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高年齢求職者給付金とは — 65歳以上の失業給付は一時金。日額は上がり、総額は下がる

結論から言うと、高年齢求職者給付金は65歳以上で退職した人が受け取る失業給付です。64歳までの「基本手当」が毎月の分割払いなのに対し、こちらは一時金で1回きり。金額は基本手当日額の50日分(被保険者であった期間が1年以上)または30日分(1年未満)と決まっています(雇用保険法37条の4第1項)。

実務で効いてくるのは、この制度が基本手当の「縮小版」ではなく別の条文で組み立てられた別の制度だという点です。給付率の年齢区分が外れるので1日あたりの額はむしろ上がるのに、上限額は4区分でいちばん低い「30歳未満」の額が当てられます。受給期限の延長は法律にも省令にも用意されていません。そして老齢厚生年金は止まりません——年金を止める規定が、条文の側で「基本手当」と「65歳未満」に二重に限定されているからです。

この記事では、条文がどこで何を決めているかを順に確かめながら、64歳で辞めた場合との実額比較、手続きを遅らせると金額そのものが削られる仕組み、2社で働いている人の扱いまでを見ていきます。

65歳以上の失業給付は「一時金」— 基本手当の節が丸ごと外れている

雇用保険法37条の2第1項が、この制度の入口です。

六十五歳以上の被保険者(第三十八条第一項に規定する短期雇用特例被保険者及び第四十三条第一項に規定する日雇労働被保険者を除く。以下「高年齢被保険者」という。)が失業した場合には、この節の定めるところにより、高年齢求職者給付金を支給する。

65歳以上の被保険者を「高年齢被保険者」と名付け、失業したらこの節の給付を出す、と書いています。季節労働の人(短期雇用特例被保険者)と日雇いの人は、それぞれ別の給付があるので除かれます。

続く第2項が、この制度の性格を決めています。

高年齢被保険者に関しては、前節(第十四条を除く。)、次節及び第四節の規定は、適用しない。

「前節」とは基本手当が置かれている節のことです。基本手当の規定は、14条(被保険者期間の数え方)を1つ残して丸ごと適用されません。所定給付日数も、受給期間も、傷病手当も、そこにある規定はここには届きません。必要なものは37条の3以下で改めて書き直されており、書き直されなかったものは存在しない——これが以下で何度も効いてきます。

「基本手当が少なくなったもの」ではない

基本手当を減額したのではなく、参照先の節ごと切り替えています。だから「基本手当ならこうだから、高年齢求職者給付金でもこうだろう」という推測は、当たるときも外れるときもあります。準用されているかどうかを1つずつ確かめる必要があります。

受けられる条件 — 離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上

受給資格は37条の3第1項が定めます。基本手当が「離職の日以前2年間に通算12か月以上」であるのに対し、こちらは半分の期間で、半分の月数です。

高年齢求職者給付金は、高年齢被保険者が失業した場合において、離職の日以前一年間

に、

第十四条の規定による被保険者期間が通算して六箇月以上であつたときに、次条に定めるところにより、支給する。

「被保険者期間」の数え方は14条です。賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ある月を1か月として数えます(14条1項)。ここで6か月に届かないときは、14条3項が読み替えを発動して、

同項中「であるもの」とあるのは「であるもの又は賃金の支払の基礎となつた時間数が八十時間以上であるもの」

と、「賃金支払基礎日数11日以上」に加えて「賃金支払基礎時間数80時間以上」の月も1か月として数え直します。週2日勤務のように出勤日数が少なく、1日の勤務時間が長い働き方は、日数で数えると届かないのに時間数で数えると届くことがあります。日数で足りなかったところで諦めないのが実務上のポイントです。

さらに14条1項ただし書には、半月を数える規定があります。

当該被保険者となつた日からその日後における最初の喪失応当日の前日までの期間の日数が十五日以上であり、かつ、当該期間内における賃金の支払の基礎となつた日数が十一日以上であるときは、当該期間を二分の一箇月の被保険者期間として計算する。

月の途中で入社した場合の端数が2分の1か月になるということです。「5か月と半月」で6か月に届くケースがあり、丸めて5か月と判断すると受けられるものを取り逃がします。

なお、離職前1年間という枠自体は伸びることがあります。

当該期間に疾病、負傷その他厚生労働省令で定める理由により引き続き三十日以上賃金の支払を受けることができなかつた高年齢被保険者である被保険者については、当該理由により賃金の支払を受けることができなかつた日数を一年に加算した期間(その期間が四年を超えるときは、四年間)

