税金・経理・補助金ツールズ

通信費とは — 範囲・隣の科目との境界・切手と国際電話の消費税・在宅勤務の通信費・仕訳を条文で

結論から言うと、通信費とは、電話・インターネット・郵便・宅配便(書類の送付)など、情報をやり取りするためにかかる費用をまとめる販売費及び一般管理費の科目です。何を通信費に入れるかを法律は決めていません。法人税法・所得税法・消費税法・会社計算規則・財務諸表等規則の条文本文に「通信費」の語は0回で、名前が出てくるのは法人税法施行規則の別表二十四(十四)・別表二十五(二)・別表二十六(帳簿の記載区分と損益計算書の科目の例示)と、金融庁の財務諸表等規則ガイドライン84(販売費及び一般管理費の例示)だけです。つまり「通信費」は会社が付ける費目の名前であって、法律用語ではありません。

逆に、通信にまつわる語で法律の本文が名指ししているのは「電話加入権」です。法人税法2条22号・所得税法2条1項18号は固定資産の定義の中に「電話加入権」を書き込み、施行令は減価償却資産から外しています(法人税法施行令12条3号・13条8号ナ)。費用の「通信費」は条文に無く、資産の「電話加入権」は条文にある——この対比が、通信費の実務で迷いやすい点(電話機や回線工事は経費か資産か、切手の買い置きは経費か在庫か)を整理する軸になります。

もう1つ、通信費には消費税の区分が3つに割れるという固有の論点があります。国内の電話・ネット代は課税、国際電話・国際郵便は免税で課税仕入れにならず(消費税法7条1項3号・2条1項12号)、切手は買ったときは非課税で使ったときに課税仕入れになる(別表第二4号イ・消費税法基本通達11-3-7)。さらに在宅勤務の広がりで、従業員のスマホ代・ネット代をいくらまで会社が払えば給与にならないかという国税庁FAQの算式(業務使用分=1か月の料金×在宅勤務日数÷その月の日数×1/2)も、通信費の記事に入れておくべき実務になりました。

この記事は、①条文の中の「通信費」と「電話加入権」、②範囲、③隣の科目との境界(荷造運賃・広告宣伝費・消耗品費・支払手数料・給与・減価償却費)、④いつ経費になるか(債務確定・期末の未払・年払いの前払費用・切手の買い置き)、⑤消費税の区分(国内/国際/切手/海外クラウド)、⑥在宅勤務の通信費を従業員に払うときの算式、⑦個人事業主の家事按分、⑧仕訳例6本、の順に条文を引用しながら整理します。旅費交通費・消耗品費・接待交際費など隣の科目の各論は、それぞれの記事(旅費交通費とは消耗品費とは接待交際費と会議費の違い)に譲ります。

条文の中の「通信費」 — 本文には無く、別表とガイドラインにある。法律が名指しするのは「電話加入権」

勘定科目一覧の記事で実測したとおり、毎日使う費用科目ほど条文に名前がありません。通信費も同じで、法人税法・法人税法施行令・所得税法・所得税法施行令・所得税法施行規則・消費税法・消費税法施行令・会社計算規則・財務諸表等規則の全文(本文・別表とも)で「通信費」は0回です(e-Gov法令API v2で取得した全文を検索)。出てくるのは法人税法施行規則の3つの別表だけです。

1か所目は帳簿の記載事項です。法人税法施行規則54条は、青色申告法人に仕訳帳・総勘定元帳・その他必要な帳簿を備え、別表二十四に定めるところにより記載するよう求め、その別表二十四の(十四)「(十三)に掲げるもの以外の経費に関する事項」が費目をこう例示します。

賃金、給料手当、法定福利費、厚生費、外注工賃、動力費、消耗品費、修繕費、減価償却費、繰延資産の償却費、地代家賃、保険料、旅費交通費、通信費、水道光熱費、手数料、倉敷料、荷造包装費、運搬費、広告宣伝費、公租公課、機密費、接待交際費、寄附金、利子割引料、雑費等に、それぞれ適当な名称を付して区分し、それぞれ、その取引の年月日、支払先、事由及び金額。

