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少額訴訟とは — 60万円以下を1回の期日で終える裁判。ただし相手は500円で普通の訴訟に戻せる

結論から言うと、少額訴訟の値打ちは「1回で終わること」ではなく「1回で終わる可能性があること」です。民事訴訟法370条1項は、特別の事情がある場合を除き最初の口頭弁論の期日で審理を完了しなければならないと定めていて、判決も374条1項によりその日のうちに言い渡すのが原則です。売掛金の回収で名前が挙がるのは、この速さのためです。

ところが、この速さは被告が受け入れたときにだけ成立します。373条1項により、被告は理由を示さなくても申述ひとつで通常の訴訟に移すことができます。判決が出た後も、378条1項により2週間の不変期間内に異議を申し立てれば、379条1項で審理は口頭弁論の終結前に戻り、通常の手続でやり直しになります。しかもこの異議の手数料は、民事訴訟費用等に関する法律の別表第二 一三の項イにより500円です。つまり相手は2回、合計500円で少額訴訟を降ろせます

もうひとつ、債権者が見落としがちな条文があります。375条です。裁判所は請求を認容する判決をするとき、被告の資力その他の事情を考慮して、判決の言渡しの日から3年を超えない範囲で分割払いを定めることができ、同条3項によりこの定めには不服を申し立てられません。勝訴が即時の全額回収を意味しない場面が、条文上はじめから用意されています。この記事では、要件、年間の利用回数と過料、一期日審理と証拠の制限、相手が降ろす2つの経路、費用の実額、勝った後の執行までを条文の順に整理します。

全体の流れ — 訴え提起から執行まで

少額訴訟は、本線だけを見ると訴え提起 → 1回の期日 → その日に判決 → 執行という短い手続です。ただし本線から外れる分岐が2つあり、どちらも被告の側が握っています。全体像を先に置きます。

訴えの提起 +回数の届出(368条) 最初の口頭弁論期日 審理を完了(370条1項) その日に判決 (374条1項) 仮執行の宣言 職権で必ず(376条) 少額訴訟債権執行 書記官の差押処分 相手が握っている2つの分岐 ①移行の申述(373条1項) 期日で弁論する前まで・理由不要 ②異議(378条1項) 送達から2週間の不変期間・手数料500円 通常の手続で審理・裁判
少額訴訟の本線と、被告が握る2つの分岐。①は判決前、②は判決後で、どちらも通常の手続に戻る。

使える請求は「60万円以下の金銭の支払」だけ(368条1項)

入口の条文は368条1項です。要件は3つ重なっています。

簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。

読み取れるのは、①簡易裁判所であること ②訴訟の目的の価額が60万円以下であること ③金銭の支払の請求であることの3点です。3番目が実務で効きます。物の引渡しや明渡し、登記手続、謝罪などは金銭の支払ではないので、少額訴訟にはできません。売掛金・貸金・未払いの報酬・敷金の返還といったお金を払えという請求に限られると考えると外しません。

「60万円以下」は元本と利息・遅延損害金の扱いで迷いやすいところです。手数料の算定と同じく、訴訟の目的の価額は民事訴訟法8条1項・9条により算定します(民事訴訟費用等に関する法律4条1項)。訴え提起の時点で確定している請求の価額で見ることになるため、元本が60万円を超えていれば、その一部だけを取り出して60万円以下に収める形にしない限り少額訴訟にはできません。

もうひとつ、申述のタイミングにも制限があります。368条2項は、少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は訴えの提起の際にしなければならないとしています。訴状を出した後で「やはり少額訴訟にしたい」と切り替えることはできません。

年10回の上限と、虚偽の届出への過料(368条3項・381条)

368条1項ただし書の「最高裁判所規則で定める回数」について、裁判所は自らのウェブサイトで「少額訴訟手続の利用回数は、1人につき同じ裁判所に年間10回までと制限されています」と案内しています。「同じ裁判所に」なので、簡易裁判所ごとに数える点に注意が要ります。相手の住所地が別々であれば、結果として別の簡易裁判所に出すことになり、上限もそれぞれで数えられます。

ここまでは知られていますが、その先にほとんど紹介されない条文があります。まず368条3項が、申述をするにはその年に少額訴訟を求めた回数を届け出なければならないとしています。回数は裁判所が勝手に数えてくれるものではなく、申立てる側の自己申告です。そして381条1項が、その申告を裏づけています。

少額訴訟による審理及び裁判を求めた者が第三百六十八条第三項の回数について虚偽の届出をしたときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
回数の届出は「書式の穴埋め」ではない

