源泉分離課税とは:対象所得・税率・申告できない範囲を税額例で確認
源泉分離課税は、対象の所得をほかの所得と分け、源泉徴収だけで所得税の納税が完結する仕組みです。対象の預金利子などを確定申告に加え、所得控除を使って税金を取り戻すことはできません。
「税金が引かれた」と「源泉分離課税」は同じ意味ではありません。源泉徴収ありの特定口座には申告を選べる所得もあります。まず下の対象表で区分を確かめ、次に税引前の収入と税額を明細で照合します。
この記事は日本の居住者個人の課税対象所得を扱います。法人・非居住者の税率、国外払いの利子、非課税制度の適用判定は対象外です。給与・報酬の天引きの仕組みは源泉徴収とはで扱います。
対象所得と対象外の早見表
国内の課税預金利子や、源泉分離課税の条件を満たす金融類似商品の差益などが対象です。「利子」「配当」「保険」という名称だけで決めず、課税方式と契約の区分まで確認します。
居住者個人の源泉分離課税となる主な所得です。課税対象の所得に限り、マル優・財形などの非課税制度は別に確認します。金融類似商品の条件と割引債の発行時課税の条件は、下の各表に分けています。
| 区分 | 対象となる所得 | 間違えやすい境界 |
|---|---|---|
| 利子所得 | 国内の課税預貯金の利子など。総合課税・申告分離課税の対象利子を除く | 平成28年1月1日以後に支払を受けるべき特定公社債等の利子は申告分離課税で、申告不要も選べる |
| 私募の対象配当 | 私募の特定目的信託の社債的受益権の収益分配、私募公社債等運用投資信託の収益分配 | 一般の株式配当や投資信託の分配金をまとめて対象にしない |
| 預貯金の懸賞金等 | 懸賞金付預貯金等の懸賞金等 | 通常の懸賞応募の賞金とは区別する |
| 金融類似商品 | 定期積金の給付補てん金など、次の表の対象収益 | 元本全体に課税する意味ではない |
| 一定の割引債 | 発行時源泉分離課税の対象となる割引債の償還差益 | 償還時に源泉徴収される債券すべてを含めない |
特定公社債等の利子の申告・申告不要を確定申告で選択した後は、修正申告や更正の請求で変更できません。利子の区分と非課税制度は国税庁「利息を受け取ったとき」で確認できます。
同族会社関係の一定の社債利子は総合課税となる区分があります。役員・株主等が関係する社債は上表の単純な預金利子の扱いを当てはめず、上記の国税庁の対象区分を確認してください。
金融類似商品は契約条件を確認する
金融類似商品は、普通の売却益や保険金と取り違えやすい区分です。商品名の印象ではなく、契約書と支払通知の対象収益を照合します。
居住者個人の金融類似商品について、国税庁「金融類似商品と税金」が挙げる対象を整理しています。保険の行は一定の要件を満たす契約の差益に限り、保険金全般を含みません。
| 商品・契約 | 対象収益・条件 |
|---|---|
| 定期積金 | 給付補てん金 |
| 銀行法上の一定の契約 | 銀行法の対象契約に基づく給付補てん金 |
| 抵当証券 | 一定の契約により支払われる利息 |
| 貴金属等の売戻し条件付売買 | 売戻し条件付売買の利益。金地金の現物売却とは別 |
| 一定の外貨建預貯金 | 元本と利子をあらかじめ定めた利率で円・他の外貨へ換算して支払う契約の換算差益 |
| 一時払養老保険・一時払損害保険等 | 保険期間等が5年以下、または5年を超える契約をその初日から5年以内に解約したものの差益 |
| 一時払個人年金保険 | 給付年金総額が定まる確定年金契約を、契約開始から5年以内かつ年金支払開始前に解約した差益 |
上表の対象収益は、扶養親族等の判定に使う合計所得金額からも除かれます。社会保険の扶養認定はこの記事の対象外です。
保険の一般の一時所得との分担は一時所得の計算、金地金の現物売却は金の売却益の税金を参照してください。外貨の為替差益をすべて金融類似商品に含める説明も避けます。
預金利子等の税率と国税・地方税の内訳
対象預金利子等の合計税率は、令和8年分・令和9年分とも20.315%です。令和9年分から対象預金利子等の国税の内訳は変わりますが、地方税と合わせた率は変わりません。割引債の発行時課税は割引債の節で別に扱います。
令和8年分・令和9年分の居住者個人が国内で受ける課税預金利子、上表の金融類似商品など、源泉分離課税の対象収入金額等に対する率です。非課税制度・法人・非居住者・割引債は対象外です。各特別所得税は、所得税本体の税額を基礎に計算します。