病気やケガで30日以上賃金が出なかった期間があれば、その日数だけさかのぼる幅が広がり、最長4年まで伸びます(理由の中身は施行規則65条の2が18条各号を引いています)。ただし伸びるのは「さかのぼって数える期間」であって、「もらえる期限」ではありません。この2つを取り違えると、後述する1年の期限を4年だと思い込むことになります。

離職日に65歳以上か はい いいえ 基本手当 離職の日以前1年間に 被保険者期間が通算6か月以上あるか はい 不支給 被保険者であった期間が1年以上か はい いいえ 基本手当日額の 50日分 基本手当日額の 30日分
判定は3段。「6か月」は受給資格の入口、「1年」は金額の分かれ目で、数える対象が違う(37条の3第1項と37条の4第1項・第3項)。

いくらもらえるか — 上限は「30歳未満」の額が当てられる

金額は37条の4第1項です。まず、基本手当の計算式を借りてきます。

高年齢求職者給付金の額は、高年齢受給資格者を第十五条第一項に規定する受給資格者とみなして第十六条から第十八条まで(第十七条第四項第二号を除く。)の規定を適用した場合にその者に支給されることとなる基本手当の日額に、

ここに「第十七条第四項第二号を除く」という括弧書きがあります。17条4項2号は、賃金日額の上限を年齢4区分で決めている規定です。それだけを外している。外した穴は、次の第2項が埋めます。

前項の規定にかかわらず、同項の規定により算定した高年齢受給資格者の賃金日額が第十七条第四項第二号ニに定める額(その額が第十八条の規定により変更されたときは、その変更された額)を超えるときは、その額を賃金日額とする。

「ニ」は、30歳未満の受給資格者の欄です。17条4項2号はイ(60歳以上65歳未満)・ロ(45歳以上60歳未満)・ハ(30歳以上45歳未満)・ニ(30歳未満)の順に並んでおり、金額がいちばん低いのがニです。65歳以上の人に当てられる上限は、4区分のうち最も低い額だということになります。

これは条文の書き間違いではありません。同じ扱いが、就業促進手当の56条の3第3項2号ロにも、今度は言葉として書かれています。

その者を高年齢受給資格に係る離職の日において三十歳未満である基本手当の受給資格者とみなして第十六条から第十八条までの規定を適用した場合にその者に支給されることとなる基本手当の日額

「三十歳未満であるとみなして」と明記されている。2か所の条文が同じ設計を示しているので、読み違いではないことが確かめられます。

令和8年8月1日から適用されている金額を当てはめると、次のようになります。

項目令和8年8月1日〜根拠
賃金日額の下限3,203円17条4項1号(全年齢共通・準用される)
賃金日額の上限14,900円37条の4第2項 → 17条4項2号ニ(30歳未満の額)
給付率50〜80%16条1項(60歳以上65歳未満の45%は当たらない)
1日あたりの上限7,450円14,900円 × 50%
1日あたりの下限2,562円3,203円 × 80%
50日分の上限372,500円7,450円 × 50日
30日分の上限223,500円7,450円 × 30日

厚生労働省が公表している「30歳未満の基本手当日額の上限」は7,450円で、14,900円 × 50% と1円まで一致します。上の読み方が正しいことの、独立した裏取りになります。

実額を出してみます。賃金日額は「離職前6か月の賃金総額 ÷ 180」(17条1項)で、賞与は含めません。月給がまるまる6か月分なら、おおよそ月給の30分の1です。

月給(賞与を除く)賃金日額1日あたり50日分30日分
20万円6,666円5,037円251,850円151,110円
25万円8,333円5,776円288,800円173,280円
30万円10,000円6,307円315,350円189,210円
40万円13,333円6,744円337,200円202,320円
60万円14,900円(上限)7,450円372,500円223,500円

給付率は賃金日額が高いほど下がります(16条1項と施行規則28条の3)。月給60万円の行で賃金日額が20,000円ではなく14,900円になっているのは、上限が効いているためです。

