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内部統制とは?経理の実務例と会社法・J-SOXの違い

内部統制とは、業務を適切に進め、誤りや不正のリスクを減らすために、仕事の流れに組み込む仕組みです。経理なら、支払データを作る人と承認する人を分ける、請求書と振込予定を照合する、といった手続が実務例です。

まずは下の表で、職務分掌・承認・照合・アクセス管理を支払業務にどう組み込むか確認できます。続いて、会社法上の体制整備と、財務報告に係る内部統制報告制度(J-SOX)の違い、記録と評価の方法を整理します。

経理の内部統制:支払業務の実務例

支払業務では、作成・承認・実行・記帳を同じ担当者だけで完結させない設計が出発点になります。下表は本記事の実務例です。法令がこの手順や担当人数を指定しているという意味ではありません。

以下は、請求書を受領して銀行振込を行う会社の設計例です。担当と権限、確認の頻度、保存する記録は、業務の規模・リスクに合わせて定めます。

統制の種類支払業務に入れる手続の例残す記録の例
職務分掌支払データの作成者と、振込を承認・実行する者を分ける担当・権限一覧、作成者と承認者の履歴
承認権限を持つ承認者が、支払先・根拠・金額・期日を確認する承認した対象データ、承認者、承認日時
照合請求書を発注・検収の記録と突き合わせ、支払予定の重複も調べる照合表、差異の理由と、解消の記録
アクセス管理会計・銀行システムの操作権限を職務に合わせ、異動・退職時に見直す権限一覧、変更申請、変更後の確認記録

振込先変更は、請求書の照合だけでは足りない

たとえば、請求書の振込先が前回と変わっていたとします。請求書と支払データの口座が一致していても、その請求書自体の変更が正当かは別の問題です。

設計例として、口座変更の申請と承認を通常の支払作成から分ける方法があります。既に把握している取引先の連絡先で、変更内容を確認する手続も考えられます。変更依頼に書かれた連絡先だけで確認を終えないよう、連絡先の確認方法も決めます。

また、承認後にデータを書き換えられるなら、承認した内容と実行した内容がずれる余地が残ります。設計例では、承認後の変更を制限します。変更時には承認を取り直す流れとし、その履歴を残します。

このように、どの誤りを、どの手続で防ぐ・見つけるのかまで結び付けて考えるのが内部統制の設計です。チェック欄や承認印を増やすこと自体が目的ではありません。

支払予定の期日確認に:営業日計算ツール

計算ツールは期日の確認を補助します。支払の承認や振込先の確認を代行するものではありません。

内部統制の目的と基本的要素

内部統制の目的は、不正防止だけではありません。金融庁が公表する企業会計審議会の内部統制基準は、内部統制を業務に組み込まれ、組織内の人が遂行するプロセスと位置付けています。内部監査部門だけの仕事ではありません。

目的は、不正防止だけではない

内部統制基準の基本的枠組みにおける目的を整理しました。「報告」には、非財務情報や社内への報告も含みます。

目的意味経理で考える場面の例
業務の有効性及び効率性事業活動の目的達成に向け、業務の有効性・効率性を高める差戻しの原因を調べ、請求書の受付手順を整える
報告の信頼性組織内外への報告の信頼性を確保する財務情報や社内管理資料の根拠を照合する
事業活動に関わる法令等の遵守法令その他の規範の遵守を促進する保存が必要な証憑を識別し、保存手順を定める
資産の保全資産の取得・使用・処分が正当な手続と承認の下で行われるようにする支払権限を制限し、現金・預金の残高を確認する

目的は相互に関係します。支払の照合は、誤送金による資産流出を防ぐだけでなく、会計記録の正確性や、やり直しの削減にも関係する実務例です。

基本的要素を、業務の言葉に置き換える

以下は内部統制基準の基本的要素と、経理での対応を考えるための例です。各要素は相互に関連し、独立した作業の順番を表すものではありません。

基本的要素実務で確かめることの例
統制環境経営者が手続を尊重し、権限と責任を明確にしているか
リスクの評価と対応誤送金・二重払いなどを識別し、影響や発生可能性に応じて対応を選ぶか
統制活動承認、職務分掌、照合などが業務の流れに組み込まれているか
情報と伝達支払条件の変更や照合差異が、判断する人に伝わるか
モニタリング手続が機能しているかを評価し、問題を報告・是正するか
ITへの対応システムの利用・権限・変更管理などを、他の統制と一体で考えているか

システムを導入しても、誰が何を操作できるかが曖昧なら、その業務に必要な統制が備わったとは判断できません。内部統制基準も、ITの利便性に加え、脆弱性や業務への影響を考慮するよう求めています。

会社法とJ-SOXは何が違うか

会社法上の体制整備は業務の適正を確保するための決定、J-SOXは財務報告に係る内部統制の評価・報告を扱います。非上場かどうかだけで、会社法上の体制整備の決定義務まで判断することはできません。

