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給与支払報告書の書き方と提出期限 — 30万円以下で省略できるのは誰か、4月15日の届出書、電子提出が義務になる基準

結論から言うと、給与支払報告書は1月31日までに、その人の1月1日現在の住所がある市区町村へ提出します。根拠は地方税法317条の6第1項で、提出義務があるのは「1月1日現在において給与の支払をする者」のうち、所得税法183条により源泉徴収の義務がある者です。税務署へ出す源泉徴収票とは提出先も根拠条文も別で、市区町村はこの報告書だけを見て住民税を計算します。

実務でいちばん誤解されているのが「30万円以下なら出さなくてよい」という理解です。条文を読むと、この省略は317条の6第3項のただし書、つまり中途退職者についてだけ置かれています。1月1日に在籍している人を対象とする1項には、ただし書がありません。年間の給与が30万円に満たないアルバイトでも、1月1日時点で在籍していれば提出が必要という構造です。

そしてもう一つ、ほとんど話題にならない期限があります。4月15日です。317条の6第2項は、1月31日に報告した人のうち4月1日現在で給与の支払を受けなくなった人がいる場合、4月15日までに届出書を出せと定めています。この記事では、この2項を含む条文の並びと、罰則の列挙・電子提出の判定基準・退職者が出たときの扱いまでを、条文と一次情報で確定させます。

源泉徴収票と何が違うのか — 出す先が違えば根拠条文も違う

同じ年末調整の結果から作るので混同されますが、給与支払報告書と源泉徴収票は別の法律に基づく別の書類です。源泉徴収票は所得税法226条により税務署へ、給与支払報告書は地方税法317条の6により市区町村へ提出します。記載する内容はほぼ同じですが、提出先が違うため、片方を出したことで他方が済むわけではありません。

もう一つ大きな違いがあります。税務署へ提出する源泉徴収票には提出範囲の限定があり、年末調整をした一般の従業員なら年間給与500万円以下の人は提出不要といった区分があります。一方、給与支払報告書にはそうした金額による一般的な限定がありません。1月1日現在で在籍している人については、金額にかかわらず全員分を作成します。税務署への提出範囲の感覚で市区町村への提出を判断すると、対象を大きく取りこぼすことになります。

「うちは全員分を税務署に出していないから、市区町村も同じでよい」は成り立たない

税務署への源泉徴収票は提出範囲が絞られていますが、市区町村への給与支払報告書は1月1日在籍者について金額の下限がありません。住民税は前年の所得に対して課税されるため、市区町村は全員分の情報を必要とします。両者の提出範囲を揃えて考えないのが実務上の要点です。

提出期限は1月31日、提出先は「1月1日現在の住所地」

地方税法317条の6第1項は、1月1日現在において給与の支払をする者で所得税を徴収する義務があるものは、同月31日までに、給与の支払を受けている者について前年中の給与所得の金額その他必要な事項を、その者の同月1日現在における住所所在の市町村別に作成された給与支払報告書に記載して、当該市町村の長に提出しなければならない、と定めています。

ここで注意が要るのは、提出先が会社の所在地ではなく、従業員一人ひとりの住所地だという点です。従業員が10の市区町村に散らばっていれば、10か所へそれぞれ提出します。しかも基準日は1月1日で、退職者について定める3項も「給与の支払を受けなくなった日現在における住所所在の市町村」を基準にしています。従業員が年末に引っ越していた場合、提出先が前年と変わることになります。

1/1 基準日 在籍者を確定 1/31 給与支払報告書 317条の6①③ 4/15 異動届出書 317条の6② 5/31 市区町村から 税額の通知 321条の4② 6月〜翌5月 特別徴収 毎月10日納入 321条の5① 4/15の届出書は、1/31に報告した人のうち 4/1時点で給与の支払を受けなくなった人が対象。 この届出書も罰則の列挙に入っている(317条の7)。
給与支払報告書を起点とした1年の流れ。1月31日の提出だけでなく、4月15日・5月31日・毎月10日という期限が連なっている。

30万円以下で省略できるのは、中途退職者だけ

317条の6は、1項で在職者3項で退職者を分けて定めています。3項は、給与の支払を受けなくなった者について、その日の属する年の翌年1月31日までに、退職した年の給与所得の金額等を記載した給与支払報告書を提出しなければならないとし、そのうえでただし書を置いています。「ただし、その給与の支払を受けなくなつた日の属する年に当該給与の支払をする者から支払を受けた給与の金額の総額が三十万円以下である者については、この限りでない」。

