建設業許可の要件 — 500万円は「工事の金額」。自己資本500万円のほうは、法令のどこにも書かれていない
結論から言うと、建設業を営むには原則として許可が要ります。例外は「軽微な建設工事」だけを請け負う場合で、その線は工事1件の請負代金が500万円未満(建築一式工事なら1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅)です。建設業法3条1項ただし書を受けた建設業法施行令1条の2が、この金額をそのまま定めています。
ここで、この記事がいちばん伝えたい区別があります。建設業許可の話には「500万円」が2つ出てきて、性質がまったく違います。1つは上に書いた工事1件の請負代金500万円で、これは政令に明記された金額です。もう1つは審査で見られる自己資本500万円——こちらは建設業法にも、施行令にも、施行規則にも、一文字も書かれていません。実際に3つの法令の全文(合計23万字あまり)を取得して確かめましたが、「欠損」も「流動比率」も1回も出てきません。財産的基礎の具体的な金額は、法令ではなく国土交通省の許可事務ガイドライン(通達)で運用されているものです。条文を読んでも出てこないのは、あなたの探し方が悪いからではありません。
そして、許可を取った後に毎年やってくるのが経理の仕事です。毎事業年度経過後4か月以内に決算変更届を出さなければならず(建設業法11条2項)、出さないと6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金という罰則が用意されています(同50条1項2号)。しかも提出した書類は公衆の閲覧に供されます(同13条4号)。法人税の申告書と違い、建設業許可業者の財務諸表は誰でも見られる——この点を知らずに作っている会社は少なくありません。
「500万円」は2つある — 混同すると判断を間違える
建設業許可を調べ始めると、あちこちで500万円という数字に出会います。ところがこれは別々の場面の、別々の500万円です。同じ数字なので混ざりやすく、混ざると「うちは自己資本が500万円あるから許可が要る」「請負金額が小さいから財産要件は関係ない」といった、方向の逆転した誤解が生まれます。
| どちらの500万円か | 何を判定するか | 根拠 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 請負代金 500万円 | そもそも許可が要るか(軽微な建設工事に当たるか) | 建設業法施行令1条の2(政令に明記) | 工事1件ごと |
| 自己資本 500万円 | 許可を取るときの財産的基礎を満たすか | 法令に規定なし(許可事務ガイドライン=通達で運用) | 会社の決算書 |
先に決まるのは上の行です。軽微な建設工事しか請け負わないなら、そもそも許可が不要なので財産的基礎の話は登場しません。逆に500万円以上の工事を請け負う予定があるなら許可が要り、そこで初めて下の行(決算書)が問われます。
許可が要らない「軽微な建設工事」— 支給材を足してから数える
建設業法3条1項は「建設業を営もうとする者は……許可を受けなければならない」と定めたうえで、ただし書で「政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない」としています。その政令が施行令1条の2です。
法第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、千五百万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。
読むときに注意が要るのは、建築一式工事には基準が2つあり、「又は」で並んでいることです。1,500万円未満または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅、のどちらかに当たれば軽微になります。つまり木造住宅で150平方メートル未満なら、請負代金が1,500万円を超えていても軽微な建設工事です。金額だけを見て判断すると、この経路を落とします。
支給材の市場価格を足してから数える
経理の側からいちばん見落とされるのがこれです。施行令1条の2第3項は、注文者が材料を提供する場合、その市場価格を請負代金に加えたものを判定の基準にすると定めています。
注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする。
たとえば請負代金が450万円で、注文者から市場価格100万円の資材が支給されたとします。契約書の金額も、売上に立つ金額も450万円のままですが、許可の判定では550万円として扱われるので許可が要ります。帳簿上の売上高と、許可の判定に使う金額は一致しません。運送賃を注文者が負担しているなら、それも加えます。
もう1つが分割です。施行令1条の2第2項は、同一の建設業を営む者が工事の完成を2以上の契約に分割して請け負うときは各契約の請負代金の額の合計額で判定するとしています。ただし「正当な理由に基いて契約を分割したとき」は除かれます。500万円を超えないように契約を割るという発想そのものが、この条文で塞がれています。
