離婚時の年金分割:2026年4月からの請求期限・合意分割と3号分割の書類
年金分割は、婚姻期間中の厚生年金記録を分ける手続きです。年金額そのものを折半する制度ではなく、合意や裁判で割合が決まった後も、年金事務所等への分割請求が必要です。
最初に離婚日で請求期限を確認し、次に合意分割か3号分割かを分けます。情報通知書を取り寄せる手続きと、実際に記録を分ける請求は別です。
離婚日で分かれる請求期限
改正後の長い期限が使えるかは、請求日ではなく離婚日で分かれます。日本年金機構の改正案内でも、改正前の離婚等には従来の期限を適用すると明記されています。
下表は法律婚の離婚について、合意分割・3号分割に共通する基本の請求期限です。裁判手続きと当事者死亡時には別の扱いがあります(期限特例を参照)。
| 離婚日 | 基本の請求期限 | 確認点 |
|---|---|---|
| 2026年4月1日以後の離婚 | 離婚日の翌日から起算して5年以内 | 改正後の期限 |
| 2026年3月31日以前の離婚 | 離婚日の翌日から起算して2年以内 | 改正後に請求しても延長されない |
末日が休日に当たる場合の扱いと郵送の受付日は、提出先の年金事務所等に確認してください。窓口の休みと請求期限を同じものと考えず、書類を取得している間に期限を過ぎないようにします。
以下は法律婚の離婚を中心に説明します。婚姻の取消し、事実婚関係の解消や事実婚から続く法律婚には起算事由の確認が必要です。該当する場合は、機構の請求期限の説明と年金事務所で対象日を確認します。
合意分割と3号分割の違い
違いは、対象となる記録と割合を決める方法です。
法律婚についての比較です。合意分割は2007年4月1日以後の離婚、3号分割は2008年5月1日以後の離婚が制度の対象です。いずれも請求期限内の手続きが必要です。
| 制度 | 対象となる厚生年金記録 | 割合と請求者 |
|---|---|---|
| 合意分割 | 婚姻期間中の当事者の標準報酬月額・標準賞与額(第三者との第3号期間との重複を除く) | 合意または裁判手続きで按分割合を定め、当事者双方または一方が請求 |
| 3号分割 | 2008年4月1日以後の婚姻中の第3号被保険者期間における相手方の標準報酬月額・標準賞与額 | 元第3号本人の請求で2分の1ずつ、合意不要。相手方が障害厚生年金受給権者で対象期間を額の基礎とする場合は不可 |
合意分割では、第三者が当事者の被扶養配偶者として第3号だった期間と、当事者が第三者の被扶養配偶者として第3号だった期間との重複を対象期間から除きます。
按分割合は、分割対象期間の当事者双方の厚生年金記録の合計に対する、分割を受けて増額される側の分割後の持分割合です。相手の現在の年金振込額に割合を掛ける計算ではありません。
年金分割の効果は厚生年金の報酬比例部分に限られ、厚生年金基金が国に代行して支給する部分を含みます。国民年金の老齢基礎年金等には影響しません。
対象期間が混在する場合
例えば、婚姻中に共働きだった期間と第3号被保険者だった期間がある場合は、期間ごとに記録を確認します。現在無職かどうかだけで、婚姻期間全部を3号分割の対象とは判断できません。
合意分割を請求した婚姻期間に3号分割の対象期間が含まれるときは、3号分割の請求があったとみなされ、その対象期間は3号分割後に合意分割も行われます。3号分割だけを請求して、他の期間まで自動で合意分割される仕組みではありません。
情報通知書から分割請求まで
合意分割では、情報通知書で対象期間と按分割合の範囲を確認してから、割合の決定と改定請求へ進みます。情報通知書は、当事者双方または一方が請求でき、離婚前でも取得できますが、合意分割の請求期限内に請求する必要があります。
| 段階 | 使う書類・確認する内容 | 次へ進む前の確認 |
|---|---|---|
| 情報を取る | 年金分割のための情報提供請求書。対象期間・双方の記録・按分割合の範囲を確認 | 情報通知書を取得しても、記録の分割は終わっていない |
| 割合を決める | 合意内容を証明する書類、または裁判手続きの書類 | どの書類を用いるかで持参・郵送の条件が変わる |
| 分割を請求する | 標準報酬改定請求書と添付書類 | 離婚後に、請求期限と添付書類を確認して提出 |
| 結果を確認する | 標準報酬改定通知書 | 情報通知書と取り違えず、改定された対象期間・記録を確認 |