ここが分かれ目です。このただし書は3項にしかありません。1項には金額による除外が書かれていないため、1月1日に在籍している人については、年間の給与が30万円以下でも提出することになります。「30万円以下は不要」という短い覚え方が広まっていますが、条文の上ではその省略は退職者限定です。

もう一点、ただし書は「この限りでない」と書いているだけで、提出してはいけないという意味ではありません。30万円以下の退職者について提出することは妨げられていません。市区町村によっては、住民税の課税資料を揃える観点から提出を求める運用をしている場合があるため、実務上は提出先の案内を確認するのが確実です。

前年に給与を支払った人 1月1日に在籍しているか はい 金額にかかわらず提出 317条の6第1項 (ただし書は無い) いいえ その年の給与総額は30万円超か 超える → 提出 317条の6第3項本文 30万円以下 → 省略可 3項ただし書
誰の分を提出するかの判定。30万円のただし書に到達するのは、1月1日に在籍していない人(中途退職者)だけ。

様式は第十七号様式と別表 —「総括表」「個人別明細書」は条文に無い言葉

様式を定めているのは地方税法施行規則10条(市町村民税に係る申告書等の様式)です。表の形で、給与支払報告書は第十七号様式、公的年金等支払報告書は第十七号の二様式と決められています。さらに附則の適用区分を読むと第十七号様式別表が繰り返し登場し、給与支払報告書がこの2つで構成されていることが分かります。

興味深いのは、実務で毎年使っている「総括表」「個人別明細書」という語が、施行規則の条文には一度も出てこないことです。条文本文を検索した実測で、どちらも出現回数はゼロでした。これらは様式の紙面に印刷されている名称であり、市区町村の手引きで使われている呼び方です。条文を根拠に議論するときは第十七号様式・同別表という言い方に対応させる必要があります。

書類様式根拠
給与支払報告書第十七号様式(および同様式別表)施行規則10条(一)
公的年金等支払報告書第十七号の二様式施行規則10条(二)
給与支払報告に係る給与所得者異動届出書第十八号様式施行規則10条(三)/法317条の6第2項
特別徴収に係る給与所得者異動届出書第十八号様式(同じ)施行規則10条(四)/法321条の5第3項

この表で見落とされやすいのが最後の2行です。名前のよく似た「給与所得者異動届出書」が2種類あり、様式番号は同じ第十八号様式なのに、根拠条文も提出期限も違います。前者は給与支払報告に係るもので4月15日まで、後者は特別徴収に係るもので事由が発生した月の翌月10日までです。詳しくは後述します。

電子提出が義務になる基準は、地方税ではなく所得税法で決まる

317条の6第5項は、給与支払報告書の提出義務がある者のうち、源泉徴収票について所得税法228条の4第1項の適用を受けるものは、①地方税関係手続用電子情報処理組織を使用し地方税共同機構を経由する方法(eLTAX)、または②光ディスク等を提出する方法のいずれかで提供しなければならないと定めています。

ここが構造として面白いところです。地方税の電子提出義務なのに、判定の基準は地方税法の中に書かれていません。所得税法228条の4第1項を読むと、判定は「当該調書等の提出期限の属する年の前々年の1月1日から12月31日までの間に提出すべきであった当該調書等の枚数として財務省令で定めるところにより算出した数が百以上であるもの」となっています。つまり前々年の源泉徴収票の枚数が100枚以上かどうかで、市区町村への提出方法が決まります。

実務上の含意は2つあります。第一に、判定に使うのは今年でも前年でもなく前々年なので、急に従業員が増えた年にすぐ義務が生じるわけではなく、逆に減った年もすぐには外れません。第二に、数えるのは市区町村へ出した枚数ではなく、税務署へ提出すべきであった源泉徴収票の枚数です。給与支払報告書の枚数を数えて判断すると、提出範囲が違う分だけ答えがずれます。

なお、100枚に満たず義務の対象でない場合も、317条の6第7項により光ディスク等の提出をもって書面の提出に代えることができます。また9項は、eLTAXによる提供について、地方税共同機構の電子計算機に備えられたファイルへ記録がされた時に市町村長に到達したものとみなすと定めています。期限ぎりぎりの提出では、この到達時点の定めが効いてきます。

住民税の税額を年収と家族構成から試算する(住民税 計算機)

忘れられる4月15日 — 給与支払報告に係る給与所得者異動届出書

317条の6第2項は、1項により給与支払報告書を提出した者のうち、4月1日現在において給与の支払を受けなくなったものがある場合には、同月15日までにその旨を記載した届出書を当該市町村長に提出しなければならない、と定めています。