2か所目は決算書の科目です。同規則57条は、青色申告法人の貸借対照表と損益計算書を「おおむね別表二十五に掲げる科目に従い」作るよう定め、別表二十五(二)損益計算書の「損失の部」に通信費が並びます。

商品製品原材料等仕入高、期首商品製品原材料等棚卸高、賃金、給料手当、法定福利費、厚生費、外注工賃、動力費、消耗品費、地代家賃、保険料、修繕費、減価償却費、繰延資産の償却費、旅費交通費、通信費、水道光熱費、手数料、倉敷料、荷造包装費、運搬費、広告宣伝費、公租公課、機密費、接待交際費、寄附金、利子割引料、雑費

3か所目の別表二十六(青色申告でない普通法人等の帳簿の記録方法)の(十四)も、同じ費目の例示を持っています。3か所とも「通信費」を旅費交通費・水道光熱費・手数料・荷造包装費・運搬費・広告宣伝費と並べて別の費目として挙げている——これが、次の節で隣の科目との境界を引くときの法令上の手がかりです。どれも「それぞれ適当な名称を付して区分し」と書かれているとおり、科目名は会社が付けるもので、通信費という名前を使わなければならない規定はどこにもありません。

金融商品取引法の開示会社に適用される財務諸表等規則は、84条で販売費及び一般管理費の範囲を、85条で表示の方法を定めますが、ここにも費目の名前はありません。

会社の販売及び一般管理業務に関して発生したすべての費用は、販売費及び一般管理費に属するものとする。
販売費及び一般管理費は、適当と認められる費目に分類し、当該費用を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。

費目の例示は省令ではなく、金融庁が出している財務諸表等規則ガイドラインの84にあります。

規則第84条に規定する販売費及び一般管理費に属する費用とは、会社の販売及び一般管理業務に関して発生した費用例えば販売手数料、荷造費、運搬費、広告宣伝費、見本費、保管費、納入試験費、販売及び一般管理業務に従事する役員、従業員の給料、賃金、手当、賞与、福利厚生費並びに販売及び一般管理部門関係の交際費、旅費、交通費、通信費、光熱費及び消耗品費、租税公課、減価償却費、修繕費、保険料及びのれんの償却額をいう。

つまり上場会社の決算書でも「通信費」はガイドラインの例示であって、省令本文の語ではありません。所得税法施行規則には別表を含めて1回も出てこないので、個人事業主の帳簿で通信費という区分を使うかどうかも、法令ではなく記帳の慣行と国税庁の決算書の様式の話になります。

一方、通信にまつわる語で法律の本文が名指ししているものがあります。「電話加入権」です。法人税法2条22号は固定資産をこう定義します。

土地(土地の上に存する権利を含む。)、減価償却資産、電話加入権その他の資産で政令で定めるものをいう。

所得税法2条1項18号も同じ並びで「土地(土地の上に存する権利を含む。)、減価償却資産、電話加入権その他の資産(山林を除く。)で政令で定めるものをいう。」と書いています。受けた法人税法施行令12条(固定資産の範囲)は1号に土地、2号に減価償却資産、3号に電話加入権、4号にこれらに準ずるものを置き、13条(減価償却資産の範囲)の列挙には電話加入権がありません。それどころか、無形固定資産を並べた13条8号のナは、電話会社に設備費用を負担して役務の提供を受ける権利を「電気通信施設利用権」と定義したうえで、こう除外しています。

電気通信役務の提供を受ける権利(電話加入権及びこれに準ずる権利を除く。)をいう。

読み替えると、電話加入権は「時の経過によりその価値の減少しないもの」として減価償却できない固定資産(法人税法施行令13条柱書)で、電気通信施設利用権は減価償却資産で耐用年数20年(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第三)です。所得税側も所得税法施行令5条3号・6条8号で同じ構造です。通信費の実務で「回線の工事負担金や加入権は経費か資産か」と迷ったときの答えは、費用の科目名にではなく、この資産側の条文にあります。

