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労働保険番号 — 「二元適用事業」という言葉は、徴収法にも施行規則にも単独では一度も出てこない

労働保険番号は、労働保険の手続きで最初に書かされる番号です。年度更新の申告書にも、加入や脱退の届出にも、料率の特例の申告書にも、この番号を書く欄があります。ところが「労働保険番号」という言葉は、労働保険徴収法という法律の中に一度も出てきません。本文54,185字を機械で走査した結果は0回です。出てくるのは施行規則のほうだけで、こちらには23回あります。

これは細かい話に見えて、実務の疑問に直接つながっています。よくある質問は「うちは番号が1つなのに、取引先は2つ持っているのはなぜか」「支店を増やしたら番号が増えるのか」「増えた番号を1つにまとめられるのか」の3つですが、この3つの答えはすべて条文にあります。番号そのものは法律事項ではないのに、番号が何個になるかは法律が決めている、という少しねじれた構造になっています。

結論を先に書きます。番号が2つに割れるのは、徴収法39条1項と施行規則70条が挙げる4つの類型に当たる事業だけです。代表は建設業と港湾運送業で、それ以外はすべて番号が1つです。そして実務で誰もが使う「二元適用事業」という言葉も、単独では法令に0回しか出てきません。以下、条文で順に確かめます。

「労働保険番号」は法律に0回・省令に23回

まず語の在りかを数えます。労働保険の保険料の徴収等に関する法律(以下、徴収法)と、その施行規則の現行版を e-Gov法令API v2 で全文取得し、本文を連結して語を数えました。

徴収法(54,185字)施行規則(118,402字)
労働保険番号0回23回
一元適用0回4回
二元適用0回4回
事業所番号0回4回
整理記号0回0回
(対照)保険料410回973回
(対照)事業315回1,120回
(対照)労働保険235回467回

下3行は対照です。同じ走査で「保険料」が410回・973回、「事業」が315回・1,120回当たっているので、0回という結果は走査が失敗したせいではありません。数え方が生きている状態で0回だった、という意味です。

徴収法が番号について何も言わないのは、番号が徴収の仕組みそのものではなく、事務処理のための識別子だからです。法律は「どの事業に保険関係が成立するか」を決め、施行規則が「その事業について何を書いて出すか」を決めます。労働保険番号が出てくる23回は、そのほとんどが届出や申告書の記載事項の筆頭としてです。確定保険料申告書について定める施行規則33条は、記載事項の第1号を労働保険番号としています。労災保険率の特例を申告する20条の4も、印紙保険料の納付に関する42条・43条・47条・50条・54条・55条も、労働保険事務組合の帳簿について定める68条も、同じ形で番号を求めています。

番号が2つに割れる分かれ目 — 法39条1項と施行規則70条の4類型

ここからが実務の本題です。労働保険は労災保険と雇用保険の2つをまとめた呼び名で、原則としてこの2つはひとつの保険関係として扱われ、番号も1つです。例外を定めているのが徴収法39条1項で、条文は次のとおりです。

都道府県及び市町村の行う事業その他厚生労働省令で定める事業については、当該事業を労災保険に係る保険関係及び雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなしてこの法律を適用する。

読みどころは「別個の事業とみなして」という言い回しです。ひとつの会社の中で、労災保険の話をするときと雇用保険の話をするときで、法律上は別の事業が2つあることにして扱う、という構造になっています。別の事業として扱われる以上、保険関係も別に成立し、番号も別に振られ、申告も別に行うことになります。番号が2つになる理由は、番号の付け方の都合ではなく、この「みなし」から出てきています。

39条1項が名指ししているのは都道府県と市町村の行う事業だけで、残りは「厚生労働省令で定める事業」に投げられています。その省令が施行規則70条です。この条には号が4個あります(項は1つです)。

対象になる事業実務での顔ぶれ
1号都道府県に準ずるもの及び市町村に準ずるものの行う事業一部事務組合など
2号港湾労働法2条2号の港湾運送の行為を行う事業港湾運送業
3号雇用保険法附則2条1項各号に掲げる事業農林水産の一部(暫定任意適用事業)
4号建設の事業建設業

