電子帳簿保存法のスキャナ保存|要件と紙を捨ててよい条件【令和8年】
結論から言います。スキャナ保存は義務ではありません。紙で受け取った請求書や領収書は、紙のまま保存して構いません。それでもスキャナ保存を選ぶ理由はひとつだけで、要件を満たし、データと紙が同等であることを確かめたうえでなら、紙の原本を捨てられることです。保管場所と探す手間がなくなるかわりに、要件を満たす手間を引き受ける、という交換です。
そして、この制度でいちばん多く読み違えられるのがここです。要件を満たしていない状態でスキャンして紙を捨てると、紙の保存義務を果たしていない扱いになります。データは残っているのに「書類を保存していない」と判定される —— これが、スキャナ保存だけが持つ固有のリスクです。
この記事はスキャナ保存(法4条3項)の要件と、紙を捨ててよい条件だけを扱います。義務である電子取引データ保存の全体像(何が義務か・猶予措置・罰則)は 電子帳簿保存法をわかりやすく、検索要件の具体的な満たし方は 電子帳簿保存法の検索要件 をご覧ください。
スキャナ保存は任意。義務の「電子取引」と混ぜない
電子帳簿保存法には3つの区分があり、義務なのは「電子取引データ保存」だけです。スキャナ保存が任意であることは、条文の述語にそのまま出ています。
前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。以下この項において同じ。)の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。
電子帳簿保存法4条3項の前段です。「代えることができる」=やってもよい、という書き方で、義務である7条の「保存しなければならない」とは述語が違います。
メールやWebでデータとして受け取った請求書・領収書は電子取引で、こちらは義務です。そして電子取引のデータを印刷した紙をスキャナ保存することは認められません(一問一答【スキャナ保存関係】問65)。他者から受け取ったデータは、データのまま残すのが原則です(間に合わない場合の猶予措置は 電子帳簿保存法をわかりやすく にあります)。紙でもらったものだけがスキャナ保存の話です。
なお、スキャナ保存に税務署への事前の承認や届出は要りません(承認制度は令和3年度の税制改正で廃止され、令和4年1月1日以後に保存を行う書類から不要になりました)。要件を満たした状態で始めれば、それで始まっています。ただし後述する過去分重要書類だけは、例外的に届出書の提出が必要です。
対象になる書類・ならない書類
対象は国税関係書類のうち、施行規則2条4項に挙げられた書類を除く全てです(一問一答 問2)。除かれるのは決算関係の書類で、具体的には次のとおりです。
| 区分 | 具体例 | スキャナ保存 |
|---|---|---|
| 帳簿 | 仕訳帳、総勘定元帳、その他の帳簿 | 対象外 |
| 計算・整理・決算関係書類 | 棚卸表、貸借対照表、損益計算書など | 対象外 |
| 重要書類(下記の一般書類以外) | 契約書、領収書、預り証、借用証書、預金通帳、小切手、約束手形、請求書、納品書、送り状など | 対象 |
| 一般書類(資金や物の流れに直結・連動しない書類) | 見積書、注文書、定型的約款のある契約の申込書、検収書、自己が作成した納品書の写しなど | 対象(要件が緩い) |
帳簿が対象外であることには理由があります。法4条3項の対象は「国税関係書類」だけで、法2条2号は国税関係帳簿と国税関係書類を別の概念として定義しているためです。手書きの伝票を後からスキャンして紙を捨てる運用に条文上の根拠がないのは、この構造によります(出金伝票の書き方で条文を並べて確かめています)。
一般書類は、平成17年国税庁告示第4号で列挙されたものだけです。一問一答 問47が挙げている例はこの5類型です。
- 保険契約申込書・電話加入契約申込書・クレジットカード発行申込書のように、別途定型的な約款があらかじめ定められている契約申込書
- 口座振替依頼書
- 棚卸資産を購入した者が作成する検収書・商品受取書
- 注文書・見積書およびそれらの写し
- 自己が作成した納品書の写し
ここで間違えやすいのが納品書です。相手から受け取った納品書は重要書類、自分が作って控えとして持っている納品書の写しは一般書類で、扱いが逆になります。
満たすべき要件(区分別の一覧)
要件は施行規則2条6項に並んでおり、書類の区分によって必要なものが変わります。国税庁の一問一答 問10が示す3区分の表を、条文の番号つきで整理します。
