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支払督促とは — 相手を呼び出さずに差押えの前提を作る手続。2週間の期限は2回あり、30日で失効する

結論から言うと、支払督促は裁判官が判決を書く手続ではありません。簡易裁判所の裁判所書記官が、債権者の申立てだけを見て発します。民事訴訟法386条1項は「支払督促は、債務者を審尋しないで発する」と定めていて、相手の言い分を聞く場面が最初から用意されていません。それでも、相手が何も言わずに期間を過ごせば、最終的に確定判決と同じ効力を持ち(396条)、差押えの前提になる債務名義になります(民事執行法22条4号)。売掛金が回収できないときに名前が挙がるのは、この「速さと安さ」のためです。

ただし、実務でつまずく点が3つあります。第一に、期限の2週間が2回あります。仮執行宣言の前(391条1項)と後(393条)で、意味がまったく違います。第二に、債権者の側にも期限があります。仮執行宣言を申し立てられるようになってから30日放置すると、支払督促は失効します(392条)。第三に、相手が異議を出せば通常の訴訟に移ります(395条)。このとき審理をするのは、原則として相手の住所地の裁判所です。

そしてもうひとつ、条文の見た目が最近変わりました。民事訴訟法のIT化により、387条の見出しは「電子支払督促の記録事項」となり、支払督促は電磁的記録として作成されることが条文本文に書かれています。この記事では、手続の流れ、使える場面と使えない場面、3つの期間、費用の実額、異議が出たときに何が起きるかを、条文と計算の順に整理します。

全体の流れ — 申立てから差押えまで

支払督促は、うまく進めば2回の「2週間待ち」を挟んで終わる手続です。途中で相手が異議を出すと、そこから通常の訴訟に切り替わります。全体像を先に置きます。

① 支払督促の申立て 相手の住所地の簡裁・書記官へ ② 電子支払督促を作成 債務者を審尋しない(386条1項) ③ 債務者へ送達 送達された時に効力(388条2項) ④ 1回目の2週間(391条1項) この間に督促異議が出なければ次へ ⑤ 仮執行宣言の申立て → 宣言・送達 申立ては30日以内。過ぎると失効(392条) ⑥ 2回目の2週間(393条) 経過すると督促異議はもう出せない ⑦ 確定判決と同一の効力(396条) 債務名義になる → 強制執行へ 督促異議が出た場合 通常訴訟へ移行(395条) 審理は相手の住所地が原則
本線は2回の「2週間待ち」で構成される。左に伸びる破線が督促異議で、どちらの2週間の中で出されたかによって効果が違う(1回目は390条、2回目は393条)。⑤の30日は債権者側の期限で、ここだけは相手ではなく自分が動かないと失効する。

使える請求・使えない請求(382条)

入口の条文が382条です。何にでも使える手続ではありません。

金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求については、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる。ただし、日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る。

前半から、対象が金銭・代替物・有価証券の一定数量の給付に限られることが分かります。売掛金・貸金・未払いの請負代金といったお金を払えという請求が中心で、建物を明け渡せ物を修理しろといった請求には使えません。

実務で効いてくるのはただし書のほうです。公示送達によらないで送達できる場合に限ると書かれています。公示送達は、相手の居場所が分からないときに裁判所の掲示等によって送達したことにする制度です。それを使わなければ届けられない相手、つまり所在が分からない相手には支払督促を使えません。相手が夜逃げしている、登記上の本店に誰もいない、といった場面では、この時点で候補から外れます。

「届かない」ときに何が起きるか — 2か月で取下げ扱いになる

送達できなかった場合の扱いは388条3項が定めています。「債権者が申し出た場所に債務者の住所、居所、営業所若しくは事務所又は就業場所がないため、電子支払督促を送達することができないときは、裁判所書記官は、その旨を債権者に通知しなければならない。この場合において、債権者が通知を受けた日から二月の不変期間内にその申出に係る場所以外の送達をすべき場所の申出をしないときは、支払督促の申立てを取り下げたものとみなす」と書かれています。放っておくと取り下げたものとみなされる点が要注意で、これは却下されるのとは意味が違います。別の送達場所を探すなら、通知から2か月という期限の中で動くことになります。

どこに出すか — 相手の住所地の簡易裁判所(383条)

383条1項は、申立て先を債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官と定めています。個人なら住所地、法人なら主たる事務所または営業所の所在地が原則です。債権者の側の都合では選べません