64歳で辞めるか65歳で辞めるか — 日額は上がり、総額は下がる

ここが、この制度でいちばん実額が動くところです。同じ人が同じ会社を辞めるのに、離職日が65歳の誕生日の前か後かで、受け取る総額が変わります。

まず1日あたりの額は、65歳以上のほうが高くなることがあります。16条2項は給付率の下限を45%に下げる規定ですが、その対象は次のとおりです。

受給資格に係る離職の日において六十歳以上六十五歳未満である受給資格者に対する前項の規定の適用については、同項中「百分の五十」とあるのは「百分の四十五」と、

65歳以上はこの読み替えの外にあるので、16条1項の50〜80%がそのまま当たります。60〜64歳だけに用意されている不利な区分が、65歳になると消えるわけです。

一方で、日数が桁違いに違います。算定基礎期間が20年以上ある人が定年などで辞めた場合、64歳なら所定給付日数は150日(22条1項1号)。65歳以上なら50日です。実額で並べます。

月給64歳で離職
(20年以上・150日)
65歳以上で離職
(1年以上・50日)
20万円4,916円 × 150日
= 737,400円
5,037円 × 50日
= 251,850円
−485,550円
30万円5,348円 × 150日
= 802,200円
6,307円 × 50日
= 315,350円
−486,850円
60万円7,830円 × 150日
= 1,174,500円
7,450円 × 50日
= 372,500円
−802,000円

月給30万円の行を見てください。1日あたりは5,348円から6,307円へ上がっているのに、総額は約49万円下がります。日額だけを見て「65歳のほうが有利」と読むと、逆の結論にたどり着きます。

そして月給60万円の行では、1日あたりも逆転しています。65歳以上の上限が14,900円(1日7,450円)で頭打ちになるのに対し、60〜64歳の上限は賃金日額17,400円・1日7,830円と高いためです。計算してみると、月給がおよそ49.7万円を境に、1日あたりの額も64歳のほうが高くなります(月給496,000円なら7,450円対7,440円で65歳以上が上、497,000円なら7,450円対7,455円で逆転)。

「65歳に達する日」は誕生日の前日

年齢計算ニ関スル法律が民法143条を準用しているため、年齢が1つ上がるのは誕生日の前日です。65歳の誕生日の前日に離職すると、その日にはもう65歳に達しています。一般に、離職日を誕生日の前々日までにするかどうかで扱いが分かれる、という関係になります。どちらに当たるかは離職日の1日で決まるので、退職日を選べる立場にあるなら、事前にハローワークで確認するだけの価値があります。

上の比較は「一般の受給資格者」として計算したものです。倒産・解雇などで特定受給資格者に当たる場合、64歳側の所定給付日数はさらに長くなります(23条)。65歳以上側は離職理由で日数が変わりません——37条の4第1項が日数を被保険者であった期間だけで決めているためです。

64歳までに離職した場合の基本手当を計算する(失業保険 計算機)

この計算機は基本手当(64歳までの離職)を計算するものです。65歳以上で離職した場合の高年齢求職者給付金には、上で見たとおり別の上限と別の日数が当たるので、この計算機の結果をそのまま当てはめることはできません。

年金は止まらない — 調整規定は「基本手当」と「65歳未満」に限られている

「失業給付をもらうと年金が止まる」という話を聞いたことがある方は多いと思います。それは本当ですが、止まるのは65歳未満の老齢厚生年金と基本手当の組み合わせだけです。根拠は厚生年金保険法附則7条の4第1項です。

前条第三項の規定による老齢厚生年金は、その受給権者(雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第十四条第二項第一号に規定する受給資格を有する者であつて六十五歳未満であるものに限る。)が同法第十五条第二項の規定による求職の申込みをしたときは、当該求職の申込みがあつた月の翌月から次の各号のいずれかに該当するに至つた月までの各月において、その支給を停止する。

この一文には、限定が二重にかかっています。

そして、この規定を特別支給の老齢厚生年金に広げているのが附則11条の5です。

附則第七条の四の規定は、附則第八条の規定による老齢厚生年金について準用する。

附則8条の老齢厚生年金も65歳未満の給付なので、やはり届きません。65歳以降の老齢厚生年金を、失業給付を理由に止める規定は存在しないということです。

実務上の意味

64歳で退職して基本手当を受けると、その間は特別支給の老齢厚生年金が止まります(受けた日数に応じて後から調整されます)。65歳以降に退職して高年齢求職者給付金を受ける場合は、年金を受け取りながら、一時金も受け取れます。総額の比較をするときは、この差も入れて計算しないと結論が変わります。

