税金・経理・補助金ツールズ

予実管理とは?月次の進め方・差異分析とExcel表の作り方

予実管理は、予算と実績を比べ、差が出た原因を調べて次の行動を決める仕事です。表を埋めるだけで終わらず、売上が足りないのか、費用の使い方が変わったのかを分けて確認します。

経理で初めて担当するなら、売上・変動費・固定費・利益の月次表から始められます。下の架空例で差額と達成率を読み、そのままExcelに置ける式と、翌月の改善までの手順を確認できます。

予実管理表の例と読み方

差額は実績から予算を引き、達成率は予算が正の場合に実績を予算で割って求めます。費用の差額がマイナスでも、それだけで良い結果とは判断できません。売上と利益を一緒に見ます。

以下は架空の小売会社の単月・税抜の設例です。単一商品の販売を想定し、在庫変動と他の営業収益・費用はなく、変動費と固定費を引いた残りを営業利益とします。差額は実績−予算、達成率は実績÷予算を百分率で表示します。

架空の単月・税抜の予実比較
項目予算実績差額達成率
売上高100万円90万円−10万円90%
変動費60万円58万5,000円−1万5,000円97.5%
固定費30万円30万円差なし100%
営業利益10万円1万5,000円−8万5,000円15%

この例では変動費も減っていますが、売上の減り方に対して十分には減っていません。費用の予算を使い切っていないという理由で安心せず、販売量や仕入条件を調べます。

なお、ここで使う費用の分類は分析用のものです。粗利や営業利益の定義は、粗利の計算方法と損益計算書の見方で確認できます。

予算管理との違いは、社内の使い方をそろえる

予算を立てて運用する仕事を予算管理、その中で予算と実績を突き合わせる仕事を予実管理、と整理すると担当範囲が分かりやすくなります。本記事での整理であり、会社によって用語の使い方は異なります。

名前の違いより、誰が予算を承認し、誰が実績を確定し、差の理由を誰に確認するかを決める方が実務に役立ちます。経理が数字を集め、営業や現場が原因を説明し、責任者が対応を決める、といった分担です。

厚生労働省の収支計画資料には、予算と実績を比較して差異の把握・分析・改善につなげる説明と、予算実績報告書の様式例が掲載されています。労働者協同組合向けの資料ですが、比較と改善という考え方の参考になります。

売上・変動費・固定費から予算を立てる

予算は、金額の根拠を残して月別に積み上げます。前年と同じ金額を置く場合も、販売数量、価格、契約、採用計画が変わっていないかを確かめます。

以下は小規模な会社で予算を作るときの社内運用例です。売上の算出方法は業種に合わせて選び、費用の固定・変動は一定の事業規模と期間を前提に整理します。

項目組み立て方の例残しておく根拠
売上販売数量×販売単価受注見込、販売履歴、価格改定予定
変動費販売量に応じる原価や手数料を見積もる仕入単価、原価率、販売手数料の契約
固定費月ごとの契約額や人員計画を積み上げる家賃、給与、保守契約、採用・更新予定
利益売上から計画した費用を差し引く売上と費用の各明細、集計範囲

売上は販売量と価格を別々に置く

小売なら商品別の数量と単価、サービス業なら案件数と平均単価などに分ける方法があります。季節性や営業可能日、人員の処理能力も確認し、年の目標を機械的に均等配分しないようにします。

経営者が求める利益目標と、現場の見込から積み上げた予算に差がある場合は、その差を埋める施策を別に記録します。実行する予定のない値上げや受注増を数字だけに織り込むと、後から未達の理由を検証できません。

費用は勘定科目名だけで決めない

中小企業基盤整備機構の損益分岐点の解説では、売上に比例する変動費と、売上にかかわらず一定的にかかる固定費に分けています。原材料・仕入商品や、正社員の給与・家賃が例です。

固定費も、採用、増床、契約更新などで変わります。一定規模・期間での分類として使い、今後も支出額が変わらないという意味には取らないようにします。

たとえば配送費は、定額契約部分と出荷件数に応じる部分を分ける方法があります。分けにくい費用は仮の分類と根拠を残し、予算と実績で同じルールを使います。分類変更があれば、比較への影響も確認します。

月次の予実管理を進める手順

実績の基準をそろえ、差の大きい項目から原因と対応を決めます。次は経理と現場で分担する社内運用例です。作成日、実績の確定状況、次回の確認予定を表に残します。

実績を集める 比較する基準をそろえる 差の原因を確かめる 対応・担当・期限を決める 見通しを更新し、次回確認
社内運用例。集計した数字を、次に確かめることと担当者につなげます。