範囲 — 何が通信費に入るか

法令が中身を決めていないので、範囲は「情報をやり取りするための費用」という性質で引きます。一般に次のものを通信費に入れます。

支出科目補足
固定電話・携帯電話・IP電話の基本料・通話料通信費通話明細は在宅勤務の精算の根拠にもなる(在宅勤務の節
インターネット回線・プロバイダ料・Wi-Fiルーターのレンタル料通信費ルーター本体を買えば消耗品費(10万円以上は器具備品)
切手・はがき・レターパック・書留料・速達料通信費消費税は購入時非課税・使用時課税仕入れ(消費税の節)。買い置きは期末に貯蔵品
書類・見積書・契約書を宅配便やバイク便で送る費用通信費(荷造運賃でも可)商品を送るなら荷造運賃・運搬費。決めたら継続
FAX・電報通信費
サーバー代・ドメイン代・メールサービス利用料通信費(支払手数料・ソフトウェア利用料でも可)海外事業者のものは「電気通信利用役務の提供」(消費税の節
Web会議・チャット・クラウドストレージなどのSaaS利用料通信費(支払手数料・ソフトウェア利用料でも可)同上。年払いは短期前払費用の通達(いつ経費になるかの節
電話機・スマホ本体・ルーター本体消耗品費(10万円以上は器具備品)通信費ではなく物の購入。消耗品費とは
電話加入権・施設設置負担金電話加入権(固定資産)減価償却しない(法人税法施行令13条の列挙に無い)
電話会社に支払う回線設備の負担金で役務の提供を受ける権利電気通信施設利用権(無形固定資産)耐用年数20年(耐用年数省令 別表第三)

表の右列の「でも可」は、法令上どちらでも損金・必要経費の結論が変わらないことを示しています。大事なのは一度決めた区分を毎期続けることで、同じ支出が期によって通信費になったり支払手数料になったりすると、前期比較と勘定科目内訳明細書の突合が崩れます。

隣の科目との境界 — 荷造運賃・広告宣伝費・消耗品費・支払手数料・給与・減価償却費

通信費の境界は「何のための支出か」で引きます。法人税法施行規則の別表が通信費と並べて別の費目として挙げている語(荷造包装費・運搬費・広告宣伝費・消耗品費・手数料・給料手当・減価償却費)が、そのまま境界の相手です。

その支出は何のため? (科目名は会社が付ける) 情報をやり取りする(電話・ネット・郵便・FAX・書類の送付) → 通信費 商品・製品を顧客へ送る(宅配便・郵送) → 荷造運賃・運搬費(別表二十四は荷造包装費・運搬費を別に挙げる) 不特定多数へDM・カタログを送る → 広告宣伝費(郵送料も含めて宣伝の費用として扱う) 機器そのものを買う(電話機・スマホ・ルーター本体) → 消耗品費/10万円以上は器具備品(減価償却) 回線を引く権利・設備負担金 → 電話加入権(償却なし)/電気通信施設利用権(20年)
図1 通信費と隣の科目の振り分け。人が動けば旅費交通費、物が動けば荷造運賃、情報が動けば通信費。機器と権利は資産側の条文(法人税法施行令12条・13条)で決まる。

荷造運賃・運搬費 — 物を送るか、情報を送るか

同じ宅配便でも、顧客に商品を送る費用は売上に直接ひも付く荷造運賃(運搬費)、取引先に契約書や請求書を送る費用は通信費です。別表二十四(十四)が通信費と「荷造包装費、運搬費」を別に挙げているのはこの区別です。ECで商品と納品書を同梱して送る費用は、まとめて荷造運賃で構いません。

広告宣伝費 — 不特定多数への郵送

ダイレクトメールやカタログを不特定多数に送る郵送料は、中身と一体の宣伝費用として広告宣伝費に入れるのが一般的です。特定の得意先だけに贈り物を送る費用は交際費の線に入るので、接待交際費と会議費の違いで確かめます。