ただし2項に例外が2つあります。第1号は事務所又は営業所を有する者に対する請求でその事務所又は営業所における業務に関するもので、この場合は当該事務所又は営業所の所在地を管轄する簡易裁判所にも出せます。第2号は手形又は小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する請求で、手形又は小切手の支払地が加わります。

取引先の支店との取引で生じた売掛金なら、第1号によってその支店の所在地を選べる余地があります。ここは後で述べる「異議が出たときの移行先」に直結するので、申立ての段階で意識しておく価値があります。

条文上は「電子支払督促」になっている(387条)

民事訴訟法のIT化により、督促手続の条文はいま次のようになっています。387条1項です。

裁判所書記官は、支払督促を発するときは、最高裁判所規則で定めるところにより、電子支払督促(次に掲げる事項を記録し、かつ、債務者がその送達を受けた日から二週間以内に督促異議の申立てをしないときは債権者の申立てにより仮執行の宣言をする旨を併せて記録した電磁的記録をいう。以下この章において同じ。)を作成しなければならない。

読み方の要点は2つあります。ひとつは、支払督促が電磁的記録として作成されることが条文の本文に入ったことです。以降の条文も「電子支払督促の送達」(388条)、「仮執行の宣言を付した電子支払督促」(393条)というように、この語で書かれています。

もうひとつが、この括弧の中に、すでに「2週間」と「仮執行の宣言をする旨」が入っていることです。つまり支払督促は、発する時点で2週間の経過と、そのあと仮執行の宣言に進むことを、あらかじめ告げる内容を内蔵した文書として作られます。相手に届く書面の中に、次の段階の説明が最初から書き込まれているわけです。

なお397条は、最高裁判所規則で定める指定簡易裁判所の書記官に対しては、383条による場合のほかに、電子情報処理組織を使用する方法によって申立てができると定めています。オンラインでの申立てが条文上明示されているのはこの部分です。

期間は3つある — 2週間が2回、30日が1回

ここが支払督促でいちばん間違えやすいところです。2週間という期間が2回出てきますが、意味が違います。さらに、債権者自身に課される30日があります。

送達 2週間経過 仮執行宣言・送達 2週間経過 ① 督促異議の2週間(391条1項) 異議が出れば支払督促は失効(390条) ② 債権者の30日(392条) 申し立てないと支払督促が失効する ③ 督促異議の2週間(393条) 経過すると異議は出せなくなる ①と③はどちらも債務者の2週間だが、①は「出れば止まる」、③は「過ぎればもう出せない」。 ②だけが債権者自身の期限で、相手が何もしなくても放置すると失効する。
3つの期間の位置関係。②の30日は「仮執行の宣言の申立てをすることができる時から」進むので、起算点は①の2週間が過ぎた時点になる。

1回目の2週間は391条1項です。

債務者が電子支払督促の送達を受けた日から二週間以内に督促異議の申立てをしないときは、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、電子支払督促に手続の費用額を併せて記録して仮執行の宣言をしなければならない。ただし、その宣言前に督促異議の申立てがあったときは、この限りでない。

この2週間の中で相手が異議を出すと、390条により支払督促はその督促異議の限度で効力を失います。一部だけ争われた場合は、争われた部分だけが失効します。

次に債権者の30日です。392条は「債権者が仮執行の宣言の申立てをすることができる時から三十日以内にその申立てをしないときは、支払督促は、その効力を失う」と定めています。相手が異議を出さずに黙っていても、こちらが動かなければ支払督促そのものが消えます。しかも消えるのは仮執行宣言ではなく支払督促です。ここを取り違えると、申立てからやり直すことになります。

最後が2回目の2週間で、393条です。

仮執行の宣言を付した電子支払督促の送達を受けた日から二週間の不変期間を経過したときは、債務者は、その支払督促に対し、督促異議の申立てをすることができない。

1回目と違い、こちらは期間が過ぎると異議を出す道が閉じるという書き方です。そしてこの2週間が過ぎると396条の効力が生じます。不変期間と書かれているのは、裁判所が勝手に伸縮できない期間だという意味です。

なお、申立てが却下された場合の異議には別の期間があります。385条3項は、却下の処分に対する異議の申立てをその告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならないとしています。ここだけ1週間なので、2週間のつもりでいると間に合いません。

2週間・30日・1週間はいずれも暦の日数で数える期間です。起算日をどこに置くか、期間の末日が休日に当たるとどうなるかで結論が動きますので、実際の期限は申立先の裁判所に確認してください。

2週間後・30日後がいつになるか数える(日数計算・営業日計算)