区分会社法上の体制整備金融商品取引法上の内部統制報告制度
何を扱うか会社・企業集団の業務の適正を確保する体制財務報告の信頼性を確保する体制の評価・報告
対象の確認軸会社の規模と機関設計。非上場の会社にも関係する上場有価証券の発行会社など、法令で定める提出義務者
手続の性質機関設計に応じた主体が体制整備の事項を決定する経営者が内部統制を評価し、その報告書を提出する

会社法:会社の規模と機関設計を確認する

会社法362条では、大会社である取締役会設置会社について、取締役会が業務の適正を確保するための体制整備の事項を決定する義務を定めています。ここでいう大会社は、従業員数や上場・非上場で決まる区分ではありません。

会社法2条6号の大会社は、次のいずれかに該当する株式会社です。判定には、最終事業年度の総会承認済み貸借対照表を使いますが、同法439条前段では総会報告済みのもの、成立後最初の定時株主総会までは成立時のものを使います。

判定する項目大会社に該当する額
資本金として計上した額5億円以上
負債の部に計上した額の合計200億円以上

主な別規定:取締役会を設置していない大会社は会社法348条、監査等委員会設置会社は同399条の13、指名委員会等設置会社は同416条を確認します。後者の委員会設置会社の決定義務には、大会社という限定はありません。

経理担当が作る支払規程や権限一覧は、日々の業務で体制を具体化する文書の例です。取締役会の決議が必要な事項と、決定した方針を現場で運用する手順を区別して管理します。

J-SOX:評価して報告する制度

金融商品取引法24条の4の4では、同法24条1項1号により有価証券報告書を提出する日本の株式会社は、内部統制報告書を事業年度ごとに有価証券報告書と併せて提出します。有価証券報告書の提出義務がある会社のすべてが、内部統制報告書の提出義務を負うわけではありません。

同条には、義務対象外の会社による任意提出や、特定有価証券・外国会社に関する別の取扱いもあります。自社の提出要否は、発行する有価証券と法令上の区分で確認します。

基本的枠組みにおける「報告の信頼性」には非財務情報も含まれますが、金融商品取引法上の内部統制報告制度の目的は、財務報告の信頼性の確保です。枠組みの対象が広いことと、法定の報告対象が広がることを混同しないようにします。

内部統制報告書の提出義務と、監査証明の免除も別の論点です。監査証明は金融商品取引法193条の2に従って確認します。監査証明の免除に該当することだけを理由に、報告書を提出しなくてよいとは判断できません。

リスクと統制を対応させて設計する

最初に、業務の流れと、どこで誤りや不正が起き得るかを書き出します。その後で、リスクに対応する手続と担当、記録を決めます。以下は、支払業務について整理する設計例です。

支払業務の内部統制を設計する流れの例業務の流れを把握請求受領 → 承認 → 振込リスクを識別重複・無承認・口座の誤り手続・担当・記録を決定誰が何を確認し、何を残すか運用を点検し、改善記録をたどり、差異を解消
設計例:作業の流れからリスクを見つけ、手続と記録を決めた後、実際の運用を点検します。

防ぐ手続と、後から見つける手続

支払前に承認権限を確認することは、権限のない支払を防ぐ手続の例です。一方、振込結果と預金元帳を突き合わせることは、実行後に記録との差異を見つける手続の例です。事前の承認があるからといって、実行後の確認を省けるとは限りません。

照合で差異が出たときの扱いも設計に含めます。例として、未計上なら記帳担当へ、振込内容の相違なら支払責任者へ報告します。解消した内容を記録する流れも定めます。差異を一覧に載せるだけで放置すると、発見したリスクへの対応が完了しません。

リスクの重要性は、金額だけでなく、発生可能性や不正の性質、業務への影響も含めて考えます。社内の承認基準を超えるかという話と、財務報告上の開示すべき重要な不備に当たるかという話は、同じ判定ではありません。

業務記述書・流れ図・対応表の作り方

業務の内容とリスク・統制の関係が分かる記録を残します。内部統制の実施基準に掲載された業務の流れ図や業務記述書は参考例です。その様式で新規作成することが求められているわけではありません。既存の文書を使い、必要に応じて補足する方法も示されています。

設計例として、業務記述書には担当者の作業と判断条件を文章で整理します。流れ図には部署間の受渡しや承認の分岐を図で整理します。リスクと統制の対応表では、誤りが起きる場面と、それに対応する手続を結び付けます。文書を別々に作る場合も、同じ業務名や管理番号でたどれるようにします。

以下は請求書払いの設計例を、リスクと統制の対応表にしたものです。法定様式ではありません。

起き得る誤り同じ請求への二重払い承認されていない支払振込結果の記帳漏れ
対応する手続の例請求書番号・取引先・対象期間で支払済みデータと照合根拠資料と権限に沿った承認の有無を確認振込結果・通帳等の明細と預金元帳を照合
誰が・いつ行うかの例支払データ作成者が、作成時に確認振込承認者が、実行前に確認照合担当者が会社の定めた期日に確認
確かめる記録の例請求書と支払履歴、重複候補の処理記録申請内容と承認履歴照合表と、差異の、解消記録