消耗品費・器具備品 — 機器は通信費ではない

電話機・スマホ・ルーター・モデムなど機器そのものは、通信のために使うとしても物の購入で、10万円未満なら消耗品費、10万円以上は器具備品として減価償却資産になります(10万円・20万円・30万円の線は消耗品費とは少額減価償却資産に整理)。携帯電話会社の分割払いで「通信料と一緒に引き落とされる端末代」は、明細を見て端末代を切り出します。

支払手数料 — 振込手数料・決済手数料

銀行の振込手数料やカード決済手数料は通信費ではなく支払手数料です(振込手数料の勘定科目)。サーバー代・ドメイン代・SaaS利用料は、通信費・支払手数料・ソフトウェア利用料のどれでも構いませんが、一度決めた区分を続けます。

給与・福利厚生費 — 従業員のスマホ代を会社が払うとき

従業員個人のスマホ代・ネット代を会社が負担するとき、業務使用分を精算して払えば通信費、使っても使わなくても返さなくてよい定額の手当なら給与(所得税法28条1項の給与等)として源泉徴収の対象になります。線の引き方は在宅勤務の節で国税庁FAQの算式とともに整理します。

減価償却費 — 電話加入権は償却しない、電気通信施設利用権は20年

第1節のとおり、電話加入権は法人税法施行令13条の列挙に無いので減価償却できず、取得価額のまま資産に残ります。電話会社に設備費用を負担して役務の提供を受ける権利は電気通信施設利用権(13条8号ナ)で、耐用年数20年の無形固定資産です。どちらも「通信費」として一度に落とすものではありません。

いつ経費になるか — 債務確定・期末の未払・年払いの前払費用・切手の買い置き

通信費が損金になる時期は、法人税法22条3項2号の債務確定基準で決まります。

前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

「債務の確定」の中身は法人税基本通達2-2-12が3つの要件で定めています。

(1) 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。(2) 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。(3) 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。

電話料金・ネット料金は利用した月の翌月に請求が来るのが普通です。3月決算なら、3月分の料金は4月に請求されますが、3月末の時点で契約に基づく債務は成立し(要件1)、3月中の通話・通信という給付の事実は発生し(要件2)、金額は利用実績か前月実績で合理的に算定できる(要件3)ので、3月分は3月の損金です。請求書が来てから計上する運用だと、毎期1か月分がずれたまま固定されます。期末に未払費用(または未払金)で立てる処理は未払費用と未払金と買掛金の違いにまとめています。

逆向きの論点が、年払いにしたネット回線料やSaaS利用料です。原則は期末時点でまだ受けていない役務の分を前払費用として翌期に送りますが、法人税基本通達2-2-14(短期の前払費用)が例外を認めます。

前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。

「支払った日から1年以内に提供を受ける役務」「継続して」が条件です。4月〜翌年3月分を3月中に年払いすれば支払日から1年以内に収まりますが、4月に翌年4月分まで払うと1年を超えるので全額を当期に落とせません。消費税の仕入税額控除の時期も、この通達の適用を受けていれば支出日の課税期間でよいとされています(消費税法基本通達11-3-8)。

切手・はがきの買い置きは棚卸資産(貯蔵品)です。期末に残っている分は原則として当期の損金ではなく、翌期に使ったときの損金になります。ただし法人税基本通達2-2-15(消耗品費等)が、一定の条件で買った期の損金にすることを認めています。

消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。

例示に切手の語はありませんが、事務用消耗品に準ずる棚卸資産として、毎期おおむね一定数量を買い経常的に使っているなら、購入時に通信費で落とす処理を継続していれば認められるのがこの通達の線です。期末に大量にまとめ買いして損金を作る形は「おおむね一定数量」の条件から外れるので、貯蔵品として翌期に送ります。消費税側にも同じ「購入時か使用時か」の論点があり、次の節で扱います。

消費税 — 国内は課税・国際は免税・切手は非課税、海外クラウドは電気通信利用役務

通信費は、同じ科目の中に課税仕入れ・免税(課税仕入れにならない)・非課税(購入時)が混ざる数少ない科目です。仕入税額控除の集計で間違えやすいので、支出の種類ごとに区分を固定しておきます。

