消耗品費とは — 範囲・事務用品費/雑費との違い・10万円の線・期末の貯蔵品を条文で
結論から言うと、消耗品費とは、事務用品・日用品・工具・包装材料のように使えば減っていく物品と、取得価額10万円未満で短期間に使い切る備品の購入費をまとめる費用科目です。コピー用紙・ボールペン・トナー・電池・洗剤・作業用手袋・マウス・ケーブル・1台9万円のプリンターなどが、実務では一般にここに入ります。
ただし条文を読むと、2つの事実が出てきます。①「消耗品費」という科目名は法人税法・所得税法の本文には0回で、法人税法施行規則の別表二十四・二十五・二十六に帳簿と損益計算書の科目名として3回出るだけです。②一方「消耗品」という言葉は、法人税法施行令10条6号・所得税法施行令3条6号が棚卸資産(「消耗品で貯蔵中のもの」)として定義しています。つまり法律の原則では、消耗品は買った時には資産で、消費した時に費用になる。買った日に全額を経費にしてよいというのは、法人税基本通達2-2-15(個人は所得税基本通達37-30の3)が「おおむね一定数量」「経常的に消費」「継続適用」を条件に認めている取扱いです。
実務で効く要点は4つです。①10万円の線(税抜経理なら税抜、税込経理なら税込の金額)で消耗品費か資産かが分かれ、20万円未満なら3年の一括償却、中小企業者等の少額特例は令和8年4月1日以後に取得したものから40万円未満です(それ以前の取得は30万円未満。国税庁のタックスアンサー No.5403・5408・2100 は2026年8月21日時点でまだ30万円表記)。②事務用品費・雑費との分け方は法令が決めておらず、「適当な名称」で区分すればよい。決めたら毎期同じにすることが要点です。③決算前にまとめ買いして残った分は、通達の要件を外れる部分を貯蔵品として資産に戻す。青色申告法人は期末に「消耗品で貯蔵中のもの」の棚卸をすることが施行規則56条で求められています。④個人事業主は自宅兼用の支出を家事按分する。
この記事は、①条文の中の「消耗品費」と「消耗品」、②範囲、③隣の科目との境界、④いつ経費になるか(10万円・20万円・40万円の線と期末の貯蔵品)、⑤仕訳の型と設例、⑥消費税、⑦個人事業主、の順に、条文を引用しながら整理します。10万円・20万円・40万円のどれを選ぶと得かの比較は少額減価償却資産と一括償却資産に、税抜・税込で判定金額が変わる話は税抜経理と税込経理に譲ります。
条文の中の「消耗品費」と「消耗品」 — 費用の名は別表に3回、資産の名は施行令に
最初に、この言葉が法令のどこにあるかを数えます。e-Gov 法令API で各法令の全文を取得し、「消耗品費」「消耗品」の出現回数を数えた結果が次の表です。
| 法令 | 「消耗品費」 | 「消耗品」 | どこに |
|---|---|---|---|
| 法人税法 | 0回 | 0回 | —(2条20号は「商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産」と書き、中身は政令に委ねる) |
| 法人税法施行令 | 0回 | 1回 | 10条6号「消耗品で貯蔵中のもの」=棚卸資産の範囲 |
| 法人税法施行規則 | 3回 | 6回 | 別表二十四(十四)帳簿の記載事項、別表二十五(二)損益計算書の科目、別表二十六 普通法人等の帳簿の記録方法。ほか56条が期末に「消耗品で貯蔵中のもの」の棚卸を求め、別表二十四(十)・二十六(十)が「消耗品」を棚卸で整理する資産として名指し |
| 所得税法 | 0回 | 0回 | — |
| 所得税法施行令 | 0回 | 1回 | 3条6号「消耗品で貯蔵中のもの」=棚卸資産の範囲 |
| 所得税法施行規則 | 0回 | 0回 | —(青色申告決算書の「消耗品費」欄は国税庁の様式であって省令の別表ではない) |
| 租税特別措置法 | 0回 | 0回 | — |
| 消費税法 | 0回 | 0回 | — |
| 消費税法施行令 | 0回 | 16回 | 4条6号(棚卸資産の範囲)のほか、18条以下の輸出物品販売場(免税店)の「消耗品」=食品類・飲料類・薬品類・化粧品類。経理の消耗品費とは別の意味 |
| 財務諸表等規則 | 0回 | 1回 | 15条10号 流動資産「消耗品、消耗工具、器具及び備品その他の貯蔵品で相当価額以上のもの」 |
| 会社計算規則 | 0回 | 1回 | 74条3項1号 流動資産「消耗品、消耗工具、器具及び備品その他の貯蔵品であって、相当な価額以上のもの」 |
並べると形が見えます。費用科目としての「消耗品費」は、法人税法施行規則の別表にだけあります。別表二十四は青色申告法人の帳簿の記載事項(施行規則54条)、別表二十五は貸借対照表・損益計算書の科目(57条)、別表二十六は白色申告法人の帳簿の記録方法(66条2項)で、いずれも「このような名称で区分して記録せよ」という帳簿側の規定です。旅費交通費と同じ位置にあります。