状況としては、1月1日に在籍していたので1月31日に報告した人が、その後の1月から3月の間に退職した、という場面です。市区町村は1月31日の報告に基づいて5月31日までに特別徴収税額を通知するため、その通知を出す前に、もう給与を払っていない人がいることを知る必要があるという順序になっています。前掲の図で4月15日が5月31日の手前に置かれているのはそのためです。

この4月15日も罰則の対象に入っている

317条の7が罰則の対象として列挙しているのは「前条第一項から第四項まで」の規定により提出すべき給与支払報告書、届出書若しくは公的年金等支払報告書です。届出書が明示的に並んでいるため、2項の届出書も同じ罰則の射程にあります。1月31日の期限に比べて知られていませんが、条文の扱いは同じ重さです。

出した後どうなるか — 5月31日の通知と、6月からの特別徴収

給与支払報告書を出すと、市区町村側の手続きが動き出します。地方税法321条の4第1項は、市町村は、当該年度の初日において納税義務者に給与の支払をする者のうち所得税法183条の源泉徴収義務がある者を、当該市町村の条例により特別徴収義務者として指定し、これに徴収させなければならないと定めています。条文が「しなければならない」と書いているとおり、給与所得者の住民税は特別徴収が原則で、市区町村の側にも指定する義務があります。

そして321条の4第2項が、この通知は当該年度の初日の属する年の5月31日までにしなければならないと定めています。これが毎年5月に届く特別徴収税額の通知です。受け取った特別徴収義務者は、321条の5第1項により税額の12分の1を6月から翌年5月まで毎月の給与から徴収し、徴収した月の翌月10日までに市町村へ納入します。

ここに、提出が遅れた場合の受け皿も書かれています。321条の4第3項は、給与支払報告書が提出期限までに提出されなかったことその他やむを得ない理由により5月31日までに通知ができなかった場合には、その期日後に通知をすることを妨げないとしています。報告書の遅延が名指しで例示されている点は、この期限の位置づけをよく表しています。なお同項のただし書により、通知の日の属する月の翌月から翌年5月までの間に徴収することが不適当と認められる場合は、この限りでないとされています。

細かいところでは、321条の5第1項のただし書に例外があります。税額が均等割額に相当する金額以下である場合には、12分割せず、最初に徴収すべき月に全額を徴収して翌月10日までに納入します。少額の人だけ挙動が違う点は、給与計算の設定で見落としやすい箇所です。

年度の途中で退職者が出たとき — 1月〜4月は一括徴収が義務

特別徴収の途中で従業員が辞めた場合、321条の5第2項の本文により、事由が発生した日の属する月の翌月以降の月割額は、徴収して納入する義務を負わないのが原則です。しかし、ただし書に2つの例外が置かれており、ここが実務で最もよく問題になります。

退職などの時期残りの税額の扱い本人の申出
6月1日〜12月31日申出があれば一括徴収必要
翌年1月1日〜4月30日一括徴収不要

条文は、6月1日から12月31日までに事由が発生し「かつ……特別徴収の方法によつて徴収されたい旨の納税義務者からの申出があつた場合」と、事由が「その年の翌年の1月1日から4月30日までの間において発生した場合」を並べています。後者には申出の要件が付いていません。1月から4月の退職では、本人が何も言わなくても一括徴収を行うという組み立てです。

ただし、どちらの場合も無条件ではありません。「当該納税義務者に対してその年の5月31日までの間に支払われるべき給与又は退職手当等で当該月割額の全額に相当する金額を超えるものがあるときに限り」という限定が付いています。残りの税額を賄えるだけの支払いが残っていなければ一括徴収はできず、その場合は5月31日までに支払われた額から徴収できる額を徴収します。徴収したら、やはり翌月10日までに納入します。

この異動があったときに出すのが、前掲の表の(四)特別徴収に係る給与所得者異動届出書です。地方税法施行規則9条の24が期限を定めており、事由が発生した日の属する月の翌月10日までです。さらにただし書があり、事由が4月2日から5月31日までの間に生じた場合、その年度から新たに特別徴収すべき市町村長への提出は、321条の4第1項後段の通知があった日の属する月の翌月10日までとされています。まだ通知が届いていない相手に届出しようがないための調整です。

罰則 — 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、法人にも罰金

地方税法317条の7は「給与支払報告書等の提出義務違反に関する罪」という見出しで、317条の6第1項から第4項までにより提出すべき給与支払報告書・届出書・公的年金等支払報告書を提出しなかったとき、または虚偽の記載をしたものを提出したときは、その違反行為をした者を1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処すると定めています。

さらに2項が両罰規定です。法人の代表者、または法人若しくは人の代理人・使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して違反行為をした場合には、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても罰金刑を科するとされています。担当者個人の問題として閉じず、会社にも罰金が及ぶ構造です。

