税金・経理・補助金ツールズ

時効の援用とは — 期間が過ぎただけでは債権は消えない。旧法か新法かを分けるのは請求日ではなく契約日

結論から言うと、消滅時効は、期間が過ぎただけでは効きません。民法145条は、時効は当事者が援用しなければ「裁判所がこれによって裁判をすることができない」と定めています。つまり、5年なり10年なりが経過しても、債務者が「その債権はもう時効です」と言い出さないかぎり、その債権は法律上まだ生きています。裁判所も、当事者が言わないのに勝手に「時効ですね」とは言いません。

この一段が抜けると、実務は2方向に外れます。回収する側は「5年経ったからもう駄目だ」と早々にあきらめてしまい、支払う側は「時効になっているはずだから放っておけばよい」と考えて、うっかり一部だけ入金してしまう。後者は民法152条の承認にあたり、時効はその時点から振り出しに戻ります。時効という制度で本当に効いているのは、期間そのものよりも「誰が、いつ、何を言ったか(何をしたか)」のほうです。

そしてもう一つ、実務でいちばん取り違えられているのが新旧の分かれ目です。2020年4月1日に改正民法が施行され、時効期間は、知った時から5年と行使できる時から10年の二本立てに整理されました。ところが、どちらの法律が当てはまるかを決めているのはいつ請求したかでもいつ支払期日が来たかでもなく、その債権の原因になった契約がいつされたかです(附則10条1項のかっこ書き)。2020年3月31日以前に結んだ契約から今年発生した売掛金は、いまでも旧法で判断します。

時効は自動では効かない — 145条の「援用しなければ」

民法145条は次のように定めています。

時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

読みどころは2つあります。ひとつは「援用しなければ」。裁判所は、期間の経過を自分で見つけて判断してくれるわけではありません。訴えられた側が「時効を援用します」と主張して、はじめて時効が判断の材料になります。もうひとつはかっこ書きで、援用できるのは債務者本人だけではなく、保証人・物上保証人・第三取得者、そして「権利の消滅について正当な利益を有する者」も含む、と条文に明記されています。

このかっこ書きは、2020年4月1日施行の改正で入ったものです。改正前の145条は次のとおりで、誰が援用できるかを条文が何も言っていませんでした。

時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
実務での意味

本人が「時効だ」と言わなくても、連帯保証人の側が援用してくることがあります。主債務者が音信不通でも、保証人に請求した時点で援用が返ってくる、という順序は珍しくありません。回収を保証人に切り替えるときは、主債務の時効期間がどこまで進んでいるかを先に確認しておくことになります。

期間が過ぎた後に起きること 時効期間が満了した (5年/10年など) この時点では債権は まだ消えていない 債務者・保証人などが「援用」する(民法145条) 援用した → 起算日まで さかのぼって消滅(144条) 援用しない → 債権は生きたまま。 一部でも払えば152条の承認になる
期間の満了は「時効が使えるようになった」だけで、それ自体では債権は消えない。消えるのは援用があったとき。

期間は5年と10年の二本立て(166条1項)

現行の166条1項は、消滅時効の期間を2つ並べています。

債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

その1号と2号が、それぞれ次の期間を定めています。

債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

この2つは「どちらか長いほう」ではなく、先に来たほうで時効が完成します。1号は「知った時から」なので主観的起算点、2号は「行使することができる時から」なので客観的起算点と呼ばれます。

売掛金のような通常の取引債権では、支払期日は請求書にも契約書にも書いてあり、債権者はその日を当然に知っています。したがって主観的起算点と客観的起算点が同じ日に重なり、実際には5年のほうが先に来るのが普通です。10年が意味を持つのは、権利を行使できることを債権者が知らなかった場合(たとえば相続で引き継いだ債権の存在に気づいていなかったなど)です。