一般か特定か — 分かれ目は5,000万円。2025年2月に4,500万円から上がった
許可には一般建設業と特定建設業があります。分かれ目は、元請として受けた1件の工事について下請に出す金額の合計です。建設業法3条1項2号が「政令で定める金額以上となる下請契約を締結して施工しようとするもの」を特定建設業の側に置き、その金額を施行令2条が定めています。
法第三条第一項第二号の政令で定める金額は、五千万円とする。ただし、同項の許可を受けようとする建設業が建築工事業である場合においては、八千万円とする。
ここはこの数年で2回動いており、古い金額を書いたままの解説が今も多く残っています。施行令の各改正リビジョンを e-Gov から取得して条文を直接読み比べたところ、次のように変わっていました。
| 施行日 | 原則 | 建築工事業 | 改正政令 |
|---|---|---|---|
| 2022年10月1日時点 | 4,000万円 | 6,000万円 | — |
| 2023年1月1日 | 4,500万円 | 7,000万円 | 令和4年政令第353号 |
| 2025年2月1日 | 5,000万円 | 8,000万円 | 令和6年政令第366号 |
| 2026年4月1日(現行) | 5,000万円 | 8,000万円 | 据え置き |
2026年8月時点の現行は5,000万円(建築工事業は8,000万円)です。判定が境界にかかる工事では、参照している資料の日付を必ず確かめてください。なお軽微な建設工事の500万円のほうは、この間まったく動いていません(2022年10月から2026年4月の各リビジョンで確認済み)。動いたのは特定建設業側だけです。
注意点として、この金額は元請が下請に出す額で判定します。自分が受注した金額ではありません。また下請契約が複数あるときは、その工事に係る下請代金の総額で見ます。さらに、そもそも発注者から直接請け負っていない(自分が下請の立場である)場合は、いくら再下請に出しても特定建設業にはなりません。条文が「発注者から直接請け負う一件の建設工事につき」と限定しているためです。
許可の4つの要件 — 建設業法7条
一般建設業の許可基準は建設業法7条に4つ並んでいます。加えて8条に欠格要件(破産して復権を得ない者、暴力団員等、拘禁刑以上の刑に処せられて5年を経過しない者など14号)があり、こちらは「該当したら許可しない」という形で働きます。
| 号 | 要件 | 具体的な中身がどこにあるか |
|---|---|---|
| 7条1号 | 経営業務の管理を適正に行う能力 | 施行規則7条(省令に具体化されている) |
| 7条2号 | 営業所ごとに営業所技術者を専任で置く | 法7条2号イ〜ハに学歴・実務経験年数が明記 |
| 7条3号 | 誠実性(不正・不誠実な行為のおそれが明らかでない) | 法7条3号 |
| 7条4号 | 財産的基礎または金銭的信用 | 法令には金額が無い(ガイドライン) |
1号の中身は施行規則7条1号にあり、常勤役員等のうち1人が次のいずれかに当たることを求めています。
建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
このほかに、5年以上「経営業務の管理責任者に準ずる地位」(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験、6年以上その補佐に従事した経験、という経路も置かれています。さらに施行規則7条1号ロには、財務管理・労務管理・業務運営の経験者をそれぞれ補佐に付けることで、役員経験2年+役員等に次ぐ職制上の地位5年といった短い経験でも満たせる体制型の経路があります。「経営経験5年」しか知らないと、この体制型の道を見落とします。
社会保険に入っていないと許可が下りない
これは経理・労務の担当者が真っ先に押さえるべき点です。施行規則7条は1号(経営体制)と2号を「次のいずれにも該当する者であること」として並べており、2号は社会保険の適用手続を済ませていることを求めています。健康保険についてはこう書かれています。
健康保険法(大正十一年法律第七十号)第三条第三項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、健康保険法施行規則(大正十五年内務省令第三十六号)第十九条第一項の規定による届書を提出した者であること。
同じ形で厚生年金保険(厚生年金保険法施行規則13条1項の届書)と雇用保険(雇用保険法施行規則141条1項の届書)についても定められており、3つとも「適用事業所に該当する全ての営業所に関し」提出済みであることが条件です。つまり本店だけ入っていて支店が未届け、という状態では要件を満たしません。
これは「経営事項審査で点数が下がる」といった話ではなく、7条1号の基準そのものです。社会保険の加入手続が遅れている会社では、許可申請より先に届出を済ませる必要があります。加入義務の判定は 社会保険の加入条件、雇用保険側は 雇用保険の加入条件 を参照してください。
財産的基礎の基準は、法律にも政令にも省令にも書かれていない
7条4号の条文はこれだけです。