費用 — 「訴訟の半額」が当てはまるのは半分だけ

支払督促の紹介でよく見かけるのが「訴訟の半額で済む」という説明です。これは正確には半分だけ正しい表現です。

手数料を定めているのは民事訴訟費用等に関する法律です。同法3条2項により、電子情報処理組織を使用する方法で行うことができるとされている申立て(特定申立て)については別表第二が適用され、支払督促は同表一一の項に置かれています。その額はイとロの合算額とされていて、内訳はこうなっています。

つまり半額になるのは価額に比例するイの部分だけで、ロは定額で乗ってきます。そして訴え提起(別表第二 一の項)にも同じ構造のロがあり、そちらは2,500円(電子申立てなら1,400円)です。支払督促のロのほうが高いという関係になっています。

実際に計算すると次のようになります。イの階段は、価額100万円までの部分が10万円までごとに1,000円、100万円を超え500万円までの部分が20万円までごとに1,000円、という積み上げです。

請求額訴え提起(書面)支払督促(書面)訴え提起(電子)支払督促(電子)安いのは
10万円3,500円3,200円2,400円3,000円電子なら訴え提起
20万円4,500円3,700円3,400円3,500円電子なら訴え提起
30万円5,500円4,200円4,400円4,000円支払督促
50万円7,500円5,200円6,400円5,000円支払督促
100万円12,500円7,700円7,500円7,500円支払督促
300万円22,500円12,700円21,400円12,500円支払督促
電子申立てだと、20万円以下では訴え提起のほうが安い

表の右2列を見ると、請求額20万円以下では訴え提起(電子)のほうが安く、20万円を超えたところで支払督促が逆転します。ロの定額部分が支払督促2,500円に対し訴え提起1,400円で、1,100円の差があるためです。イの側で半額になる分がこの差を上回るまでは、支払督促は割安になりません。少額の売掛金を回収するとき、費用の安さを理由に支払督促を選ぶ根拠はここでは立たないことになります。

費用について、もう2つ条文の手当てがあります。ひとつは還付です。同法9条2項6号は、支払督促の申立ての却下の処分の確定または電子支払督促の送達前における取下げがあった場合を、納めた手数料を還付する場面として挙げています。送達される前に取り下げれば戻ってくる、という設計です。

もうひとつは訴訟に移ったときの二重払いの防止です。同法3条3項1号は、395条により訴えの提起があったものとみなされたときは、訴えを提起する場合の手数料の額から、支払督促について納めた額を控除した額を納めればよいとしています。異議が出て訴訟になっても、支払督促の分が無駄になるわけではありません。

この記事で扱っているのは裁判所に納める手数料だけです。同法11条から13条には、送達などに要する費用を予納させる仕組みが別に定められています。総額がいくらになるかは申立先の裁判所にご確認ください。

異議が出たら — 訴訟に移り、管轄が動く(395条)

支払督促を選ぶかどうかは、相手が異議を出したときに何が起きるかで決まります。395条です。

適法な督促異議の申立てがあったときは、督促異議に係る請求については、その目的の価額に従い、支払督促の申立ての時に、支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所又はその所在地を管轄する地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。この場合においては、督促手続の費用は、訴訟費用の一部とする。

3つの点を読み取れます。

第一に、訴えの提起があったものとみなされる時点が「支払督促の申立ての時」である点です。異議が出た日ではありません。これは後述する時効の場面で効いてきます。

第二に、移行先が「支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所」またはその所在地の地方裁判所である点です。支払督促は383条により相手の住所地に出していますから、訴訟の舞台も相手の住所地になります。遠方の取引先に対して支払督促を使い、異議を出された場合、その先の訴訟は相手の土俵で行うことになります。契約書に管轄の合意があっても、支払督促を選んだ時点でこの流れに乗ります。異議が出る見込みが高い相手に対しては、この点が支払督促の最大の弱点です。

第三に、督促手続の費用は訴訟費用の一部になる点です。前節の手数料の控除と合わせて、支払督促に投じた分は訴訟の側に引き継がれます。

なお397条による電子申立てを指定簡易裁判所にした場合は、移行先の決め方が398条という別の条文になり、候補が複数あるときの順序や、債権者が1つを指定できる仕組みが定められています。オンラインで申し立てた場合は移行先の考え方が変わる、という点だけ押さえておけば十分です。

異議が不適法な場合の扱いは394条にあります。簡易裁判所は、督促異議に係る請求が地方裁判所の管轄に属する場合においても、決定でその督促異議を却下しなければならないとされ、この決定に対しては即時抗告ができます。

