ジョブ型雇用とは|メンバーシップ型との違いと社内文書の確認表
ジョブ型雇用は、担当する職務を定め、その仕事を担う人を採用・配置する考え方です。会社の制度を確認するときは、名称よりも、仕事の範囲と給与の決め方が文書でつながっているかを見ます。
職務に応じた給与でも、転勤や担当変更の扱いまで決まるわけではありません。経理担当が給与改定の資料を受け取ったら、職務記述書、賃金規程、労働契約書を照らすところから始めます。
最初に確認する社内文書
先に集めたいのは、仕事・評価・給与・契約を示す文書です。給与改定通知だけでは、なぜその額になったのか、いつから適用するのかを追えないことがあります。
次の表は、会社の制度を確認するための整理例です。文書の名称や管理部署は会社によって異なり、この表の書類がそろえば法的な手続が完了するという意味ではありません。
| 確認するもの | 読み取ること | 不明なら戻す質問 |
|---|---|---|
| 職務記述書・役割定義書 | 担当業務、責任、権限、必要なスキル | 作業を行う人と承認する人は誰か |
| 等級基準・評価資料 | 職務の位置づけと本人への当てはめ | 職務の重さと本人の成果をどう分けて評価したか |
| 賃金規程・給与表 | 基本給、手当、昇降給の扱い | 等級変更がどの給与項目に反映されるか |
| 労働契約書・労働条件通知書 | 職務限定の有無、業務や就業場所の範囲 | 担当職務の記載と、変更範囲の合意が整合しているか |
| 移行措置・改定通知 | 適用開始、補填の内容、見直しの時期 | 旧制度との差をどう扱い、本人にどう説明したか |
文書同士の違いが見つかったら、経理側で解釈を補って給与を確定するのではなく、人事担当に根拠と適用内容を確認します。確認した文書の版と適用開始時点を、給与改定の根拠資料と一緒に残すと後から追いやすくなります。
ジョブ型・職務給・職務限定の違い
ジョブ型雇用には法律上の定義がありません。日本労働研究雑誌の論文は、労働契約上の職務・勤務地を限定した雇用として捉えています。一方、日本企業のジョブ型人事の説明では、配置・育成・評価・賃金制度も扱われます。
この記事では、職務を軸にした人事制度の確認事項を扱います。契約上の職務・勤務地の限定は別に確認します。
人事制度の考え方、給与の仕組み、契約上の仕事の範囲を分けて読みます。似た言葉でも、確認する文書は異なります。
| 用語 | 何を見る言葉か | 確認の焦点 |
|---|---|---|
| ジョブ型雇用 | 職務を定めて人を採用・配置する考え方 | 契約上の職務・勤務地の限定を確認する |
| ジョブ型人事 | 職務や役割を軸とした人材管理 | 配置・育成・評価・賃金のつながり |
| 職務給 | 仕事の内容や役割の重要さに基づく給与の仕組み | 基本給などのどの部分に職務を反映するか |
| 職務限定正社員 | 担当する職務内容が限定されている正社員 | 限定の有無と内容が契約書や就業規則でどう明示されるか |
厚生労働省の職務給導入ハンドブックは、職務の整理から等級・給与制度の見直し、移行までを扱っています。一方、職務限定正社員の案内は、職務限定の有無や内容を就業規則・労働契約書等で明示するよう示しています。
給与に職務給を取り入れたという説明から、契約上も職務が限定されたと読み替えるのは避けます。職務の限定、勤務地の限定、労働時間の限定も、それぞれ確認する項目です。
メンバーシップ型と何が違うか
違いを理解する入口は、仕事を定めて人を当てはめるか、組織の一員として採用し仕事を割り当てていくかです。ただし、これは人事管理の考え方の対比であり、実際の会社がどちらかにきれいに分かれるとは限りません。
以下は考え方を比較するための模式表です。個々の会社の採用方法、給与、異動の可否を示すものではありません。実際の適用は、自社の規程と契約内容で確認します。
| 観点 | ジョブ型として整理する場合 | メンバーシップ型として整理する場合 |
