兼業とは?始める前の就業規則・届出と会社の確認手順
兼業は、複数の仕事を掛け持つ働き方です。始める前に勤め先の就業規則と労働契約を読み、必要な届出を確認します。兼業には、別の会社に雇われるほか、自営業や請負・委任で仕事をする形も含みます。
会社の受付担当は、兼業先と仕事内容を把握したうえで、秘密保持・競業・就業時間・健康への影響を確認します。このページは、民間会社の従業員が自発的に行う兼業の確認表です。公務員や会社役員に固有の規制は扱いません。
兼業と副業の呼び方より、仕事の形態を確認する
届出では、収入や時間の大小で呼び方を分けるより、誰と、どの契約で、何をするかを明らかにする方が実務につながります。厚生労働省のパンフレットは、副業・兼業を仕事の掛け持ちとしてまとめて扱っています。
| 仕事の形の例 | 届出で明らかにしたいこと |
|---|---|
| 別の会社の従業員として働く | 勤務先・業務内容・契約内容を確認し、労働時間通算の対象かを確かめる |
| 自ら事業を営む・請負や委任で働く | 事業・業務内容と就業の実態を確認し、業務量や健康への影響も話し合う |
契約名が請負でも、実態が雇用なら就労実態に応じて使用者責任が問われます。労働時間通算の対象外でも、長時間就業にならないよう配慮することが望ましいとされています。
始める前の確認表
まず社内ルールを確認し、仕事内容が決まったら所定の方法で届け出ます。届出だけで足りるか、承認などの手続が必要かは、勤務先の規程を確認してください。
| 確認するもの | 見る箇所・確認する内容 |
|---|---|
| 就業規則・労働契約 | 兼業の取扱い、届出や許可の手続、禁止・制限の条件 |
| 社内の届出案内 | 提出先、提出時期、必要書類、回答の受け取り方 |
| 兼業先との契約・仕事内容 | 相手先の事業、担当業務、働き方、勤務の予定 |
| 開始後の連絡方法 | 業務量・就業時間・健康状態の報告先と、内容変更時の連絡方法 |
届出を受けた会社が確認する項目
会社の人事・労務担当は、本人の申告などで兼業の内容を把握します。社内様式を整える際は、厚生労働省の副業・兼業に関する届出様式例も参考になります。
次は、厚生労働省のパンフレットが会社に確認を勧める事項です。全国共通の法定必須欄ではありません。通算対象となる場合の追加項目は、本人と会社で確認し、合意しておくことが望まれます。
| 区分 | 確認する内容 | 記録の着眼点 |
|---|---|---|
| 基本:兼業先 | 兼業先の事業内容 | 相手先の名称だけでなく、行う事業を把握する |
| 基本:本人の仕事 | 従事する業務内容 | 同じ会社でも担当業務を具体的に確認する |
| 基本:通算の対象 | 労働時間通算の対象となるか | 契約名だけでなく、働く実態も確認する |
| 追加:契約 | 労働契約の締結日・期間 | 契約内容が分かる資料と照らす |
| 追加:所定の勤務 | 所定労働日・所定労働時間・始業終業時刻 | シフト制ならカレンダー形式も使う |
| 追加:所定外の勤務 | 所定外労働の有無・見込み時間数・最大時間数 | 通常の予定だけでなく、増える場合も把握する |
| 追加:実績の報告 | 実労働時間等の報告手続 | 報告先・方法を決める |
| 追加:見直し | 各事項を確認する頻度 | 定期的な確認の時期を決める |
労働時間の通算や保険の取扱いは、副業・ダブルワークの通算の記事で扱っています。届出を受けた担当者は、兼業の確認記録を、勤怠・給与・保険を担当する人へつなぎます。
受付時に内容が足りない場合の例
たとえば、届出に「休日に別会社の経理を手伝う」とだけ書かれている場合です。兼業先の事業内容と担当業務、雇用か請負かという働き方を確認します。通算対象なら、契約締結日・期間、勤務予定・所定外労働も確認します。実績報告方法と確認頻度も確認し、本人と会社で合意しておくことが望まれます。
これは届出の情報を補う例であり、その兼業を許可できるという判定ではありません。経理業務なら、顧客資料や価格情報など、秘密として扱う情報の範囲も会社と本人で確認します。
禁止・制限の理由と秘密保持・競業
厚生労働省のガイドラインは、勤務時間外の副業・兼業を認める方向での検討を求めています。一方、禁止・制限できる場合の例も示しています。会社の規則があることと、個別の禁止や処分が妥当であることは分けて考えます。
ガイドラインに示された禁止・制限の場面と、その確認の着眼点です。実際の兼業の可否や懲戒処分を、この表だけで決めることはできません。
| 示されている場面 | 確認の着眼点 |
|---|---|