条文起算点期間取引債権での実際
166条1項1号権利を行使できることを知った時5年ほぼ常にこちらが先に来る
166条1項2号権利を行使することができる時10年知らなかった場合の上限として働く
167条同上(生命・身体の侵害による損害賠償)20年2号の「十年間」を「二十年間」と読み替える
169条1項判決等で確定した時10年短い時効期間の債権でも10年に延びる

169条1項は、回収の実務では効き目の大きい条文です。

確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。

つまり、判決や確定した支払督促を取っておけば、そこから10年に組み直されます。ただし169条2項が例外を置いていて、確定の時にまだ弁済期が来ていない債権には適用されません。分割払いの合意を取ったときに、まだ期日の来ていない将来の回は、この10年には乗らないということです。

分かれ目は請求日ではなく契約日(附則10条1項)

ここが、この記事でいちばん取り違えられている点です。2020年4月1日の改正は、時効について経過措置を置いています。改正法(平成29年法律第44号)の附則10条1項は次のとおりです。

施行日前に債権が生じた場合(施行日以後に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む。以下同じ。)におけるその債権の消滅時効の援用については、新法第百四十五条の規定にかかわらず、なお従前の例による。

そして同条4項が、期間についても同じことを言っています。

施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例による。

読みどころは1項のかっこ書きです。「施行日以後に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む」——つまり、債権そのものは施行日より後に発生していても、その原因になった契約が施行日前にされていれば、旧法で判断するということです。

具体例(一般に、次のように判断します)

2019年10月に基本契約を結んだ継続的な取引先があり、そこから2026年5月に発生した売掛金があるとします。発生日だけを見れば施行日よりずっと後ですが、原因である基本契約は施行日前なので、この売掛金の消滅時効は旧法で考えます。一方、同じ取引先と2021年に新しい基本契約を結び直していれば、そこから生じる債権は新法です。「請求書の日付」ではなく「どの契約から生じた債権か」を見ることになります。

新法か旧法かを決めているのは、下段(契約日)のほう 2020年4月1日 2019年10月 契約 2026年5月 売掛金発生 → 旧法(原因である契約が施行日前) 2021年 契約し直し 2026年5月 売掛金発生 → 新法(5年/10年)
債権の発生日は上下で同じ2026年5月。それでも附則10条1項のかっこ書きにより、原因である契約がいつかで新旧が分かれる。

なお、附則10条2項は、施行日前に旧法147条の中断事由や旧法158条から161条までの停止事由が生じていた場合について、その効力もなお従前の例によるとしています。改正で「中断・停止」という言葉自体が「更新・完成猶予」に置き換わっているため、古い債権を追うときは用語の対応から確認することになります。

改正前は職業別に1年・2年・3年があった

旧法の一般原則は、旧167条1項の次の一文でした。

債権は、十年間行使しないときは、消滅する。

ところが、この10年には大量の例外がぶら下がっていました。短期消滅時効と呼ばれるもので、業種や債権の種類ごとに1年・2年・3年が定められていました。経理でいちばん関係が深いのが旧173条です。

次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。

その1号が、まさに商品の売掛金を指しています。

生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権

改正はこれらの短期消滅時効をまとめて廃止し、166条1項の5年・10年に一本化しました。現行の民法には170条から174条までの条文がありません。旧法時代の主なものを並べると次のとおりです。

旧条文期間対象になっていた債権(条文の言い方)
旧170条1号3年医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権
旧170条2号3年工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権
旧172条1項2年弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権
旧173条1号2年生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価
旧173条3号2年学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権
旧174条3号1年運送賃に係る債権
旧174条4号1年旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金

前の章の経過措置と合わせて読むと、意味がはっきりします。2020年3月31日以前の契約から生じた小売・卸売の売掛金は、旧173条1号の2年で判断するということです。「時効は5年」と覚えていると、5年待ってから請求して、実は2年でとうに完成していた、という取り違えが起きます。逆に言えば、古い契約ほど時効は短い可能性があるので、放置している債権があるならそちらを先に見ることになります。