青色申告法人は、各事業年度終了の日現在において、その業種、業態及び規模等の実情により、おおむね別表二十五に掲げる科目に従い貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない。
商品製品原材料等仕入高、期首商品製品原材料等棚卸高、賃金、給料手当、法定福利費、厚生費、外注工賃、動力費、消耗品費、地代家賃、保険料、修繕費、減価償却費、繰延資産の償却費、旅費交通費、通信費、水道光熱費、手数料、倉敷料、荷造包装費、運搬費、広告宣伝費、公租公課、機密費、接待交際費、寄附金、利子割引料、雑費
一方、資産としての「消耗品」は施行令が定義しています。法人税法2条20号は棚卸資産を次のように定め、中身を政令に委ねています。
商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産で棚卸しをすべきものとして政令で定めるもの(有価証券及び第六十一条第一項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)に規定する短期売買商品等を除く。)をいう。
受けた施行令10条は7つの号を並べ、その6号が「消耗品で貯蔵中のもの」です。所得税法施行令3条6号、消費税法施行令4条6号も同じ文言で、3つの税法がそろって「倉庫にある消耗品は棚卸資産」と言っています。
法第二条第二十号(棚卸資産の意義)に規定する政令で定める資産は、次に掲げる資産とする。
会計側も同じです。財務諸表等規則15条10号と会社計算規則74条3項1号は、流動資産の中に消耗品を「貯蔵品」として置いています。「相当価額以上のもの」という限定が付いているので、少額なものまで資産計上せよとは言っていませんが、消耗品の置き場は本来は資産の側です。
消耗品、消耗工具、器具及び備品その他の貯蔵品で相当価額以上のもの
消耗品、消耗工具、器具及び備品その他の貯蔵品であって、相当な価額以上のもの
では、なぜ実務ではコピー用紙を買った日に消耗品費で落としてよいのか。それをつないでいるのが法人税基本通達2-2-15(消耗品費等)で、後の「いつ経費になるか」で全文を引きます。ここでは、「消耗品」は資産の名前、「消耗品費」は費用の名前、両者の間を通達が橋渡ししている、という構図だけ押さえてください。
範囲 — 何が消耗品費に入るか
消耗品費に入る物品には、入口が2つあります。1つは通達2-2-15が名指しする「事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品」のような、棚卸資産としての消耗品。もう1つは、取得価額10万円未満または使用可能期間1年未満の減価償却資産で、こちらは法人税法施行令133条(個人は所得税法施行令138条)が「損金経理をすれば全額損金」と定めるものです。科目名は法令が決めていないので、後者を「消耗品費」で受けるか「備品費」「器具備品」で受けるかは会社の決めですが、実務では一般に消耗品費で処理します。
| 種類 | 例 | 扱い・根拠 |
|---|---|---|
| 事務用消耗品 | コピー用紙、筆記具、ファイル、付箋、トナー・インク、封筒 | 通達2-2-15の例示。おおむね一定数量・経常的に消費するものは、継続適用を条件に買った日の損金 |
| 作業用消耗品 | 作業用手袋、ウエス、刃物、研磨材、洗剤、マスク | 同上。製品の製造に使うものは製造原価に入れる(2-2-15の注) |
| 包装材料・広告宣伝用印刷物・見本品 | 段ボール・緩衝材・テープ、チラシ・カタログ、サンプル品 | 通達2-2-15は「消耗品費等」として同列に扱う。科目は荷造包装費・広告宣伝費でもよい(別表に名前がある) |
| 10万円未満の備品 | マウス・キーボード、電卓、椅子1脚、9万円のプリンター、1単位で10万円未満の工具 | 減価償却資産だが、施行令133条(所令138条)で事業の用に供した事業年度に損金経理すれば全額損金。判定は通常1単位として取引される単位ごと(法基通7-1-11) |
| 使用可能期間1年未満のもの | その業種で一般に消耗性と認識され、平均的な使用状況から1年もたないもの | 同上(施行令133条・法基通7-1-12)。法定耐用年数ではなく実際の使用状況で見る |
| 10万円以上の備品 | 15万円のパソコン、25万円の複合機 | 原則は資産(工具器具備品)。20万円未満は一括償却資産、中小企業者等は40万円未満まで少額特例(後述) |