期限は離職の翌日から1年。しかも50日分は先に削られ始める

期限を決めているのは37条の4第5項です。

高年齢求職者給付金の支給を受けようとする高年齢受給資格者は、離職の日の翌日から起算して一年を経過する日までに、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをした上、失業していることについての認定を受けなければならない。

ここまでは「1年以内に手続きすればよい」と読めます。しかし金額のほうに、期限より手前で効き始める仕掛けがあります。37条の4第1項の日数を定める部分に、次の括弧書きが入っています。

第五項の認定があつた日から同項の規定による期間の最後の日までの日数が当該各号に定める日数に満たない場合には、当該認定のあつた日から当該最後の日までの日数に相当する日数

つまり、認定を受けた日から期限日までの残り日数が50日を下回ると、50日分ではなく「残り日数分」になります。一時金だから急がなくてよい、という理解は誤りです。

できごと日付(例)
離職日2026年9月30日(水)
起算日(離職の日の翌日)2026年10月1日(木)
残りが50日になる日(目安)2027年8月11日(水)
残りが30日になる日(目安)2027年8月31日(火)
期限日(1年を経過する日)2027年9月30日(木)

この例で2027年9月1日に認定を受けたとすると、期限日まで残り29日。50日分の資格があっても29日分しか出ません。月給30万円の人なら6,307円 × 21日分=132,447円が消えることになります。

1日をどちら側に数えるか(認定日を含めるか)は最終的にハローワークの計算によります。上の日付は「差が50日・30日になる日」として機械的に出したもので、ぎりぎりを狙う根拠には使えません。結論は「早く手続きする」です。

同じ仕組みが、特例一時金の側にだけ説明されている

季節労働者の特例一時金にもまったく同じ縮小の規定があり、ハローワークインターネットサービスはそちらでは「失業認定があった日から受給期限日……までの日数が30日(ただし当分の間は暫定措置で40日)未満であるときは特例一時金の額はその日数分となります」と明記しています。ところが高年齢求職者給付金の説明では、この点に触れていません。法律には両方に同じ括弧書きがあります。「説明に書かれていないから無い」とは読めない、という一例です。

待期7日と給付制限は準用され、受給期間の延長は準用されていない

37条の2第2項が基本手当の節を丸ごと外していると書きました。では何が戻ってきているのか。37条の4第6項が、その一覧です。

第二十一条、第三十一条第一項、第三十二条、第三十三条第一項及び第二項並びに第三十四条第一項から第三項までの規定は、高年齢求職者給付金について準用する。

ここに載っているもの載っていないものを並べると、制度の輪郭が見えます。

規定内容高年齢求職者給付金では
21条待期7日準用される(7日は必要)
32条職業紹介・指導を拒んだ場合の給付制限準用される
33条1項・2項自己都合退職・重責解雇の給付制限(1か月以上3か月以内)準用される
34条1〜3項不正受給の場合の支給停止・返還準用される
20条受給期間と、その延長(病気・出産・育児は最大4年、定年退職は最大1年)準用されていない
33条3項給付制限で受給期間が足りなくなる場合の延長準用されていない

21条は次のとおりで、求職の申込みをした日から数えて失業している日が7日たつまでは支給されません。

基本手当は、受給資格者が当該基本手当の受給資格に係る離職後最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日以後において、失業している日(疾病又は負傷のため職業に就くことができない日を含む。)が通算して七日に満たない間は、支給しない。

自己都合で辞めた場合は33条1項の給付制限も加わります。

被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合には、第二十一条の規定による期間の満了後一箇月以上三箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当を支給しない。

ここで前節の話とつながります。待期と給付制限で時計は進むのに、1年の期限は延びません。33条3項(給付制限で受給期間が足りないときに期間を足す規定)は準用リストに入っていないので、基本手当なら救われる場面でも救われません。

延長の手続きが省令の側に用意されている可能性も確かめました。施行規則65条の5が高年齢求職者給付金に準用しているのは19条1項・4項、20条、22条、44条から47条まで、49条、50条、54条で、受給期間延長申請書を定める31条は入っていません。法律にも省令にも、期限を延ばす道が置かれていないということです。

逆に言えば、20条2項の定年退職者向けの猶予も使えません。この規定は「しばらく休んでから求職活動をしたい」という人のためのものですが、

当該受給資格に係る離職が定年(厚生労働省令で定める年齢以上の定年に限る。)に達したことその他厚生労働省令で定める理由によるものであるものが、当該離職後一定の期間第十五条第二項の規定による求職の申込みをしないことを希望する場合

