税金・経理・補助金ツールズ

ストレスチェックの義務|対象者・実施頻度・結果の取扱いと報告

ストレスチェックは常時50人以上の事業場で実施義務があり、50人未満の事業場も2028年4月1日から義務になります。会社全体ではなく、事業場ごとに判定します。

会社が検査を行う義務と、従業員が検査を受けるかどうかは別です。担当者は、人数の数え方・受検対象者・結果を扱う人を分けて準備します。

実施・受検・集団分析の義務を区別する

会社の検査実施義務と労働者の受検は別で、集団分析・職場環境改善は努力義務です。会社の健康管理を担当する方向けに、2026年10月30日現在の制度と公表済みの義務拡大を整理します。検査の対象は常時使用する労働者です。具体的な雇用期間と週労働時間の条件は次の節で確認します。

項目現在の取扱い拡大施行後の取扱い
常時50人以上の事業場の検査1年以内ごとに1回、定期に実施する義務引き続き実施義務
常時50人未満の事業場の検査実施は努力義務2028年4月1日から、常時使用する労働者に1年以内ごとに1回の実施義務
労働者の受検受検義務はない会社の実施義務が拡大しても、受検義務とは別
集団分析・職場環境改善努力義務引き続き努力義務。個人を特定できない方法で行う
高ストレスで実施者が必要と認め、本人が結果通知後遅滞なく申し出た場合の医師の面接指導申出後遅滞なく実施引き続き申出後遅滞なく実施

義務拡大の根拠は、改正法の附則と施行期日を定める政令です。実施義務の拡大と、委員会の設置義務は連動しません。委員会の設置・運営は安全衛生委員会と衛生委員会で確認してください。

人数判定と受検対象者の名簿を分ける

事業場の規模は、受検対象者だけを数えて判定しません。常態として使用する短時間のパート・アルバイト、派遣先で受け入れている派遣労働者も人数に含めます。

事業場は通常、工場・事務所・店舗など場所ごとに考えます。離れた拠点を会社単位で合計しません。独立した事業場に当たるか迷う拠点は、所轄の労働基準監督署に確認します。

検査対象者は、下表の雇用期間と週労働時間の両条件を満たす人です。週労働時間は、当該事業場で同種の業務に従事する通常の労働者と比較します。契約の名称や国籍では区別しません。

確認する条件検査対象者の範囲
雇用期間無期契約。または有期契約で契約期間が1年以上、更新で1年以上使用予定、既に1年以上継続使用のいずれか
週労働時間同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上

上の雇用期間条件を満たし、週労働時間が同種の業務の通常の労働者のおおむね2分の1以上・4分の3未満の人にも、検査の実施が望まれます。

派遣労働者のストレスチェックは派遣元が実施します。派遣先で規模の人数に数えることと、個人への検査を担当することを混同しないようにします。

実施前に決める担当と委託内容

先に、検査を実施する人と社内で連絡を調整する人を決めます。小規模事業場は、個人結果の秘密を守るための外部委託が厚生労働省のマニュアルで勧められています。

衛生委員会がある事業場は、そこで実施方法を審議します。委員会がない事業場では、関係労働者の意見を聴く機会を設けます。社内の連絡担当を決めたことだけで、個人結果を閲覧できるわけではありません。

結果通知・本人同意・面接指導の流れ

個人の検査結果は、実施者から受検した本人に直接通知します。会社が個人結果の提供を受けるには、結果通知後に本人の同意を得る必要があります。同意は書面または電磁的記録で残します。

個人結果は実施者から本人へ。会社への提供は結果通知後の本人同意を経る 実施者 本人に結果通知 通知後に本人同意 会社へ結果提供
検査を外注しても、個人結果が自動で会社へ届く運用にはしません。

受検前や受検時に、会社への結果提供にまとめて同意させる方法は避けます。受検しないことや結果提供に同意しないことを理由とする不利益な取扱いも行ってはいけません。

高ストレスで実施者が面接指導を必要と認めた人が、結果通知後遅滞なく申し出た場合、会社は遅滞なく医師の面接指導を実施します。高ストレスという判定だけで、全員の面接指導が自動的に始まる仕組みではありません。

