タイムスタンプとは?電子帳簿保存法の付与期限・不要になる条件
タイムスタンプは、電子データがある時刻に存在し、その時刻から改ざんされていないことを証明する仕組みです。電子帳簿保存法では、タイムスタンプを使わずに対応できる方法もあります。
省略できる条件は、紙を読み取るスキャナ保存と、メールやWebでデータをやりとりする電子取引で異なります。まず下の表で、保存するデータと採用する方法を照らし合わせます。
タイムスタンプが必要かを判定する
電子取引では、訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、備え付けて運用する方法も選べます。この規程だけでスキャナ保存のタイムスタンプを省略することはできません。
以下は、電子帳簿保存法の通常の保存要件に従う場合の判定表です。タイムスタンプの要否に絞っており、見読や、スキャナ保存の訂正削除履歴等の要件は別に満たします。猶予措置の対象となる電子取引は制度全体の解説を参照してください。
| 区分・方法 | 自社による付与 | 確認する条件 |
|---|---|---|
| スキャナ保存:付与方式 | 行う | 書類に応じた時期に付与し、付与後の訂正削除履歴等も確保 |
| スキャナ保存:時刻証明による代替 | 省略できる | 訂正削除履歴等に加え、保存日時の客観的な証明ができること。入力期限がある書類はその期限内の入力を確認 |
| 電子取引:適格なタイムスタンプ付きで受領 | 再付与は不要 | 受領したデータのタイムスタンプが電帳法の認定・検証要件を満たす |
| 電子取引:授受後に自社で付与 | 行う | 下の期限表に従い、速やかに付与 |
| 電子取引:履歴等のあるシステム | 省略できる | 訂正削除の事実と内容を確認できるか、訂正削除できないシステムで授受・保存 |
| 電子取引:事務処理規程を運用 | 省略できる | 正当な理由のない訂正削除を防ぐ規程を定め、備え付け、規程に沿って運用 |
例えば、メールで受け取った請求書PDFは、電子取引の規程方式で保存する選択肢があります。同じ請求書でも、郵送で受け取った紙をスキャンするならスキャナ保存の条件で判断します。
スキャナ保存の代替システムは、履歴が残るだけでは足りず、時刻証明機能を備えて保存日時の正確性を客観的に担保できる必要があります。スキャナ保存の代替要件は、時刻証明機能を他社へ提供しているベンダー企業を除き、自社システムでは満たせないとされています。
根拠:国税庁一問一答【スキャナ保存関係】問31・32、【電子取引関係】問30。紙を保存するか、スキャナ保存へ切り替えるかの判断はスキャナ保存の解説で確認できます。
何を証明するのか
証明するのは、対象データの存在時刻と、その時刻以後に内容が変わっていないことです。ファイルの更新日時や、PDF上に打ち込んだ日付と同じものではありません。
例えば、金額を誤って入力した請求書にタイムスタンプを付けても、その金額が正しいと保証されるわけではありません。付与後に金額を書き換えれば、付与時のデータとは内容が変わります。取引内容の確認と、データの非改変の検証は別の作業です。
機能の説明:総務省「タイムスタンプについて」、国税庁一問一答【スキャナ保存関係】問28。
付与期限は方式と書類で変わる
過去分重要書類を除く重要書類のスキャナ保存では、書類の作成・受領から付与期限を数えます。電子取引で授受後に付与する方式は、データの授受から数えます。
以下は現在の通常運用でタイムスタンプを付与する方式の期限です。過去分重要書類の届出による保存は、この表の対象外です。業務サイクル方式は、作成・受領又は授受から付与までの各事務の処理に関する規程を定めた場合に限ります。スキャナ保存・電子取引とも実際の業務サイクルを使い、最長の2か月は暦で数えます。「おおむね7営業日」は休日等をまたぐ処理を踏まえた扱いで、暦の同じ日数ではありません。例外は表の下の注にまとめます。
| 対象・方式 | 付与を終える時期 |
|---|---|
| 重要書類のスキャナ保存:速やかに入力 | 書類の作成・受領後、おおむね7営業日以内 |
| 重要書類のスキャナ保存:業務サイクル後に入力 | 業務サイクル後おおむね7営業日以内。作成・受領から最長2か月とおおむね7営業日以内 |
| 電子取引:授受後速やかに自社付与 | データの授受後、おおむね7営業日以内 |
| 電子取引:業務サイクル後に自社付与 | 業務サイクル後おおむね7営業日以内。授受から最長2か月とおおむね7営業日以内 |
| スキャナ保存:告示対象の一般書類 | 通常の入力期間内に付与するか、その期間を過ぎたものは正しく読み取られていることを確認した都度付与 |
スキャナ保存・電子取引の主な例外:保存義務者の責めに帰すべき事由を除き、通常期間内に処理できない特別な事由がある場合は、その解消後直ちに入力・付与する取扱いがあります。メンテナンス放置による故障などは、保存義務者の責めに帰すべき事由に当たります。
見積書・注文書などの告示対象の一般書類は、責任者を定めた事務手続書類を備え付けることで、入力期間の制限なく適時入力できます。受領した領収書を一般書類として扱うことはできません。過去分重要書類の届出による処理は、過去の紙を取り込む手続きで確認します。
単なる失念でスキャナ保存の入力期限を過ぎた場合は、その他の要件に沿って入力し、紙も保存します。当初は期限内に付与したものの、後から同一性の明らかなスキャンミスが分かった場合には、国税庁一問一答の問30に別の再読取り条件があります。
期限の根拠:国税庁一問一答【スキャナ保存関係】問21〜24・問47〜49、一問一答【電子取引関係】問61・62。
電帳法で使うタイムスタンプの要件