請負契約(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るものを除く。)を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと。
金額はありません。「有しないことが明らかな者でないこと」という二重否定で書かれているだけです。特定建設業の15条3号も同じで、「その請負代金の額が政令で定める金額以上であるものを履行するに足りる財産的基礎を有すること」とあるだけで、資本金や比率の数字は出てきません。
実務でよく挙がる自己資本500万円(一般建設業)、資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上・欠損の額が資本金の20%以下・流動比率75%以上(特定建設業)といった基準は、国土交通省の建設業許可事務ガイドラインという通達で運用されているものです。この記事のために建設業法(82,926字)・建設業法施行令(25,428字)・建設業法施行規則(128,299字)の全文を取得して検索しましたが、「欠損」「流動比率」はいずれの法令にも1回も出てきません。
①条文を探しても見つからないので、探し方を疑って時間を使う必要がないと分かる。②通達で運用される基準なので、細部の取扱いが許可行政庁(都道府県)ごとに揃わないことがある——迷ったら申請先の窓口や公表している手引に当たるのが正解になる。③金額そのものが改正のたびに官報を追わなくても変わりうる層にある。この記事でも、通達側の具体的な数値は金額を断定せず、根拠の所在だけを示す方針をとっています。
ただし1つだけ、条文から確実に言えることがあります。7条4号の括弧書きが「軽微な建設工事に係るものを除く」としている点です。財産的基礎は許可が必要な規模の工事を履行できるかを見るものであって、軽微な工事の履行能力を問うものではない、と条文自身が範囲を区切っています。
「専任技術者」は法律上もう無い — 2025年12月に「営業所技術者」へ
7条2号を現行条文で読むと、こう書かれています。
その営業所ごとに、営業所技術者(建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者であつて、次のいずれかに該当する者をいう。第十一条第四項及び第二十六条の五において同じ。)を専任の者として置く者であること。
長く「専任技術者」と呼ばれてきた役割は、令和6年法律第49号による改正(2025年12月12日施行)で、法律上の名称が「営業所技術者」に変わりました。特定建設業側の15条2号も同様に「特定営業所技術者」となっています。
ここで読み違えやすいのは、「専任」という言葉が消えたわけではないことです。条文は今も「専任の者として置く」と書いており、専任性の要求はそのまま残っています。変わったのは役割の名前(名詞)であって、置き方の条件ではありません。手元の様式や社内規程に「専任技術者」と書かれていても実務が変わるわけではありませんが、条文を引用する文書では現行の名称に合わせておくほうが安全です。
なお、変更が生じたときの届出期限は短く設定されています。営業所技術者が置かれなくなり代わるべき者があるときは2週間以内(法11条4項)、7条1号・2号の基準を満たさなくなったときも2週間以内の届出(同5項)です。次に述べる決算変更届の4か月とは、まったく別の時計が動いています。
許可を取った後、毎年ある経理の仕事 — 決算変更届
許可は取って終わりではありません。建設業法11条2項が、毎期の提出義務を定めています。
許可に係る建設業者は、毎事業年度終了の時における第六条第一項第一号及び第二号に掲げる書類その他国土交通省令で定める書類を、毎事業年度経過後四月以内に、国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。
ここで名指しされている6条1項1号・2号は、工事経歴書と直前三年の各事業年度における工事施工金額を記載した書面です。これに省令で定める書類(財務諸表など)が加わります。実務上「決算変更届」「事業年度終了報告」などと呼ばれるものです。
そして公共工事の元請になる予定があるなら、この決算変更届の先に経営事項審査(経審)が続きます。経審の総合評定値は完成工事高・自己資本額・利益額・経営状況分析だけでウェイトの6割を占める(建設業法施行規則21条の3)ので、決算がそのまま点数になります。決算変更届が遅れれば経審も遅れるという関係にあり、2つは別の制度ですが同じ決算の上に乗っています。
| 手続 | 期限 | 起算点 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 法人税の確定申告 | 2か月以内 | 事業年度終了の日の翌日から | 法人税法74条1項 |
| 決算変更届 | 4か月以内 | 毎事業年度経過後 | 建設業法11条2項 |
| 役員等の変更の届出 | 4か月以内 | 毎事業年度経過後 | 建設業法11条3項 |
| 営業所技術者が欠けたとき | 2週間以内 | 代わるべき者があるとき | 建設業法11条4項 |
| 許可の更新 | 5年ごと | — | 建設業法3条3項 |
出さないと罰則がある
決算変更届は「出し忘れても更新のときにまとめて出せばよい」と扱われがちですが、条文には罰則が置かれています。建設業法50条1項は、