ソフトウェアも減価償却資産に含まれているので(法人税法施行令13条8号)、同じ10万円の線で判定します。
実務上の落とし穴は、「消耗品」という言葉の日常的な意味と、税法上の線がずれることです。たとえば9万円のプリンターは、誰も「消耗する品」とは呼びませんが、消耗品費で処理して差し支えありません。根拠は「消耗するから」ではなく、10万円未満の減価償却資産を損金経理したからです。逆に、決算前に1年分まとめて買った事務用品は、日常的には消耗品そのものですが、「経常的に消費するもの」の範囲を超える部分は棚卸資産として残ります。消耗品費に入るかどうかは、物の性質ではなく、金額の線と消費のしかたで決まります。
隣の科目との境界 — 事務用品費・雑費・備品・貯蔵品・修繕費・荷造包装費
科目名について、法令が決めているのは「名前」ではなく「区分せよ」という命令です。財務諸表等規則85条1項は販売費及び一般管理費を「適当と認められる費目に分類し、当該費用を示す名称を付した科目」で載せよと言い、法人税法施行規則の別表二十四(十四)も、例示した名前に「それぞれ適当な名称を付して区分し」と書いています。つまり事務用品費を消耗品費から分けるかどうか、雑費をどこまで広く使うかは、会社が決めてよい。決めたら毎期同じ基準で続けることの方が、名前よりも大切です。
販売費及び一般管理費は、適当と認められる費目に分類し、当該費用を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。
賃金、給料手当、法定福利費、厚生費、外注工賃、動力費、消耗品費、修繕費、減価償却費、繰延資産の償却費、地代家賃、保険料、旅費交通費、通信費、水道光熱費、手数料、倉敷料、荷造包装費、運搬費、広告宣伝費、公租公課、機密費、接待交際費、寄附金、利子割引料、雑費等に、それぞれ適当な名称を付して区分し、それぞれ、その取引の年月日、支払先、事由及び金額
別表二十四(十四)には、もう1つ実務に効く一文があります。
ただし、少額の経費で本文の規定により難いものについては、それぞれその日々の合計金額のみを記載することができる。
消耗品費はこの「少額の経費」の典型で、1本ずつのボールペンを取引先別に書く必要はなく、日々の合計金額で帳簿に載せてよいことが別表で明示されています。そのうえで、隣の科目との線を一般的な実務の形で整理します。
| 科目 | 法令上の名前 | 消耗品費との線(一般的な実務) |
|---|---|---|
| 事務用品費 | 無し | 消耗品費のうち事務用のものだけを分けた科目。分けるかは会社の決め。分けるなら、文具・用紙類は事務用品費、それ以外の物品は消耗品費、のように線を文書化して継続する |
| 雑費 | 別表二十四(十四)・二十五(二)に有り | どの科目にも収まらない少額で発生がまれな支出。消耗品費は「物品の購入」、雑費は「物品でない・まれなもの」が一般的な線。雑費が膨らむと内訳が見えなくなるので、物品は消耗品費に寄せる |
| 工具器具備品(資産) | 減価償却資産(法人税法施行令13条) | 10万円以上(税抜経理なら税抜金額)は原則ここ。一括償却資産・少額特例を使うかは選択 |
| 貯蔵品(資産) | 財規15条10号・会社計算規則74条3項1号・施行令10条6号 | 買ったがまだ使っていない消耗品、未使用の切手・収入印紙。通達の要件を満たす経常的な事務用品は振替不要、まとめ買い分は期末にここへ |
| 修繕費 | 別表二十四(十四)・二十五(二)に有り | 修理に使った部品・材料は修繕費に入れるのが一般的。価値を高める支出は資本的支出で資産 |
| 荷造包装費・広告宣伝費 | 別表二十四(十四)・二十五(二)に有り | 包装材料・印刷物は、通達2-2-15が「消耗品費等」として同じ時期の扱いを認める。科目は別表にそれぞれあるので分けてよい |
| 福利厚生費・会議費 | 厚生費は別表に有り | 従業員用のお茶・コーヒーは福利厚生費か消耗品費、来客用は会議費、という分け方が一般的。どれでも損金だが、消費税の税率が飲食料品は8%になる |
一般に、税務調査で問題になるのは「消耗品費か雑費か」ではなく、10万円以上の資産を消耗品費に入れて一度に落としていないか、期末に大量に買った物品を全額費用にしていないかの2点です。科目の名前より、次の「いつ経費になるか」の方が実害に直結します。
いつ経費になるか — 原則は消費した日、通達が「買った日」を認める3条件、10万円・20万円・40万円の線
法人税法22条3項2号は、損金になる販売費・一般管理費を「償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く」と書いています。消耗品は買えば債務は確定しますが、それだけでは足りません。買った消耗品は施行令10条6号の棚卸資産なので、原則は消費した日に費用になります。通達2-2-15の冒頭がそう言っています。
