広告宣伝費とは — 交際費との境界、看板の贈与が繰延資産になる線、国外広告の消費税
結論から言うと、広告宣伝費とは、不特定多数の人に向けた宣伝のために支出する費用をまとめる販売費及び一般管理費の科目です。そしてこの科目には、税法上の定義がありません。だから実務の線引きは「広告宣伝費とは何か」を積み上げて決まるのではなく、交際費等に当たらないか・繰延資産に当たらないかという2つの引き算で決まります。
数えてみると、はっきりします。「広告宣伝費」という語は、法人税法(本文600,520字)・法人税法施行令(1,184,221字)・所得税法(1,095,638字)・所得税法施行令(695,093字)・消費税法(228,892字)・租税特別措置法(3,174,346字)・会社計算規則(112,442字)・財務諸表等規則(173,386字)の本文にすべて0回です(e-Gov 法令API v2 で全文を取得して実測)。唯一この語を持っているのは法人税法施行規則で、しかも出てくるのは別表二十四・別表二十五・別表二十六という、帳簿と損益計算書の区分を並べた表の中の3回だけです。
ここが実務でいちばん効く事実です。交際費等の損金不算入を定める租税特別措置法61条の4は、「広告宣伝費は交際費等から除く」とは一言も書いていません。除外されるのは、その定義が最初から相手を「事業に関係のある者等」に限っているからです。つまり広告宣伝費が交際費等にならない理由は「広告宣伝費だから」ではなく、相手が不特定多数だからです。この一段を押さえると、判断に迷う支出——展示会のノベルティ、得意先だけに配るカレンダー、特約店に贈る看板——が、すべて同じ物差しで測れるようになります。
この記事は、①条文の中の「広告宣伝費」、②交際費等との境界、③看板・陳列棚を配ると繰延資産になる線、④隣の科目との境界、⑤消費税(国外事業者へのネット広告)、⑥いつの費用になるか、⑦設例と仕訳、の順に条文を引用しながら整理します。交際費等の限度額計算そのものは交際費と会議費の違い、繰延資産の全体像は繰延資産とはに譲ります。
条文の中の「広告宣伝費」 — 法律の本文に0回。省令の別表だけが名指ししている
「広告宣伝費」という科目名を法令の中で探すと、法律にも政令にも一度も出てきません。出てくるのは法人税法施行規則の別表だけで、しかもその文脈は「定義」ではなく記録の要求です。青色申告法人の帳簿の記載事項を定めた別表二十四の(十四)は、経費についてこう並べています。
賃金、給料手当、法定福利費、厚生費、外注工賃、動力費、消耗品費、修繕費、減価償却費、繰延資産の償却費、地代家賃、保険料、旅費交通費、通信費、水道光熱費、手数料、倉敷料、荷造包装費、運搬費、広告宣伝費、公租公課、機密費、接待交際費、寄附金、利子割引料、雑費等に、それぞれ適当な名称を付して区分し、それぞれ、その取引の年月日、支払先、事由及び金額
この一行に、実は答えが2つ入っています。
1つ目は、「広告宣伝費」と「接待交際費」が別の項目として並んでいること。帳簿の区分としては、両者は最初から別のものとして扱えという要求になっています。同じ列挙に「機密費」まで並んでいるのは、この別表が古い体系を引き継いでいるためです。
2つ目は、「それぞれ適当な名称を付して区分し」という言い方です。科目名そのものは会社が付けます。省令が求めているのは「この粒度で分けて記録せよ」であって、「広告宣伝費という名前を使え」ではありません。だから「販売促進費」「宣伝広告費」といった名称を使っても、区分さえできていれば省令上の問題はありません。同じ内容は別表二十五(貸借対照表及び損益計算書に記載する科目)と別表二十六にも現れます。
科目名に定義が無いということは、科目名を根拠に税務上の結論を出せないということです。「広告宣伝費で処理したから損金」ではなく、「不特定多数向けだから交際費等に当たらず、資産の贈与でもないから繰延資産にも当たらず、したがって支出時の損金」という順で考えます。税務調査で問われるのはこの順番のほうです。
なお、法人税法の本文で「広告宣伝」という語(費が付かない形)が使われている場所はあります。代表が寄附金の定義です。法人税法37条7項は、寄附金の範囲からこう除いています。
寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額
タダで配っているのだから寄附金ではないのか、という疑問はここで解決します。広告宣伝の費用は、無償で配っても寄附金にはなりません(寄附金なら損金算入限度額の枠に入ってしまいます)。条文が「広告宣伝及び見本品の費用」を名指しで外しているのは、この科目にとって数少ない、直接の手がかりです。