と、主語が「受給資格者」に限られています。65歳以上で定年を迎えて「半年ほど休んでから考えたい」と思っても、この猶予は使えないうえに、休んでいる間に金額が削られ始めます。

離職日 1年 残り50日 待期7日 給付制限(自己都合) 早く認定 → 50日分 遅く認定 → 残り日数分に削られる ※ 待期と給付制限で時計は進むが、1年の期限は延びない(20条・33条3項は準用されていない)
期限に間に合っても、金額が満額とは限らない。50日分の線は、期限日の50日前に立っている。

2社で働く65歳以上 — マルチジョブホルダーは「申し出た日から」

1社あたりの所定労働時間が週20時間に届かず、雇用保険に入れていない——という65歳以上の方には、37条の5の特例があります。

次に掲げる要件のいずれにも該当する者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に申し出て、当該申出を行つた日から高年齢被保険者となることができる。

要件は3つで、①2以上の事業主に雇用される65歳以上であること、②1社での週の所定労働時間が20時間未満であること、③2社の合計が週20時間以上であること、です。②はこう書かれています。

一の事業主の適用事業における一週間の所定労働時間が二十時間未満であること。

ここで見落としやすいのが「当該申出を行つた日から」という部分です。通常の雇用保険の資格取得は事業主の届出によるもので、実際に雇い入れた日にさかのぼります。ところがこの特例は、本人が申し出た日からしか被保険者になりません。2年前から2社で働いていたとしても、今日申し出れば今日からです。

これは金額に直結します。被保険者であった期間が1年に届くかどうかで50日分と30日分が分かれるので、申し出が1年遅れると、その1年分がまるごと数えられません。要件を満たしていると気づいた時点で手続きすることに、金額としての意味があります。

何度でも受けられる。ただし前回の離職日より前は数えない

基本手当は、受給資格を得られるのが65歳になるまでです。高年齢求職者給付金には年齢の上限がありません。37条の2第1項は「六十五歳以上の被保険者」としか書いておらず、上を切っていません。回数の制限もどこにも書かれていません。

つまり、65歳以降に再就職して雇用保険に入り、また辞めて、離職前1年間に被保険者期間が6か月あれば、もう一度受けられます。70歳でも75歳でも同じです。

ただし、2回目の計算はゼロからやり直しになります。14条2項1号が、被保険者であった期間から次を除いています。

当該受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格に係る離職の日以前における被保険者であつた期間

前回の高年齢受給資格に係る離職日以前の期間は、通算されません。1回目で50日分を受けた人が、2年後にもう一度辞めたとします。このときの「被保険者であった期間」は、前回の離職日の翌日から数え直した期間です。それが1年に届いていれば50日分、届かなければ30日分になります。

ここまでのまとめ
  • 65歳以上の失業給付は一時金。1年以上で50日分、1年未満で30日分(37条の4第1項)
  • 受給資格は離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上(37条の3第1項)。日数で足りなければ80時間で数え直す(14条3項)
  • 賃金日額の上限は30歳未満の額が当たり、令和8年8月1日現在で14,900円・1日7,450円が天井(37条の4第2項)
  • 給付率は50〜80%。60〜64歳の45%は当たらないので、日額はむしろ上がる(16条2項の反対解釈)
  • 老齢厚生年金は止まらない(厚年法附則7条の4・11条の5がどちらも65歳未満と基本手当に限定)
  • 期限は離職の翌日から1年で延長は無い。しかも残り50日を切ると金額が削られる(37条の4第1項かっこ書き)
  • 2社勤務の特例は申し出た日からで、さかのぼらない(37条の5)

よくある質問

Q. 高年齢求職者給付金は、いくらもらえますか?

A. 一般に、基本手当日額の50日分(被保険者であった期間が1年以上)または30日分(1年未満)です。雇用保険法37条の4第1項が算定基礎期間1年以上を50日、1年未満を30日と定めています。基本手当日額は離職前6か月の賃金総額を180で割った賃金日額に50〜80%を掛けた額で、賃金日額には上限があります。令和8年8月1日現在の上限で計算すると、1日あたり7,450円・50日分で372,500円が天井です。月給30万円の方なら、1日あたり6,307円で50日分は315,350円という水準になります。