| 税の区分 | 令和8年分 | 令和9年分 |
|---|---|---|
| 所得税本体 | 15% | 15% |
| 復興特別所得税 | 0.315%(所得税額×2.1%) | 0.165%(所得税額×1.1%) |
| 防衛特別所得税 | 適用前 | 0.15%(所得税額×1%) |
| 国税の合計 | 15.315% | 15.315% |
| 地方税 | 5% | 5% |
| 国税・地方税の合計 | 20.315% | 20.315% |
内訳の根拠は復興財源確保法28条と、改正後の同条・防衛財源確保法5条の26です。たとえば表の復興特別所得税は、収入そのものに特別税率を掛ける計算ではありません。
預金利子・給付補てん金の税額例
税額を計算する基礎は、預入元本ではなく税引前の利子・給付補てん金です。入金が税引後の額なら、明細の税引前収入と引かれた税額を分けて確認します。
令和8年分の居住者個人の国内課税預金利子・定期積金給付補てん金の架空の設例です。非課税制度は適用せず、税引前の対象収入を仮定しています。国税・地方税とも円未満の端数が出ない金額とし、元本や手数料は表の差引受取額に含めません。
| 項目 | 課税預金利子の設例 | 定期積金給付補てん金の設例 |
|---|---|---|
| 税引前の対象収入 | 100,000円 | 200,000円 |
| 国税 | 100,000円×15.315%=15,315円 | 200,000円×15.315%=30,630円 |
| 地方税 | 100,000円×5%=5,000円 | 200,000円×5%=10,000円 |
| 税額合計 | 20,315円 | 40,630円 |
| 対象収入の差引受取額 | 100,000円−20,315円=79,685円 | 200,000円−40,630円=159,370円 |
預金利息の端数処理を含む実際の確認は定期預金の税引前後の利息で扱います。給付補てん金の税引後額を、積み立てた元本込みの満期受取額と取り違えないようにしてください。
割引債は発行時の課税と償還時の課税を分ける
割引債には、発行時の源泉徴収で完結する区分と、償還時に申告分離課税となる区分があります。発行時課税の基礎は「券面金額−発行価額」の発行差金です。償還金の全額へ税率を掛ける計算ではありません。
居住者個人の発行時源泉分離課税となる割引債の国内発行分を整理しています。外貨公債法による外貨債と、住宅金融支援機構・沖縄振興開発金融公庫・都市再生機構の各法定債券を除きます。外国法人の国外発行債の条件は国税庁「公社債の償還金と税金」を参照してください。
| 発行日 | 対象となる割引債 |
|---|---|
| 平成27年12月31日以前 | 国債・地方債、内国法人の社債等、外国法人の発行債券 |
| 平成28年1月1日以後 | 預金保険法の長期信用銀行債等、農水産業協同組合貯金保険法の農林債 |
平成25年から令和8年までに発行される対象割引債の発行時国税は、発行差金の18.378%です(特別割引債を除く)。平成25年から平成27年までに発行された対象の特別割引債は、発行差金に国税16.336%で、地方税は掛かりません。
ここでいう特別割引債は、上表の発行日・対象条件を満たす、東京湾横断道路株式会社の法定社債と民間都市開発推進機構の法定債券です。過去の発行分は発行当時の適用税率と徴収記録を確認します。現在発行される一般の割引社債へ、過去の発行時課税を当てはめないでください。
令和8年中に国内で発行される法定の長期信用銀行債等に該当する割引債を、居住者個人が取得する架空の設例です。上表の除外債に該当せず、券面金額と発行価額を仮定し、発行差金に発行時源泉分離課税を適用します。円未満の端数は出ません。
| 項目 | 金額・計算 |
|---|---|
| 券面金額 | 1,000,000円 |
| 発行価額 | 900,000円 |
| 発行差金 | 1,000,000円−900,000円=100,000円 |
| 発行時の国税 | 100,000円×18.378%=18,378円 |
この発行時に徴収した税額は、償還差益に係る所得税等とみなされ、課税関係が終了します。発行時徴収済みの割引債を、償還年の新しい国税内訳で計算し直す説明ではありません。