経理の側が時効を振り出しに戻してしまう瞬間(152条)

ここからは、支払う側・受け取る側の両方に効く話です。民法152条1項はこう定めています。

時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。

「新たにその進行を始める」——これが更新です(旧法では中断と呼ばれていたもの)。それまで積み上がった期間はリセットされ、承認の時からもう一度数え直しになります。5年のうち4年11か月が経っていても、承認があればまた5年です。

怖いのは、承認が裁判の外でも成立することです。条文は形式を要求していません。実務で承認とみなされうる典型は次のようなものです。

とくに残高確認書は、経理の担当者が定型業務として処理してしまう書類です。相手が「これで時効が更新される」と意識していなくても、152条は意識を要件にしていません。

さらに152条2項が、承認のハードルを下げています。

前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。

承認をするのに処分の権限は要らない、と条文が明言しています。債権を放棄したり譲渡したりするような重い行為とは別の扱いになっている、ということです。

回収する側から見ると、これは武器になる

時効が近い債権について、相手から一部でも入金してもらう、あるいは支払計画の書面をもらうことができれば、そこから期間が数え直しになります。内容証明を送って6か月しのぐより、承認を1回取るほうが効果は大きいことになります。ただし153条3項により、承認による更新の効力は、その事由が生じた当事者と承継人の間にしか及びません。主債務者から承認を取っても、それだけで保証人との関係まで当然に更新されるわけではない、という限界があります。

支払サイトから入金予定日を計算する

援用されると起算日までさかのぼって消える(144条)

援用があったときの効き方も、条文が決めています。民法144条です。

時効の効力は、その起算日にさかのぼる。

「援用した日から消える」のではなく、起算日にさかのぼって、最初から無かったことになります。実務で差が出るのは利息・遅延損害金です。援用の日までの遅延損害金が残るわけではなく、元本が起算日にさかのぼって消えるので、そこから発生していたはずの遅延損害金も一緒に消えることになります。

もうひとつ、経理でよく問題になるのがすでに払ってしまったお金です。時効期間が過ぎた後に、それと知らずに支払ってしまった。この場合、援用していない以上その時点で債権は生きているので、支払いは有効な弁済です。そしてその支払い自体が152条の承認になりうるため、後から「あれは時効だった」と言って取り戻すという筋は通りにくくなります。時効は、気づいて使ってはじめて効く制度だということが、ここでも効いてきます。

「あらかじめ放棄」はできない(146条)

民法146条は短い条文です。

時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

契約書に「本契約から生じる債権について、債務者は消滅時効を援用しない」と書いても、あらかじめの放棄はできないので、その条項は効きません。強い立場の側が契約でこれを封じることを防ぐ規定です。

裏返すと、条文が禁じているのは「あらかじめ」の放棄です。時効が完成した後に、債務者が自分の判断でその利益を手放すこと自体は、この条文の禁止の外にあります。実務で「時効完成後に一部入金した」「支払う旨の書面を出した」というケースが問題になるのは、まさにこの区別があるためです。

契約書のチェック

取引基本契約のひな型に「時効を援用しない」旨の条項が入っていることがあります。146条によりあらかじめの放棄としては効かないので、この条項があるからといって古い債権が安全だと考えるのは危険です。時効を止めたいなら、条項ではなく次の章の3系統で実際に動かすことになります。

止める手は3系統ある(147条〜151条)

時効の進行に手を打つ方法は、条文上3つの系統に分かれています。効き方が違うので、区別して使うことになります。

系統条文効き方期間
更新(数え直し)147条2項・148条2項・152条1項ゼロから数え直す
完成猶予(先送り)147条1項・148条1項・149条・150条・151条その間は完成しない事由ごと
猶予の特則158条〜161条満了間際の特別な事情で先送り3〜6か月