訴額60万円の事件で、少額訴訟の申立て手数料は書面申立てで8,500円です。その手続で虚偽の届出をすると10万円以下の過料が定められています。手数料の10倍以上に当たる制裁が、回数という一見どうでもよさそうな欄に紐づいています。年に何度も同じ簡易裁判所を使う事業者ほど、自社で回数を記録しておく実益があります。

届け出なかった場合の扱いも条文にあります。373条3項2号により、裁判所が相当の期間を定めて届出を命じたのに届出がないときは、通常の手続で審理及び裁判をする旨の決定をしなければなりません。同項1号により、368条1項に違反して少額訴訟を求めたとき(60万円を超えている、回数の上限を超えているなど)も同じです。そして373条4項により、この決定に対しては不服を申し立てられません

一期日審理の原則と、証拠が「即時」に限られること(370条・371条)

少額訴訟の速さの正体は370条1項です。

少額訴訟においては、特別の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならない。

そして370条2項は、当事者はその期日前またはその期日において、すべての攻撃又は防御の方法を提出しなければならないとしています。通常の訴訟のように、期日を重ねながら主張を足していくことができません。

この原則を証拠の側から支えているのが371条です。

証拠調べは、即時に取り調べることができる証拠に限りすることができる。

「即時に取り調べることができる」という限定は、実務ではその日に法廷へ持って行けるものという意味で効いてきます。手元にある契約書・発注書・納品書・請求書・メールの控え・振込の記録は使えます。一方で、相手や第三者が持っている資料を裁判所から取り寄せてもらう類いの証拠調べは、原則としてこの手続の中では成り立ちません。証人についても、372条1項により宣誓をさせないですることができるとされ、372条3項では音声の送受信により同時に通話をすることができる方法での尋問も認められていますが、いずれもその期日に調べられることが前提です。

準備が足りないまま出すと、速さは不利に働く

1回で終わるということは、足りない証拠を後から足す機会が無いということでもあります。証拠が手元に揃っていない段階で少額訴訟を選ぶと、審理が完了して判決に至り、しかも後述のとおり控訴もできません。証拠が全部揃ってから出す手続と考えるのが安全です。

もうひとつ、被告の側の制約が369条です。

少額訴訟においては、反訴を提起することができない。

細かい話に見えますが、これは被告が通常訴訟へ移したくなる動機になります。「こちらにも言い分がある、むしろ払うべきはそちらだ」という反論を訴えの形で立てたい被告は、少額訴訟のままではそれができません。しかも379条2項は、異議後の審理及び裁判についても369条を準用しているため、異議を出して通常の手続に戻っても、その事件の中では反訴はできないままです。反訴をしたい被告が選ぶのは、判決後の異議ではなく、期日前の移行申述ということになります。

相手は2回、合計500円で降ろせる(373条・378条)

ここが少額訴訟のいちばん重要な性質です。この手続を続けるかどうかを決めているのは、原告ではなく被告です。降ろす経路が2つあります。

1つ目は判決の前です。373条1項が定めています。

被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができる。ただし、被告が最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、又はその期日が終了した後は、この限りでない。

理由は要りません。申述だけで足ります。373条2項により、訴訟はその申述があった時に通常の手続へ移ります。裁判所の許可も、原告の同意も要りません。期限は「最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、又はその期日が終了した後」までなので、被告は期日の当日、口を開く直前まで考えることができます

2つ目は判決の後です。378条1項により、少額訴訟の終局判決に対しては、電子判決書などの送達を受けた日から2週間の不変期間内に、その判決をした裁判所に異議を申し立てることができます。控訴ではなく異議で、行き先は上級審ではなく同じ簡易裁判所です。そして379条1項により、適法な異議があったときは訴訟は口頭弁論の終結前の程度に復し、通常の手続で審理及び裁判をすることになります。

この2つ目に、あまり知られていない数字が付いています。民事訴訟費用等に関する法律の別表第二 一三の項イは、500円の手数料で申し立てられるものを列挙していますが、その中に少額訴訟の終局判決に対する異議の申立てが入っています。訴額に比例しません。60万円の請求で負けた被告も、500円で審理をやり直しに戻せます。

「1回で終わる」は相手の協力を織り込んだ見込みにすぎない

被告が争う気で構えている事件では、少額訴訟の速さは実現しません。期日前に移行を申述されるか、判決後に500円で異議を出されるかのどちらかで、結局は通常の手続になります。相手が支払う意思はあるが滞っている、金額に争いがないといった事件でこそ効く手続です。ここは、相手を呼び出さずに進む支払督促が異議ひとつで訴訟に変わるのと、同じ構造をしています。