前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。
この通達が認める「買った日に損金」の条件は3つです。①事務用消耗品・作業用消耗品・包装材料・広告宣伝用印刷物・見本品その他これらに準ずる棚卸資産であること、②各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものであること、③継続して取得した日の属する事業年度の損金に算入していること。①②を満たす通常の事務用品は、期末に数箱残っていても貯蔵品に振り替える必要はありません。逆に、決算前に翌期1年分をまとめ買いしたような場合は②を外れるので、未消費分は原則どおり棚卸資産(貯蔵品)として残し、消費した期の損金にします。通達には注があり、製造に使う消耗品は製造原価に入ります。
この取扱いにより損金の額に算入する金額が製品の製造等のために要する費用としての性質を有する場合には、当該金額は製造原価に算入するのであるから留意する。
個人事業主には同じ内容の所得税基本通達37-30の3があります。
消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する年分の必要経費に算入するのであるが、その者が、事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各年ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する年分の必要経費に算入している場合には、これを認める。
青色申告法人については、法人税法施行規則56条が期末の棚卸を求める資産の中に「消耗品で貯蔵中のもの」を入れています。通達の要件を満たさない在庫が残っていれば、帳簿上も数えて整理する義務があるということです。
青色申告法人は、各事業年度終了の日において、商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)、半製品、仕掛品(半成工事を含む。)、主要原材料、補助原材料、消耗品で貯蔵中のものその他これらの資産に準ずる資産のたな卸その他決算のために必要な事項の整理を行ない
10万円の線 — 減価償却資産を消耗品費に入れる根拠
机・椅子・プリンター・工具は消耗品ではなく減価償却資産です。それでも買った年に全額を費用にできるのは、法人税法施行令133条が、取得価額10万円未満または使用可能期間1年未満の減価償却資産について、事業の用に供した事業年度に損金経理した金額を損金と定めているからです。
取得価額(第五十四条第一項各号(減価償却資産の取得価額)の規定により計算した価額をいう。次条第一項において同じ。)が十万円未満であるもの(貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供したものを除く。)又は前条第一号に規定する使用可能期間が一年未満であるものを有する場合において、その内国法人が当該資産の当該取得価額に相当する金額につきその事業の用に供した日の属する事業年度において損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
ここで間違えやすいのが判定の単位です。法人税基本通達7-1-11は、10万円未満かどうかを「通常1単位として取引されるその単位」で見ると定めています。国税庁 No.5403 の例示では、応接セットはテーブルと椅子の1組で、カーテンは1枚ではなく部屋ごとの合計で判定します。
取得価額が10万円未満又は20万円未満であるかどうかは、通常1単位として取引されるその単位、例えば、機械及び装置については1台又は1基ごとに、工具、器具及び備品については1個、1組又は1そろいごとに判定し
「使用可能期間1年未満」も、法定耐用年数のことではありません。通達7-1-12が、その法人の業種で一般に消耗性と認識され、平均的な使用状況から1年もたないものと定めています。
法人の属する業種(例えば、紡績業、鉄鋼業、建設業等の業種)において種類等を同じくする減価償却資産の使用状況、補充状況等を勘案して一般的に消耗性のものとして認識されている減価償却資産で、その法人の平均的な使用状況、補充状況等からみてその使用可能期間が1年未満であるものをいう。
もう1つの要件は損金経理、つまり決算で費用として処理することです。国税庁 No.5403 の注2は、いったん資産に計上したものを後の事業年度でまとめて損金経理しても損金にならないと書いています。買った年に消耗品費にするか、資産にして償却するかは、その年の決算で決めるということです。