当事者双方が生存している場合、3号分割のみの請求では当事者間の合意や按分割合を証明する書類は不要です。元第3号被保険者本人が、対象期間・除外条件・期限を確認して標準報酬改定請求をします。
必要書類と取得する順序
戸籍と生存証明では、請求日からさかのぼる期間が違います。先に請求の種類と割合を証明する書類を確認し、提出日が見えた段階で証明書の交付時期をそろえると、取り直しを減らせます。
法律婚の離婚後、当事者双方が生存している場合に、番号・婚姻期間・生存を確認する書類です。合意分割の割合を証明する書類は次節にまとめます。戸籍は婚姻日・離婚日を確認できるものを使います。事実婚、当事者死亡、海外居住等は追加・省略の条件が異なるため、標準報酬改定請求書の記入要領も確認してください。
| 確認するもの | 書類の例と時期 | 省略・注意点 |
|---|---|---|
| 本人の番号 | 基礎年金番号通知書・年金手帳等、またはマイナンバーカード等 | 番号の記入方法に合わせて番号確認・本人確認を行う |
| 法律婚の婚姻期間 | 請求日から6カ月以内に交付された、婚姻日・離婚日が分かる戸籍謄本等 | 各人の戸籍抄本等でも可。婚姻期間の証明を住民票だけで代用しない |
| 当事者の生存(3号分割のみは元配偶者) | 請求日前1カ月以内に作成された戸籍抄本・住民票(コピー不可)等の生存証明 | 婚姻期間の戸籍で確認できれば不要。マイナンバー記入でも省略可だが海外居住者等を除く |
当事者死亡の場合は、死亡の事実・年月日が分かる証明を用意しますが、婚姻期間の戸籍等で確認できる場合は別途不要です(3号分割のみは元配偶者の死亡)。
情報通知書を請求する段階でも、番号が分かる書類と婚姻期間等を証明する書類を添えます。離婚前の情報請求では、その時点の婚姻期間を確認できる書類について年金事務所に確認します。
請求書に転記するときの確認例
法律婚の離婚後に合意分割を請求する例では、戸籍の婚姻の届出年月日・離婚の届出年月日を請求書へ記入し、割合の証明書類に記載された按分割合と照合します。相手方の番号や現住所が不明なら、当事者一方のみの請求では該当欄を「不明」と記入できます。
勤務先の履歴には、分かる範囲で事業所名・勤務期間・加入制度・所在地を記入します。現在の勤務先だけから婚姻期間全体の記録を推測せず、不明な記録は年金事務所で確認します。
郵送と持参・割合を証明する書類
合意分割は、割合を決めた方法によって必要書類が変わります。署名した合意書を使う場合には、双方等でそろって年金事務所に持参する必要があります。
次の表は、合意分割の按分割合を証明する書類の区分です。番号・婚姻期間・生存等の書類は、前節の表で要否を確認します。書類の正式な条件は合意分割の請求手続きに掲載されています。
| 割合の決まり方 | 証明する書類 | 提出前の確認 |
|---|---|---|
| 話し合い・公証 | 公正証書の謄本・抄本、または公証人の認証を受けた私署証書 | 分割請求の合意と按分割合の記載を確認。電子の公正証書は公証役場で出力・交付された書面を使用 |
| 話し合い・合意書を持参 | 分割することと按分割合の合意を記入し、当事者が署名した年金分割の合意書 | 双方等がそろって直接持参。各自が代理人を立てることも可。本人確認書類等が必要 |
| 審判・判決 | 審判書・判決書の謄本または抄本と確定証明書(該当時は下の注の書類も) | 確定した日と請求期限を確認 |
| 調停・和解 | 調停調書・和解調書の謄本または抄本(該当時は下の注の書類も) | 成立した日と請求期限を確認 |
家庭裁判所で氏名・住所の秘匿決定を受けた場合は、秘匿事項届出書面謄本・秘匿決定謄本も必要です。審判書や調停・和解調書では、申立日を証する裁判所の書類が必要になる場合もあります。
署名合意書を持参する場合の本人確認には、マイナンバーカード等が使えます。代理人の場合は、本人確認書類に加え、委任状とそこに押した印鑑の印鑑登録証明書等が必要です。使用できる書類を記入要領で確認してから来所します。
標準報酬改定請求書の記入要領には、提出先として住所地を管轄する年金事務所や各共済組合等が挙げられています。窓口と郵送で番号確認書類の出し方が異なります。
郵送する場合、マイナンバーカードなら表裏両面のコピーを添付します。カードを使わない場合は番号確認書類と身元確認書類、基礎年金番号を記入した場合はその番号を確認できる書類のコピーを添えます。署名合意書を使う請求は、この郵送の扱いでは済ませられません。