発行時源泉分離課税の対象外の債券には、償還時の申告分離課税や、一定の同族会社関係の総合課税となる区分があります。償還時の源泉徴収があるだけで、申告できない所得とは判断しません。詳細な区分・源泉徴収口座の申告不要の扱いは国税庁「公社債の償還金と税金」で確認してください。
確定申告で精算できる所得との違い
源泉分離課税の所得は、申告して精算する所得へ任意に変更できません。給与の年末調整や、特定口座の申告不要とは扱いが違います。
| 比較する所得 | 確定申告の扱い |
|---|---|
| 源泉分離課税となる国内の課税預金利子 | 確定申告できない。所得控除を使う還付申告にも含めない |
| 源泉分離課税となる金融類似商品の収益・一定割引債の償還差益 | 確定申告で所得税の還付を受けることはできない |
| 源泉徴収あり特定口座内の上場株式等の譲渡所得 | 申告・申告不要を口座ごとに選択。他口座との通算・損失繰越は申告が必要で、損失申告口座の受入利子等・配当等も申告 |
選択の制限と保険料等への影響は特定口座(源泉徴収あり)と確定申告で扱います。
源泉分離課税となる預金利子等は、医療費控除などを受けるためにほかの所得を申告する場合にも、還付を求める対象へ加えません。国税庁は「還付申告」の対象とならない所得を挙げています。
誤った徴収や明細の記載ミスに疑いがあるときは、課税方式を選び直す申告と考えず、支払者に契約区分・対象収入・徴収税額の確認を依頼します。
支払通知・契約書で確かめる項目
対象収入・元本・税額は、入金額とは分けて確認します。支払通知や計算書と契約書を合わせ、次の項目を確かめます。
| 資料 | 確認する欄 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 利息の支払明細 | 税引前利子、国税、地方税、差引入金額 | 預金利子か特定公社債等の利子か、非課税扱いの有無 |
| 金融類似商品の契約・支払通知 | 契約区分、差益・補てん金、支払日 | 保険期間・解約日、換算の約束など、上の対象表との対応 |
| 割引債の取得・償還明細 | 発行日、発行体、券面金額、発行価額、発行時の徴収記録 | 発行時に完結する対象か、償還時の申告分離課税等か |
銀行口座を名義人別に整理するときは、個人の課税方式と会社の会計処理を混ぜないようにします。法人名義の預金へこの記事の税率表をそのまま当てはめないでください。
給与・報酬用の源泉徴収計算機を見る預金利子・金融類似商品・割引債の税額はこの記事の設例で確認し、給与・報酬用の計算機へ入力しないでください。
確認の順序:契約区分を確かめる → 源泉分離課税の対象かを確認する → 税引前収入と税額を照合する → 申告で精算できる所得と分ける。
よくある質問
医療費控除を使えば、預金利子の税金も戻りますか?
源泉分離課税となる国内の課税預金利子の税金は、医療費控除の確定申告で取り戻せません。ほかの所得に対する還付申告と、その預金利子の課税は分けて扱います。
源泉徴収ありの特定口座も源泉分離課税ですか?
同じ制度ではありません。源泉徴収あり特定口座の対象となる上場株式等の譲渡所得は、口座ごとに申告・申告不要を選べます。他口座との損益通算や損失繰越の特例には申告が必要で、損失を申告する口座の受入利子等・配当等も併せて申告します。
保険の満期金はすべて源泉分離課税ですか?
いいえ。一定要件を満たす一時払養老保険等では、保険期間等が5年以下、または5年超の契約を初日から5年以内に解約した差益が対象です。一時払個人年金保険は給付年金総額が定まる確定年金で、契約開始から5年以内かつ年金支払開始前の解約差益に限ります。
出典
- 国税庁「源泉分離課税制度」:対象所得、税率と改正の適用。
- 国税庁「利息を受け取ったとき」:利子の区分、申告できない範囲と非課税制度。
- 国税庁「金融類似商品と税金」:契約条件、対象収益と所得判定。
- 国税庁「公社債の償還金と税金」:発行時課税と償還時課税の対象・除外。
- 国税庁「特定口座制度」:申告・申告不要の選択と通算の手続。
- 国税庁「還付申告」:還付を受けられない所得。
- e-Gov法令検索「復興財源確保法」28条・同条の改正後:源泉徴収する特別所得税の率。
- e-Gov法令検索「防衛財源確保法」5条の26:防衛特別所得税の源泉徴収。
この記事は一般的な情報提供です。個別の税務・労務相談には応じられません。実際の申告や取扱いは、税理士・所轄の税務署等にご確認ください。特定の金融商品・方式の利用を勧めるものではありません。