交際費等との境界 — 条文は「相手が誰か」で書かれている
広告宣伝費でいちばん問われるのが、交際費等との境界です。ここは条文を読むと、思っているより機械的です。租税特別措置法61条の4第6項が、交際費等をこう定義しています。
第一項、第三項及び前項に規定する交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下この項において「接待等」という。)のために支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)をいい
読むべきは相手の限定です。交際費等に当たるには、支出の相手が「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」でなければなりません。街頭で配るティッシュ、新聞広告、テレビCM、検索連動広告は、相手が誰になるか事前に決まっていません。だから定義に入らない——これが、広告宣伝費が交際費等にならない本当の理由です。「広告宣伝費だから除かれる」のではありません。
条文が交際費等から外している3つ
61条の4第6項は、定義に続けて3つの除外を置いています。1号が「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」(=福利厚生費)、2号が飲食費のうち政令で定める金額以下のもの、3号が「前二号に掲げる費用のほか政令で定める費用」です。
この3号を受けた租税特別措置法施行令37条の5第2項が、広告宣伝費の実務で毎年出てくる物品の贈与を名指ししています。
法第六十一条の四第六項第三号に規定する政令で定める費用は、次に掲げる費用とする。一カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手拭いその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用二会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用三新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材に通常要する費用
ここが実務でいちばん誤解されるところです。社名入りカレンダーを得意先に配る費用は、相手が「得意先」であっても交際費等になりません。相手が特定されているので本来なら定義に入りますが、政令が正面から外しているためです。逆に言えば、外れるのはこの列挙とそれに類する物品までで、単価の高い品物——たとえば得意先の担当者に配る高級筆記具や商品券——は、この号では救われません。
列挙されているのはカレンダー・手帳・扇子・うちわ・手拭いです。共通するのは社名を刷り込んで配ることが前提の、単価の低い実用品という性格です。金額の基準は政令に書かれていないため、「いくらまで」という線は条文からは出てきません。判断に迷う金額帯のものは、配布先が不特定多数かどうか(街頭配布か、得意先限定か)と、社名の表示が宣伝として機能しているかで説明できるように、配布計画と部数の記録を残しておくのが実務的です。
2号の飲食費については、施行令37条の5第1項が計算方法と金額を定めています。飲食費として支出する金額を参加人数で割った1人当たりの金額で判定し、その基準額は一万円です。この金額は法律ではなく政令にあるため、改正のたびに動きます。古い解説記事と金額が食い違うときは、政令の現行値を確認してください。
なお、資本金の額が100億円を超える法人は交際費等の全額が損金不算入、100億円以下なら接待飲食費の50%相当額を超える部分が損金不算入、資本金1億円以下の中小法人はこれに代えて定額控除限度額(年800万円)を超える部分を損金不算入とすることを選べます(61条の4第1項・第2項)。この枠の外に出せるかどうかが、広告宣伝費との区分にこだわる金銭的な理由です。
看板・陳列棚を配ると繰延資産になる — 償却は耐用年数の10分の7
もう1つの引き算が繰延資産です。広告宣伝のための支出でも、資産を贈与する形を取ると、その事業年度の費用にはなりません。法人税法施行令14条1項6号は、支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶ費用を繰延資産とし、そのニに次を挙げています。
製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
何がこれに当たるかは、法人税基本通達8-1-8が具体的に書いています。