面接指導後は遅滞なく医師の意見を聴きます。就業措置が必要と認めるときは、その意見と本人の実情を踏まえます。決定前に本人の意見を聴き、十分に話し合って了解を得るよう努めたうえで、就業措置を講じます。面接指導を申し出たことを理由とする不利益な取扱いは禁止です。

面接指導の申出の事実と、就業上の措置に必要最小限の面接指導結果は会社に伝わります。申出先とともに、事前に本人へ説明します。詳しい診断名や検査値などの医学情報を提供・要求する運用にしません。

集団分析は努力義務、匿名性を守る

集団分析と、その結果を踏まえた職場環境改善は努力義務です。集団分析は個人の評価や選別ではなく、部署などの集団にあるストレス要因を見つけるために使います。

2027年4月1日施行の集団分析の規則改正は、特定の個人を識別できない方法で行うという従来の解釈の明文化です。努力義務が実施義務に変わる改正ではありません。

集計・分析の単位の実際の受検者数(有効データ数)が10人未満なら、会社は原則として集団分析結果の提供を受けられません。個人が特定されるおそれがあるためです。部署をまとめて大きな集団にするなど、実施者と方法を確認します。自社で分析する場合の取扱いは、厚生労働省の実施マニュアル第8節を確認してください。

監督署への報告と記録の保存

常時50人以上の労働者を使用する事業場は、検査・面接指導の結果等を所轄労働基準監督署長へ電子申請で報告します。常時50人以上の事業場の報告は1年以内ごとに1回、定期に行います。報告するのは受検者数や面接指導実施者数などで、個人の回答票ではありません。

常時50人未満の事業場には、この定期報告の義務はありません。小規模事業場の実施義務拡大後も、現行の規則と厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルでは報告対象を広げていません。

結果の記録は、個人の検査結果と医師の面接指導結果を分けて管理します。以下はストレスチェック制度の記録です。会社が個人の検査結果を受領するかどうかによって、管理主体が異なります。

記録取扱い
会社が個人の検査結果を受領しない場合実施者等による記録作成・保存が適切に行われるよう、会社が必要な措置を講じる
本人の同意を得て会社が受領した個人の検査結果会社が結果の記録を作成し、5年間保存する
医師の面接指導結果会社が面接指導結果の記録を作成し、5年間保存する

外注時は、個人結果の保存先、アクセスできる担当者、委託契約終了時の引継ぎも決めておきます。給与や人事評価の資料と、健康情報を無制限に共有する運用は避けてください。

担当者が先にそろえるもの

  • 事業場の規模を判定する人数と、検査対象者の名簿を分ける。
  • 実施者、結果の保存先、面接指導の依頼先を決める。
  • 受検・結果提供の同意・面接指導の申出を、別の手続きとして案内する。

従業員の健康管理とは別に、採用に伴う保険料の会社負担を見積もる場合は、法定福利費の計算機を利用できます。

よくある質問

従業員はストレスチェックを断れますか?

労働者に受検義務はありません。会社は受検を勧められますが、受けないことを理由に懲戒などの不利益な取扱いを行ってはいけません。

会社の人事担当者は個人結果を見られますか?

人事担当者という理由では見られません。会社への個人結果の提供には、結果通知後の本人の同意が必要です。受領した場合も、健康確保に必要な範囲で適切に管理します。

実施を外注すれば会社の対応は終わりですか?

終わりではありません。高ストレスで実施者が面接指導を必要と認めた人が結果通知後遅滞なく申し出た場合、会社は遅滞なく医師の面接指導を実施し、その後の医師の意見聴取や必要な措置にも対応します。

次に読む

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。事業場の単位や人数、対象者の判断は、所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。個別の税務・労務相談には応じられません。

この内容をXで共有