いちばん手軽なのが150条1項の催告です。

催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

ただし150条2項が、その使い回しを封じています。

催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

つまり催告で稼げるのは6か月が1回だけで、6か月ごとに内容証明を送り続けても延び続けることはありません。催告は「訴訟の準備をする時間を作る」ための手であって、それ自体で回収期限を延ばす手ではない、ということです。この点は内容証明郵便の記事でも扱っています。

151条1項の協議を行う旨の合意は、書面(または電磁的記録)で行えば1年を上限に猶予されます。ただし151条2項のただし書が通算の上限を置いていて、猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることはできません。話し合いを続けている間は無限に止まる、という制度ではありません。

確実なのは147条1項の裁判上の請求支払督促などで、権利が確定すれば147条2項によって更新され、169条1項で10年に組み直されます。手続そのものは支払督促少額訴訟の記事に分けて書いています。

帳簿ではどう扱うか

ここまでは民法の話です。帳簿から落とせるかどうかは別の条文で決まります。法人税の貸倒損失は法人税基本通達9-6-1から9-6-3までが定めており、要件も落とすタイミングも民法の時効とは一致しません。

実務で混乱しやすいのは、次のずれです。

3つ目がいちばん多く、そしていちばん判断が要るところです。要件の中身は貸倒損失の記事に分けて書いていますので、そちらを参照してください。ここでは「民法で消えたかどうか」と「税務で落とせるかどうか」が別の問いであることだけ、はっきりさせておきます。

この記事の要点

  • 時効は援用しなければ効かない(145条)。援用できるのは債務者だけでなく保証人・物上保証人・第三取得者も含む
  • 期間は知った時から5年/行使できる時から10年(166条1項)。先に来たほうで完成する
  • 新旧を分けるのは請求日ではなく原因である契約の日(附則10条1項のかっこ書き)。2020年3月31日以前の契約なら旧法
  • 旧法では小売・卸売の売掛金は2年(旧173条1号)。5年だと思っていると取り違える
  • 一部入金・支払猶予の申し入れ・残高確認書は152条の承認になりうる。時効はそこから数え直しになる
  • 催告で稼げるのは6か月が1回だけ(150条2項)
  • 帳簿から落とせるかは民法ではなく法人税の通達で決まる

間違えやすいところ

1. 「5年経ったから、もう請求できない」と決めてしまう。 期間の満了は、相手が時効を使える状態になっただけです。援用されるまで債権は生きているので、請求することも、支払ってもらうこともできます。相手が時効に気づいていないケースは実際にあります。

2. 新旧を「請求書の日付」で判定する。 判定するのは原因である契約の日です。継続的な取引ほど、基本契約が古いまま更新されずに残っていることがあります。

3. 内容証明を6か月ごとに送り続ければ止まると考える。 150条2項が明文で否定しています。催告で稼げるのは1回きりです。

4. 契約書の「時効を援用しない」条項を当てにする。 146条により、あらかじめの放棄はできません。

5. 主債務者から承認を取れば保証人にも及ぶと考える。 153条3項により、承認による更新の効力はその事由が生じた当事者と承継人の間にしか及びません。

6. 判決を取れば無条件に10年になると考える。 169条2項により、確定の時に弁済期が来ていない債権には適用されません。分割払いの将来分は乗りません。

7. 「中断」と「更新」を同じ意味で使う。 改正で用語が入れ替わっており、旧法時代の中断・停止と現行の更新・完成猶予は、範囲も効き方も同じではありません。附則10条2項により、施行日前に生じた中断・停止事由の効力はなお従前の例によります。

よくある質問

Q. 時効の援用は、書面で出さないといけませんか?

A. 民法145条は「援用しなければ」としか定めておらず、方式を要求していません。訴訟の中で主張することもできますし、裁判外で相手に伝えることもできます。ただし、方式が自由だということは、裏を返せば言ったことを後から証明しなければならないということでもあります。実務で内容証明郵便が使われるのは、条文が要求しているからではなく、いつ何を伝えたかを残すためです。なお、援用できるのは債務者本人だけではなく、145条のかっこ書きが挙げる保証人、物上保証人、第三取得者、その他権利の消滅について正当な利益を有する者も含まれます。