| 要件 | 根拠 | 重要書類 | 一般書類 | 過去分 重要書類 |
|---|---|---|---|---|
| 入力期間の制限(速やか/業務サイクル後速やかに入力) | 規2⑥一イ・ロ | 要 | — | — |
| 解像度 200dpi 以上(25.4mm当たり200ドット以上)で読み取り | 規2⑥二イ(1) | 要 | 要 | 要 |
| カラー画像(赤・緑・青それぞれ256階調=約1,677万色以上)で読み取り | 規2⑥二イ(2) | 要 | グレースケール可 (白色から黒色までが256階調以上) | 要 |
| タイムスタンプの付与 | 規2⑥二ロ | 要(代替可) | 要(代替可) | 要(代替可) |
| ヴァージョン管理(訂正・削除の事実と内容を確認できる、または訂正・削除ができない) | 規2⑥二ハ | 要 | 要 | 要 |
| 帳簿との相互関連性の確保 | 規2⑥三 | 要 | 不要 | 要 |
| 見読可能装置の備付け(カラーディスプレイとカラープリンタ・4ポイント文字の認識) | 規2⑥四 | 要 | カラー不要 | 要 |
| 整然・明瞭な出力(拡大縮小して出力できること) | 規2⑥四イ〜ニ | 要 | 要 | 要 |
| システムの概要書等の備付け | 規2⑥六 | 要 | 要 | 要 |
| 検索機能の確保 | 規2⑥五 | 要 | 要 | 要 |
| 事務手続を明らかにした書類の備付け・所轄税務署長等への適用届出書 | 規2⑦・⑨ | — | 書類の備付け | 両方 |
この表から読み取ってほしいのは3点です。
- 一般書類はグレースケールでよく、帳簿との相互関連性も入力期限も要らない(規則2条7項が6項1号・3号を外し、階調とディスプレイの読替えをしています)。ただしこの緩和には条件があり、電磁的記録の作成・保存に関する事務の手続を明らかにした書類(責任者が定められているもの)の備付けが要ります。見積書・注文書のように一般書類にあたるものは、満たす要件がいちばん少なくなります。
- タイムスタンプは必須ではありませんが、代替には条件があります。規則2条6項2号の柱書のかっこ書きが、入力期間内に入力したことを確認できる場合はタイムスタンプ(ロ)を除く、と書いています。ただし国税庁は、訂正削除履歴の残る(訂正削除できない)システムに保存することだけではタイムスタンプに代えられず、そのシステムが時刻証明機能を備え、入力期限内に入力したことを確認できる場合に限るとしています(一問一答 問31)。しかも自社システムでは原則として満たせません —— 時刻証明機能を他社へ提供しているベンダー企業を除き、保存時刻の非改ざん性を客観的に担保できないためです(問32)。
- 相互関連性は令和6年1月1日以後の保存分から重要書類だけになりました(令和5年度の税制改正)。伝票番号などで、帳簿の記録とスキャンデータを相互にたどれるようにしておく、という要件です。
一問一答の要件表は「14インチ以上のカラーディスプレイ」と要約していますが、規則2条6項4号の条文は「映像面の最大径が三十五センチメートル以上のカラーディスプレイ及びカラープリンタ」です。14インチは約35.6cmなので、13.8インチ(約35.05cm)のディスプレイは条文を満たしますが「14インチ以上」には収まりません。手元の機器がぎりぎりのときは、インチ表記ではなく対角の実寸で確かめてください。
スキャナは専用機である必要はありません。一問一答 問5は「スキャナ」を書面(紙)の国税関係書類を電磁的記録に変換する入力装置と説明し、スマートフォンやデジタルカメラもこの入力装置に該当すれば「スキャナ」に含まれるとしています(取扱通達4-16)。私物の機器を使うことにも法令上の制約はありません(問6)。解像度の判定は書類の大きさと画素数で行い、A4サイズ(縦297mm×横210mm)なら縦2,338画素・横1,654画素、総画素で約387万画素以上が必要です(問26)。また、検索機能は専用システムがなくても一覧表とファイル名を対応させる索引簿方式で満たせます(一問一答 問46)。ただしヴァージョン管理などの他の要件は別に満たす必要があります。