国内の電話・ネット・宅配便 請求書=インボイス 課税仕入れ(10%)。仕入税額控除の対象。 期末の未払分も役務の提供を受けた期の課税仕入れ。 国際電話・国際郵便(EMS等) 国内と国外にわたる通信・郵便 免税(消費税法7条1項3号・通達7-2-1(9))。 課税仕入れにならない(2条1項12号の括弧書き)→ 控除なし。 切手・はがき・レターパック 郵便局・切手販売所で購入 購入時は非課税(別表第二4号イ)→ 使った時に課税仕入れ(11-3-7)。 継続適用なら購入時でも可。ポスト投函は帳簿のみで控除。 金券ショップで買った切手 郵便局・販売所以外での譲渡 課税(通達6-4-1)。購入時に課税仕入れ。 控除には店のインボイスが要る。 海外事業者のクラウド・SaaS 電気通信利用役務の提供(2条1項8号の3) 事業者向け → 買い手が申告するリバースチャージ(5条1項)。 消費者向け → 売り手が適格請求書発行事業者かを確認。
図2 通信費の消費税区分。同じ「通信費」の行に課税・免税・非課税が並ぶので、支出の種類で区分を固定する。

国内の電話・ネット・宅配便 — 課税仕入れ

国内の電話会社・プロバイダ・宅配会社への支払いは課税仕入れで、請求書がインボイス(適格請求書)です。期末に未払で立てた3月分も、役務の提供を受けた3月の課税期間の課税仕入れになります。

国際電話・国際郵便 — 免税なので課税仕入れにならない

消費税法7条1項3号は、次の取引を免税にしています。

国内及び国内以外の地域にわたつて行われる旅客若しくは貨物の輸送又は通信

消費税法基本通達7-2-1は輸出免税の範囲を列挙し、その(9)で「国内と国外との間の通信又は郵便若しくは信書便」を挙げています。国際電話・国際ローミング・EMSなどの国際郵便がこれです。買う側から見ると、免税の取引は課税仕入れの定義から外れています。消費税法2条1項12号は課税仕入れの範囲を括弧書きでこう限定しています。

第七条第一項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するもの及び第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの以外のものに限る。

つまり国際電話料金は、支払った金額に消費税が含まれておらず、仕入税額控除の対象にもなりません。会計ソフトでは「免税仕入れ」や「対象外」の区分で、仮払消費税を立てずに全額を通信費にします。国内の電話料金と同じ請求書に国際通話分が載るときは、請求書の区分を見て分けます。

切手・はがき・レターパック — 買ったときは非課税、使ったときに課税仕入れ

消費税法6条1項・別表第二4号イは、郵便局などでの郵便切手類の譲渡を非課税にしています。

日本郵便株式会社が行う郵便切手類販売所等に関する法律(昭和二十四年法律第九十一号)第一条(定義)に規定する郵便切手その他郵便に関する料金を表す証票(以下この号及び別表第二の二において「郵便切手類」という。)の譲渡

非課税なのは「郵便切手類の譲渡」であって、切手を貼って送る「郵便の役務」は課税です。だから切手は、買ったときではなく使ったとき(郵便の役務の提供を受けたとき)に課税仕入れになります。消費税法基本通達11-3-7がこう整理しています。

購入時においては課税仕入れには該当せず、役務又は物品の引換給付を受けた時に当該引換給付を受けた事業者の課税仕入れとなるのであるから留意する。ただし、次の場合において、郵便切手類又は物品切手等(自ら引換給付を受けるものに限る。)を購入した事業者が、継続して当該郵便切手類又は物品切手等の対価を支払った日の属する課税期間の課税仕入れとしているときは、これを認める。

「次の場合」の(1)は、郵便切手類の引換給付が施行規則26条の6第2号の郵便の役務に当たる場合です。その26条の6第2号はこう定めています。

法別表第二第四号イに規定する郵便切手類のみを対価とする郵便法(昭和二十二年法律第百六十五号)第一条(この法律の目的)に規定する郵便の役務及び貨物の運送(同法第三十八条第一項(郵便差出箱の設置)に規定する郵便差出箱に差し出された郵便物及び貨物に係るものに限る。)