ここに法39条1項が直接名指しする都道府県・市町村を足した5つが、番号が2つに割れる事業のすべてです。件数として圧倒的に多いのは4号の「建設の事業」で、建設業の会社が労災と雇用保険で別々の番号を持っているのはこの1行が理由です。

建設業がこう扱われるのには理屈があります。建設の労災保険は工事の現場ごとに保険関係が成立するのに対し、雇用保険は人を雇っている事業所ごとに成立します。現場は数か月で終わり、事務所は続きます。片方は工事に、片方は事務所に紐づくので、ひとつの保険関係にまとめると数え方が合わなくなります。だから最初から別の事業とみなす、という設計です。

原則 — 一元適用事業(番号は1つ) 労災保険 + 雇用保険 = ひとつの保険関係 労働保険番号 … 1つ 例外 — 法39条1項・規則70条 労災保険に係る保険関係 労働保険番号 … 1つめ 雇用保険に係る保険関係 労働保険番号 … 2つめ 番号が2つに割れる事業(これがすべて) ・都道府県及び市町村の行う事業       (法39条1項が直接名指し) ・都道府県に準ずるもの/市町村に準ずるもの (規則70条1号) ・港湾運送の行為を行う事業         (規則70条2号) ・雇用保険法附則2条1項各号の事業      (規則70条3号) ・建設の事業                (規則70条4号)
労働保険番号が1つになるか2つになるかは、徴収法39条1項と施行規則70条の5類型に当たるかどうかだけで決まる。当たらなければ番号は1つ。

「一元適用事業」は残りものとして定義されている

ここで用語の順序が普通と逆になっていることに気づきます。実務では「一元適用が原則で、二元適用が例外」と説明されますが、条文は一元適用のほうを先に定義していません。施行規則1条3項1号が、次のようにいわば引き算で定義しています。

法第三十九条第一項に規定する事業以外の事業(以下「一元適用事業」という。)

「39条1項以外」。これが一元適用事業の法令上の定義のすべてです。積極的な要件は何も置かれていません。つまり条文の構造としては、まず例外(39条1項)を決め、そこに当たらないものを全部まとめて一元適用事業と呼ぶという順番になっています。

この形は実務では扱いやすい部類に入ります。自社が一元適用かどうかを判定するとき、一元適用の要件を確かめる必要はなく、施行規則70条の4類型と法39条1項に当たらないことだけを見ればよいからです。建設業でも港湾運送業でもなく、自治体でもなければ、番号は1つです。

「二元適用事業」という語は法令に単独で存在しない

もうひとつ、語の在りかで確かめておきたいことがあります。「二元適用」は施行規則に4回出てきますが、その4回すべてが「労災二元適用事業等」という別の定義語の一部です。単独の「二元適用事業」という語は、徴収法にも施行規則にも0回です。

4回の内訳は、管轄の特例を定める施行規則69条に2回、申請書の提出の経由を定める78条に2回です。69条は労働保険事務組合に事務処理を委託した場合の管轄を決める条で、そこで委託される事務が労災保険側のものだけである場合を指すために「労災二元適用事業等」という括り方をしています。制度の名前としてではなく、管轄を書き分けるための道具として出てくるだけです。

実務上の意味はこうです。「二元適用事業」は行政の手引きや実務書で広く使われている定着した呼び名ですが、条文を検索してこの語を探しても見つかりません。根拠にあたるときは、語ではなく法39条1項と施行規則70条という条番号で引く必要があります。同じことは「一元適用事業」には当てはまらず、こちらは施行規則1条3項1号にかっこ書きの定義があります。

番号が違うと窓口も違う — 施行規則1条が3つに割る

番号が2つあると、届出の持ち込み先も分かれます。施行規則1条1項は、労働保険関係事務を扱う役所を3つの号に割り振っています(この条は3項あり、1項が3号、3項が2号です)。

施行規則1条1項誰が行うかおおよその対象
1号所轄都道府県労働局長労働保険関係事務の原則
2号所轄労働基準監督署長労災保険に係る保険関係のみに係るもの
3号所轄公共職業安定所長雇用保険に係る保険関係のみに係るもの

いずれも基準は事業場の所在地です。ここから、二元適用事業では労災側の書類が労働基準監督署へ、雇用保険側の書類がハローワークへ、というよく知られた分かれ方が出てきます。一元適用事業では労災と雇用保険がひとつの保険関係なので、この分岐が起きません。窓口が2つに感じられるかどうかは、番号が2つあるかどうかと同じ理由で決まっています。