無料ダウンロード:電子帳簿保存法の索引簿テンプレート(CSV・記入例つき) 国税庁の索引簿サンプルに、保存ファイル名・書類種別・書類番号の列を足した実務向けテンプレート。スキャナ保存の検索機能にも、電子取引データの検索要件にも同じ索引簿を使えます(一問一答 問46)。UTF-8 BOM付きなのでExcelで文字化けしません。登録不要・無料。入力期限は最長「2か月とおおむね7営業日」
重要書類でいちばん外しやすいのが入力期限です。方法は2つあり、どちらを選んでもよく、課税期間の途中で変更することもできます(一問一答 問25)。
| 方式 | 根拠 | 期限 | 条件 |
|---|---|---|---|
| 速やかに入力 | 規2⑥一イ | 受領・作成後 おおむね7営業日以内 | なし |
| 業務サイクル後速やかに入力 | 規2⑥一ロ | 業務サイクル(最長2か月)経過後 おおむね7営業日以内 | 各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る |
| 適時に入力 | 規2⑦ | 期限なし | 一般書類のみ。事務手続を明らかにした書類の備付けが必要 |
「おおむね7営業日」は条文の言葉ではなく、取扱通達4-17の取扱いです(一問一答 問22・問23)。7営業日を超えても、超えられない特別な事由があり、その事由が解消した後直ちに入力したなら「速やかに」入力したものとして扱われます。ただし機器のメンテナンスを怠って故障したような、明らかに自分の責めに帰すべき事由のときはこの取扱いはありません(問22)。
「業務サイクル」は自社が採用している処理サイクルの期間で、2週間サイクルなら「2週間とおおむね7営業日」です。最長2か月まで通常の期間として扱われる(取扱通達4-18)ので、月次でまとめてスキャンする運用もこの範囲に入ります。
「2か月」は暦の上での2か月です。一問一答 問23が挙げている例では、4月21日に受領した書類の業務サイクルの最長は6月20日で、そのおおむね7営業日後までに入力すればよいことになります。
ここで言う「入力」は、スキャンして終わりではありません。入力期間内に、タイムスタンプが付された状態か、訂正・削除の履歴等を確認できるシステム(訂正・削除ができないシステムを含む)に格納した状態にまでしておく必要があります(一問一答 問21)。
紙の原本を捨ててよいのはいつか
令和4年1月1日以後に保存を行う書類については、最低限の同等確認を行った後であれば、即時に廃棄して差し支えありません(一問一答 問3)。定期的な検査を求めていた適正事務処理要件が令和3年度の税制改正で廃止されたためです。
「最低限の同等確認」とは、電磁的記録の記録事項と書面の記載事項とを比較して同等であることを確認することで、折れ曲がりなどがないかの確認を含みます。スキャンしたら画像を開いて読めることを確かめる、という作業です。
なお、スキャンミスで読み直しが必要になり、その時点で入力期限を過ぎてしまった場合については、一問一答 問30が個別に手順を示しています(問3の例外はこのケースを除いています)。
印紙税の納税義務は課税文書を作成したときに成立するので、収入印紙を貼付した後にスキャンして同等確認を行えば、印紙が貼られた紙を即時に廃棄しても差し支えありません。ただし、印紙税の過誤納還付の申請には、過誤納となった事実を証するため必要な文書(原本)の提示が必要です。スキャナデータや、それを出力した文書では還付を受けられません(一問一答 問3の解説)。印紙を貼り間違えた可能性がある文書は、紙を廃棄した時点で過誤納還付の道が閉じます。印紙税額そのものは 印紙税額の計算 で確かめられます。
要件を満たさなかったとき、何が起きるか
ここがスキャナ保存の本当のリスクです。要件を満たさずに保存されている電磁的記録は、各税法上の保存書類としては取り扱われません(一問一答 問59)。根拠は法8条1項で、「財務省令で定めるところに従って」保存されている電磁的記録を書類とみなす、という書き方になっているためです。
第四条第一項、第二項若しくは第三項前段又は第五条各項のいずれかに規定する財務省令で定めるところに従って備付け及び保存が行われている国税関係帳簿又は保存が行われている国税関係書類に係る電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルムに対する他の国税に関する法律の規定の適用については、当該電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルムを当該国税関係帳簿又は当該国税関係書類とみなす。