つまり、自社で使う切手を買い、ポストに投函して使う通常の形なら、継続適用を条件に購入時の課税仕入れとしてよい、ということです。あわせてインボイス制度では、この26条の6第2号の郵便は適格請求書の交付義務が免除され(消費税法57条の4第1項ただし書・施行令70条の9第2項3号)、買い手は帳簿のみの保存で仕入税額控除ができます(施行令49条1項1号ニ→施行規則15条の4第1号)。切手を貼ってポストに出す郵便にインボイスは要りません。一方、郵便局の窓口でゆうパックやレターパックの料金を払えば、窓口の領収書がインボイスです。

非課税になる「郵便切手類」の範囲は通達6-4-2が郵便切手・郵便葉書・郵便書簡・特定封筒(レターパックなど)と定めています。そして非課税は郵便局や切手販売所での譲渡に限られます。通達6-4-1が念を押しています。

郵便切手類販売所等一定の場所における譲渡に限られるから、これら以外の場所における郵便切手類又は印紙の譲渡については、同号の規定が適用されないのであるから留意する。

金券ショップで買う切手は課税取引で、購入時に課税仕入れになります。控除には店のインボイスが必要です。

海外事業者のクラウド・SaaS — 電気通信利用役務の提供

海外の事業者から受けるクラウドストレージ・Web会議・広告配信などのサービスは、消費税法2条1項8号の3の「電気通信利用役務の提供」です。

資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物(著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第一号(定義)に規定する著作物をいう。)の提供(当該著作物の利用の許諾に係る取引を含む。)その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供(電話、電信その他の通信設備を用いて他人の通信を媒介する役務の提供を除く。)であつて、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいう。

括弧書きのとおり、電話そのものは「他人の通信を媒介する役務」として電気通信利用役務から除かれ、第1節の国内/国際の区分で扱います。電気通信利用役務のうち、国外事業者が行い、取引条件等から相手が通常事業者に限られるものが「事業者向け電気通信利用役務の提供」(8号の4)で、これは受ける側の事業者が申告・納税するリバースチャージ方式(4条1項の特定仕入れ・5条1項の特定課税仕入れ)です。誰でも契約できる消費者向けのサービスは国外事業者側が納税義務者で、買い手が仕入税額控除を受けるには売り手が適格請求書発行事業者として登録しているかを確かめます(登録番号の形式はインボイス登録番号チェックで確認できます)。

消費税計算 — 税込の通信費から税抜金額と消費税額を端数処理つきで計算する

在宅勤務の通信費を従業員に払う — 渡切りは給与、精算なら非課税、算式は「×在宅日数÷月の日数×1/2」

在宅勤務で従業員が自分のスマホやネット回線を仕事に使うとき、会社がその費用を負担する形は2つあります。国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」(令和3年1月・令和8年4月1日更新)の問1がこう整理しています。

在宅勤務に通常必要な費用について、その費用の実費相当額を精算する方法により、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はありません

一方、従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使わなかった場合でも返す必要がない在宅勤務手当(例えば毎月5,000円の渡切り支給)は、従業員に対する給与として課税する必要がある、と同じ問1が続けます。精算なら通信費、渡切りなら給与。会社の帳簿でも、前者は通信費(または福利厚生費)、後者は給料手当で源泉徴収の対象です。

では「業務のために使用した部分」をどう計算するか。問6が、通話料と基本使用料・通信料で分けて答えています。通話料は通話明細書で業務分を確認でき、その金額を支給するなら給与課税は不要です。基本使用料やインターネットの通信料は業務分を合理的に計算する必要があり、次の算式で算出したものを支給する場合は給与として課税しなくて差し支えないとしています。