時効 — 支払督促は完成猶予の事由(民法147条)

売掛金の消滅時効は、民法166条1項により権利を行使することができることを知った時から5年、または権利を行使することができる時から10年です。通常の取引では前者が先に来ます。

時効が迫っているときに支払督促が使われるのは、これが時効の完成猶予の事由として条文に名指しされているからです。民法147条1項は次のように定め、その2号に支払督促を挙げています。

次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

括弧書きが重要です。権利が確定しないまま終わった場合でも、終了の時から6か月は時効が完成しないと書かれています。392条の30日を過ぎて支払督促が失効してしまった場合や、送達できずに取下げ扱いになった場合でも、いきなり時効が完成するわけではなく、6か月の猶予が残るという構造です。

逆に、権利が確定した場合は147条2項により、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始めるとされます。仮執行宣言付支払督促が確定して396条の効力が生じれば、時効はそこからやり直しになります。

ここで前節の「支払督促の申立ての時に……訴えの提起があったものとみなす」(395条)が効いてきます。異議が出て訴訟に移った場合でも、時効との関係では申し立てた時点が基準になります。時効の完成が目前という場面で支払督促が選ばれるのは、この組み合わせのためです。

催告(民法150条)による猶予は6か月で、しかも同条2項により猶予されている間の再度の催告には効力がありません。内容証明を繰り返しても時効は止まり続けない、という点は支払督促との違いとして押さえておくところです。さらに151条3項により、催告で猶予されている間に協議を行う旨の合意をしても効力がなく、その逆の順序も同様ですので、催告と協議合意を足して時間を稼ぐこともできません。督促の入口として内容証明を使う場合の効果と限界は内容証明郵便とは — 証明されるのは「出したこと」だけで詳しく整理しています。催告は6か月を1回だけ買う手で、その6か月の中で支払督促に進むのが本来の使い方です。

「確定判決と同一の効力」の射程(民事執行法35条)

396条は「仮執行の宣言を付した支払督促に対し督促異議の申立てがないとき、又は督促異議の申立てを却下する決定が確定したときは、支払督促は、確定判決と同一の効力を有する」と定めます。この「同一の効力」がどこまでを指すのかは、民事執行法の側を見ると輪郭が見えます。

まず強制執行ができることははっきりしています。民事執行法22条は債務名義を列挙していて、その4号仮執行の宣言を付した支払督促です。確定を待たず、仮執行宣言が付いた段階で債務名義になります。

一方で、債務者が後から争う道である請求異議の訴え(同法35条)の条文には、次の書き分けがあります。

確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る。

この2項が時期を制限しているのは、条文の文言上「確定判決について」の異議事由です。支払督促は396条によって確定判決と同一の効力を有するとされるものであって、確定判決そのものではありません。条文はここで両者を書き分けていると読めます。また35条1項は、22条4号の債務名義について確定前のものを請求異議の対象から除いており、支払督促については確定の前後で扱いが変わることも読み取れます。

実務的な意味は、支払督促が確定しても、判決を取った場合とまったく同じ強さになるとは限らないということです。相手が争ってくる見込みがあるなら、速さだけで支払督促を選ぶ判断にはリスクがあります。

ここは条文の文言から読み取れる範囲を整理したものです。実際にどの主張が認められるかは事案ごとの判断になりますので、争いが予想される場合は弁護士にご相談ください。

支払督促・少額訴訟・通常訴訟の比較

60万円以下の金銭請求であれば少額訴訟という選択肢もあります。民事訴訟法368条1項は、簡易裁判所において訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求について少額訴訟による審理及び裁判を求めることができるとし、同項ただし書で同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えて求めることはできないとしています。年間の利用回数に上限がある点が特徴です。

項目支払督促少額訴訟通常訴訟
判断する人裁判所書記官裁判官裁判官
相手の言い分を聞くか聞かない(386条1項)聞く聞く
金額の上限なし60万円以下(368条1項)なし
対象金銭・代替物・有価証券(382条)金銭の支払(368条1項)制限なし
相手の所在が不明使えない(382条ただし書)公示送達の余地あり公示送達の余地あり
出廷不要必要必要
相手が争ったとき通常訴訟へ移行(395条)通常手続へ移行しうるそのまま審理
手数料(100万円)7,700円(書面)—(60万円超は対象外)12,500円(書面)
選び方の目安