| 労務提供上の支障がある | 兼業による疲労や長時間就業で、自社の仕事や健康に支障が生じないか |
| 業務上の秘密が漏洩する | 双方の業務上の秘密となる情報の範囲と、漏洩を防ぐ方法 |
| 競業により自社の利益が害される | 自社と兼業先での業務を照らし、自社の正当な利益への影響を確認する |
| 名誉・信用を損なう、信頼関係を破壊する行為がある | 会社の名誉・信用や信頼関係に関わる事情を確認する |
兼業について相談・自己申告をしたことを理由とする不利益な取扱いはできません。また、形式的に社内手続へ違反したというだけで懲戒できると決めず、実質的な影響を考慮して慎重に判断する必要があります。
秘密保持は持出しと持込みの両方を確認する
自社の秘密を兼業先へ渡さないことに加え、他社の秘密を自社へ持ち込まないことも確認します。誓約書を受け取るだけでなく、何を秘密として扱うかを具体的に伝えることが大切です。
実務上の確認例は、顧客情報・未公表の取引条件などの扱い、業務用端末や保存先の使い分けです。これらは社内で検討する例で、全国共通の法定項目ではありません。
同業という理由だけで結論を出さない
在職中の兼業で同じ業種・職種に就く場合でも、自社の正当な利益が侵害されなければ、認めるべき場合があるとされています。担当業務や本人の職種・地位などを踏まえて確認します。
他社の従業員を自社で兼業者として雇う場合、ガイドラインは、他社への競業避止義務に違反しないよう確認・注意喚起を行うことを対応例として挙げています。退職後の制限や個別の紛争は、このページの確認表の対象外です。
開始後の報告と健康管理
自発的な兼業を始めた後も、本人と会社は業務量・就業時間・健康状態を共有し、過労や本業への支障がないか確認することが望まれます。不調を感じたときの相談先と、勤務の負担を軽くする方法も話し合います。
兼業の労働時間が通算対象外でも、長時間就業への配慮が不要になるわけではありません。本人の申告などから就業時間を把握し、健康への影響を確認します。
予定より仕事が増えた、勤務日が変わった、睡眠や体調に影響が出た場合などは、社内の報告方法に沿って相談します。状況に応じて時間外・休日労働の免除や抑制などを検討します。
自発的に兼業を始めた場合、法定の健康診断や長時間労働者の面接指導の対象者は、各事業場で選定します。その選定では兼業先の労働時間を通算しません。兼業を含めた健康への配慮とは分けて確認します。
勤怠担当が割増賃金を確認する際は、勤務先それぞれの労働時間と、通算の取扱いを先に整理します。
残業代(割増賃金)計算機へまとめ
兼業開始の準備は、就業規則・労働契約の確認から始めます。届出では仕事内容と働き方を具体化し、会社は秘密保持・競業・健康への影響を確認します。開始後の報告・相談の方法も決めておきましょう。
よくある質問
兼業と副業は、届出の扱いが違いますか?
呼び方だけで届出の扱いを決めず、勤務先の規程を確認します。厚生労働省のパンフレットは副業・兼業を仕事の掛け持ちとしてまとめて扱い、雇用や自営業などの形態を挙げています。
会社への届出に何を書けばよいですか?
社内様式に従い、兼業先の事業内容・本人の業務内容・働き方を伝えます。労働時間が通算対象となる場合は、契約締結日と期間、勤務予定と所定外労働、実績報告の方法や確認頻度も確認し、本人と会社で合意しておくことが望まれます。
同業他社で働く兼業は禁止ですか?
同業という理由だけでは決まりません。在職中の兼業は、自社と兼業先の業務内容や自社の正当な利益への影響などを確認します。同じ業種・職種でも、正当な利益を侵害しなければ認めるべき場合があるとされています。
請負の仕事なら健康管理の確認は不要ですか?
不要とはいえません。労働時間通算の対象外でも、申告などで就業時間を把握し、長時間就業にならないよう配慮することが望ましいとされています。請負という契約名でも実態が雇用なら、就労実態に応じた使用者責任が問われます。
出典
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」:企業の対応、労働者の対応
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」パンフレット:仕事の形態、届出の確認事項、健康管理
- 厚生労働省「副業・兼業に関する届出様式例」
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。個別の労務相談には応じられません。兼業の可否や労務管理の実際の取扱いは、社会保険労務士や労働局等にご確認ください。