令第14条第1項第6号ニ《広告宣伝用資産を贈与した費用》に規定する「製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用」とは、法人がその特約店等に対し自己の製品等の広告宣伝等のため、広告宣伝用の看板、ネオンサイン、どん帳、陳列棚、自動車のような資産(展示用モデルハウスのように見本としての性格を併せ有するものを含む。以下8-1-8において同じ。)を贈与した場合(その資産を取得することを条件として金銭を贈与した場合又はその贈与した資産の改良等に充てるために金銭等を贈与した場合を含む。)又は著しく低い対価で譲渡した場合における当該資産の取得価額又は当該資産の取得価額からその譲渡価額を控除した金額に相当する費用をいう。
読み落としやすい点が3つあります。
- 現物でなく現金を渡しても同じ — 「その資産を取得することを条件として金銭を贈与した場合」「改良等に充てるために金銭等を贈与した場合」が含まれます。看板代を補助金として振り込んでも繰延資産です。
- 「著しく低い対価で譲渡した場合」も含む — 無償に限りません。この場合の繰延資産の額は、取得価額から譲渡価額を控除した金額です。
- 自社の店に自社の看板を出す費用は、これに当たらない — 条文も通達も贈与を要件にしています。自社所有の看板は、金額と耐用年数に応じて器具備品などの減価償却資産になります。
償却期間は「耐用年数の10分の7、上限5年」
繰延資産になった場合の償却期間は、法人税基本通達8-2-3が繰延資産の種類ごとに定めており、広告宣伝用資産の贈与費用については次のように書かれています。
その資産の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が5年を超えるときは、5年)
たとえば贈与した陳列棚の耐用年数が8年なら、8×0.7=5.6年→5年(上限に当たる)。耐用年数3年の資産なら3×0.7=2.1年→2年(1年未満の端数は切り捨てるのが実務の扱い)。この年数で月割償却します。
ただし、金額が小さければ償却は不要です。法人税法施行令134条が、少額の繰延資産を支出時の損金にできるとしています。
内国法人が、第六十四条第一項第二号(均等償却を行う繰延資産)に掲げる費用を支出する場合において、当該費用のうちその支出する金額が二十万円未満であるものにつき、その支出する日の属する事業年度において損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
つまり1件20万円未満なら、損金経理を条件に支出時の損金です。特約店に配るのぼりや小型の看板は、実務上ここでほとんど処理されます。20万円は1件あたりの判定なので、同じ相手に複数を同時に贈る場合は、その資産ごとに見ます。
隣の科目との境界 — 販売促進費・見本品費・寄附金・給与
「広告宣伝費」も「販売促進費」も、条文には無い名前です(販売促進費は上に挙げた8つの法令すべてで0回)。したがって両者の区別に税務上の意味はありません。分けるかどうかは管理会計の都合であり、分けたからといって損金性が変わることはありません。会社として一度決めた基準を継続して使うことのほうが重要です。
| 支出 | 科目の目安 | 判定を分ける条文 |
|---|---|---|
| 新聞広告・テレビCM・ネット広告 | 広告宣伝費 | 相手が不特定多数(措置法61条の4第6項の定義に入らない) |
| 街頭で配るティッシュ・試供品 | 広告宣伝費(見本品費) | 同上。法人税法37条7項が「広告宣伝及び見本品の費用」を寄附金から除外 |
| 社名入りカレンダー・手帳を得意先に配る | 広告宣伝費 | 措置法令37条の5第2項1号で交際費等から除外 |
| 得意先の担当者への手土産・接待 | 接待交際費 | 相手が「事業に関係のある者等」(措置法61条の4第6項) |
| 特約店に贈る看板・陳列棚(20万円以上) | 繰延資産(長期前払費用) | 法人税法施行令14条1項6号ニ・法基通8-1-8 |
| 自社店舗に設置する自社の看板 | 器具備品などの減価償却資産 | 贈与ではないので繰延資産に当たらない |
| 抽選で一般消費者に渡す賞金・景品 | 広告宣伝費 | 相手が不特定多数。ただし源泉徴収の要否は別途判定 |
| 自社の従業員に配る記念品 | 福利厚生費 | 措置法61条の4第6項1号(従業員の慰安)の系列 |
| チラシの制作費・印刷費 | 広告宣伝費 | 債務確定基準(法人税法22条3項2号)で期を決める |