20万円・40万円の線 — 一括償却資産と、令和8年4月1日から変わった少額特例
10万円以上の減価償却資産にも、2つの道があります。20万円未満なら施行令133条の2の一括償却資産(取得価額の合計を36で除して月数を乗じた額を各期の損金=3年で均等)、青色申告の中小企業者等なら措置法67条の5の少額減価償却資産の特例です。ここは少額減価償却資産と一括償却資産が本論なので、本記事では金額の線だけ確かめます。
少額特例の上限は、令和8年度税制改正(令和8年法律第12号)で30万円未満から40万円未満に上がりました。現行の措置法67条の5第1項はこう書いています。
平成十八年四月一日から令和十一年三月三十一日までの間に取得し、又は製作し、若しくは建設し、かつ、当該中小企業者等の事業の用に供した減価償却資産で
その取得価額が四十万円未満であるもの(その取得価額が十万円未満であるもの及び第五十三条第一項各号に掲げる規定の適用を受けるものその他政令で定めるものを除く。以下この条において「少額減価償却資産」という。)
同じ条文を令和8年1月1日施行版で読むと、期間が「平成十八年四月一日から令和八年三月三十一日までの間」、上限が「取得価額が三十万円未満」でした。どちらが適用されるかは取得した日で分かれます。改正法の附則65条です。
新租税特別措置法第六十七条の五第一項の規定は、同項に規定する中小企業者等が施行日以後に取得又は製作若しくは建設をする同項に規定する少額減価償却資産について適用し、旧租税特別措置法第六十七条の五第一項に規定する中小企業者等が施行日前に取得又は製作若しくは建設をした同項に規定する少額減価償却資産については、なお従前の例による。
施行日は令和8年4月1日(附則1条)です。年300万円の上限は変わっていません。
当該中小企業者等の当該事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が三百万円(当該事業年度が一年に満たない場合には、三百万円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額。以下この項において同じ。)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち三百万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額を限度とする。
対象になる法人の規模も同じ日に動きました。措置法施行令39条の28第1項1号の従業員要件が「常時使用する従業員の数が五百人以下の法人」から「四百人以下」に変わっています(令和8年政令第98号。特定法人は300人以下のまま)。
常時使用する従業員の数が四百人以下の法人(特定法人(法人税法第七十五条の四第二項に規定する特定法人をいう。次号において同じ。)を除く。)
| 取得した日 | 取得価額の上限 | 年間の上限 | 従業員要件(特定法人以外) | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 令和8年3月31日以前 | 30万円未満 | 300万円 | 500人以下 | 令和8年1月1日施行版 措置法67条の5・施行令39条の28 |
| 令和8年4月1日以後(令和11年3月31日まで) | 40万円未満 | 300万円 | 400人以下 | 現行 措置法67条の5・施行令39条の28、改正法附則1条・65条 |
注意点が1つ。国税庁のタックスアンサー No.5403・No.5408(法人)・No.2100(個人)は、2026年8月21日の時点で「令和7年4月1日現在法令等」の表示のまま、上限30万円・令和8年3月31日まで・500人以下と書いています。令和8年4月1日以後に取得した資産については、タックスアンサーではなく条文の方が正しいので、改正後の判定は e-Gov の現行条文で確かめてください。
仕訳の型と設例 — 購入時・期末の貯蔵品・税抜と税込で変わる10万円判定
設例で通して見ます。3月決算の会社、消費税は税抜経理(仮払消費税を分ける方式)とします。
設例1 コピー用紙20箱 税抜30,000円(税込33,000円)を現金で購入。毎月同じくらい買い、月内に使い切る経常的な事務用品です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 30,000 | 現金 | 33,000 |
| 仮払消費税等 | 3,000 |
期末に5箱残っていても、通達2-2-15の要件(おおむね一定数量・経常的に消費・継続適用)を満たしている通常の事務用品なので、貯蔵品への振替は要りません。