実績を集めて、比較前のずれを除く

試算表や売上明細を集め、対象期間、部門、勘定科目、税込・税抜、単位を予算と合わせます。未着請求書、返品、棚卸、部門の振替などが未反映なら、確定値と見込値を区別します。

年払い費用が予算では月割り、実績では支払月に集中している場合、そのままでは時期の差を業績の差と読み違えます。管理用に配分するなら、配分ルールと会計帳簿との差額を残し、元の試算表まで戻れる形にします。

原因は事実と仮説を分けて残す

差がある科目を取引明細へ戻し、金額の大きさ、繰り返す可能性、利益への影響で確認の順を決めます。売上未達なら、出荷の翌月ずれ、失注、値引き、商品構成の変化などを切り分けます。

まだ裏付けがない原因は「確認中」とし、誰に何を聞くかを残します。単なる集計漏れと、販売が伸びていないという事業上の問題を混ぜないためです。

改善は担当と確認方法まで決める

たとえば「失注を減らす」だけでは次回に結果を確かめにくくなります。「営業担当が失注理由を案件一覧に記入し、責任者が翌月の会議で価格要因と納期要因を確認する」のように、作業と担当を具体化します。

売上金額の手前で追う指標には、案件数、成約状況、受注単価、返品状況などがあります。目的に合うものを選び、集計負担が大きい項目を増やしすぎない運用にします。

当初予算、承認済みの修正予算、最新の着地見込は列を分ける方法があります。見込は更新しても、元の予算を消さず、変更日・理由・承認者を残せば、何が変わったのかを説明できます。

差異を金額・比率・数量と単価で分析する

金額差で影響の大きさを見て、比率差で採算の変化を見ます。その後、売上を数量と単価に分けると、現場へ確認する内容を絞れます。

達成率と、率どうしの差を混同しない

達成率は予算に対する実績の割合です。変動費率は、対応する売上高に対して変動費が占める割合です。分母が違うので、同じ「比率」でも示す内容は異なります。

以下も架空の単月・税抜の設例です。予算の変動費を予算売上高で、実績の変動費を実績売上高で割ります。率どうしの差は、実績の率から予算の率を引いたポイント差です。

指標予算実績差
変動費率60%65%+5ポイント

この例は、売上に占める変動費の割合が上がった状態です。仕入単価の上昇や廃棄、値引きなどを調べる入口になります。ただし、表だけでは原因は確定しません。

予算がゼロ以下の科目は、達成率で良し悪しを判定せず、差額と内容を説明する扱いにします。赤字予算を分母にすると、数値の増減と改善・悪化の向きが分かりにくくなるためです。

売上の差を数量と単価に分ける

次は、数量を先に変える分解方法の例です。数量差異には予算単価、単価差異には実績数量を使います。複数商品の構成変化まで扱う場合は、商品別の分析を別に行います。

架空の単月・税抜の単一商品例では、予算は100個×10,000円、実績は80個×11,250円です。数量差異を予算単価で、単価差異を実績数量で計算し、分解の順序をそろえます。

差異この方式の式架空例の計算結果
数量差異数量差×予算単価(80個−100個)×10,000円−20万円
単価差異実績数量×単価差80個×(11,250円−10,000円)+10万円
売上差異との照合数量差異+単価差異−20万円+10万円−10万円

この例では、単価の上昇が数量減による売上減少の一部を補っています。単価が上がった事実だけを見て販売が好調だったとは判断せず、数量減の理由も調べます。

分解の順序を変えると、数量と単価への差異の配分も変わります。担当者間で方式をそろえ、合計が売上の実績−予算と一致することを確かめます。

Excelで予実管理表を作る

入力欄と計算欄を分け、同じ配置を月ごとに使います。ここではA列を項目、B列を予算、C列を実績、D列を差額、E列を達成率にする作成例を示します。金額の入力単位は円にそろえます。

列見出しの下に売上・変動費・固定費・利益を並べ、入力するのは売上と各費用です。利益や差額は数式で求め、式を入力値で上書きしないようにします。

次のExcel式は本記事の配置例です。売上を行2、変動費を行3、固定費を行4、利益を行5とします。B列・C列の入力は数値とし、空欄や「未確定」は計算に進めず、数値のゼロは確定した実績として区別します。

計算する欄セル式の例
売上の差額D2=IF(COUNT(B2,C2)=2,C2-B2,"未確定")
売上の達成率E2=IF(COUNT(B2,C2)=2,IF(B2>0,C2/B2,"比較保留"),"未確定")
予算の利益B5=IF(COUNT(B2:B4)=3,B2-B3-B4,"未確定")
実績の利益C5=IF(COUNT(C2:C4)=3,C2-C3-C4,"未確定")