なお保険料の徴収に関する事務は別枠で、施行規則1条3項が都道府県労働局労働保険特別会計歳入徴収官の担当としています。同項1号・2号は、労働保険事務組合に事務処理を委託しているかどうかで担当を書き分けています。

労災保険・雇用保険を含む法定福利費の会社負担を計算する

継続事業の一括 — 束ねた側の保険関係は「消滅する」

支店や営業所を増やすと、原則としてはそれぞれの事業場ごとに保険関係が成立し、番号も増えます。これを1つにまとめる仕組みが継続事業の一括で、徴収法9条にあります。事業主が同一人である2以上の事業について申請し、厚生労働大臣の認可があると、すべての労働者が指定された1つの事業に使用されているものとみなされます。そして条文は次の一文で閉じます。

この場合においては、厚生労働大臣が指定する一の事業以外の事業に係る保険関係は、消滅する。

ここは読み飛ばしやすいところですが、実務では重要です。一括は「番号をまとめて表示する」ことではなく、指定した1つ以外の保険関係そのものを消す処理です。消えた事業について、その後に独立して申告や納付をすることはありません。年度更新も、指定された事業の労働保険番号で、束ねた全体の賃金をまとめて申告することになります。

一括ができる要件は施行規則10条1項にあり、号は2個です。1号は、それぞれの事業が次のイ・ロ・ハのいずれか一つのみに該当することを求めています。

施行規則10条1項1号内容
労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち、法39条1項に係る事業
雇用保険に係る保険関係が成立している事業のうち、法39条1項に係る事業
一元適用事業であって、労災保険及び雇用保険に係る保険関係が成立しているもの

そして2号が、それぞれの事業が事業の種類を同じくすることを求めています。

この2つの要件から、実務でよく問題になる点が読み取れます。イとロが別々の枠に立てられているため、二元適用事業の労災側の番号と雇用保険側の番号は、互いに一括する対象にはなりません。一括はあくまで「労災どうし」「雇用保険どうし」「一元適用どうし」で行うものです。同じ理由で、一元適用の事業(ハ)と二元適用の事業(イ・ロ)を混ぜて束ねることもできません。また2号があるため、事業の種類が違う事業場どうしも束ねられません。労災保険率が事業の種類ごとに違う以上、種類をまたいで束ねると料率が決まらなくなるからです。

申請の手続きは施行規則10条2項にあり、記載事項として指定を受けることを希望する事業の労働保険番号(3号)と、それ以外の事業の労働保険番号(4号)の両方を書かせています。ここでも番号は施行規則の側にだけ現れます。

14桁の内訳は、法令のどこにも書かれていない

労働保険番号は14桁の数字で、実務書では府県・所掌・管轄・基幹番号・枝番号に区切って説明されるのが普通です。ただしこの内訳は徴収法にも施行規則にも書かれていません。両方の全文を走査すると、「桁」という字が0回です。「整理記号」も両方で0回でした。

つまり桁の構成は法令事項ではなく、行政内部の事務処理上の取り決めです。この記事では、確かめられなかった内訳を条文の話として書くことはしません。実際の番号の意味を確認したい場合は、所轄の労働基準監督署または都道府県労働局に問い合わせるのが確実です。手元の書類で番号そのものを探す場合は、労働保険の年度更新の申告書、保険関係成立届の控え、労働保険料の納付書に記載があります。

なお、番号が施行規則の中で最も多く現れるのは、この番号を「書かせる」場面です。変更事項の届出を定める5条、概算保険料の増額に関する25条、確定保険料申告書の33条、一括有期事業についての報告の34条、労働保険料の還付の36条、特例納付保険料の申出の58条、労働保険事務組合の委託等の届出の64条など、届出の記載事項の先頭に置かれています。番号を定義する条文はないのに、番号を書けと求める条文は23か所あるというのが、この番号の法令上の姿です。

