登記申請書の書き方|株式会社の設立・役員変更・本店移転の記載欄
株式会社の登記申請書は、登記の事由に合う記載例を選び、商号・本店・登記すべき事項・申請人・添付書類を対応させて作成します。申請書の空欄を埋める前に、何がいつ変わり、どの書類で確認できるかをそろえると、記載の食い違いを見つけやすくなります。
この記事は株式会社の通常の発起設立、取締役・監査役・代表取締役の変更、本店移転の記載を扱います。不動産登記、合同会社、募集設立、現物出資、組織再編、監査等委員会・指名委員会等設置会社の手続きは対象外です。登記の申請と、登記事項証明書の取得も別の手続きです。
登記申請書の記載欄と確認資料
「登記の事由」は申請する理由、「登記すべき事項」は登記簿に記録してもらう具体的な内容です。たとえば本店移転なら、事由に「本店移転」、登記事項に新しい本店所在地や移転の年月日等を記載します。
次の表は、株式会社の設立・役員変更・本店移転について、主な申請欄と確認資料を対応させたものです。添付書類の全件一覧ではありません。会社の機関設計と申請の事由に合う公式記載例で、追加・省略を確認します。
| 記載欄 | 書く内容 | 照合する資料・注意点 |
|---|---|---|
| 商号 | 株式会社を含む正式な会社名 | 設立は定款、変更登記は現在の登記記録 |
| 本店 | 会社の本店所在地 | 設立は定款と本店所在場所の決定。移転は新旧の所在地を区別 |
| 登記の事由 | 設立手続終了、役員変更、本店移転等の申請理由 | 決議・決定の内容と、その効力が生じた日 |
| 登記すべき事項 | 新しく記録する内容と原因年月日等 | 定款、議事録、就任承諾書、移転の決定書等 |
| 課税標準・登録免許税 | 該当する課税標準金額と税額 | 設立と変更で税区分が異なる。定款や資本金の額等と照合 |
| 添付書類 | 添付する書類の名称と通数 | 完成した書類一式。オンラインは電子添付と紙の別送を区別 |
| 申請人 | 本店・商号・代表者の住所、資格、氏名 | 申請する会社と、その会社を代表する者の情報 |
| 代理人 | 委任する場合の代理人の住所・氏名 | 委任状等の代理権を証する書面と一致させる |
| 申請年月日・申請先 | 申請の日付と登記所 | 管轄外移転は旧所在地経由で同時申請 |
書面の法定記載事項は商業登記法の登記申請の方式で確認できます。上の表のほか、登記事項について官庁の許可を要する場合は、許可書が到達した年月日の記載も必要です。
オンラインの「件名」は作成中の申請を管理するための名称で、「登記の事由」とは別の欄です。また「申請人」欄に書類を入力した経理担当者の名前をそのまま入れるのではなく、会社と代表者の情報を記載します。
設立・役員変更・本店移転の記載例
法務省の作成例は、会社名や日付を置き換えるだけでなく、自社の機関・決議・役員の動きに合わせて使います。設立用の添付一覧を、そのまま役員変更へ流用しないようにします。
設立は定款と設立時の決定に合わせる
株式会社の発起設立では、法務省「株式会社設立登記・発起設立編」に、商号・本店・登記の事由、別紙の登記事項、添付書類、申請人を入力する例があります。
同手引書の商号のフリガナ欄は、会社の種類を表す「株式会社」を除き、全角カタカナで入力します。たとえば「株式会社法務商事」のフリガナは「ホウムショウジ」です。商号そのものの欄から「株式会社」を削るという意味ではありません。
「登記すべき事項」の別紙表示では、設立の作成例を呼び出し、目的、資本金、株式、役員等の内容を自社のものに直します。登記事項は定款や設立時の決定と突き合わせ、作成例の役員名や機関を残さないようにします。
主な確認対象は定款、払込みがあったことを証する書面、設立時役員の就任承諾等です。発起人の同意・一致、代表者選定の書面などは該当する場合に確認します。設立後の税務書類は会社設立後の届出で分けて扱います。
役員変更は重任と辞任・就任を分ける
同じ人が任期満了直後に再任される場面と、前任者が辞任して別の人が就任する場面では、記録する原因と添付が異なります。公式手引書も全員重任の作成例と、取締役の辞任・就任の作成例に分かれています。
役員変更の登記事項は、役職、氏名、必要な住所、重任・就任・退任等の原因と年月日を、該当する決議・承諾・退任の証明に対応させます。取締役の選任と代表取締役の選定は分けて確認し、代表者の変更を記載し忘れないようにします。
たとえば、架空の会社で取締役が辞任し、後任が就任する場合、辞任を証する書面と後任の就任承諾を別々に確認します。就任承諾書があることだけで前任者の辞任を証明できるわけではありません。役職や原因の違いを申請書と添付書類でそろえます。
本店移転は管轄内と管轄外を分ける
