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デジタル給与とは|導入手順・労使協定・同意書

デジタル給与は、本人の同意を得て、厚生労働大臣が指定した資金移動業者の口座へ賃金を支払う方法です。普段使っている決済アプリなら、どの口座でも給与を受け取れるわけではありません。

会社の導入には、事業場の労使協定と、説明を受けた従業員それぞれの同意が必要です。会社の導入担当向けに、準備する書類と支払前の確認事項をまとめます。

使える口座と、導入前の確認表

入口は、厚生労働省の指定資金移動業者一覧です。会社名だけでなく、サービス名称、労働者指定口座の受入上限額、同意取得時に必要な情報まで確認します。

以下は、会社が候補サービスの資料と従業員の申出を照らすための確認表です。指定状況や口座の条件は変わるため、導入時に公式一覧とサービスの案内を確認してください。

確認するもの会社が確かめる内容
厚生労働大臣の指定賃金支払に用いる口座として認められているか
サービスと口座従業員が申し出たサービス・本人名義の口座が対象か
労使協定の範囲対象従業員・賃金・取扱業者が協定に含まれているか
本人の選択説明と個別同意が済み、銀行口座等の選択肢も提示したか
給与事務サービスの利用申請と会社側の送金処理の手順を確認したか

現金化できないポイントや暗号資産による賃金支払いは認められません。また、従業員が希望しないデジタル払いを会社が強制することはできません。会社側にも導入が義務付けられているわけではありません。

法令上の根拠は、労働基準法の賃金支払の規定と、労働基準法施行規則の口座への支払方法の規定です。本記事は、指定資金移動業者口座へ支払う場合の導入実務を扱います。

導入は協定・説明・本人の同意の順に進める

労使協定を結んでも、個々の従業員への説明と同意取得は残ります。厚生労働省の使用者向けの導入手順は、指定業者の確認から賃金支払いの事務処理までを示しています。

会社がデジタル給与を導入する流れ 指定口座とサービスの条件を確認 事業場で労使協定 → 説明 → 個別同意 利用申請・給与事務を整え、支払日に照合
協定と個別同意を分けて準備する。従業員のサービス利用申請も別途確認する。

労使協定で決める事項

事業場に過半数の労働者で組織する労働組合があればその組合と、なければ労働者の過半数を代表する者と協定を結びます。協定は書面又は電磁的記録で、署名など双方の合意が明らかになる方法により締結します。

協定の記載事項記載を確認する内容
対象となる労働者の範囲対象部署・雇用区分など、協定が適用される範囲
対象となる賃金の範囲と金額定期賃金・賞与など、どの賃金をいくら対象にするか
取扱指定資金移動業者の範囲会社が取り扱う指定業者
実施開始時期いつから取り扱うか

就業規則や給与規程の改定が必要かどうかも確認します。既存規程が銀行振込だけを定めている場合などは、規程と新しい支払実務の整合を確認する作業が必要です。

銀行口座等の選択肢も提示する

デジタル払いを提示するときは、預貯金口座又は要件を満たす証券総合口座への支払いも選べるようにします。現金かデジタル払いか、という選択肢だけでは足りません。

証券総合口座を扱う場合は、MRFで運用される口座かを信託約款・投資約款の写しで確認し、払込みを続ける期間中、その写しを保管する扱いです。詳しくは厚生労働省「賃金の口座振込み等について」を参照してください。

同意書の記入項目を照合する

個別の同意は書面又は電磁的記録で取得します。本人が何に同意したか分かるよう、希望する賃金と金額、支払先、開始希望時期、代替口座を記録します。厚生労働省の同意書の参考例には、同意しない場合の選択欄もあります。

記入欄会社側の確認例
賃金の範囲と金額本人の希望額が、送金・決済の利用見込み内、口座残高上限以下、設定がある場合の日次払出上限以下かを確認
支払先の情報業者・サービス名、口座番号又はアカウントID、名義人等
開始希望時期本人希望とサービスの申請・会社の給与処理が間に合うか
指定代替口座上限超過分の送金や破綻時の弁済等に使う口座情報

必要な口座情報は指定業者ごとに異なります。普段の決済用IDだけを集めて処理せず、公式一覧が求める情報と照合します。代替口座を業者が直接把握している場合でも、会社が把握するため同意書等に記載する扱いです。

希望額・上限・保証・補償・現金化と長期間利用しない場合の取扱いなど、公式同意書裏面の留意事項を説明した上で同意を得ます。留意事項の説明は指定業者に委託できますが、本人の同意は会社が得る必要があります。従業員がアプリの利用に同意したことを、会社への賃金支払方法の同意と置き換えないようにします。

本人から会社への同意とは別に、指定業者への利用申請が必要です。申請後に会社への届出が必要な場合もあるため、初回支払いまでの手順は利用サービスの案内で確かめます。

手取りを確定してから受取額を配分する

会社の給与事務では、差引支給額を確定した後、本人が同意した希望額と残額に分けて照合すると整理しやすくなります。

以下は、確定済みの差引支給額から、本人が同意した希望額を分ける架空の配分設例です。希望額は送金・決済の利用見込み内で、指定口座の残高上限以下、日次払出上限が設定されている場合はその上限以下とします。税額・保険料の計算例ではありません。