現在の運用で付与するタイムスタンプは、総務大臣が認定する時刻認証業務に係るものを使います。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 認定の対象 | 利用する時刻認証業務が総務大臣の認定対象か |
| 保存期間を通じた確認 | 記録事項が変わっていないことを、発行事業者に確認する方法その他の方法で確認できるか |
| 期間指定の一括検証 | 課税期間中の任意の期間を指定し、その期間に付したタイムスタンプを一括検証できるか |
「一括付与」と「一括検証」は別です。スキャナ保存で複数ファイルへまとめて付与する場合も、個々の入力単位ごとに検証できる方式でなければなりません。単純にファイルをひとまとめにする運用と混同せず、付与・検証の仕様を確認します。
認定状況は総務省の時刻認証業務の一覧で確認できます。電帳法で求める検証要件は、国税庁一問一答【スキャナ保存関係】問28・29と【電子取引関係】問60に示されています。
付与から検証・保存までの実務
運用を決めるときは、付与する操作だけでなく、後で検証できることまで確認します。次の確認表は、担当者を引き継ぐ際にも使えます。
| 作業 | 確認すること |
|---|---|
| 対象を分ける | スキャナ保存か電子取引か、付与方式か代替方式かを決める |
| 期限を管理する | 作成・受領日又は授受日と、自社の処理方式から期限を管理する |
| 対象データに付与する | 付与対象のファイルとタイムスタンプの対応、処理の成功を確認する |
| 検証する | 対象データを開けることに加え、非改変の確認と課税期間中の任意の期間での一括検証を試す |
| 保存を続ける | 対象データ、対応するタイムスタンプ、検証に必要な情報・手段を保存期間中利用できる状態にする |
例えば、アップロードを受け付けた表示と、タイムスタンプの付与完了が別の画面に出るサービスなら、受付済みだけを完了として扱わない運用にします。付与エラーが残っていないか、検証画面で対象ファイルを指定できるかを確認する項目を、社内の作業手順に含めます。
保存年数をタイムスタンプの有効期間に合わせて決めることはできません。書類・取引データに必要な保存期間を先に確認し、その期間を通じて検証できる契約・仕組みかを確かめます。
タイムスタンプを付けても、検索機能が自動的に整うわけではありません。検索要件が必要な保存データには、ファイルと対応した索引を用意する方法があります。作り方は検索要件の解説に譲ります。
電子帳簿保存法の索引簿テンプレートを使う索引簿は検索のための一覧表です。タイムスタンプの付与・検証機能はありません。
解約・システム移行前に確認すること
スキャナ保存で時刻証明による代替を使っていた場合は、画像ファイルだけを取り出しても移行の確認は終わりません。保存した時刻と、その後に改変されていないことの証明に必要な情報も含め、移行前後で改変されていないことを確保します。
スキャナ保存の時刻証明による代替方式からの移行では、移行データへのタイムスタンプ付与などに対応し、データ内容・構造をまとめた仕様書等も用意します。移行先で新しく付与した時刻だけでは、旧システムへ入力した時刻の証明にはなりません。
電子取引データだけを移行する場合は、タイムスタンプを引き継げなくても、移行時の訂正削除防止に関する事務処理規程を定め、備え付けて運用する対応が認められます。移行期間中も改ざん防止措置が必要であり、スキャナ保存データも併せて移行する場合に、規程だけの方法を流用することはできません。
解約前の実務確認として、データと証明情報の書き出し方法、移行先での検証方法、旧サービスの利用終了後にも必要な確認ができるかを洗い出します。移行手順を固める前に旧サービス側の保存データを削除しない運用にします。
根拠:国税庁一問一答【スキャナ保存関係】問64、【電子取引関係】問102。
よくある質問
電子帳簿保存法ではタイムスタンプが必須ですか?
必須とは限りません。電子取引は事務処理規程の制定・備付け・運用などの方式も選べます。スキャナ保存は訂正削除履歴等に加えて保存日時を客観的に証明でき、入力期限がある書類では期限内の入力を確認できる場合に代替できます。
受け取ったPDFに日付が書いてあれば付与済みですか?
日付の表示だけでは、電帳法の要件を満たすタイムスタンプが付いていると判断できません。対象データのタイムスタンプを検証できるか、認定・保存期間全体の確認・課税期間中の任意の期間を指定した一括検証の要件に対応しているかを確認します。
相手がタイムスタンプを付けた請求書にも、自社で付け直しますか?
電子取引で、電帳法の認定・検証要件を満たすタイムスタンプが付いたデータを受領する方式なら、受領者が改めて付与する必要はありません。電子取引データ自体の保存は必要です。
タイムスタンプがあれば、スキャナ保存の履歴管理は不要ですか?
不要にはなりません。スキャナ保存では、タイムスタンプとは別に、訂正削除の事実と内容を確認できるか、訂正削除ができないシステムの要件も満たす必要があります。
出典
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和8年7月):入力・付与時期、認定・検証、代替要件、一般書類、移行の取扱い。
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月):改ざん防止措置の選択、付与時期、認定・検証、移行の取扱い。
- e-Gov法令検索「電子帳簿保存法」第4条第3項・第7条。
- e-Gov法令検索「電子帳簿保存法施行規則」第2条・第4条。
- 総務省「タイムスタンプについて」:機能と認定時刻認証業務の一覧。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。