差額・達成率の式は各費用と利益の行にもコピーできます。達成率のセルはパーセント表示にし、差額は売上・費用とも実績−予算の向きを保ちます。費用増を良い結果と表示しないよう、評価は金額の符号と分けます。

上のIF式は、予算が正の場合に達成率を計算し、未入力は未確定、予算がゼロ以下なら比較保留とする運用例です。IFの条件分岐はMicrosoftのIF関数の説明でも確認できます。

利益の式では、数値が必要な欄にそろった場合に計算するためCOUNTを使っています。COUNT関数の説明も確認できます。

累計は同じ期間の金額から求める

月ごとの達成率を平均するのではなく、同じ対象期間の実績合計を予算合計で割ります。この方法も、予算合計が正の場合に使います。単月と累計を併記すると、翌月にずれた売上と、そのまま失った売上を区別しやすくなります。

累計用の別シートで、確定した月の予算をB列、実績をC列に並べるなら、対象の数値セルをSUMで合計できます。未確定の月が混じっていないかを確かめ、合計する期間を予算側と実績側で合わせます。

SUMは参照範囲の文字列を合計しないため、金額は数値で入力します。非表示の行も合計するので、フィルターで見えている行だけの合計とは分けて扱います。

SUMの参照範囲と注意点は、MicrosoftのSUM関数の説明で確認できます。月や科目を追加したときは、合計範囲に追加分が含まれたかも確認します。

帳簿との照合と版の管理を残す

実績を取り込んだ日、元の試算表の版、科目の対応表を保存します。更新担当を決め、確定後に修正した金額は理由を記録すると、会議で使った数字と後日の数字の違いを追えます。

表計算で運用が難しくなったら、同時編集の衝突、承認記録、科目対応、集計にかかる作業を先に整理します。道具を変える前に、何を直したいかを明確にするためです。

よくある失敗と直し方

差が出たことを責めるより、比較の前提と次の作業を確かめます。原因が分からない差は、現場の説明と元の明細へ戻ります。

次は会社内で使う確認例です。特定の運用方法や提出様式を義務付けるものではありません。

失敗起きる問題直し方の例
差額の報告で終わる翌月も同じ理由で差が残る対応する担当と、次回確認する資料を決める
細かい科目を増やしすぎる集計に追われ、原因を調べる時間がなくなる金額と継続性で確認する項目を絞る
予算を実績に上書きする元の計画との差が分からなくなる当初予算と最新見込を分け、変更記録を残す
費用減を節約と決めつける販売減や実施延期を見落とす売上・数量と、予定した活動の実施状況を照合する
未入力をゼロにする未確定の実績を確定済みと誤認する空欄と確定したゼロを区別する
利益だけを見て安心する売掛金の回収や支払いの時期を見落とす資金繰り表で入出金日を確認する

損益の予実と資金の予実は分けて確認します。売上の計上と代金の回収には時期のずれがあり、借入元本の返済や設備代金の支払いも、営業損益の費用と同じ扱いにはできません。詳しくは財務の仕事と資金予定の作り方へ進めます。

固定費や変動費を整理し終えたら、売上目標の点検には損益分岐点の計算も使えます。予実管理で原因を調べる作業と組み合わせ、費用の前提を変えたときの見通しを確かめます。

固定費・変動費から損益分岐点を計算する

よくある質問

予実管理は何のために行いますか?

予算と実績の差から原因を見つけ、次の行動を決めるためです。売上や費用を集計するだけで終わらず、改善の担当と、結果を確かめる方法を残します。

予実管理はExcelでもできますか?

予算・実績・差額・達成率を並べた表から始められます。本記事の配置例では、入力欄と数式の欄を分け、未入力と確定したゼロを区別します。科目対応と更新担当も決めておくと確認しやすくなります。

予算が赤字のときも達成率を使いますか?

本記事の表では、予算がゼロ以下の科目は達成率の比較を保留し、金額の差と理由を説明する扱いにします。赤字を分母にした比率では、数字の増減と改善・悪化の向きが分かりにくくなるためです。

予算と実績が大きくずれたら、予算を直しますか?

まず差の原因を調べ、その後の見通しを更新します。当初予算は残し、修正予算や最新見込を別に管理する方法があります。承認手順は社内のルールに合わせ、変更理由を記録します。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。具体的な申告や判断は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。

次に読む

この内容をXで共有