業務のために使用した基本使用料や通信料等 = 従業員が負担した1か月の基本使用料や通信料等 × その従業員の1か月の在宅勤務日数 ÷ 該当月の日数 × 1/2
「1/2」は、1日24時間から平均睡眠時間8時間を除いた16時間のうち法定労働時間8時間が占める割合(8÷16)として置かれた数字です。これより精緻な方法で業務使用分を出している場合も給与課税は不要とされています。

問7の設例がそのまま使えます。従業員のスマホ料金4,800円(基本使用料3,000円+データ通信料1,000円+業務使用の通話料800円・在宅勤務15日・9月分)を会社が全額支給した場合、通話料800円は明細で業務分と確認できるので非課税、基本使用料とデータ通信料の4,000円のうち業務分は 4,000円×15日÷30日×1/2=1,000円(1円未満切上げ)で非課税、残りの3,000円が給与課税になります。

注意点が1つ。問6の注はこう書いています。

従業員本人が所有するスマートフォンの本体の購入代金や業務のために使用したと認められないオプション代等(本体の補償料や音楽・動画などのサブスクリプションの利用料等)を企業が負担した場合には、その負担した金額は従業員に対する給与として課税する必要があります。

本体代や動画サブスクを会社が持てば、算式の外で給与です。会社が自社名義で契約したスマホや回線を従業員に貸与する形なら、この按分の論点は生じず全額が会社の通信費になります。

個人事業主 — 家事按分。所得税法45条・施行令96条

個人事業主の通信費で必ず出る論点が、自宅のネット回線や私用と兼ねるスマホの家事按分です。所得税法45条1項1号は必要経費にならないものをこう定めます。

家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの

受けた所得税法施行令96条1号が、家事関連費のうち必要経費に入れられる部分を定めています。

家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費

2号は青色申告者について、取引の記録等に基づいて業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分を必要経費にできるとしています。どちらも「明らかに区分できる」「明らかにされる」が条件で、スマホなら通話明細・データ使用量、回線なら使用日数や時間で業務割合を出し、その根拠を残します。「5割を超えないと経費にできない」という俗説は条文にはありません(家事按分の割合に上限はない)。事業用の口座やカードから私用分を含めて払ったときは、私用分を事業主貸で抜きます。

なお所得税法施行規則には別表を含めて「通信費」の語は出てきません。個人事業主の帳簿で通信費という区分を使うのは法令の要請ではなく、国税庁の決算書の様式と記帳の慣行によるものです。消費税の区分(国内課税・国際免税・切手非課税)と短期前払費用の扱い(所得税基本通達37-30の2)は法人と同じです。

仕訳例6本 — 月額料金・期末の未払・切手・国際電話・在宅勤務の精算・家事按分

税込経理でなく税抜経理で示します。消費税の区分に注目してください。

取引借方貸方補足
① 会社名義の携帯電話料金11,000円(税込)が口座から引き落とされた通信費 10,000
仮払消費税 1,000
普通預金 11,000課税仕入れ。電話会社の請求書がインボイス
② 3月決算。3月分のネット回線料22,000円(税込)の請求が4月に来る通信費 20,000
仮払消費税 2,000
未払費用 22,000債務確定(法基通2-2-12)。課税仕入れも3月の課税期間
③ 郵便局で切手11,000円分を買い、自社の郵便物に使う(購入時に課税仕入れとする継続処理)通信費 10,000
仮払消費税 1,000
現金 11,00011-3-7ただし書。ポスト投函なら帳簿のみ保存で控除。期末の未使用分は貯蔵品へ振替(2-2-15の条件を満たせば振替不要)
④ 国際電話料金5,500円を支払った通信費 5,500普通預金 5,500免税=課税仕入れにならない。仮払消費税を立てない
⑤ 在宅勤務の従業員に通信費の業務使用分1,000円を精算して支払った(算式による)通信費 1,000現金 1,000給与課税なし。渡切り手当5,000円なら「給料手当 5,000」で源泉徴収の対象
⑥ 個人事業主。自宅のネット回線6,600円(税込)を事業用口座から支払い、事業割合40%通信費 2,400
仮払消費税 240
事業主貸 3,960
普通預金 6,600所令96条。割合の根拠(使用日数・時間)を残す