なお、裁判所の側から通常手続へ移す経路もあります。373条3項4号は、少額訴訟により審理及び裁判をするのを相当でないと認めるときに、裁判所が職権で通常の手続による旨の決定をしなければならないと定めています。同項3号は、公示送達によらなければ最初の期日の呼出しができないときを挙げていて、これは支払督促が382条ただし書で公示送達によれない場合に限られているのと同じ発想です。相手の所在が分からない事件は、少額訴訟でも通常の手続へ回されます。

控訴ができない — 異議の後の判決にもできない(377条・380条)

速さと引き換えに失うものが、はっきり条文に書かれています。

少額訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができない。

控訴の代わりが、前節の異議です。ここまでは知られていますが、その先も塞がっています。380条1項は、378条2項において準用する359条または379条1項の規定によってした終局判決、つまり異議の後にもう一度出た判決に対しても、控訴をすることができないとしています。380条2項が民事訴訟法327条を準用しているので、残るのは憲法違反を理由とする特別上告だけです。

少額訴訟は、簡易裁判所の中で完結する手続

通常訴訟なら、簡易裁判所の判決に不服があれば地方裁判所へ控訴できます。少額訴訟にはその経路がありません。同じ簡易裁判所での異議が1回きりの見直しの機会で、それを使い切ると事実上そこで終わります。証拠が揃っていること、金額の見立てが固いことを、出す前に確かめておく必要があるのはこのためです。

勝っても3年の分割払いになることがある(375条)

債権者の側でいちばん想定から外れるのが375条1項です。

裁判所は、請求を認容する判決をする場合において、被告の資力その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、判決の言渡しの日から三年を超えない範囲内において、認容する請求に係る金銭の支払について、その時期の定め若しくは分割払の定めをし、又はこれと併せて、その時期の定めに従い支払をしたとき、若しくはその分割払の定めによる期限の利益を次項の規定による定めにより失うことなく支払をしたときは訴え提起後の遅延損害金の支払義務を免除する旨の定めをすることができる。

長い一文ですが、含まれているのは3つです。①支払時期の定め ②分割払の定め ③遅延損害金の支払義務の免除です。いずれも請求を認容する判決、つまり原告が勝つ判決の中で定められます。期間の上限は判決の言渡しの日から3年です。

債権者にとって重いのは375条3項です。

前二項の規定による定めに関する裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

分割払いを定められたこと自体に、独立して不服を申し立てる手段がありません。なお375条2項により、分割払の定めをするときは被告が支払を怠った場合における期限の利益の喪失についての定めをしなければならないとされているので、被告が滞れば一括に戻る条件は必ず付きます。とはいえ、判決の日に全額の支払を命じてもらえる前提で回収計画を立てていると、資金繰りの見込みが変わります。

この分割払いは、異議で通常の手続に戻っても付いてくる

379条2項は、異議後の審理及び裁判について375条を準用しています。判決後に異議が出て通常の手続でやり直しても、その審理の中でふたたび3年以内の分割払いを定めることができます。少額訴訟の枠を出れば必ず一括になる、というものではありません。

費用 — 被告が1人増えるごとに2,000円増える

手数料の根拠は民事訴訟費用等に関する法律です。3条1項が別表第一を原則としたうえで、3条2項が例外を置いています。民事訴訟法132条の10第1項により電子情報処理組織を使用する方法で行うことができるとされている申立てのうち、別表第二の上欄に掲げるものを特定申立てと呼び、これについては別表第二の額を納める、という作りです。訴えの提起はこれに当たるので、少額訴訟の手数料は別表第二 一の項で決まります。

別表第二 一の項はイ及びロに掲げる額の合算額です。イが訴訟の目的の価額に応じた階段で、100万円までの部分はその価額十万円までごとに千円です。ロが定額で、2,500円(電子情報処理組織を使用する方法による申立ての場合は1,400円)です。60万円以下の少額訴訟なら、イは階段の最初の区分だけで足ります。

訴額イ(価額に応じた額)合計(書面)合計(電子申立て)
10万円1,000円3,500円2,400円
30万円3,000円5,500円4,400円
50万円5,000円7,500円6,400円
60万円6,000円8,500円7,400円

ここに、条文を読まないと気づけない加算があります。別表第二 一の項ロにはただし書が付いていて、被告の数が2以上の場合には、被告の数から1を減じた数に2,000円を乗じて得た額を加算した額とされています。イの階段は訴額で決まるので被告が増えても動きませんが、ロだけが被告の人数で増えます