列挙を数えると、罰則の対象は1項から4項までで、電子提出の方法を定める5項・6項や、光ディスク等による代替を認める7項は入っていません。提出したかどうかどの方法で提出したかが、罰則の上では別の扱いになっているということです。ただし5項が「しなければならない」と定めた義務であること自体は変わりません。

「拘禁刑」という表記について

本記事執筆時点の現行条文は「一年以下の拘禁刑」と表記されています。懲役と禁錮を拘禁刑に一本化する刑法等の改正が反映されたもので、古い解説記事では「1年以下の懲役」と書かれている場合があります。金額(50万円以下の罰金)に変更はありません。

よくある質問

Q. 給与支払報告書はいつまでに、どこへ提出しますか?

A. 地方税法317条の6第1項により、1月31日までに、給与の支払を受けている人の1月1日現在における住所所在の市町村長へ提出します。提出先は会社の所在地ではなく従業員一人ひとりの住所地であるため、従業員が複数の市区町村に住んでいる場合は、市区町村ごとに作成してそれぞれへ提出することになります。条文が「当該給与の支払を受けている者の同月一日現在における住所所在の市町村別に作成された給与支払報告書に記載し」と書いているとおり、市町村別に作成することが条文上の要件です。なお中途退職者については同条3項が別に定めており、給与の支払を受けなくなった日の属する年の翌年1月31日までに、その人の退職日現在における住所所在の市町村へ提出します。

Q. 年間の給与が30万円以下の人の分は提出しなくてよいですか?

A. その人が中途退職者であれば省略できますが、1月1日に在籍している人については省略できません。30万円以下の除外は地方税法317条の6第3項のただし書に置かれており、3項は「給与の支払を受けなくなつたものがある場合」すなわち退職者についての規定だからです。1月1日現在の在職者を対象とする1項には、金額による除外のただし書がありません。したがって、年間の給与が30万円に満たない短時間のアルバイトでも、1月1日時点で在籍していれば提出の対象になります。なお3項ただし書は「この限りでない」と定めているだけで提出を禁じるものではないため、30万円以下の退職者について提出することは妨げられていません。市区町村によっては課税資料を揃える観点から提出を求める運用をしている場合があるため、提出先の案内を確認するのが確実です。

Q. 4月15日の届出書とは何ですか。1月31日に提出していれば不要ではないのですか?

A. 地方税法317条の6第2項が定める届出書で、1月31日に給与支払報告書を提出した人のうち、4月1日現在において給与の支払を受けなくなった人がいる場合に、4月15日までに提出するものです。1月31日の提出とは別の義務で、1月から3月の間に退職者が出た場合に必要になります。市区町村は1月31日の報告に基づいて5月31日までに特別徴収税額の通知を出すため、その前にもう給与を支払っていない人がいることを把握する必要がある、という順序で条文が組まれています。地方税法施行規則10条の表では、この届出書は「給与支払報告に係る給与所得者異動届出書」として第十八号様式と定められています。なお317条の7の罰則は「前条第一項から第四項まで」により提出すべき「給与支払報告書、届出書若しくは公的年金等支払報告書」を対象としており、届出書が明示されているため、この2項の届出書も罰則の射程に入っています。

Q. eLTAXでの提出はいつから義務になりますか?

A. 地方税法317条の6第5項により、源泉徴収票について所得税法228条の4第1項の適用を受ける者が対象です。同項の基準は、提出期限の属する年の前々年の1月1日から12月31日までの間に提出すべきであった調書等の枚数として財務省令で定めるところにより算出した数が100以上であることです。つまり前々年の源泉徴収票の枚数が100枚以上であれば、地方税関係手続用電子情報処理組織を使用し地方税共同機構を経由する方法か、光ディスク等を提出する方法のいずれかによることになります。注意点が2つあり、第一に判定するのは今年でも前年でもなく前々年であること、第二に数えるのは市区町村へ提出した給与支払報告書の枚数ではなく税務署へ提出すべきであった源泉徴収票の枚数であることです。提出範囲が異なるため、給与支払報告書の枚数で判断すると答えがずれます。

Q. 100枚に満たない場合、紙で提出するしかありませんか?

A. いいえ。地方税法317条の6第7項は、5項または6項の適用を受ける者を除く提出義務者について、記載事項を記録した光ディスク等の提出をもって報告書の提出に代えることができると定めています。義務ではないものの、電子的な方法を選ぶことは条文上認められています。またeLTAXを利用すること自体が枚数によって制限されているわけではありません。なお、eLTAXによる提供の到達時期については9項に定めがあり、地方税共同機構の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に市町村長に到達したものとみなすとされています。期限の直前に提出する場合は、この到達時点の定めが実際の期限判定に効いてきます。