結果として、紙の原本も残っていない場合は、次の可能性があると国税庁は明記しています(問59)。
- 消費税の仕入税額控除の否認
- 青色申告の承認の取消し —— ただし、保存義務の不履行の事実と程度のほか、記帳状況・改善可能性等を総合勘案し、真に申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうかを検討した上で判断される、とされています。要件を1つ外したら直ちに取消し、ではありません。
逆に言えば、紙の原本を残してあれば、電磁的記録が要件を満たしていなくてもこの話にはなりません(問59は「紙原本の保存がある場合を除き」と書いています)。つまり、要件を満たせているか確かめるまで紙を残しておけば、この結果にはなりません。
また、要件を満たしていない電磁的記録であっても、その電磁的記録自体の保存義務は消えません。法4条3項の後段が、要件に従って保存が行われていないときも電磁的記録を保存しなければならないと定めているためです(一問一答 問63)。
もう一段あります。スキャナ保存した電磁的記録に関連して隠蔽・仮装が把握されたときは、重加算税が10%加重されます(法8条5項が「百分の十の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする」と定めています)。電磁的記録を削除・改ざんして売上除外や経費の水増しをした場合のほか、保存された電磁的記録の内容が取引実態を表していない(架空取引等)場合、さらに書類の作成・受領からスキャナ保存までの紙段階での不正によって隠蔽・仮装された事実が記録された場合も対象です(一問一答 問62)。加重措置の全体像は 電子帳簿保存法をわかりやすく の罰則の節で扱っています。
過去にもらった紙は「過去分重要書類」で片付ける
スキャナ保存を始めると、「棚に積んである過去の請求書はどうするのか」という話が出てきます。ここには専用の制度があります。
スキャナ保存を適用している保存義務者が、スキャナ保存に切り替えた日(基準日)より前に作成・受領した重要書類を「過去分重要書類」といいます。次の2つをそろえれば、入力期間の制限なく、適時にスキャンできます(規則2条9項)。
- 所轄税務署長等への適用届出書の提出(あらかじめ、対象となる書類の種類と、届出者の氏名・名称、住所、法人番号、基準日などを記載して提出します。同じ種類の書類について過去に届出書を出していない場合に限られます)
- 電磁的記録の作成・保存に関する事務の手続を明らかにした書類の備付け(その事務の責任者が定められているものに限ります)
届出を出せば数か月かけて作業してもよく(一問一答 問54)、タイムスタンプは「スキャナで読み取る際に」付す形に読み替えられます(規則2条9項後段)。カラー・解像度・ヴァージョン管理・相互関連性は通常どおり必要です。
もう要らない要件(古い解説の見分け方)
スキャナ保存は改正が多く、ネット上の解説やPDFが、廃止された要件をそのまま載せていることがあります。実際、「電子帳簿保存法 スキャナ保存」で検索して最上位に出てくる国税庁のページには令和2年6月版の一問一答があり、廃止された承認制度を前提に書かれています。次の語が書いてあったら、その解説は令和3年度改正より前のものです。
| 古い解説に出てくる要件 | 現在 | 廃止された改正 |
|---|---|---|
| 税務署長の承認申請が必要 | 不要 | 令和3年度(令和4年1月1日以後の保存分から) |
| 適正事務処理要件(相互けんせい・定期的な検査・再発防止策の社内規程整備) | 不要 | 令和3年度 |
| 受領者が書類に自署する | 不要 | 令和3年度 |
| 受領者が読み取る場合、3日以内にタイムスタンプを付す | 入力期間と同じ(最長約2か月) | 令和3年度 |
| 解像度・階調・大きさに関する情報を保存する | 不要(読み取り自体の解像度・階調の要件は残る) | 令和5年度(令和6年1月1日以後の保存分から) |
| 入力者等情報の確認 | 不要 | 令和5年度 |
| 帳簿との相互関連性は全ての書類に必要 | 重要書類に限定 | 令和5年度 |
逆に、残っているのは「読み取り時の解像度200dpi以上」と「カラー256階調以上」です。保存しなくてよくなったのは解像度や階調の“情報”で、読み取りの基準そのものは変わっていません(一問一答 問27)。ここを混同すると、要件を外したまま紙を捨てることになります。