次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
としたうえで、その2号にこう定めています。
第十一条第一項から第四項まで(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による書類を提出せず、又は虚偽の記載をしてこれを提出したとき。
ちなみに無許可で建設業を営んだ場合は47条1項1号でさらに重く、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(同項柱書)。
提出した財務諸表は、誰でも閲覧できる
もう1つ、決算書を作る側が知っておくべき性質があります。建設業法13条は閲覧所の設置を義務づけています。
国土交通大臣又は都道府県知事は、政令の定めるところにより、次に掲げる書類又はこれらの写しを公衆の閲覧に供する閲覧所を設けなければならない。
その4号が、11条2項で提出した6条1項1号・2号の書類、すなわち工事経歴書と工事施工金額の書面を挙げています。法人税の申告書とは扱いがまったく違います。取引先も、競合他社も、金融機関も見られる前提で作る書類だということです。
工事経歴書には元請・下請の別、注文者名、工事名、請負代金が並びます。どの相手からいくらの仕事を取っているかが外から見える形になります。守秘の必要がある取引を抱えている場合、記載の粒度について申請先の手引を確認しておく価値があります。
実務の落とし穴
- 売上高と、許可判定の金額は一致しない。支給材の市場価格を足すため(施行令1条の2第3項)、帳簿上450万円の工事が判定上は550万円になることがあります。会計データから機械的に「500万円以上の工事はゼロ」と結論できません。
- 500万円は税込みか税抜きか。条文は「請負代金の額」としか書いておらず、税抜きとは書いていません。国土交通省の運用では消費税を含めた額で判定されるものとして扱われています。境界にかかる工事では、税込みで見て安全側に倒すのが実務です。
- 木造住宅150平方メートル未満の経路を忘れる。建築一式工事では金額と面積のどちらかを満たせば軽微です。金額だけを見ると、本来不要な許可を取りに行くことになります。
- 特定建設業の判定は「自分が下請に出す額」。受注額ではありません。また発注者から直接請け負っていなければ、いくら再下請に出しても特定建設業の対象外です。
- 4,500万円という数字を使っていないか。2025年2月1日に5,000万円(建築工事業は8,000万円)へ上がっています。社内資料やチェックリストが更新されているか確かめてください。
- 2週間の時計と4か月の時計を混同しない。営業所技術者が欠けたとき・7条1号2号の基準を満たさなくなったときは2週間以内です(法11条4項・5項)。決算変更届の4か月と同じつもりでいると、期限を大きく過ぎます。
- 決算変更届の起算点は「毎事業年度経過後」。法人税申告の期限(2か月)とは別で、申告を延長していても決算変更届の4か月は動きません。
- 社会保険の届出漏れは許可要件の欠落そのもの。加点の問題ではありません(施行規則7条2号)。
- 許可は建設工事の種類ごとに与えられる。建設業法3条2項が別表第一の区分ごとに分けて与えると定めています。「建設業の許可を持っている」だけでは、その工事を請け負えるとは限りません。
- 更新は5年ごと。3条3項です。ただし4項により、有効期間の満了日までに申請への処分がされないときは、処分がされるまで従前の許可が効力を持ちます。
よくある質問
Q. 建設業許可はいくらから必要ですか?
A. 工事1件の請負代金が500万円以上になる工事を請け負うときです。建設業法施行令1条の2が、軽微な建設工事を「工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、千五百万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事」と定めており、これに当たる工事だけを請け負う場合は許可が不要です。建築一式工事では1,500万円未満と木造住宅150平方メートル未満のどちらかを満たせば軽微になります。
Q. 注文者から材料をもらった場合、500万円はどう数えますか?
A. 支給された材料の市場価格を請負代金に加えてから数えます。建設業法施行令1条の2第3項が、注文者が材料を提供する場合はその市場価格または市場価格および運送賃を請負代金の額に加えたものを判定の基準にすると定めているためです。請負代金450万円の工事で市場価格100万円の材料が支給されれば、判定上は550万円となり許可が必要になります。会計帳簿に載る売上高は450万円のままなので、帳簿の金額だけで判断すると誤ります。
Q. 500万円を超えないように契約を分ければよいですか?
A. できません。建設業法施行令1条の2第2項が、同一の建設業を営む者が工事の完成を2以上の契約に分割して請け負うときは各契約の請負代金の額の合計額で判定すると定めています。正当な理由に基づいて分割した場合だけが例外です。金額を下げる目的での分割は、この但し書きの正当な理由には当たりません。