訴額60万円のとき被告1人被告2人被告3人
書面で申し立てる8,500円10,500円12,500円
電子情報処理組織を使用する7,400円9,400円11,400円

主債務者と連帯保証人の両方を相手にする、共同で発注した2社に請求するといった場面では、この2,000円の加算が必ず乗ります。一方で、判決に対する被告の異議は前述のとおり別表第二 一三の項イの500円で、訴額にも被告の人数にも比例しません。手続を起こす側と、それを差し戻す側とで、費用の作りが大きく違います。

上の表は申立ての手数料だけです。このほかに、相手方に書類を送るための費用などを裁判所に納めることになります。その実額は民事訴訟費用等に関する法律11条から13条により最高裁判所の定めに委ねられている部分があるため、ここには記載していません。申立て先の簡易裁判所に確認してください。

2週間の不変期間や3年の期限を数える — 日数計算・営業日計算ツール

勝った後 — 少額訴訟債権執行は簡易裁判所の書記官がやる

判決を得ても、相手が払わなければ回収は終わりません。ここでも少額訴訟には専用の仕組みがあります。民事執行法167条の2第1項です。

次に掲げる少額訴訟に係る債務名義による金銭債権に対する強制執行は、前目の定めるところにより裁判所が行うほか、第二条の規定にかかわらず、申立てにより、この目の定めるところにより裁判所書記官が行う。

通常の債権執行は地方裁判所が執行裁判所として行いますが、少額訴訟の債務名義については簡易裁判所の裁判所書記官が行う経路が用意されています。167条の2第2項により、この手続は裁判所書記官の差押処分により開始します。申立て先は167条の2第3項1号・2号により、その判決をした簡易裁判所です。判決を得た場所でそのまま執行に入れます。

対象になる債務名義は167条の2第1項が5つ挙げていて、少額訴訟における確定判決・仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決・訴訟費用等の額を定める裁判所書記官の処分・和解または認諾の調書もしくは電子調書・和解に代わる決定です。少額訴訟の中で成立した和解も含まれます。なお376条1項により、請求を認容する判決については裁判所が職権で仮執行をすることができる旨を宣言しなければならないとされているので、確定を待たずに執行に入る道は判決の側で用意されています。

手数料は、民事訴訟費用等に関する法律の別表第一 九の項イが「債権の差押命令の申立てその他裁判所による強制執行……の申立て……又は金銭債権の差押処分の申立て」として4,000円としています。差押処分に対する執行異議の申立ては、同法別表第一 一七の項ロにより500円です。

この経路には終点がある — 転付命令と配当は地方裁判所へ移る

167条の10第1項は、転付命令、譲渡命令等または供託命令を求めようとするときは、差押債権者は債権執行の手続に事件を移行させることを求める申立てをしなければならないとし、同条2項により執行裁判所はその所在地を管轄する地方裁判所へ事件を移行させなければならないとしています。また167条の11第1項により、債権者が2人以上で供託金が足りず配当を実施すべきときも地方裁判所へ移ります。簡易裁判所の書記官で完結するのは、差押えと取立てまでと考えておくのが実態に合います。

支払督促・通常訴訟との使い分け

60万円以下の金銭請求では、少額訴訟のほかに支払督促と通常訴訟が選べます。条文上の違いを並べます。

項目少額訴訟支払督促通常訴訟
判断する人裁判官裁判所書記官裁判官
金額の上限60万円以下(368条1項)なしなし
対象金銭の支払(368条1項)金銭・代替物・有価証券(382条)制限なし
出廷必要不要必要
申立て先簡易裁判所(管轄の一般原則による)債務者の住所地の簡易裁判所(383条1項)管轄の一般原則による
相手の所在が不明職権で通常手続へ(373条3項3号)使えない(382条ただし書)公示送達の余地あり
反訴できない(369条)できる
控訴できない(377条・380条1項)できる
相手が争ったとき申述または異議で通常手続へ通常訴訟へ移行(395条)そのまま審理
手数料(訴額60万円・被告1人・書面)8,500円5,700円8,500円
相手が差し戻す費用500円(異議)0円(督促異議)
選び方の目安

相手が争ってこないと見込めるなら、出廷が要らず手数料も安い支払督促が向きます。金額に争いはないが相手が姿勢を見せない、あるいはその場で裁判官に判断してもらいたいのであれば少額訴訟です。相手が本気で争ってくると分かっている事件では、少額訴訟を選んでも移行や異議で通常の手続になるうえ、控訴の道が塞がる不利だけが残ります。最初から通常訴訟を選ぶほうが素直です。証拠が揃っていない段階なら、371条の制限があるため少額訴訟は避けます。

