の対象外です。
| 募集事項での定め | 株主となる日 | 照合する日付 |
|---|---|---|
| 払込期日を定める | 定めた払込期日 | 決議資料の期日と、実際の入金日を区別 |
| 払込期間を定める | 期間内に出資を履行した日 | 期間の末日だけでなく、実際の履行日を確認 |
根拠は会社法の出資の履行と株主となる時期の規定です。入金日・株主となる日・登記申請日を、同じ意味の日付として記録しないようにします。
金銭出資の引受人が所定の期日又は期間内に出資を履行しないときは、その履行によって株主となる権利を失います。不足入金や遅れがあれば、入金明細だけで処理を完結させず、手続きの担当者へ確認します。
引受人は、会社に対する債権と払込債務を相殺できません。会社への貸付残高があるからという理由で、引受人の判断だけで振込みを省略しないようにします。債権を現物出資にする手続きは、この記事の金銭払込みとは別です。
受入会社・出資法人それぞれの仕訳
受入会社は資本金等の増加、出資法人は株式という資産の取得を記録します。同じ払込金でも、記帳する立場によって勘定科目が違います。
通常の円貨で新株のみを発行する架空の設例です。払込期日に入金され、受入会社は全額を資本金にするとします。発行費用・取得費用、有利発行、新株予約権はなく、出資者は内国法人です。出資法人は子会社・関連会社に当たらない会社の株式を長期保有し、「投資有価証券」で記帳すると仮定します。
| 記帳する側 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 受入会社 | 普通預金 120万円 | 資本金 120万円 |
| 出資法人 | 投資有価証券 120万円 | 普通預金 120万円 |
受入会社が内国法人として新株発行の払込みを受ける取引は、法人税の所得計算では資本等取引に当たり、商品・サービスの売上とは区別します。根拠は法人税法の資本等取引の規定です。
出資法人側では、株式の取得代金を支出した時点で、その払込額をそのまま費用にするわけではありません。有価証券の取得として記録します。「出資」という呼び名だけで、科目を「出資金」に決めないようにします。
内国法人の通常の金銭払込みによる新株取得は、有利発行等の別区分を除き、税務上の取得価額に払込額と取得のために要した費用を含めます。新株予約権行使による取得では権利の帳簿価額も含むため、上の費用・予約権なしの設例をそのまま転用しません。
取得価額は法人税法施行令の有価証券の取得価額、資産・純資産の表示や資本金等の計算は会社計算規則で確認できます。実際の資産科目は、保有目的・出資先との関係・採用する会計基準に合わせて確認します。
受入会社の資本金と資本準備金の配分は、入金額から推測せず、募集事項に合わせます。配分の上限や税務上の判定額は、資本金と資本準備金の解説を参照してください。
払込後に資料を照合する
振込みが済んだら、締結済みの引受資料・入出金明細・仕訳を突き合わせます。下の表は社内の照合作業例です。申請書類の法定セットや、保存期間の一覧ではありません。
| 確認項目 | 突き合わせる資料 | 食い違いがあったとき |
|---|---|---|
| 引受人 | 締結済み契約等の氏名・名称と、入金名義 | 名義だけで別人と決めず、振込人と引受人の関係を確認 |
| 金額 | 引受株数に対応する払込総額と、入出金明細 | 不足や別取引との合算を確認し、手続き担当者へ戻す |
| 日付 | 払込期日又は期間、履行日、株主となる日 | どの日付の不一致か分けて確認 |
| 会社側の資本計上 | 募集事項と資本金等の仕訳・登記関係資料 | 資本準備金への振分けや計上時点を確認 |
| 出資法人側の資産計上 | 引受資料、送金記録、取得費用の明細 | 払込代金と費用を区別し、取得価額・科目を確認 |
| 株主名簿 | 氏名・名称、住所、株式の種類・数、取得日など | 会社の名簿管理担当者へ確認 |
会社が新株を発行した場合の株主名簿の記載・記録は、会社法の株主名簿の規定で確認します。株券発行会社では発行済み株券の番号も確認対象となり、種類株式発行会社では種類ごとの株式数を分けます。
入金明細だけを残すと、その金銭が出資・借入れ・売上のどれだったのかを後から追いにくくなります。社内管理では、関連する決議・契約・入出金・仕訳を同じ取引として参照できるようにしておくと、照合しやすくなります。
法人税計算機:対象条件を確認して法人税額を試算するこの記事と分けて確認する取引
この記事の払込み・仕訳例は、設立済みの株式会社への通常の金銭による新株出資を扱います。次の取引へ、同じ手順や仕訳をそのまま当てはめないようにします。
- 設立時の出資:会社がまだ成立していない段階の手続きは、既存会社の募集株式と分けて確認します。
- 合同会社への出資:株式会社の株式とは別の持分・会社制度として確認します。
- 現物出資:不動産や債権などの評価・給付を含め、金銭出資と分けて確認します。
- 既存株主からの株式購入:売主への支払と、会社が新株発行で受ける払込みを区別します。
VCとの投資契約や条件交渉、株式の評価、投資商品の選択・将来の売却益の見通しは、この記事の対象外です。
よくある質問
株式会社への出資金は返してもらえますか?
株式への出資は、貸付金のように元本返済を約束して渡す金銭ではありません。株式の買取りなどの契約条項は別に確認し、出した額が戻る保証があるとは考えないようにします。
出資を受けた会社は売上に計上しますか?
内国法人が新株発行の払込みとして受ける金銭出資は、資本等取引として売上と区別します。募集事項と払込記録を確認して資本金等へ計上し、株主からの入金でも貸付金や売上代金なら別の取引として記帳します。
他社へ出資した法人は全額を経費にできますか?
通常の金銭払込みで新株を取得した法人は、有価証券の取得として記録し、払込額をそのまま費用にはしません。実際の取得価額と科目は、取得費用・保有目的・出資先との関係などを確認します。
出資すれば配当を受けられますか?
配当が実施される保証はありません。株式ごとの権利内容に加え、会社による配当の決定、純資産額・分配可能額などの制限を確認します。
出典
- e-Gov法令検索「会社法」:株主の責任・権利、募集株式、出資の履行、資本金、株主名簿、剰余金配当。
- e-Gov法令検索「会社計算規則」:資本金等増加限度額、資産・純資産の区分。
- e-Gov法令検索「法人税法」資本等取引の規定。
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」有価証券の取得価額。
- e-Gov法令検索「民法」消費貸借の規定。
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。具体的な手続き・会計・税務の判断は弁護士・司法書士・税理士等にご確認ください。個別の税務・労務相談には応じられません。