他の登記所の管轄区域へ本店を移す場合は、新旧所在地の申請を同時に行い、新所在地分も旧所在地の登記所を経由します。同じ都道府県内かどうかではなく、登記所の管轄で分けます。
法務省の申請者操作手引書「他の登記所の管轄する区域への本店移転」には、新旧所在地宛ての申請書を作る例があります。管轄外移転のオンライン申請では、新所在地宛て分も送信先は旧所在地の管轄登記所です。
管轄外移転の新所在地分は、代理権を証する書面を除き、添付書面を要しません。旧所在地分の決議・決定等の証明を省けるという意味ではありません。根拠は商業登記法の本店移転の登記です。
添付書類と申請書を照合する
添付書類は、登記事項が生じたことを示す証拠と考えると整理できます。申請書に「添付書類」と書くだけでは足りず、該当する書面・情報をそろえます。
以下は、この記事で扱う株式会社の主な確認対象です。添付書類は会社の機関設計、決議・決定方法、申請方法によって変わります。表は該当する書類を探すためのもので、必要書類を全件列挙したものではありません。
| 申請内容 | 主に確認する書類 | 対応させる点 |
|---|---|---|
| 発起設立 | 定款、払込証明、設立時役員の就任承諾等 | 商号・本店・目的・資本金・役員等 |
| 役員の就任・重任 | 必要な選任・選定の議事録等、就任承諾の証明 | 誰がどの資格でいつ就任・重任したか |
| 役員の退任 | 辞任届等、該当する退任を証する書面 | 退任する役員、退任の原因・年月日 |
| 本店移転:管轄内/管轄外の旧所在地分 | 必要な移転の決議・決定の証明。定款変更が必要ならその証明も | 移転先の所在地と移転日 |
| 本店移転:管轄外の新所在地分 | 代理申請なら代理権を証する書面。その他の添付書面は不要 | 新所在地分の記載内容と、委任する場合の範囲 |
| 代理人への委任 | 委任状等の代理権を証する書面 | 委任者・代理人・委任する申請の範囲 |
登記事項について株主総会や取締役会の決議を要する場合は、議事録を添付し、みなし決議ならその場合に当たることを証する書面を代わりに添付します。同意・一致を要する事項には、その同意・一致を証する書面を付けます。
根拠は商業登記法の添付書面の通則、設立の登記、取締役等の変更の登記です。株主総会の決議が必要な登記では株主リストも確認します。議事録の作成・添付の扱いは株主総会議事録の記事へ進んでください。
印鑑証明書・本人確認証明書は、新任か再任か、取締役会の有無、代表者の選定方法、申請方法で要否が変わります。主な例外は次のとおりです。
- 就任承諾や代表者選定について、所定の要件で当該役員本人の印鑑証明書を添付する場合は、その役員の本人確認証明書を省略できます。
- 代表者選定の議事録等は変更前の代表取締役の届出印、辞任届は辞任者の届出印との一致で、所定の印鑑証明書を省略できる場合があります。
役員ごとの適用条件は商業登記規則の添付書面とオンライン申請の特則を確認します。
書面・郵送・オンラインの違い
窓口へ持参する場合と郵送する場合は書面申請です。オンライン申請は申請書情報に電子署名を行う方式で、添付も電子化するか、紙を提出・送付するかを分けて準備します。
次の表は株式会社の設立・役員変更・本店移転の提出方法を比較しています。管轄外移転は新旧の同時申請・旧所在地経由が前提です。代表者本人の申請と代理人による申請では、署名者・押印する書類を区別します。
| 提出方法 | 申請書の扱い | 添付書類の扱い |
|---|---|---|
| 書面を窓口に持参 | 申請人又は代表者若しくは代理人が記名押印する書面を提出 | 事由に応じた必要書類を添付 |
| 書面を郵送 | 記名押印した申請書を管轄登記所へ送付 | 申請書と添付の名称・通数を照合して同封 |
| オンライン申請 | 代表者等又は代理人が電子署名し、所定の電子証明書を送信 | 電子署名等を付した添付情報を送信。紙で提出・送付する方法もある |
| QRコード付き書面申請 | データ送信後、印刷した書面申請書も提出 | 必要な添付書面と併せて提出 |
申請書と添付書類の署名を分ける
オンライン申請では、申請書情報の署名と、作成者が付ける添付書面情報の署名を別々に確認し、認証を要する添付情報では認証者の署名も確認します。紙をスキャンしただけ、又は申請者が全ファイルに署名しただけで、添付要件がそろうとは限りません。
使える電子証明書は本人による申請か委任代理か、添付情報の種類によって異なります。根拠は商業登記規則の登記申請の方法です。作成者の電子署名等を用意できず書面を提出する場合は、申請書の添付書類欄で持参・送付を示し、「別送の有無」も実際の提出方法と合わせます。
オンラインでは会社の印鑑提出は任意ですが、書面の委任状で代理申請する場合は、その委任状に登記所へ提出した印鑑を押す必要があります。印鑑届、申請書への署名、就任承諾等の添付書類は、それぞれ別に確認します。