1点だけ注意が要るのが、一般消費者向けの懸賞金・賞金です。科目は広告宣伝費でよいのですが、支払の相手が個人で、内容が所得税法204条1項の報酬・料金等に当たる場合には源泉徴収が必要になります。物品の景品なら通常は不要ですが、現金の賞金は要件に当たることがあるため、支払の形(現金か物品か)と相手(個人か法人か)を先に確認します。
消費税 — 国外事業者へのネット広告は「特定課税仕入れ」になりうる
国内の広告代理店や新聞社に払う広告費は、ふつうの課税仕入れです。ここに難しさはありません。実務で引っかかるのは、検索連動広告やSNS広告を国外事業者に出稿している場合です。
消費税法2条1項8号の3は、インターネットを介して行われる役務の提供を「電気通信利用役務の提供」と定義し、続く8号の4が、そのうち相手が事業者に限られるものを「事業者向け電気通信利用役務の提供」としています。
事業者向け電気通信利用役務の提供国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、当該電気通信利用役務の提供に係る役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいう。
広告出稿は、性質上その相手が事業者に限られるため、これに当たります。そして内外判定は役務の提供を受ける側の所在地で行われるので(消費税法4条3項3号)、支払先が国外でも国内取引になります。この場合、消費税を申告・納税するのは売り手ではなく買い手です。これがリバースチャージ方式で、買い手側では「特定課税仕入れ」として売上側と仕入側の両方に計上します。
国税庁タックスアンサーNo.6118(令和7年4月1日現在法令等)は、リバースチャージ方式の経過措置についてこう説明しています。一般課税かつその課税期間の課税売上割合が95%以上である課税期間、または簡易課税制度・2割特例が適用される課税期間については、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとされます。したがってこれらに該当する場合は、国外事業者に広告費を払っていても、確定申告に特定課税仕入れを含める必要はありません。仕入税額控除だけを取ることもできません(無かったものとして扱う以上、両建てで消えます)。
逆に言えば、非課税売上が多く課税売上割合が95%未満になる会社(不動産賃貸、医療、金融など)が国外事業者に広告を出している場合は、リバースチャージの対象になります。ここは自社の課税売上割合を先に確認してください。
この仕組みそのもの——対象になる2つの取引、95%の判定、課税標準を割り戻さない理由、令和7年4月から始まったプラットフォーム課税——はリバースチャージ方式とはで条文から追っています。広告以外の海外サービスも同じ判定に乗るので、対象を洗い出す段になったらそちらを参照してください。
なお、国外事業者が行う広告配信でも、登録を受けた適格請求書発行事業者から国内取引としてインボイスを受け取っているケースもあります。その場合は通常の課税仕入れとして処理します。請求書に登録番号があるかどうかで扱いが変わるため、出稿先ごとに一度確認しておくのが確実です。
いつの費用になるか — 債務確定基準と、期末に残ったチラシ
広告宣伝費は金額がまとまることが多く、期またぎが問題になります。原則は法人税法22条3項2号です。
前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
ポイントは「支払ったか」ではなく「債務が確定したか」です。実務で分かれるのは次の3つです。
- 掲載前に払った広告料 — 前払いであって、掲載という役務の提供がまだなら、その事業年度の債務は確定していません。前払費用として資産に計上し、掲載された期の費用にします。
- 期末に在庫として残っているチラシ・パンフレット — 印刷会社に対する債務は確定していますが、まだ配っていない分は広告宣伝の効果が生じていないと見て、貯蔵品に振り替える扱いが一般的です。金額が少額で毎期継続して同じ処理をしているなら、支出時の費用のままでも実務上は問題になりにくい領域です。判断が分かれるので、社内の基準を決めて継続適用します。
- 年間契約の広告掲載料を前払いした場合 — 契約期間が1年以内で、支払った日から1年以内に役務の提供を受けるものであれば、短期前払費用として支出時の損金にできる余地があります。詳しくは前払費用とはを参照してください。
設例と仕訳
いずれも税抜経理・消費税率10%を前提にします。
設例1: 国内の広告代理店にネット広告費 330,000円(税込)を支払った