裁判手続き・死亡時の期限特例
基本の期限が近い裁判手続きと、当事者が死亡した場合には別の期限があります。すべての話し合いや申立てで期限が延びるわけではありません。
合意分割・3号分割の請求期限の特例です。裁判手続きでは、下表の申立条件とあわせ、本来の請求期限後または期限前6カ月以内に確定・成立しているかを確認します。按分割合の決定後、請求前に当事者が死亡した場合は、下表の死亡時の制限も確認します。
| 事由 | 必要な条件 | 特例の請求期限 |
|---|---|---|
| 審判の確定 | 本来の請求期限内に審判を申し立てた | 確定日の翌日から起算して6カ月経過するまで |
| 調停の成立 | 本来の請求期限内に調停を申し立てた | 成立日の翌日から起算して6カ月経過するまで |
| 判決の確定・和解の成立 | 按分割合に関する附帯処分を求める申立てを行った | 確定・成立日の翌日から起算して6カ月経過するまで |
| 割合決定後・請求前の死亡 | 合意または裁判で按分割合を決めた後に当事者が死亡し、割合の証明書類を提出する | 死亡日から1カ月以内に限る |
当事者死亡の場合は、基本の請求期限が残っていることだけで判断しません。記入要領にも、離婚等の成立後に相手方が死亡した場合の期限制限があります。具体的な最終日・休日の扱い・提出方法は年金事務所等で確認してください。
請求後の通知と受給額への反映
合意分割と3号分割を同時に行う場合、3号分割改定後の記録を基に合意分割改定が行われます。最終的な結果は「標準報酬改定通知書(離婚時の年金分割のお知らせ)」で確認します。
提出した請求書の控え・割合の証明書類と、届いた改定通知書を合わせて保管します。情報通知書は割合を決める前の情報、標準報酬改定通知書は分割の結果なので、名前が似ていても役割が違います。
婚姻期間中の対象記録の分割が反映されるのは、厚生年金の報酬比例部分です。老齢厚生年金を受けるには、分割を受けた本人が受給資格期間と支給開始年齢の要件を満たす必要があり、分割だけで直ちに受給が始まるわけではありません。
すでに老齢厚生年金を受けている場合は、年金分割を請求した月の翌月分から年金額が変更されます。これは老齢基礎年金の額を分割する扱いではありません。
老齢年金の一般的な試算は年金計算ツールへ(年金分割の改定額を計算するツールではありません)よくある質問
情報通知書を取れば年金分割は終わりますか?
終わりません。合意分割の情報通知書は対象期間や按分割合の範囲を確認するためのものです。合意または裁判で割合を決めた後、離婚後に請求期限内の標準報酬改定請求が必要です。
相手が同意しないと分割できませんか?
合意分割は、合意がまとまらない場合でも裁判手続きで按分割合を定められます。3号分割は当事者の合意不要ですが、対象期間・期限の条件があり、相手方の障害厚生年金に関する除外にも注意が必要です。
年金の振込額が半分になる制度ですか?
いいえ。分けるのは婚姻期間中の対象となる厚生年金記録で、効果は報酬比例部分に限られます。老齢基礎年金には影響せず、分割後の老齢厚生年金を受けるには本人の受給資格期間・支給開始年齢の要件を満たす必要があります。
公正証書を電子データから自宅で印刷して使えますか?
電子の公正証書を用いる場合は、公証役場で出力・交付された書面が必要です。合意分割の添付書類として、電子データを自分で印刷したものは有効な書類になりません。
出典
日本年金機構の制度案内と請求書の記入要領を参照しています。
- 日本年金機構「離婚時の年金分割の請求期限が改正されました」
- 日本年金機構「離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)」
- 日本年金機構「離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)」
- 日本年金機構「離婚時に年金分割をするとき」(各請求書・合意書・委任状)
- 日本年金機構「標準報酬改定請求書の記入方法等について」
- 日本年金機構「合意分割改定請求と3号分割改定請求を同時に行う場合と結果の通知」
本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・労務相談への回答ではありません。実際の請求要件・必要書類は年金事務所等で、個別の合意割合や紛争対応は弁護士等に確認してください。