設例2 決算月の3月に、翌期1年分のトナー12本 税抜96,000円(税込105,600円)を買い、3月中に使ったのは1本。「各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費する」の範囲を超える買い方なので、未消費の11本分は期末に貯蔵品へ振り替え、翌期首に戻します。
| 時点 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 購入時 | 消耗品費 96,000/仮払消費税等 9,600 | 105,600 | 未払金 | 105,600 |
| 期末 | 貯蔵品 | 88,000 | 消耗品費 | 88,000(96,000×11本÷12本) |
| 翌期首 | 消耗品費 | 88,000 | 貯蔵品 | 88,000 |
当期の消耗品費は8,000円(1本分)だけが残り、88,000円は翌期の損金になります。税込経理なら貯蔵品は105,600円×11÷12=96,800円です。
設例3 モニター1台 税抜95,000円(税込104,500円)を掛けで購入。減価償却資産なので10万円の線で判定します。税抜経理では取得価額95,000円で10万円未満、損金経理すれば全額損金です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 95,000 | 未払金 | 104,500 |
| 仮払消費税等 | 9,500 |
同じモニターを税込経理の会社が買うと、取得価額は104,500円で10万円以上になり、消耗品費では落とせません。工具器具備品として資産計上して減価償却するか、20万円未満なので一括償却資産(104,500円÷3=約34,833円ずつ3年)、青色申告の中小企業者等なら少額特例で全額損金、のどれかを選びます。同じ物を同じ値段で買っても、経理方式で10万円判定の結果が変わるのがこの線の落とし穴で、詳しくは税抜経理と税込経理にあります。
減価償却費の計算機 — 10万円以上になった備品の定額法・定率法の償却費を試算する消費税 — 課税仕入れ、免税店の「消耗品」は別の意味
消耗品の購入は、消費税法2条1項12号の課税仕入れです。事業者が事業として他の者から資産を譲り受けることに当たるので、国内の店やネット通販で買えば標準税率10%の課税仕入れとして仕入税額控除の対象になります(帳簿と請求書等の保存が要件。30条7項)。
事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(所得税法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること
消耗品費の中で税率が分かれるのは飲食料品です。従業員用のお茶・コーヒー・来客用の菓子は、科目を消耗品費にしても福利厚生費にしても、消費税の軽減税率8%の対象(別表第一の飲食料品)です。請求書の税率欄を見て帳簿に区分します。
もう1つ、消費税法施行令には「消耗品」が16回出てきますが、4条6号(棚卸資産の範囲)以外はすべて輸出物品販売場、いわゆる免税店の規定です。18条は免税対象物品のうち消耗品を次のように定めます。
通常生活の用に供する物品のうち食品類、飲料類、薬品類、化粧品類その他の消耗品
こちらは外国人旅行者への免税販売の区分(一般物品と消耗品で購入金額の要件や包装方法が違う)であって、経理の消耗品費とは無関係です。条文検索で「消耗品」を引くと大半がこちらにヒットするので、混同しないでください。
個人事業主 — 必要経費・少額の線・家事按分
個人事業主の必要経費は所得税法37条1項で、法人の22条3項と同じ作りです。
これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。
消耗品を買った日に必要経費にしてよい条件は、上で引いた所得税基本通達37-30の3で、法人と同じ3条件です。10万円未満・1年未満の減価償却資産は所得税法施行令138条で、法人と違って「損金経理」の要件が無く、全額を必要経費に算入すると書き切られています。
取得価額(第百二十六条第一項各号又は第二項(減価償却資産の取得価額)の規定により計算した価額をいう。次条第一項において同じ。)が十万円未満であるもの(貸付け(主要な業務として行われるものを除く。)の用に供したものを除く。)又は第百八十一条第一号(資本的支出)に規定する使用可能期間が一年未満であるものについては、第四款(減価償却資産の償却)の規定にかかわらず、その取得価額に相当する金額を、その者のその業務の用に供した年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する。
