クラウド会計とは|導入・運用・解約時の確認表
クラウド会計は、インターネット経由で帳簿の入力・集計を行い、データをサービス側のサーバーに保管する会計サービスです。導入時は機能や料金に加え、誰が使えるか、障害時にどう続けるか、解約後も帳簿を読めるかを確認します。
経理担当者が使えるよう、契約前・日常運用・利用終了時の確認表を用意しました。クラウドを使うことと、電子帳簿保存法の保存要件を満たすことは別に確かめます。
クラウド会計の仕組みと任せる範囲
手元の端末からサービスに接続し、同じ会計データを入力・確認するのが基本の仕組みです。端末にソフトを入れる形のサービスもあります。使える端末・ブラウザ・アプリは候補ごとに確認します。
対応するサービス・プランでは、銀行やカードの明細取込、社内の分担、税理士とのデータ共有も利用できます。自社の口座でインターネット経由の履歴・残高照会が使えるかを確認します。会計サービスがその口座を連携対象にしているかも確かめます。
次は導入時に分担を決めるための整理です。サービス側の機能や契約範囲を確認し、会社側の担当作業を残します。
| 対象 | サービス側で確認すること | 会社側で行うこと |
|---|---|---|
| 会計データの保管 | 保管場所、保護対策、障害時の扱い | 入力する情報の範囲と、社内責任者とを決める |
| 帳簿への入力・集計 | 必要な科目・部門・帳票と明細連携への対応 | 残高や証憑と照合し、誤入力を訂正する |
| 利用者の管理 | 権限の分け方と認証機能 | 権限を付与し、異動・退職・委託終了時に見直す |
| データの継続利用 | 復元・出力・解約後の閲覧条件 | 出力や復元を試し、管理者と保存先とを決める |
サーバーの保守を任せても、会社の設定やデータ確認まで終わるわけではありません。セキュリティは、事業者と利用者が役割を分担して維持します。
契約前の確認表:保管場所・機能・料金
契約前に、自社の業務に合う機能や利用環境、データの保管場所、費用と終了条件を確認します。まず、今の経理で困っている作業を決めます。明細の転記を減らしたいのか、拠点間で帳簿を共有したいのかで、必要な機能は変わります。
以下は会社の経理向けに具体化した確認例です。法定のチェックリストではなく、候補サービスの契約・仕様・試用結果を記録するために使います。
| 確認する項目 | 確かめる内容 | 残しておく記録 |
|---|---|---|
| 業務との適合 | 必要な帳票、科目・部門、決算・申告との連携範囲 | 自社の業務一覧と対応範囲 |
| 利用環境 | 端末・ブラウザと、接続制限と、通信が途切れたときの動作 | 実際に使う端末における試用結果 |
| データの所在地 | 本体・バックアップを保存する国や地域 | 回答が載った、契約書・説明資料 |
| 事業者の管理 | 暗号化、保守、再委託、事業者がデータにアクセスする条件 | 利用規約と、セキュリティの説明 |
| 費用と契約 | 必要機能・利用人数・サポート・出力にかかる費用と更新条件 | 自社の利用条件で作った、見積書 |
| 利用終了 | データ削除と、残存データの扱い、出力期限、解約後の閲覧 | 終了条件と出力の試用結果 |
データの所在地は、「クラウドにある」という説明だけで終わらせません。国外サーバーでは、扱うデータによって設置国・地域の法規制が適用されることもあります。国内・国外という区分だけで安全性や法令適合を判定せず、契約と取扱情報を確認します。
試用では入力から出力まで通してみる
画面の見やすさに加え、移行予定の科目・部門や期首残高を試しに登録します。使いたい帳簿に出せるかも確かめます。試用データは架空の取引で作ります。社内の承認なく本番の個人情報や機密情報を入れない運用にします。
例えば、売上の請求、入金、仕訳の訂正を架空の取引として登録し、元帳と添付書類を取り出してみます。明細の取込だけ動いても、担当者が訂正や出力をできなければ日常業務に支障が出ます。試用でできなかった操作は、別プランへの変更が必要なのか、機能自体がないのかを分けて確認します。
運用の確認表:権限・認証・操作履歴
利用者ごとにアカウントを分け、仕事に必要な権限を与える運用にします。共有の管理者アカウントで全員が作業すると、担当者の退職時にアクセスを止めにくくなり、誰の操作かも追いにくくなります。
次は権限と記録の設計例です。実際に制限できる範囲・記録される内容は、サービスと契約プランで確認してください。
| 項目 | 運用の例 | サービスで確かめること |
|---|---|---|
| 入力担当 | 入力・添付の担当を決め、管理者の操作と分ける | 入力、承認、削除、利用者追加を分けられるか |
| 承認・管理担当 | 承認者と設定変更の責任者を決める | 権限変更を記録・確認できるか |