よくある質問

Q. 労働保険番号が2つあるのはなぜですか?

A. その事業が労働保険徴収法39条1項に当たる事業だからです。同項は、都道府県及び市町村の行う事業その他厚生労働省令で定める事業について、労災保険に係る保険関係と雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなして法律を適用すると定めています。別の事業とみなされる結果、保険関係が2つ成立し、番号も2つになります。厚生労働省令にあたる施行規則70条は対象を4号に分けて挙げており、1号が都道府県に準ずるもの及び市町村に準ずるものの行う事業、2号が港湾労働法2条2号の港湾運送の行為を行う事業、3号が雇用保険法附則2条1項各号に掲げる事業、4号が建設の事業です。件数として多いのは建設の事業です。

Q. 自社が一元適用事業かどうかは、どこを見れば分かりますか?

A. 一元適用事業は施行規則1条3項1号で、法39条1項に規定する事業以外の事業と定義されています。積極的な要件は置かれていないため、判定は引き算で行います。都道府県や市町村およびそれに準ずるものではなく、港湾運送の行為を行う事業でもなく、雇用保険法附則2条1項各号の事業でもなく、建設の事業でもなければ、一元適用事業にあたり労働保険番号は1つです。判断に迷う場合や、複数の事業を行っている場合は、所轄の労働基準監督署または都道府県労働局にご確認ください。

Q. 「二元適用事業」という言葉は法律のどこに書かれていますか?

A. 単独の語としては書かれていません。労働保険徴収法の本文54,185字と施行規則の本文118,402字を機械で走査すると、二元適用という語は法律に0回、施行規則に4回です。その4回はすべて施行規則69条と78条にある「労災二元適用事業等」という定義語の一部で、労働保険事務組合に委託された事務の管轄を書き分けるために使われています。制度そのものの根拠は語ではなく、法39条1項と施行規則70条という条番号で引く必要があります。

Q. 支店を作ったら労働保険番号は増えますか?

A. 原則として事業場ごとに保険関係が成立するため増えます。まとめたい場合は徴収法9条の継続事業の一括があり、事業主が同一人である2以上の事業について申請し厚生労働大臣の認可を受けると、すべての労働者が指定された1つの事業に使用されるものとみなされます。ただし施行規則10条1項2号が、それぞれの事業が事業の種類を同じくすることを求めているため、事業の種類が異なる事業場どうしは一括できません。

Q. 継続事業の一括をすると、まとめられた側の番号はどうなりますか?

A. 徴収法9条は、厚生労働大臣が指定する一の事業以外の事業に係る保険関係は消滅すると定めています。番号の表示をまとめるのではなく、保険関係そのものが消える扱いです。以後は指定された事業の労働保険番号で、束ねた全体の賃金を合わせて申告・納付することになります。

Q. 二元適用事業の労災の番号と雇用保険の番号は、一括して1つにできますか?

A. できません。施行規則10条1項1号は、一括の対象となるそれぞれの事業が、イの労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち法39条1項に係る事業、ロの雇用保険に係る保険関係が成立している事業のうち法39条1項に係る事業、ハの一元適用事業であって労災保険及び雇用保険に係る保険関係が成立しているもののうち、いずれか一つのみに該当することを求めています。イとロが別の枠に立てられているため、労災側と雇用保険側をまたいで束ねることは想定されていません。一括は労災どうし、雇用保険どうしで行うものです。

Q. 労働保険番号の14桁には意味があると聞きましたが、条文で確認できますか?

A. 条文では確認できません。労働保険徴収法と施行規則の全文を走査すると、桁という字は両方とも0回で、整理記号という語も0回です。桁の構成は法令に定めがなく、行政内部の事務処理上の取り決めにあたります。番号の意味を確認したい場合は、所轄の労働基準監督署または都道府県労働局にお問い合わせください。

Q. 労働保険番号はどの書類に書かれていますか?

A. 労働保険の年度更新の申告書、保険関係成立届の控え、労働保険料の納付書に記載があります。施行規則は多くの届出で番号を記載事項の筆頭に置いており、確定保険料申告書について定める33条、労災保険率特例適用申告書について定める20条の4、労働保険料の還付について定める36条などが例です。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。自社が一元適用事業と二元適用事業のどちらにあたるか、継続事業の一括の認可を受けられるか、労働保険番号の内容に誤りがある場合の訂正手続については、所轄の労働基準監督署・公共職業安定所・都道府県労働局、または社会保険労務士にご確認ください。

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