20万円未満の一括償却は139条(取得価額の合計を3で除した金額を3年間)、青色申告の中小事業者の少額特例は措置法28条の2で、法人と同じく令和8年4月1日以後の取得から40万円未満・年300万円・従業員400人以下(施行令18条の5)です。1単位ごとの判定(所基通49-39)と1年未満の意味(49-40)も法人と同じ内容の通達があります。
その取得価額が四十万円未満であるもの(その取得価額が十万円未満であるもの及び第十九条第一項各号に掲げる規定の適用を受けるものその他政令で定めるものを除く。以下この条において「少額減価償却資産」という。)
個人に固有なのは家事按分です。自宅兼事務所の洗剤・トイレットペーパー・電球のように家事と業務の両方に使う消耗品は、所得税法45条1項1号の家事関連費に当たり、施行令96条1号が必要経費にできる部分を限定しています。
家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
「主たる部分」の読み方は所得税基本通達45-2が示しています。業務に必要な部分が50%を超えるかで判定し、50%以下でも明らかに区分できるならその部分は必要経費にしてよい、という取扱いです。青色申告者は施行令96条2号で、取引の記録等に基づいて業務に直接必要だったことが明らかな部分も認められます。
その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。
按分した残り(家事分)は必要経費にせず、事業用の口座やカードで払っていれば事業主貸で処理します。按分の基準の決め方は家事按分の記事にまとめています。
よくある質問
Q. 消耗品費とは何ですか?
A. 事務用品・日用品・工具・包装材料のように使えば減っていく物品と、取得価額10万円未満(または使用可能期間1年未満)の備品の購入費をまとめる費用科目です。科目名は法人税法施行規則の別表二十四・二十五・二十六に3回出るだけで、法律本文には定義がありません。一方「消耗品」は法人税法施行令10条6号が棚卸資産として定義しており、買った日に費用にできるのは法人税基本通達2-2-15(個人は所得税基本通達37-30の3)が条件付きで認めているからです。
Q. 消耗品費と事務用品費の違いは何ですか?
A. 法令上の違いはありません。事務用品費は法令に名前が無く、消耗品費のうち文具・用紙など事務用のものだけを分けた科目です。財務諸表等規則85条1項・法人税法施行規則別表二十四は「適当な名称を付して区分」すればよいとしているので、分けるかどうかは会社が決め、決めたら毎期同じにします。
Q. 消耗品費と雑費はどう分けますか?
A. 一般に、物品の購入は消耗品費、どの科目にも収まらない少額でまれな支出を雑費にします。どちらも別表二十四(十四)に名前があり、どちらに入れても損金です。雑費が膨らむと内訳が見えなくなるので、物品は消耗品費に寄せるのが実務の通例です。
Q. 10万円の判定は税込ですか、税抜ですか?
A. その事業者の経理方式によります。税抜経理なら税抜金額、税込経理なら税込金額で判定します。税抜95,000円(税込104,500円)のモニターは、税抜経理なら10万円未満で消耗品費、税込経理なら10万円以上で資産計上(または一括償却・少額特例)になります。判定は通常1単位として取引される単位ごとで、応接セットは1組、カーテンは部屋ごとです(法人税基本通達7-1-11・国税庁 No.5403)。
Q. 期末に余った消耗品は資産に戻す必要がありますか?
A. 通常の事務用品のように、おおむね一定数量を買って経常的に消費し、継続して買った日の費用にしているものは戻す必要がありません(法人税基本通達2-2-15)。決算前のまとめ買いのようにこの要件を外れるものは、原則どおり消費した日の費用なので、未消費分を貯蔵品として資産に振り替えます。青色申告法人は期末に「消耗品で貯蔵中のもの」の棚卸をすることが法人税法施行規則56条で求められています。
Q. 中小企業の少額減価償却資産の特例は30万円未満ですか、40万円未満ですか?
A. 令和8年4月1日以後に取得したものは40万円未満、令和8年3月31日以前に取得したものは30万円未満です(租税特別措置法67条の5・28条の2、令和8年法律第12号附則1条・65条・35条)。年300万円の上限は同じで、従業員要件は500人以下から400人以下に変わりました(特定法人は300人以下)。国税庁のタックスアンサー No.5403・5408・2100 は2026年8月21日時点でまだ30万円表記なので、条文で確かめてください。