QRコード付きは紙の提出まで行う
QRコード付き書面申請は、送信だけでは終わりません。印刷した申請書と必要な添付書面を登記所へ提出します。全員重任のQRコード付き書面申請の公式作成例では、代表取締役本人なら申請書に、代理人による申請なら委任状に届出印で押印すると案内しています。
「データ送信済み」と「書面提出済み」を社内で別の確認項目にすると、送信後の未提出を見つけやすくなります。オンライン申請で添付書面を別送する場合も、何を送ったかの控えを残しておきます。
提出前の確認と補正への対応
提出前には、申請書、添付書類、現在の登記記録を並べて確認します。オンラインで形式チェックが通っても、決議内容や日付との一致は別に点検します。
- 事由を合わせる。設立、重任、辞任・就任、本店移転のどれを申請するかを決め、使った作成例がその事由に合うか確かめます。
- 文字と日付を照合する。商号、所在地、役員の氏名・住所、原因年月日を、定款・議事録・承諾書等と見比べます。
- 添付と署名を照合する。書類名・通数、電子署名の作成者、紙の別送、委任状の有無を確認します。
- 管轄と同時申請を確認する。管轄外移転では新旧所在地の申請をそろえ、新所在地分を直接送る取り違えを防ぎます。
- 提出後の連絡を確認する。申請の控えを保管し、補正のお知らせと登記完了の確認を担当者間で共有します。
書面の申請書が2枚以上になる場合は、申請人又は代表者若しくは代理人のうち一人が、各用紙のつづり目に契印します。根拠は商業登記規則の申請書の記載等です。
不備があれば、内容に応じて補正又は却下の対象となります。補正できる不備について、登記官が定めた相当の期間内に補正したときは却下の例外です。添付漏れがあったら直ちに再申請と決めつけず、届いた連絡と指定期間を確認します(商業登記法の申請の却下)。
社内の書類回収日や提出準備日を数える場合は、営業日計算を使えます。登記の法定申請期限を判定するものではありません。
日数・営業日計算で社内の準備日程を確認する事由に合う公式作成例を選び、記載する事実と裏付け資料を対応させます。添付の名称・通数をそろえ、提出方法に応じて押印・電子署名・別送を確認します。
よくある質問
登記の事由と登記すべき事項は同じですか?
別の欄です。事由には設立・役員変更・本店移転等の申請理由、登記事項には記録してもらう具体的な内容と原因年月日等を記載します。作成例を自社の事実と資料に合わせて直します。
設立の添付書類を役員変更にも使えますか?
同じ一式を流用せず、変更の事由で選び直します。役員の就任なら就任承諾、退任なら退任の証明など、登記する内容に対応する書類を確認します。印鑑証明等は新任・再任や機関設計でも要否が変わります。
オンライン申請なら紙の書類を送らずに済みますか?
紙の提出が残る場合があります。添付書面情報を電子署名等とともに送信する代わりに、書面を提出・送付する方法もあります。申請書情報の電子署名と、添付書類の提出方法は分けて確認します。
QRコード付き書面申請は送信したら終了ですか?
印刷した申請書と必要な添付書面の提出も必要です。代表取締役本人が申請する場合は申請書に、代理人による申請の場合は委任状に届出印を押します。データ送信後に紙を出し忘れないようにします。
本店を他の登記所の管轄へ移すときは新所在地へ直接出しますか?
新所在地分も旧所在地の管轄登記所を経由し、新旧の申請を同時に行います。管轄外移転のオンライン申請でも、新所在地宛て分の送信先は旧所在地の管轄登記所です。
出典
記載欄・添付・提出方法は、以下の法令と法務省の公式作成例を参照しています。申請時には、自社の機関設計と事由に合う手引書・様式を確認してください。
- e-Gov法令検索「商業登記法」:申請方式、代理権、電磁的記録、添付書面、設立・役員変更・本店移転、補正
- e-Gov法令検索「商業登記規則」:記載・契印、添付書類、電子申請
- 法務省「申請用総合ソフト利用ガイド・株式会社設立登記・発起設立編」
- 法務省「申請用総合ソフト利用ガイド・株式会社役員変更編・全員が重任する場合」
- 法務省「申請用総合ソフト利用ガイド・株式会社役員変更編・取締役の辞任及び就任の場合」
- 法務省「申請者操作手引書・商業・法人登記申請・申請用総合ソフト編」:管轄外本店移転の入力例
- 法務省「申請用総合ソフト利用ガイド・商業・法人登記申請・共通編」:電子署名、紙の添付書面の提出、補正
- 法務省「QRコード付き書面申請・株式会社役員変更編・全員が重任する場合」
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。登記申請の要否、記載内容、添付書類の判断に迷う場合は、管轄の法務局・司法書士にご確認ください。個別の税務・労務相談には応じられません。