|---|---|---|
| 仕事と人の関係 | 職務や役割を明確にして担う人を考える | 組織の一員として人を採用し、仕事を割り当てる |
| 給与確認の入口 | 職務・等級と給与の対応 | 能力・経験などを含む自社の給与基準 |
職務給を管理職や特定職種に限って導入する設計もあります。厚労省のハンドブックも、全社導入と対象を絞った導入の両方を扱っています。社内で使う制度名が同じでも、誰にどの部分を適用するのかを先に確かめます。
職務記述書は作業名だけで終わらせない
職務記述書では、何をするかに加え、どこまで責任を持ち、何を判断できるかを読みます。業務一覧に「月次決算」とだけ書かれていても、集計担当なのか、数字を承認する責任者なのかで役割は異なります。
厚労省のハンドブックは、職務を整理する際に、内容・責任・権限の違いを明確にすることを挙げています。経理部門なら、担当する帳簿、確認の範囲、承認者、例外が起きたときの報告先まで具体化すると、役割の違いを確認しやすくなります。
- 担当業務:仕訳入力、残高照合、差異分析など、担当する作業を分ける。
- 責任と権限:資料を作る範囲、修正を判断する範囲、最終承認する範囲を分ける。
- 必要なスキル:会計知識、使用システム、説明・調整に必要な能力を確認する。
- 連携先:営業や購買から資料を受け取る担当、未解決事項の報告先を確認する。
この一覧は経理部門での整理例です。会社の職務記述書の必須様式を定めるものではありません。担当者が不在のときの代行や、職務をまたぐ応援業務も、実際の運用と文書の間に差がないか確認します。
評価と給与をどうつなぐか
職務そのものの評価と、担当する人の評価を分けて確認します。職務の大きさや責任から等級を設ける作業と、その等級に従業員を当てはめる作業は同じではありません。
職務評価は、仕事の責任や難易度などを整理するものです。本人の目標達成や仕事ぶりを評価する資料と混ぜると、職務が変わったのか、成果の評価が変わったのかが分かりにくくなります。給与改定の理由を受け取る際は、どちらの変更なのかを確認します。
給与は基本給だけでなく、手当や移行措置も照らします。新しい等級では基本給が変わっても、調整手当で差額を補う設計なら、給与計算に必要なのは等級の通知だけではありません。補填の対象、内容、終了・見直しの条件も確認します。
給与が見直される従業員が生じる場合、変更内容や移行措置について労使間で調整・合意することが求められると、厚労省のハンドブックは説明しています。経理の確認表は、その調整や必要な手続を省略するためのものではありません。
年俸制との違いもあります。年俸制は給与額を年単位で定める仕組みに関わる言葉で、職務に基づく給与の決め方とは確認する観点が異なります。支払いや残業代の扱いは年俸制の解説で確認できます。
架空例:月次決算担当の確認メモ
以下は、経理部の担当職務を整理するために置いた架空例です。給与額や法的な職務限定を定める書式ではなく、会社の担当業務と文書を照らす際の記入例です。
| 項目 | 記入例 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 担当する仕事 | 売掛金残高を照合し、差異と未回収の理由をまとめる | 職務記述書、業務分担表 |
| 責任の範囲 | 担当資料の正確性を確認し、未解決の差異を上長に報告する | 役割定義書、決裁権限表 |
| 承認の範囲 | 貸倒処理や残高修正の最終判断は上長が行う | 決裁権限表 |
| 評価の確認 | 職務の等級と、本人の目標・評価結果を分けて確認する | 等級基準、評価資料 |
| 給与の確認 | 等級に対応する基本給と、手当・移行措置の適用を照らす | 賃金規程、改定通知 |
| 担当変更の確認 | 買掛金業務の兼務を追加するときは、職務範囲と処遇を再確認する | 契約書、職務記述書、改定資料 |