Q. 個人事業主が自宅用と兼ねて使う消耗品はどう処理しますか?
A. 家事関連費として、業務に必要な部分だけを必要経費にします(所得税法45条1項1号・施行令96条1号)。所得税基本通達45-2は、業務に必要な部分が50%を超えるかで判定し、50%以下でも明らかに区分できる部分は必要経費にしてよいとしています。家事分は事業主貸で処理します。
Q. 消耗品費の消費税はどうなりますか?
A. 消費税法2条1項12号の課税仕入れで、原則10%の仕入税額控除の対象です(帳簿と請求書等の保存が要件)。従業員用のお茶や菓子など飲食料品は軽減税率8%なので、同じ消耗品費の中で税率を分けて帳簿に記録します。消費税法施行令18条の免税店の「消耗品」(食品類・飲料類・薬品類・化粧品類)は別の制度の用語で、経理の消耗品費とは関係ありません。
出典
- e-Gov法令検索 法人税法(昭和四十年法律第三十四号) — 第2条第20号(棚卸資産)、第22条第3項(損金の額)。法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号) — 第10条(棚卸資産の範囲)、第13条(減価償却資産の範囲)、第133条(少額の減価償却資産の取得価額の損金算入)、第133条の2(一括償却資産の損金算入)。法人税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十二号) — 第54条(取引に関する帳簿及び記載事項)、第56条(決算)、第57条(貸借対照表及び損益計算書)、第66条(取引に関する帳簿及びその記載事項等)、別表二十四(十)・(十四)、別表二十五(二)、別表二十六。
- e-Gov法令検索 所得税法(昭和四十年法律第三十三号) — 第2条第1項第16号(棚卸資産)、第37条第1項(必要経費)、第45条第1項第1号(家事関連費等の必要経費不算入等)。所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号) — 第3条(棚卸資産の範囲)、第96条(家事関連費)、第138条(少額の減価償却資産の取得価額の必要経費算入)、第139条(一括償却資産の必要経費算入)。所得税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十一号)は全文検索で「消耗品費」「消耗品」とも0回。
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号) — 第28条の2(中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例)、第67条の5(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)。現行(令和8年8月12日施行版)のほか、令和8年1月1日施行版と令和8年4月1日施行版(令和8年法律第12号による改正。附則第1条・第35条・第65条)を法令API v2 の law_revisions で取得して比較。租税特別措置法施行令(昭和三十二年政令第四十三号) — 第18条の5、第39条の28(従業員数の要件)。令和8年1月1日施行版(500人以下)と令和8年4月1日施行版(令和8年政令第98号・400人以下)を比較。
- e-Gov法令検索 消費税法(昭和六十三年法律第百八号) — 第2条第1項第12号(課税仕入れ)、第30条第7項(帳簿及び請求書等の保存)、別表第一(軽減税率の対象)。消費税法施行令(昭和六十三年政令第三百六十号) — 第4条(棚卸資産の範囲)、第18条(輸出物品販売場における免税対象物品・消耗品)。
- e-Gov法令検索 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和三十八年大蔵省令第五十九号) — 第15条第10号(流動資産の範囲)、第85条(販売費及び一般管理費の表示方法)。会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号) — 第74条第3項第1号(貸借対照表の区分・流動資産)。
- 国税庁 法人税基本通達 第2章第2節第2款 販売費及び一般管理費等 — 2-2-15(消耗品費等)。同 第7章第1節第2款 少額の減価償却資産等 — 7-1-11(少額の減価償却資産又は一括償却資産の取得価額の判定)、7-1-12(使用可能期間が1年未満の減価償却資産の範囲)。
- 国税庁 所得税基本通達 法第37条関係〔その他の共通費用〕 — 37-30の3(消耗品費等)。同 法第45条関係 — 45-1・45-2(家事関連費)。同 令第138条及び第139条関係 — 49-39(少額の減価償却資産又は一括償却資産であるかどうかの判定)、49-40(使用可能期間が1年未満の減価償却資産の範囲)。
- 国税庁 タックスアンサー No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示、No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例、No.2100 減価償却のあらまし(いずれも2026年8月21日取得時点で「令和7年4月1日現在法令等」の表示。上限30万円・令和8年3月31日まで・500人以下の記載は改正前のもの)。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。