| 外部の税理士等 | 担当業務に合わせた権限と、利用終了日とを決める | 閲覧する範囲と出力・編集の制限 |
| 認証 | パスワードを共有せずに、追加認証があれば利用する | 認証機能の有無、端末紛失時における復旧方法 |
| 操作履歴 | 訂正・削除を含め、誰が何を変えたかを確認する | 記録対象と、保存期間と、閲覧・出力の権限 |
| 異動・退職 | 権限や連携を見直して、必要なデータを引き継ぐ | アカウント停止、連携解除、管理者変更の方法 |
操作履歴を確認する機能と、誤った仕訳を元に戻す機能は分けて確かめます。履歴が見えても、その時点のデータに復元できるとは限りません。履歴の保存期間が契約で決まっている場合は、必要な記録をいつ出力するかも決めます。
明細連携や自動記帳を使う場合も、入力内容の確認は残ります。自動記帳の実装や、人が確認する境界はAIで経理を半自動化した実例で扱っています。
バックアップは取得と復元を分けて確認
事業者がバックアップしているかに加え、会社が必要なデータを取り戻せるかを確認します。障害対策のバックアップと、利用者が誤って削除した仕訳の個別復元は、対象や条件が違うことがあります。
次はバックアップを運用するための確認例です。取得頻度・保存世代・復元方法は、失って困る範囲と契約上の対応範囲に合わせて決めます。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 対象 | 仕訳・科目設定・添付書類・操作履歴のうち、何が含まれるか |
| 時点 | いつの状態まで戻せるか、どの範囲の入力をやり直すことになるか |
| 復元方法 | 会社から復元できるか、依頼が必要か、費用と所要時間はどうか |
| 会社が持つ控え | 必要な帳簿や証憑を別の保存先に取得し、読み出せるか |
| 復元の試用 | 試用環境などで復元し、内容や添付の対応が崩れないか |
会社で控えを取る場合も、権限を広げすぎない保存先を使います。取得日、対象期間、ファイルの種類、担当者を記録します。複数の時点の控えを確保する運用も検討します。保存したファイルが開けるかまで確認しておくと、障害時に使える資料かを判断できます。
障害時は未処理を記録し、復旧後に照合
障害時は未処理の作業を記録し、復旧後に照合します。そのために、接続できないときの連絡先と代替作業を使い始める前に決めます。サービスの稼働率や回復目標時間が示されていても、復旧時刻が約束されているとは決めつけません。契約の保証範囲・対象外の事象を読みます。
以下は、会計サービスが使えない間の経理作業を整理する例です。会社の支払・承認のルールは維持し、障害を理由に承認を省略する運用にはしません。
- サービスの障害情報と社内の通信状況を確認し、発生時刻と影響する作業を記録する。
- 未処理の証憑や依頼を一時的な一覧にまとめ、取引日・相手先・処理状況を残す。
- 緊急の支払等は会社の承認経路で対応し、会計サービスに未反映であることを記録する。
- 復旧後は一覧と取込済み明細を照合し、未処理と重複を調べてから入力・消込を進める。
連絡先は、サービスにログインできなくても読める場所にも置きます。問い合わせ受付時間、電話・メール等の経路、障害時の案内先を確認します。通常の操作質問窓口と緊急連絡先が異なる場合は、分けて記録します。
解約前の確認表:過年度の帳簿を取り出す
帳簿の出力・閲覧を確かめてから、解約手続きに進みます。契約終了後も同じ画面が使えるとは限りません。過年度を含めた取得範囲、出力できる期限、閲覧専用契約の有無を確認します。
次は解約・移行時の出力確認例です。CSVやPDFは形式の例です。サービスが出力できるかはサービスの仕様で、出力だけで法定保存要件を満たすかは対象資料に適用される要件で、それぞれ確認します。
| 対象 | 出力・取得の確認例 | 取得後に確かめること |
|---|---|---|
| 仕訳・元帳 | 対象期間を指定した仕訳データ、仕訳帳・総勘定元帳 | 科目・摘要・金額が読め、残高を照合できるか |
| 決算資料 | 試算表・決算書と作成時の設定情報 | 保存する版と、対象期間とを識別できるか |
| 請求書等の証憑 | 添付ファイル本体と取引との対応情報 | リンク先だけではなく、本体が開けるのか |
| 訂正・削除等の記録 | 出力できる履歴と利用者・権限の記録 | 必要な記録の取得範囲と出力できない部分 |
| 移行用データ | 移行先に取り込める形式のデータ | 形式の互換性と移行先の取込機能、残高の一致 |
移行先に仕訳を取り込めても、添付書類や操作履歴まで移るとは限りません。移るものと別に保存するものを一覧にします。旧サービスの画面を開けない状態でも必要な資料を確認できるか試します。