なお、少額訴訟の手数料と通常訴訟の手数料は同額です。どちらも別表第二 一の項によるためで、少額訴訟だから安いということはありません。安いのは支払督促で、別表第二 一一の項によりイが一の項イの2分の1(訴額60万円なら3,000円)、ロが2,700円(電子情報処理組織を使用する方法による申立ての場合は2,500円)の合算です。

よくある質問

Q. 少額訴訟は必ず1回の期日で終わりますか?

A. 終わるとは限りません。民事訴訟法370条1項は「特別の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならない」としていますが、被告は373条1項により申述だけで訴訟を通常の手続へ移すことができ、その場合373条2項により申述があった時に移行します。また373条3項は、少額訴訟により審理及び裁判をするのを相当でないと認めるときなどに、裁判所が職権で通常の手続による旨の決定をしなければならないと定めています。1回で終わるのは、被告が移行を求めず、裁判所も相当でないと判断しなかった場合です。

Q. 判決に納得できません。控訴できますか?

A. できません。377条は「少額訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができない」と定めています。代わりに378条1項により、電子判決書などの送達を受けた日から2週間の不変期間内に、その判決をした裁判所に異議を申し立てることができます。適法な異議があると379条1項により訴訟は口頭弁論の終結前の程度に復し、通常の手続で審理及び裁判が行われます。ただし380条1項により、その異議後の終局判決に対しても控訴はできず、380条2項が327条を準用しているため残るのは特別上告のみです。

Q. 少額訴訟の判決に対する異議には、いくらかかりますか?

A. 500円です。民事訴訟費用等に関する法律の別表第二 一三の項は、その上欄イに列挙した申立てについて下欄を500円としており、その列挙の中に少額訴訟の終局判決に対する異議の申立てが含まれています。訴額にも被告の人数にも比例しない定額です。なお期日前の移行の申述については、民事訴訟法373条1項が申述としてのみ定めており、別表に手数料の定めは置かれていません。

Q. 勝訴したのに分割払いと言われました。争えますか?

A. その定めだけを取り出して不服を申し立てることはできません。民事訴訟法375条1項は、請求を認容する判決をする場合に、被告の資力その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、判決の言渡しの日から3年を超えない範囲内で支払時期の定めや分割払の定めができるとしており、同条3項は「前二項の規定による定めに関する裁判に対しては、不服を申し立てることができない」と定めています。ただし375条2項により、分割払の定めをするときは被告が支払を怠った場合における期限の利益の喪失についての定めをしなければならないとされているため、相手が滞った場合の扱いは判決の中で決まっています。

Q. 被告が2人います。手数料は変わりますか?

A. 変わります。民事訴訟費用等に関する法律の別表第二 一の項ロは2,500円(電子情報処理組織を使用する方法による申立ての場合は1,400円)としたうえで、ただし書で、被告の数が2以上の場合には被告の数から1を減じた数に2,000円を乗じて得た額を加算するとしています。訴額に応じたイの部分は被告の人数では変わらないため、訴額60万円で被告が2人なら書面申立てで10,500円、3人なら12,500円になります。

Q. 少額訴訟は年に何回まで使えますか。数え間違えるとどうなりますか?

A. 裁判所はウェブサイトで、少額訴訟手続の利用回数は1人につき同じ裁判所に年間10回までと制限されていると案内しています。根拠は民事訴訟法368条1項ただし書で、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えて求めることはできないとされています。回数は368条3項により申立てる側が届け出る仕組みで、381条1項は、その回数について虚偽の届出をしたときは裁判所が決定で10万円以下の過料に処すると定めています。届出をしない場合は373条3項2号により通常の手続による旨の決定がされます。

Q. 判決を得た後、差押えはどこに申し立てますか?

A. 少額訴訟の判決であれば、その判決をした簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てられます。民事執行法167条の2第1項は少額訴訟に係る債務名義による金銭債権に対する強制執行を裁判所書記官が行うことができるとし、同条2項でこの手続が差押処分により開始すること、同条3項1号・2号で申立て先がその判決をした簡易裁判所であることを定めています。ただし167条の10第1項により転付命令等を求めるときは地方裁判所の債権執行手続へ移行させる申立てが必要で、167条の11第1項により債権者が2人以上で配当を実施すべきときも地方裁判所へ移ります。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法律相談ではありません。少額訴訟と通常訴訟のどちらを選ぶべきか、訴訟の目的の価額がいくらになるか、相手の移行申述や異議にどう対応するかは事実関係によって変わりますので、実際の判断については弁護士にご相談ください。

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