たとえば、実際には残高修正の判断まで任されているのに、文書が照合作業のままなら、責任範囲にずれがあります。経理担当が等級を独自に変更するのではなく、人事と現場責任者に職務の整理を戻します。
反対に、職務記述書が更新されても、給与の改定通知がまだ出ていない場面では、変更の適用時点を確認します。職務の変更日と給与の反映時点が一致しているかどうかを、担当者の推測で埋めないことが大切です。
配置変更・制度移行で確認すること
担当職務の変更は、契約上の範囲と人事制度上の扱いを照らして確認します。職務給の採用だけで、転勤がなくなる、会社が自由に担当を変更できる、といった結論は出せません。
制度移行では旧給与との差と説明資料を照らす
新制度の適用対象、職務と等級の対応、給与の変化、移行措置をまとめて確認します。厚労省のハンドブックでは、給与水準が急激に変動しないよう段階的な移行措置を検討し、その期間と内容を明確にすることが挙げられています。
就業規則や賃金規程の変更には、関係法令に照らした確認が必要です。本人への説明を行ったという記録だけで、労働条件の変更が有効になったと扱わず、人事・労務の担当者に必要な合意や手続を確認します。一般的な確認先は就業規則の解説、契約時の書類は労働条件通知書の解説にまとめています。
職務がなくなったときの扱い
職務限定正社員でも、限定された職務が廃止されたからといって、直ちに整理解雇が有効になるわけではありません。職務限定正社員の限定職務が廃止された場合の解雇回避努力には、配置転換等が求められますが、高度な専門性を伴う職務限定等では退職金の上乗せ・再就職支援でも努力と認められる場合があります。
職務限定正社員の能力不足についても、直ちに解雇が認められるわけではなく、改善の機会や、可能な範囲での教育訓練・配置転換等が求められるとされています。
具体的な契約変更・配置・解雇の可否は、契約内容と経緯を踏まえ専門家に確認してください。
よくある質問
ジョブ型雇用と職務給は同じですか?
確認する範囲が違います。ジョブ型雇用は担当する職務を軸に考える雇用の仕組みで、職務給は仕事内容や役割の重要さに基づく給与の仕組みです。職務給を採用したという説明から、契約上の職務限定まであるとは判断せず、契約書や就業規則を確認します。
ジョブ型なら転勤や担当変更はなくなりますか?
制度名からは判断できません。職務限定の有無と内容に加え、勤務地の範囲や配置変更の扱いを、労働契約書・就業規則等で確認します。
経理担当は給与改定で何を見ればよいですか?
等級と給与表の対応、基本給・手当の変更、移行措置、適用開始時点を照らします。不明点があれば、職務記述書や評価資料、改定通知のどこが根拠なのかを人事担当に確認します。
職務記述書に何を書けばよいですか?
担当する業務だけでなく、責任・権限の範囲と必要なスキルを整理します。経理部門なら、資料を作る担当と最終承認する担当、未解決事項の報告先を分けて書くと、役割を照らしやすくなります。
関連記事・ツール
給与額が確定した後の控除額の確認に使えます。人事上の等級や給与額の妥当性を判定するものではありません。
源泉徴収税額を計算する出典
- 労働政策研究・研修機構 日本労働研究雑誌「ジョブ型雇用」が日本の労働法にもたらす影響:メンバーシップ型との対比と、契約上の職務・勤務地の限定。
- 厚生労働省「職務給導入ハンドブック」:職務の整理、等級・給与制度、移行措置と規程の見直し。
- 厚生労働省「職務限定正社員」:職務内容の明示、賃金、解雇、人材育成。
- 厚生労働省「職務給について」:関連資料と人材の配置・育成・評価・賃金制度の位置づけ。
社内文書の確認表と月次決算担当の記入例は、文書を照らすための整理例です。特定の会社の制度や給与水準を示すものではありません。
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。個別の税務・労務相談には応じられません。具体的な労働条件の変更、配置転換、解雇等の判断は、社会保険労務士・弁護士、または労働局等の相談窓口にご確認ください。