取得後は、返却済みデータが事業者側でいつ削除されるか、残存するデータが再利用されないかも契約で確認します。銀行等の連携や外部ユーザーを解除し、会社側の保管担当者へ引き継ぐところまでを利用終了の作業に含めます。
電子帳簿保存法への対応は別に確認する
クラウドの契約を結んだだけで、電子保存の要件を満たすわけではありません。会計データのバックアップ、税法上の帳簿保存、受け取った請求書データの保存は、対象と目的を分けて確認します。
電子保存の区分は電子帳簿保存法4条と電子帳簿保存法7条で確認できます。ここでは細かな適用要件をまとめず、対象資料に応じた確認先を示します。
| 保存する対象 | 会計ソフトで作った帳簿・書類 | 紙で受け取った請求書・領収書 | メールやWebで授受した取引データ |
|---|---|---|---|
| 確認する制度・運用 | 作成方法、電子帳簿等保存における要件 | 紙の保存を続けるか、要件を満たすスキャナ保存にするか | 電子取引データの保存方法 |
| 詳しい確認先 | 電子帳簿保存法の全体像 | スキャナ保存と紙を捨てる条件 | 電子取引の検索要件 |
国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】では、クラウドでも保存場所で画面・書面へ所定の状態で速やかに出力できることを説明しています。国内サーバーかどうかだけで保存場所の要件は決まりません。
解約時にデータを外部媒体へ移す場合も、媒体が変われば要件がなくなるわけではありません。元の電磁的記録との同一性、保存すべき期間、表示・出力等の適用要件を確かめて保存方法を決めます。必要な要件を判断できない場合は、契約終了前に税務署や税理士へ確認します。
電子取引データの一覧を作る場合は、電帳法の索引簿テンプレートも確認できます。索引簿と、証憑データ本体の保管先を対応づけて管理します。
電子取引データを整理する索引簿テンプレートを見る- 自社の経理作業に合う機能・利用環境・契約条件を確認する。
- 権限・認証・履歴を管理し、バックアップの取得と復元を試す。
- 障害時の未処理記録と復旧後の照合方法を決める。
- 解約前に過年度の帳簿・証憑を確保し、保存要件も別に確認する。
よくある質問
パソコンに入れる会計ソフトとは何が違いますか?
クラウド会計は、インターネット経由でサービス側に保管した会計データを使う方式です。端末に入れて使う形のサービスもあるため、名称だけで判断せず、データの保管先、接続が必要な操作、対応端末を確認します。
クラウド会計ならセキュリティ対策を任せられますか?
事業者に任せる範囲と、会社が行う対策を分けます。会社側でも利用者の範囲と権限、パスワード等の認証、データの控えを管理し、異動・退職時にはアクセスを見直します。
自動バックアップがあれば、会社で控えを取らなくても大丈夫ですか?
自動バックアップの対象と復元条件を確認してから判断します。誤削除したデータの個別復元に応じられるか、必要な時点に戻せるか、会社が重要情報を手元に確保できるかを確認します。
解約前に何を保存すればよいですか?
過年度を含む帳簿・決算資料・証憑データと、必要な履歴や設定を確認します。出力形式、解約後の閲覧条件、移行先で使える範囲を確かめ、税法上の保存要件に沿って保管できる状態を用意してから解約します。
クラウド会計を契約すれば電子帳簿保存法に対応できますか?
契約しただけでは判断できません。帳簿・書類の作成方法や受領方法ごとに、使う機能と会社の保存手順が要件を満たすかを確認します。帳簿を出力できることと、請求書等の電子取引データを適切に保存できることも分けて確かめます。
出典
- IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」(2026年6月版)。役割分担、サービスの選択、権限・認証、バックアップ、利用終了、データ所在地。
- 中小企業基盤整備機構「クラウド会計サービスの選び方」。仕組み・明細連携・データ共有の説明を参照。
- e-Gov法令検索「電子帳簿保存法4条」、同法7条。
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】」(令和8年7月)。外部記憶媒体への保存とクラウドの保存場所。
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)。
確認表と運用手順は、公的資料の確認事項を会社の経理向けに具体化した例です。個別サービスの機能や契約条件は提供事業者に確認してください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務相談には応じられません。実際の税務上の判断は税務署または税理士にご確認ください。