⑤の渡切り手当を給与にした場合、社会保険の報酬にも入るので、法定福利費の計算にも波及します。④は金額が小さくても区分を誤ると仕入税額控除の集計がずれるので、国際通話を含む請求書は区分ごとに分けて入力します。

よくある質問

Q. 通信費とは何ですか?

A. 電話・携帯電話・インターネット回線・プロバイダ料・切手や郵便料・書類を送る宅配便・FAXなど、情報をやり取りするためにかかる費用をまとめる販売費及び一般管理費の科目です。法人税法・所得税法・消費税法・会社計算規則・財務諸表等規則の本文に定義は無く、法人税法施行規則の別表二十四(十四)・別表二十五(二)・別表二十六と金融庁の財務諸表等規則ガイドライン84が費目の例示として名前を挙げているだけです。

Q. 通信費は法律で決まっている科目ですか?

A. いいえ。条文本文に「通信費」の語は0回で、別表やガイドラインの例示にあるだけです。別表二十四は「それぞれ適当な名称を付して区分し」としており、科目名は会社が付けます。一方「電話加入権」は法人税法2条22号・所得税法2条1項18号が固定資産として名指しし、法人税法施行令12条3号で固定資産、13条の列挙から外れるので減価償却しない資産です。

Q. 切手を買ったときの消費税はどうなりますか?

A. 郵便局や切手販売所で買う切手は非課税(消費税法別表第二4号イ)で、購入時は課税仕入れになりません。切手を使って郵便を出したときに課税仕入れになります(消費税法基本通達11-3-7)。ただし自社で使う切手を継続して購入時の課税仕入れとしている場合は認められ、ポストに投函する郵便は帳簿のみの保存で仕入税額控除ができます(施行規則26条の6第2号・15条の4第1号)。金券ショップで買う切手は課税で、店のインボイスが要ります。

Q. 国際電話やEMS(国際郵便)の消費税はどうなりますか?

A. 国内と国外にわたる通信・郵便は輸出免税です(消費税法7条1項3号・消費税法基本通達7-2-1(9))。買う側では、免税の取引は課税仕入れの定義から除かれている(2条1項12号)ので、仮払消費税を立てず全額を通信費にし、仕入税額控除の対象にもしません。

Q. 電話加入権は経費になりますか?

A. なりません。電話加入権は法人税法2条22号が固定資産として名指しし、法人税法施行令13条(減価償却資産の範囲)の列挙に無いため減価償却もできません。取得価額のまま資産に残ります。電話会社に設備の費用を負担して役務の提供を受ける権利は電気通信施設利用権(13条8号ナ)で、こちらは耐用年数20年で償却します。

Q. 在宅勤務の従業員にスマホ代を払うと給与になりますか?

A. 業務のために使用した部分を精算して払う分は給与になりません。国税庁FAQの算式では、基本使用料・通信料の業務分を 1か月の料金×その従業員の1か月の在宅勤務日数÷該当月の日数×1/2 で計算し、通話料は通話明細の業務分をそのまま使います。使わなくても返さなくてよい定額の在宅勤務手当や、本体代・動画サブスクの負担分は給与として課税されます。

Q. 期末にまだ請求が来ていない電話料金はどうしますか?

A. 決算期末までに債務が成立し、通話・通信という給付の事実が発生し、金額を合理的に算定できる(法人税基本通達2-2-12)ので、請求書が未着でも当期の損金として未払費用に計上します。消費税の課税仕入れも役務の提供を受けた期に属します。

Q. 個人事業主の自宅のネット代は通信費にできますか?

A. 業務に必要な部分を明らかに区分できる場合、その部分が必要経費です(所得税法45条1項1号・施行令96条1号)。青色申告者は取引の記録等から業務に直接必要だったことが明らかな部分も入れられます(同2号)。使用日数や時間で割合を出し根拠を残します。「5割以下は認められない」という線は条文にありません。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

この内容をXで共有