Q. 一般建設業と特定建設業の分かれ目はいくらですか?
A. 2026年8月時点では、元請として発注者から直接請け負った1件の工事について下請に出す代金の総額が5,000万円以上(許可を受けようとする建設業が建築工事業である場合は8,000万円以上)になるときが特定建設業です。建設業法施行令2条が定めています。この金額は2023年1月1日に4,000万円から4,500万円へ、2025年2月1日に4,500万円から5,000万円へと引き上げられており、古い資料には4,500万円と書かれていることがあります。
Q. 自己資本500万円という要件は条文のどこにありますか?
A. 建設業法にも建設業法施行令にも建設業法施行規則にも書かれていません。3つの法令の全文を取得して検索しても、欠損や流動比率といった語は1回も現れません。建設業法7条4号は「請負契約(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るものを除く。)を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと。」と定めるだけです。実務で使われている具体的な金額や比率は、国土交通省の建設業許可事務ガイドラインという通達で運用されているものです。
Q. 専任技術者という制度は無くなったのですか?
A. 役割そのものは残っており、法律上の名称が変わりました。令和6年法律第49号による改正が2025年12月12日に施行され、建設業法7条2号は「営業所技術者」、特定建設業の15条2号は「特定営業所技術者」という語を使っています。条文は今も「専任の者として置く」と定めているため、専任であることの要求は残っています。変わったのは名前であって、置き方の条件ではありません。
Q. 決算変更届はいつまでに出しますか。出さないとどうなりますか?
A. 建設業法11条2項により、毎事業年度経過後4か月以内です。法人税の確定申告期限である2か月とは別の期限で、申告期限を延長していてもこの4か月は動きません。提出しなかった場合は建設業法50条1項2号に該当し、同項柱書により6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と定められています。更新のときにまとめて提出すればよいという扱いは、条文上は用意されていません。
Q. 提出した財務諸表は外部に見られますか?
A. 見られます。建設業法13条が、国土交通大臣または都道府県知事に対して掲げられた書類またはその写しを公衆の閲覧に供する閲覧所を設けることを義務づけており、その4号が11条2項で提出した6条1項1号・2号の書類を挙げています。工事経歴書には注文者名や請負代金が並ぶため、取引関係が外から読み取れる形になります。法人税の申告書とは扱いが異なる点に注意してください。
Q. 社会保険に未加入でも許可は取れますか?
A. 取れません。建設業法施行規則7条は1号と2号の両方に該当することを求めており、2号が健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、適用事業所に該当する全ての営業所に関し所定の届書を提出した者であることを定めています。本店だけ届出済みで支店が未届けという状態では要件を満たしません。加点や評価の問題ではなく、建設業法7条1号の基準そのものです。
Q. 許可を取れば、どの工事でも請け負えますか?
A. 請け負えません。建設業法3条2項が、許可は別表第一に掲げる建設工事の種類ごとに、それぞれの建設業に分けて与えると定めています。取得している業種以外で500万円以上の工事を請け負えば、許可を受けないで建設業を営んだことになり、建設業法47条1項1号により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となります。
出典
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「建設業法」(昭和24年法律第100号) — 3条(建設業の許可)・6条(許可申請書の添付書類)・7条(許可の基準)・8条(欠格要件)・11条(変更等の届出)・13条(閲覧)・15条(特定建設業の許可の基準)・47条・50条。法令API v2 の現行施行版(2025年12月12日施行・令和6年法律第49号)を取得
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「建設業法施行令」(昭和31年政令第273号) — 1条の2(軽微な建設工事)・2条(法第3条第1項第2号の金額)。法令API v2 の現行施行版(2026年4月1日施行)を取得。あわせて2022年10月1日・2023年1月1日・2024年4月1日・2024年12月11日・2025年2月1日・2025年4月1日・2025年12月12日の各施行版を取得し、条文を読み比べて金額の変遷を確認
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「建設業法施行規則」(昭和24年建設省令第14号) — 3条(法第6条第1項第5号の書面)・7条(法第7条第1号の基準)・7条の2(変更の届出)。法令API v2 の現行施行版(2026年7月1日施行)を取得
- 国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」 — 財産的基礎に関する具体的な運用基準の所在(本記事では金額を断定せず、法令に規定が無いことの説明にとどめています)
この記事は一般的な情報提供であり、個別の許可申請についての助言ではありません。財産的基礎の判断や添付書類の取扱いは許可行政庁ごとに運用が異なることがあり、金額や基準は改正されることがあります。実際の申請は許可行政庁の窓口または行政書士に、税務の判断は税理士にご確認ください。