Q. 「総括表」と「個人別明細書」は法令上の名称ですか?

A. 地方税法施行規則の条文には、いずれの語も出てきません。条文の本文を検索した実測で、「総括表」も「個人別明細書」も出現回数はゼロでした。施行規則10条が定めているのは給与支払報告書が第十七号様式であることで、附則の適用区分には第十七号様式別表が繰り返し登場します。実務で使われている総括表・個人別明細書という呼び方は、様式の紙面に印刷されている名称であり、市区町村の手引きで用いられているものです。日常の実務でこの呼び方を使うことに問題はありませんが、条文を根拠に議論するときや、条文と手引きの記述を突き合わせるときには、第十七号様式および同様式別表という法令上の呼称に対応させて読む必要があります。

Q. 給与所得者異動届出書は1種類ではないのですか?

A. 地方税法施行規則10条の表には、名前のよく似た届出書が2つ並んでいます。1つは「給与支払報告に係る給与所得者異動届出書」で、地方税法317条の6第2項により提出すべきもの、もう1つは「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」で、地方税法321条の5第3項により提出すべきものです。様式番号はどちらも第十八号様式で共通ですが、根拠条文も提出期限も異なります。前者は317条の6第2項が4月15日までと定めています。後者は地方税法施行規則9条の24が、事由が発生した日の属する月の翌月10日までと定めており、さらにただし書で、事由が4月2日から5月31日までの間に生じた場合における、その年度から新たに特別徴収すべき市町村長への提出は、321条の4第1項後段の通知があった日の属する月の翌月10日までとしています。

Q. 年度の途中で退職した人の住民税は、一括徴収しなければなりませんか?

A. 時期によって扱いが分かれます。地方税法321条の5第2項の本文は、給与の支払を受けないこととなった場合、事由が発生した日の属する月の翌月以降の月割額については徴収して納入する義務を負わないとしています。そのうえでただし書が2つの場合を挙げており、1つは事由が6月1日から12月31日までの間に発生し、かつ納税義務者からの申出があった場合、もう1つは事由がその年の翌年1月1日から4月30日までの間に発生した場合です。後者には申出の要件が付いていないため、1月から4月の退職では本人の申出がなくても一括徴収の対象になります。ただしどちらの場合も、その年の5月31日までに支払われるべき給与または退職手当等で月割額の全額に相当する金額を超えるものがあるときに限られ、賄えない場合は5月31日までに支払われた額から徴収できる額を徴収します。徴収した場合は、その月の翌月10日までに納入します。

Q. 給与支払報告書を提出しなかった場合、罰則はありますか?

A. あります。地方税法317条の7第1項は、317条の6第1項から第4項までにより提出すべき給与支払報告書、届出書または公的年金等支払報告書を提出しなかったとき、または虚偽の記載をしたものを提出したときは、その違反行為をした者を1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処すると定めています。さらに同条2項は両罰規定で、法人の代表者または法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人または人の業務に関して違反行為をした場合には、行為者を罰するほか、その法人または人に対しても罰金刑を科すとしています。なお罰則が対象としているのは317条の6の1項から4項までで、電子提出の方法を定める5項・6項や光ディスク等による代替を認める7項は列挙に含まれていません。ただし5項が義務を定めた規定であること自体は変わりません。

Q. 提出が遅れると、住民税の特別徴収はどうなりますか?

A. 地方税法321条の4第2項は、特別徴収税額の通知を当該年度の初日の属する年の5月31日までにしなければならないと定めています。そして同条3項が、317条の6第1項により提出すべき給与支払報告書がその提出期限までに提出されなかったことその他やむを得ない理由により、市町村長が5月31日までに通知をすることができなかった場合には、その期日後において通知をすることを妨げないとしています。給与支払報告書の遅延が条文に名指しで例示されている点が、この期限の位置づけを表しています。なお同項ただし書により、321条の5第1項の規定によって通知のあった日の属する月の翌月から翌年5月までの間に特別徴収税額を徴収することが不適当であると認められる場合は、この限りでないとされています。提出の遅れは自社の手続きの遅れにとどまらず、市区町村側の通知時期と、その後の徴収の組み立てに影響します。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。給与支払報告書の提出範囲、提出方法、退職者が生じた場合の徴収の取扱いは、従業員の居住する市区町村の定めや案内、事業所の規模、給与の支払形態などの具体的な事情によって結論が変わります。実際の手続きにあたっては、提出先の市区町村または税理士にご確認ください。

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