相手が争ってこないと見込める(金額に争いがなく、単に支払が滞っている)場合は支払督促が向きます。出廷が要らず、手数料も価額が大きいほど有利です。相手が争ってくる見込みがある場合、支払督促は異議ひとつで相手の住所地の訴訟に変わるため、利点が消えます。相手の所在が分からない場合は382条ただし書により最初から使えません。少額で電子申立てができる場合は、前掲のとおり費用面の優位もありません。

よくある質問

Q. 支払督促は、裁判官が内容を審査して出すのですか?

A. いいえ、発するのは裁判所書記官です。民事訴訟法382条は「裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる」と定めており、386条1項は「支払督促は、債務者を審尋しないで発する」としています。相手の言い分を聞く手続は用意されていません。ただし無審査というわけではなく、385条1項により、382条や383条の規定に違反するとき、または申立ての趣旨から請求に理由がないことが明らかなときは、申立てを却下しなければならないとされています。請求の一部について支払督促を発することができない場合は、その一部について却下されます。

Q. 相手に届いてから2週間が過ぎました。すぐ差押えができますか?

A. まだできません。2週間が経過しても自動で次に進むわけではなく、391条1項により、債権者が仮執行の宣言を申し立てる必要があります。そして392条は「債権者が仮執行の宣言の申立てをすることができる時から三十日以内にその申立てをしないときは、支払督促は、その効力を失う」と定めています。相手が何もしていなくても、こちらが30日以内に動かなければ支払督促そのものが失効します。仮執行の宣言が付いた段階で民事執行法22条4号の債務名義になりますので、差押えを検討できるのはその後です。

Q. 督促異議の2週間が2回あると聞きました。何が違うのですか?

A. 1回目は支払督促が送達された時から進む2週間で、391条1項に出てきます。この期間内に督促異議が出ると、390条により支払督促はその督促異議の限度で効力を失います。2回目は仮執行の宣言が付いた支払督促が送達された時から進む2週間で、393条にあります。こちらは不変期間とされ、経過すると債務者はもう督促異議を申し立てることができなくなります。1回目は「出れば止まる期間」、2回目は「過ぎればもう出せなくなる期間」と整理すると混乱しにくくなります。

Q. 相手が異議を出したら、支払督促の費用は無駄になりますか?

A. 無駄にはなりません。民事訴訟法395条は、適法な督促異議があったときは支払督促の申立ての時に訴えの提起があったものとみなすとしたうえで、「督促手続の費用は、訴訟費用の一部とする」と定めています。さらに民事訴訟費用等に関する法律3条3項1号により、訴えを提起する場合の手数料の額から、支払督促について納めた額を控除した額を納めればよいとされています。手数料を二重に払う仕組みにはなっていません。

Q. 遠方の取引先にも支払督促を使えますか?

A. 使えますが、申立て先は選べません。383条1項により、支払督促の申立ては債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対してすることになります。同条2項により、事務所または営業所の業務に関する請求ならその所在地、手形・小切手による請求ならその支払地も選べます。注意が要るのは異議が出たときで、395条により訴訟の場も支払督促を発した簡易裁判所またはその所在地の地方裁判所になります。遠方の相手が争ってきた場合、その先の審理は相手の所在地で行うことになります。

Q. 時効が迫っています。支払督促で止まりますか?

A. 民法147条1項2号は支払督促を時効の完成猶予の事由として挙げています。同項の括弧書きにより、確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなく終了した場合でも、その終了の時から6か月を経過するまでは時効は完成しません。権利が確定した場合は同条2項により、その事由が終了した時から時効が新たに進行します。なお催告の場合は民法150条により6か月の猶予にとどまり、同条2項で猶予期間中の再度の催告には効力がないとされていますので、内容証明を繰り返すこととは効果が異なります。個別の起算点の判断は事案によりますので、期限が迫っている場合は弁護士にご相談ください。

Q. 相手の住所が分かりません。支払督促は使えますか?

A. 使えません。382条ただし書は「日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る」としています。公示送達に頼らなければ届けられない相手には支払督促を発することができません。また、申し出た場所に相手がいないために送達できなかった場合、388条3項により裁判所書記官から債権者へ通知が行われ、通知を受けた日から2か月の不変期間内に別の送達場所を申し出ないときは、支払督促の申立てを取り下げたものとみなされます。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法律相談ではありません。どの手続を選ぶべきか、時効の起算点がいつになるか、相手の異議にどう対応するかは事実関係によって変わりますので、実際の判断については弁護士にご相談ください。

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