Q. 2019年に結んだ取引基本契約から、今年発生した売掛金があります。時効は5年でよいですか?

A. いいえ、一般には旧法で判断することになります。改正法の附則10条1項は、施行日前に債権が生じた場合について従前の例によるとしたうえで、かっこ書きで「施行日以後に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む」と定めています。施行日は2020年4月1日ですので、2019年の基本契約から生じた債権は、発生が今年であっても旧法の対象になります。旧法では小売商人・卸売商人・生産者が売却した商品の代価に係る債権は旧173条1号により2年とされていました。ただし、その後に契約を結び直していれば、新しい契約から生じる債権は新法になります。個別の契約がどちらに当たるかは事実関係によりますので、判断が必要な場合は弁護士にご確認ください。

Q. 取引先から届いた残高確認書に押印して返すと、時効はどうなりますか?

A. 一般には、債務の存在を認めた行為として民法152条1項の承認にあたると考えられ、その時から時効が新たに進行を始めます。それまで経過した期間はリセットされます。152条2項は、承認をするのに相手方の権利についての処分につき権限があることを要しないと定めており、承認の成立にあたって重い権限は求められていません。経理の定型業務として処理されがちな書類ですが、時効の観点では効果が大きい行為です。逆に回収する側から見れば、時効が近い債権について残高確認や一部入金を得ることには意味があるということになります。

Q. 時効期間が過ぎた後に、知らずに支払ってしまいました。返してもらえますか?

A. 一般には難しいと考えられます。時効は援用してはじめて効くため、援用していない時点では債権は法律上まだ存在しており、その支払いは有効な弁済にあたります。さらに、支払ったこと自体が民法152条1項の承認と評価される余地もあります。民法146条が禁じているのは「あらかじめ」時効の利益を放棄することであって、完成後の債務者の行為までを一律に無効としているわけではありません。具体的な事案で取り戻せるかどうかは事実関係によって変わりますので、弁護士にご相談ください。

Q. 内容証明を送れば時効は止まりますか?

A. 民法150条1項により、催告があった時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しません。ただし150条2項が「催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない」と定めているため、6か月ごとに送り続けて延ばすことはできません。催告で得られるのは、訴訟や支払督促の準備をするための1回分の時間です。書面で協議を行う旨の合意ができるのであれば、151条1項により1年を上限に猶予されますが、151条2項ただし書により通算では5年を超えることができません。

Q. 相手が援用したら、遅延損害金も消えますか?

A. 民法144条は「時効の効力は、その起算日にさかのぼる」と定めています。援用した日から先だけ消えるのではなく、起算日にさかのぼって最初から無かったことになりますので、元本が消えれば、そこから発生していたはずの遅延損害金も併せて消えることになります。なお、判決などで権利が確定していた場合は169条1項により時効期間が10年になりますので、そもそも援用できる状態になるまでの時間が変わります。

Q. 時効で消えた売掛金は、いつ帳簿から落とせますか?

A. 民法の時効と、法人税の貸倒損失は別の条文で判断します。貸倒損失は法人税基本通達9-6-1から9-6-3までが要件を定めており、時効の完成や援用がそのまま損金算入の要件になっているわけではありません。時効期間が過ぎても援用がなければ債権は法律上存在していますし、逆に援用がなくても回収不能と判断できる場合はあります。要件とタイミングについては当サイトの貸倒損失の記事で扱っていますが、実際の処理は税理士にご確認ください。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法律相談ではありません。時効の起算点がいつになるか、ある行為が承認にあたるか、旧法と新法のどちらが適用されるかは事実関係によって変わりますので、実際の判断については弁護士にご相談ください。税務上の処理については税理士にご確認ください。

この内容をXで共有