設例の項目金額照合
差引支給額240,000円確定した給与明細の支給額
デジタル払い30,000円本人が同意した希望額
銀行口座等への残額210,000円差引支給額から希望額を引く

実務の確認例は、給与明細の差引支給額と、支払先ごとの送金額の合計を一致させることです。本人の希望額を変更した月や、賞与を支払う月は、定期賃金の設定をそのまま使っていないかも確認します。

口座振込み等の対象者には、所定の賃金支払日に計算書を交付する扱いです。計算書には賃金の種類ごとの金額、控除がある場合は項目ごとの控除額、口座振込み等を行った金額を記載します。

給与の手取りを試算する

計算機は条件を入力した試算です。実際の配分には、給与計算で確定した差引支給額を使います。

残高上限と受取希望額を分けて確認する

制度の残高基準を、そのまま各サービスの受入可能額とは読めません。デジタル給与口座の残高は100万円を超えない措置、又は超えた場合に速やかに100万円以下とする措置が必要です。実際の受入上限は利用サービスの設定を確認します。

本人が設定する希望額は、送金・決済に使う実績や利用見込みの範囲内とし、口座残高上限以下、日次払出上限がある場合はその額以下にします。指定口座は、預金のように使わないお金を貯め続けるためのものではありません。

受入上限を超えた場合は、あらかじめ登録した代替口座へ超過分が送金される仕組みです。この送金には手数料の負担を求められる場合があります。給与からの希望額だけでなく、口座に既にある残高や超過時の条件も説明時に確認します。

現金化・保証・補償の説明を分ける

指定口座の現金化は、ATMや預貯金口座への出金等の手段により1円単位ででき、少なくとも毎月1回は労働者の手数料負担なしで行える仕組みです。出金方法・無料の条件をサービスの案内で確認します。

業者が破綻したときは、預金保険ではなく、保証機関との契約等に基づき指定口座の残高全額が速やかに弁済される仕組みです。不正出金の補償とは分けて説明します。

不正出金は、親族等による払戻し・労働者の虚偽説明等を除き、労働者に過失がなければ損失全額を補償し、過失がある場合も少なくとも個別対応とされます(期限内の通知が要件となる場合があります)。連絡先・通知期限はサービスの案内で確認します。

不正出金の補償で一定期間内の通知を要件とする場合、その期間は損失発生日から少なくとも30日以上確保されます。

給与日・変更・退職時の取扱い

送金データを出しただけで完了にしない

デジタル給与は、所定の賃金支払日の午前10時頃までに送金・決済等に利用でき、同日中に賃金全額を払い出せる状態にする必要があります。送金依頼の締切や申請処理はサービスごとに確認します。

給与日が休日に当たる月は、就業規則・給与規程等の支払日の定めと、サービスの処理日程を照合します。銀行払いとデジタル払いの処理を分ける場合も、それぞれの支払いが所定支払日に間に合うかを確認する運用にします。

本人の受取方法の変更と、指定業者の変更

本人がデジタル払いを選んだ後でも、受取方法を銀行口座等へ変更できます。会社の受付窓口、変更の反映月、既に作成した送金データの扱いを事前に整理しておくと、二重送金や配分漏れの確認に使えます。

業者の指定取消し、指定を辞退しようとする場合、廃止・破産等の届出があった場合は、会社は本人に速やかに別の支払方法を確認します。既に送金指図済みなどの特段の事情がない限り、以後は本人が指定する別の方法で支払う扱いです。

退職月は最終賃金と退職金を区別する

退職時は、最終賃金と退職金について、それぞれの同意範囲と金額を確認します。公式の同意書には定期賃金・賞与・退職金の欄があり、月給の設定から退職金の配分まで決まるわけではありません。

退職金の受取希望額も、送金・決済の利用見込み内で、口座残高上限と、設定がある場合の日次払出上限以下にします。支払予定日までに、本人の希望、指定口座の条件、会社の処理を照らしておきます。

退職した時点で口座残高が失効するとは限りません。賃金用指定口座には、特段の事情がない限り、最後の資金移動から少なくとも10年間、債務履行できる措置が求められます。退職後の口座の利用・停止手続きはサービスの利用条件を確認します。

よくある質問

全従業員の給与をデジタル払いに変えられますか?

会社だけの判断では変えられません。労使協定の締結後、説明を受けた本人の個別同意が必要です。希望しない従業員に強制せず、預貯金口座等で受け取る選択肢も用意します。

給与の一部だけをデジタル払いにできますか?

できます。本人の同意に基づき、一部を指定資金移動業者口座、残りを銀行口座等で受け取れます。希望額は送金・決済の利用見込み内で、口座残高上限と、設定がある場合の日次払出上限以下にします。

労使協定と同意書は同じものですか?

別のものです。労使協定は事業場の対象者・対象賃金と金額・取扱業者・開始時期を定め、同意書では個々の本人の希望額や支払先等を確認します。協定だけで本人の同意を得た扱いにはできません。

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出典

制度・様式は、厚生労働省の賃金のデジタル払いの公表資料と労働基準法施行規則に基づきます。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の事案への助言ではありません。個別の税務・労務相談には応じられません。実際の手続きは所轄の労働基準監督署や社会保険労務士等にご確認ください。

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