Q. 65歳以上でも失業保険に入れますか?

A. 入れます。雇用保険法37条の2第1項が65歳以上の被保険者を「高年齢被保険者」と定めており、年齢の上限はありません。1週間の所定労働時間が20時間以上あることなどの一般的な加入要件を満たしていれば、年齢を理由に加入できないということはありません。1社では20時間に届かない場合でも、2社の合計が20時間以上なら37条の5の特例で本人が申し出て加入できます。

Q. 年金をもらいながら高年齢求職者給付金を受け取れますか?

A. 一般に、両方受け取れます。老齢厚生年金を止める規定は厚生年金保険法附則7条の4で、その対象は「雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第十四条第二項第一号に規定する受給資格を有する者であつて六十五歳未満であるものに限る」と書かれています。止まるのは基本手当を受ける65歳未満の人であって、高年齢求職者給付金を受ける65歳以上の人はここに含まれません。特別支給の老齢厚生年金に同じ規定を広げている附則11条の5も、65歳未満の給付が対象です。

Q. 基本手当と高年齢求職者給付金は、どちらが得ですか?

A. 総額では基本手当のほうが大きくなるのが通常です。算定基礎期間20年以上の方が一般の受給資格者として64歳で離職すると所定給付日数は150日ですが、65歳以上で離職すると50日分です。月給30万円で計算すると、64歳が802,200円、65歳以上が315,350円で、差は約49万円になります。ただし1日あたりの額は65歳以上のほうが高くなることがあり、さらに65歳以上なら老齢厚生年金が止まらないという違いもあるため、手取り全体の比較は個別に計算する必要があります。

Q. 手続きはいつまでにすればよいですか?

A. 法律上の期限は離職の日の翌日から起算して1年を経過する日までです(雇用保険法37条の4第5項)。ただし37条の4第1項の括弧書きが、認定のあった日から期限日までの日数が50日または30日に満たない場合はその残り日数分にすると定めているため、期限の50日前を過ぎると金額そのものが減り始めます。自己都合退職では待期7日に加えて給付制限期間があり、その間も期限は進みます。受給期間を延ばす規定は準用されていないので、早めに手続きすることになります。

Q. 高年齢求職者給付金を受けると、失業認定は何回ありますか?

A. 1回だけです。基本手当のように4週間ごとに認定日が設定されることはなく、ハローワークインターネットサービスも「失業認定は一般の受給資格者の場合とは異なり1回限りです」と説明しています。雇用保険法37条の4第5項が求めているのも、期限までに1度出頭して認定を受けることです。支給決定はその認定を行った日にされます。

Q. 何度でも受け取れますか?

A. 要件を満たすたびに受け取れます。雇用保険法には高年齢求職者給付金の受給回数を制限する規定も、年齢の上限もありません。ただし2回目以降の被保険者期間や被保険者であった期間は、前回のぶんを引き継ぎません。14条2項1号が、前回の高年齢受給資格に係る離職の日以前における被保険者であった期間を除くと定めているためです。再就職してから離職までに、あらためて6か月の被保険者期間を積む必要があります。

Q. 自己都合で辞めた場合も給付制限がありますか?

A. あります。雇用保険法37条の4第6項が33条1項および2項を準用しているため、正当な理由なく自己都合で退職した場合や自己の責めに帰すべき重大な理由で解雇された場合には、待期期間の満了後、1か月以上3か月以内でハローワークが定める期間は支給されません。一方、給付制限で受給期間が足りなくなる場合に期間を足す33条3項は準用されていないので、期限の1年は延びません。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。本記事で確認したのは雇用保険法・雇用保険法施行規則・厚生年金保険法・年齢計算ニ関スル法律・民法の条文と、厚生労働省およびハローワークインターネットサービスが公表している令和8年8月1日からの金額および説明の記載までです。ある人の被保険者期間が6か月に達しているかどうかの判定、賃金日額の算定、離職理由が自己都合にあたるかどうかの評価、給付制限期間が何か月になるかの決定、64歳で辞めるのと65歳で辞めるのとどちらが有利かの個別判断までは含みません。実際の支給額と支給の可否はハローワークが離職票および賃金台帳等に基づいて判定します。年金の支給停止の有無についても、日本年金機構が個別に判定します。個別の取扱いについては、住所地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)、年金事務所、または社会保険労務士にご確認ください。

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