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 広告宣伝費 | 300,000 | 普通預金 | 330,000 | 課税仕入10% |
| 仮払消費税 | 30,000 |
設例2: 社名入りカレンダー 200部・110,000円(税込)を制作し、得意先と来店客に配った
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 広告宣伝費 | 100,000 | 普通預金 | 110,000 | 課税仕入10% |
| 仮払消費税 | 10,000 |
得意先に配る分が含まれていても、租税特別措置法施行令37条の5第2項1号によりカレンダーの贈与費用は交際費等から外れるため、全額を広告宣伝費で処理します。
設例3: 特約店に自社ロゴ入りの陳列棚(取得価額 330,000円・税込)を贈与した。陳列棚の耐用年数は8年
1件20万円以上なので繰延資産です。償却期間は8×7/10=5.6年→上限により5年。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 長期前払費用 | 300,000 | 普通預金 | 330,000 | 繰延資産に計上 |
| 仮払消費税 | 30,000 | 資産の購入は課税仕入れ |
期中に贈与した場合は月割で償却します。事業年度の残りが4か月なら、300,000 × 4 ÷(5年×12か月)=20,000円が当期の償却額です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 繰延資産償却 | 20,000 | 長期前払費用 | 20,000 | 300,000×4/60 |
設例4: 同じ陳列棚が 165,000円(税込・取得価額150,000円)だった場合
20万円未満なので、法人税法施行令134条により損金経理を条件に支出時の損金です。償却計算は生じません。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 税区分 |
|---|---|---|---|---|
| 広告宣伝費 | 150,000 | 普通預金 | 165,000 | 課税仕入10% |
| 仮払消費税 | 15,000 |
よくある質問
Q. 広告宣伝費とは何ですか?
A. 不特定多数の人に向けた宣伝のために支出する費用をまとめる販売費及び一般管理費の科目です。法人税法・法人税法施行令・所得税法・消費税法・租税特別措置法・会社計算規則・財務諸表等規則の条文本文に「広告宣伝費」という語は0回で、名前が出てくるのは法人税法施行規則の別表二十四・別表二十五・別表二十六(帳簿の記載区分と損益計算書に記載する科目の例示)だけです。別表二十四は「それぞれ適当な名称を付して区分し」としているため、科目名そのものは会社が付けます。
Q. 広告宣伝費と交際費はどこで分かれますか?
A. 相手が誰かで分かれます。租税特別措置法61条の4第6項は、交際費等を、法人が「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」に対する接待・供応・慰安・贈答その他これらに類する行為のために支出するものと定義しており、相手が事業に関係のある者に限定されています。新聞広告やネット広告のように相手が不特定多数なら、この定義に最初から入りません。条文が「広告宣伝費は交際費等から除く」と書いているわけではない点が要点です。
Q. 得意先に配る社名入りカレンダーは交際費になりますか?
A. なりません。租税特別措置法施行令37条の5第2項1号が「カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手拭いその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用」を交際費等から除いています。相手が得意先という特定の者であっても、この政令により外れます。ただし外れるのはこの列挙とそれに類する物品までで、単価の高い品物や商品券はこの号では救われません。
Q. 販売促進費と広告宣伝費は分けるべきですか?
A. 税務上はどちらでも変わりません。「販売促進費」も「広告宣伝費」も条文に定義が無く、販売促進費という語は法人税法・所得税法・消費税法・租税特別措置法などの本文に0回です。分けるかどうかは管理会計の都合で決めてかまいません。重要なのは一度決めた基準を継続して使うことと、交際費等に当たるものを混ぜないことです。