使っているソフトが要件を満たしているか分からないときは、取扱説明書で確かめるほか、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が認証したソフトウェア等であれば、スキャナ保存の機能要件を満たしているといえますと国税庁が明記しています(一問一答 問60・問61)。認証済みのソフトはJIIMAのサイトで確認できます。
- スキャナ保存は任意(法4条3項「代えることができる」)。紙は紙のまま保存してよい。義務は電子取引データ保存だけ
- 対象は国税関係書類のうち決算関係書類を除くもの。帳簿と売上伝票などの伝票類は対象にならない
- 要件は区分で変わる。一般書類(見積書・注文書・自己作成の納品書の写しなど)はグレースケール可・相互関連性も入力期限も不要(事務の手続を明らかにした書類の備付けが条件)
- タイムスタンプは必須ではないが、代替できるのは時刻証明機能を備えたシステムに入力期限内に格納した場合だけ。自社システムでは原則できない
- 入力期限は最長で受領から暦の2か月とおおむね7営業日。2か月方式を使うには事務処理規程が必要
- 紙は最低限の同等確認の後に即時廃棄してよい。ただし入力期間を過ぎた書類は紙も保存、印紙の過誤納還付には原本が必要
- 要件を満たさない電磁的記録は書類とみなされない(法8条1項)。紙原本も無いと仕入税額控除の否認・青色取消しの可能性
- 過去の紙は過去分重要書類として適用届出書+事務手続書類の備付けで適時入力できる
よくある質問
スキャナ保存を始めるのに、税務署への届出や承認は必要ですか?
通常は不要です。承認制度は令和3年度の税制改正で廃止され、令和4年1月1日以後に保存を行う国税関係書類からは、要件を満たして保存を始めればそれで足ります。例外は過去分重要書類(スキャナ保存に切り替えた日より前に作成・受領した重要書類)で、こちらだけは所轄税務署長等へ適用届出書を提出する必要があります(施行規則2条9項)。同じ種類の書類について過去に届出書を出している場合は、この方法は使えません。
スマートフォンで撮影した領収書でも要件を満たしますか?
満たせます。「スキャナ」とは書面(紙)の国税関係書類を電磁的記録に変換する入力装置をいい、スマートフォンやデジタルカメラも該当すれば含まれます(一問一答 問5・取扱通達4-16)。必要なのは25.4mm当たり200ドット以上の解像度と赤・緑・青それぞれ256階調以上で読み取れることで、A4サイズなら縦2,338画素・横1,654画素(総画素で約387万画素以上)が必要です(問26)。なお、スマートフォンの画像は解像度が72dpiと表示されることがありますが、これは規格上「解像度が不明のときは72dpiを記録する」とされているためで、実際の解像度を示すものではありません(問26)。私物の機器を使うことにも法令上の制約はありません(問6)。
タイムスタンプを買わずにスキャナ保存できますか?
条件つきでできます。施行規則2条6項2号の柱書が、入力期間内に記録事項を入力したことを確認できる場合はタイムスタンプの要件を除く、と定めています。ただし国税庁は「訂正削除履歴の残る(あるいは訂正削除できない)システムに保存することのみをもって、タイムスタンプの付与要件に代えることはできません」とし、そのシステムが時刻証明機能を備え、入力期限内に入力したことを確認できる場合に限るとしています(一問一答 問31)。例として挙がっているのは、NTPサーバと同期したSaaS型のクラウドサービスのように、保存された時刻の記録とその時刻が変更されていないことを客観的に確認できるものです。自社システムでは原則として満たせません(時刻証明機能を他社へ提供しているベンダー企業だけが例外。問32)。市販のヴァージョン管理ソフトを入れれば足りるわけでもありません(問33)。
スキャンした後、紙の請求書はすぐ捨ててよいのですか?
最低限の同等確認(データと紙を比べて同等であること、折れ曲がりなどがないことの確認)を行った後であれば、即時に廃棄して差し支えありません(一問一答 問3)。ただし入力期間を経過してしまった書類は、データと合わせて紙も保存する必要があります(問3の(※)・問24)。また収入印紙を貼った文書は、廃棄しても構いませんが、印紙税の過誤納還付を申請するには原本の提示が必要なので、還付を受ける可能性がある文書は、紙を廃棄するとその道が閉じます。
見積書や注文書は、過去の分もまとめてスキャンできますか?