Q. 特約店に看板を贈ったら、その事業年度の費用にできますか?
A. 1件20万円未満なら、損金経理を条件に支出時の損金にできます(法人税法施行令134条)。20万円以上の場合は法人税法施行令14条1項6号ニの繰延資産となり、法人税基本通達8-2-3により、その資産の耐用年数の10分の7に相当する年数(5年を超えるときは5年)で月割償却します。看板を買うための現金を渡した場合や、著しく低い対価で譲渡した場合も同じ扱いです(法人税基本通達8-1-8)。
Q. 自社の店舗に出す看板も繰延資産になりますか?
A. なりません。法人税法施行令14条1項6号ニも法人税基本通達8-1-8も、要件を「贈与したこと」に置いています。自社が所有して自社の店舗に設置する看板は贈与ではないため、金額と構造に応じて器具備品や構築物といった減価償却資産になります。繰延資産になるのは、特約店など他者に渡した場合です。
Q. 無料で配る試供品の費用は寄附金になりませんか?
A. なりません。法人税法37条7項が寄附金の範囲から「広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用」を明示的に除いています。無償で渡していても、宣伝や見本のための費用であれば寄附金の損金算入限度額の枠には入らず、広告宣伝費として全額が損金になります。
Q. 海外のネット広告に払った費用の消費税はどうなりますか?
A. 国外事業者への広告出稿は「事業者向け電気通信利用役務の提供」に当たり(消費税法2条1項8号の4)、内外判定は役務の提供を受ける者の所在地で行うため国内取引になります(4条3項3号)。この場合は買い手が特定課税仕入れとして申告するリバースチャージ方式ですが、国税庁タックスアンサーNo.6118のとおり、一般課税かつ課税売上割合が95%以上の課税期間、簡易課税制度や2割特例が適用される課税期間については、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとされます。多くの中小企業は申告に含める必要がありません。
Q. 期末に残ったチラシは費用にできますか?
A. 印刷会社への債務が確定していれば法人税法22条3項2号の要件は満たしますが、まだ配っていない分は広告宣伝の効果が生じていないため、貯蔵品に振り替えるのが一般的な扱いです。金額が少額で毎期継続して同じ処理をしている場合には、支出時の費用のままとすることも実務上は行われています。判断が分かれる領域なので、社内で基準を決めて継続適用してください。
出典
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号) — 第61条の4第1項・第2項(交際費等の損金不算入)、第6項(交際費等の定義と3つの除外)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法施行令(昭和三十二年政令第四十三号) — 第37条の5第1項(飲食費の1人当たり基準額)、第2項第1号(カレンダー等の贈与費用)
- e-Gov法令検索 法人税法(昭和四十年法律第三十四号) — 第22条第3項第2号(債務の確定しない費用の除外)、第32条第1項(繰延資産の償却)、第37条第7項(寄附金の定義から広告宣伝及び見本品の費用を除外)
- e-Gov法令検索 法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号) — 第14条第1項第6号ニ(広告宣伝用資産を贈与した費用)、第64条第1項第2号(均等償却を行う繰延資産)、第134条(繰延資産となる費用のうち少額のものの損金算入)
- e-Gov法令検索 法人税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十二号) — 別表二十四(十四)、別表二十五(二)、別表二十六(十四)(帳簿の記載事項と損益計算書に記載する科目)
- e-Gov法令検索 消費税法(昭和六十三年法律第百八号) — 第2条第1項第8号の2(特定資産の譲渡等)・第8号の3(電気通信利用役務の提供)・第8号の4(事業者向け電気通信利用役務の提供)、第4条第1項・第3項第3号(課税の対象と内外判定)
- e-Gov法令検索 所得税法(昭和四十年法律第三十三号) — 第204条第1項(報酬・料金等に係る源泉徴収義務)
- 国税庁 法人税基本通達 第8章第1節 繰延資産の範囲 — 8-1-8(広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用)
- 国税庁 法人税基本通達 第8章第2節 繰延資産の償却期間 — 8-2-3(繰延資産の償却期間)
- 国税庁 タックスアンサー No.6118 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係(令和7年4月1日現在法令等) — リバースチャージ方式と、課税売上割合95%以上の課税期間等に係る経過措置
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。