できます。見積書・注文書・定型的約款のある契約申込書・口座振替依頼書・検収書・自己が作成した納品書の写しは、平成17年国税庁告示第4号の一般書類にあたり、施行規則2条7項で入力期間の制限がありません。そのため、過去に受領・作成したものでも他の要件を満たせばスキャナ保存できます(一問一答 問48)。届出書も要りません。相手から受け取った納品書は重要書類なので、こちらは過去分重要書類の手続きが必要です。
スキャナ保存を途中でやめることはできますか?
できます。ただし、すでに紙を廃棄している書類については、その書類の保存期間が満了するまで、スキャナ保存の要件に従って電磁的記録を保存し続けることになります(一問一答 問63)。紙を残している書類は、その紙を保存すれば足ります。要件を満たして電磁的記録を保存できない場合でも、法4条3項後段によって電磁的記録の保存義務自体は残り、その電磁的記録は各税法上の国税関係書類とはみなされないため、仕入税額控除の否認や青色申告の承認取消しの対象になる可能性があります。
メールで届いたPDFの請求書を印刷して、その紙をスキャナ保存してもよいですか?
認められません(一問一答 問65)。他者から受け取った電子データを書面に出力して保存することは電子帳簿保存法に基づくものではないため、その出力書面はスキャナ保存の対象になりません。メールやWebで受け取ったデータは電子取引として、データのまま保存する義務があります。社内の便宜のために印刷することや、印刷物をスキャンすること自体が禁止されるわけではありませんが、それは保存義務の履行にはなりません。
検索できるようにするために、専用システムが必要ですか?
必要ありません。一覧表を作って個々の保存ファイル名と対応させる索引簿方式は、スキャナ保存にも使えます(一問一答 問46)。電子取引データ用の索引簿や保存システムと兼用することもできます。ただしスキャナ保存の場合は、ヴァージョン管理など他の要件を別に満たす必要があります。具体的な作り方は 電子帳簿保存法の検索要件 をご覧ください。
出典
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和8年7月)── 問1(制度の概要と改正の経緯)、問2(対象書類・区分表・伝票類)、問3(紙の即時廃棄・最低限の同等確認・収入印紙と過誤納還付)、問5・問6(スキャナの意義・私物機器)、問10(要件の一覧表)、問21(入力の意味)、問22(おおむね7営業日)、問23(最長2か月とおおむね7営業日・暦の数え方)、問24(入力期間を経過した場合)、問25(入力方式の途中変更)、問26・問27(解像度)、問30(スキャンミス)、問31〜問33(タイムスタンプの代替・ヴァージョン管理)、問46(索引簿方式)、問47・問48(一般書類)、問53(規程と事務手続書類の違い)、問54(過去分重要書類)、問59(要件を満たさない場合)、問60・問61(JIIMA認証)、問62(重加算税の加重)、問63(取りやめ)、問65(電子取引の出力書面)
- 電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)── 2条2号(国税関係書類の定義)、4条3項(スキャナ保存・後段の保存義務)、8条1項(要件に従って保存された電磁的記録を書類とみなす)
- 電子帳簿保存法施行規則(令和7年4月1日施行の現行版)── 2条4項(対象外の決算関係書類)、2条6項1号イ・ロ(入力期間と規程)、2条6項2号イ(1)(2)(解像度・階調)、同号ロ(タイムスタンプ)、同号ハ(ヴァージョン管理)、2条6項3号(相互関連性)、2条6項4号(映像面の最大径35cm以上のカラーディスプレイ・4ポイント文字)、2条6項5号(検索機能)、2条6項6号(システム概要書等)、2条7項(一般書類の読替え)、2条9項(過去分重要書類と適用届出書)
- 平成17年国税庁告示第4号(一般書類を定める告示)
- 電子帳簿保存法取扱通達 4-17(おおむね7営業日)・4-18(最長2か月の業務サイクル)・8-22(重加算税の加重措置の範囲)
- 電子帳簿保存法施行規則 2条8項(災害その他やむを得ない事情がある場合の宥恕)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。