文書に「確認する」とだけ書くと、何を見て一致と判断したかが分かりません。設計例では、対象資料、比較する項目、不一致時の報告先、残す記録まで定めます。画面で確認する業務なら、承認時の対象データと操作履歴を後からたどれるかも検討します。

請求書や伝票そのものの役割は、証憑とは、出金伝票の書き方で確認できます。保存期間の法定年数と、内部統制のために残す記録の設計は、分けて整理します。

整備と運用を分けて点検する

手続が適切に設計されているかと、その手続どおりに実施されているかは別々に見ます。内部統制の実施基準は、目的を果たす手続が存在しない場合などを整備上の不備、意図したとおりに実施されない場合などを運用の不備として整理しています。

以下は、支払承認の設計と実施を点検する実務例です。通常の不備と、J-SOX上の「開示すべき重要な不備」の判断は区別します。

点検する面整備運用
確認の例作成者とは別の権限者が、支払根拠まで確認する設計か実際の申請資料と承認履歴をたどり、手続どおりの実施を調べる
不備の例承認対象が合計額だけで、支払先や根拠を確認できない規程はあるが、支払後に、まとめて、承認している
改善の方向の例確認項目と対象資料、権限を定め直す遅れの原因を調べ、業務の順序や、代行者を見直す

規程を読むだけでは実施状況を確認できません。実施基準は、関連文書の閲覧、担当者への質問、業務の観察、実施記録の検証などにより運用を確かめる方法を示しています。

設計例では、請求書の受領から承認、振込、記帳までを同じ取引についてたどります。記載した手続と実際の処理が合うか確かめます。承認者に名前があるかだけでなく、必要な資料を見られる状態だったか、承認前後に内容が変わっていないかも確認します。

J-SOXの評価範囲は、財務報告への影響の重要性を踏まえて経営者が決定します。前年と同じ対象・方法をそのまま使うのではなく、事業やシステム、担当体制の変化も検討します。具体的な評価方法・証拠の範囲は、自社の状況と適用される基準に沿って定めます。

不備を見つけたら、原因、改善する担当、対応期限、再確認する方法を記録するのが実務例です。J-SOX上の開示すべき重要な不備は、金額的または質的に重要な虚偽記載をもたらす可能性が高い不備です。該当性は金額と質の両面で検討します。

担当者が少ない会社と経営者の役割

担当者が少ない場合は、実行できない分掌表を作るより、誰が独立した視点で何を確認できるかを具体化します。経営者が支払根拠や振込結果を直接確認する、操作権限を限定する、といった組合せを検討する実務例です。

ただし、経営者が確認するだけで同等の効果があるとは限りません。たとえば確認者が同じ支払を指示した本人なら、独立した確認になりにくい場面があります。資料に直接アクセスできるか、差異を指摘できるか、確認結果が残るかを含めて設計します。

内部監査に任せても、経営者の責任は残る

内部統制基準では、経営者が内部統制を整備・運用する役割と責任を負い、取締役会は基本方針の決定と監督を担います。内部監査人は、モニタリングの一環として整備・運用を検討・評価し、改善を促す役割です。

監査役等にも、職務執行の監査の一環として独立した立場から監視・検証する役割があります。現場の担当者も、自分の業務に関係する統制を実施します。内部監査が確認していることを理由に、現場の照合や承認を省く設計にはしません。

内部統制には限界がある

内部統制は、不正や誤りを完全に防止する保証ではありません。判断の誤りや不注意、担当者の共謀、想定外の環境変化・非定型取引によって、機能しなくなる場合があります。経営者が不当な目的で手続を無視したり無効化したりする場合も同様です。整備・運用の費用と便益を比較する必要もあります。

そのため、支払担当の変更、取引の増加、システムの切替えなどを、統制を見直すきっかけにするのが実務例です。手続を増やし続けるだけでなく、重複する確認を整理し、重要なリスクに対して実際に機能する手続を残すことを考えます。

着手するなら、支払業務の流れに、リスク・手続・担当・残す記録を書き加えるところから。会社法上の決定事項とJ-SOXの評価・報告対象を区別し、作った手続が実施されているかも点検します。

よくある質問

内部統制とは、簡単にいうと何ですか?

業務を適切に進め、誤りや不正のリスクを減らすために、仕事に組み込む仕組みです。経理では支払の職務分掌、権限に沿った承認、請求書との照合などが実務例です。不正や誤りを完全に防止する保証ではありません。

内部統制と内部監査はどう違いますか?

内部統制は日々の仕事に組み込む仕組みで、内部監査はその整備・運用を検討・評価し改善を促す活動です。内部監査はモニタリングの一環に位置付けられます。内部監査部門だけが内部統制を担うわけではありません。

非上場の会社にも内部統制は必要ですか?

非上場であることだけでは、会社法上の体制整備の決定義務がないとはいえません。大会社である取締役会設置会社には会社法上の決定義務があり、機関設計による別規定もあります。J-SOXの報告義務は、上場有価証券の発行会社等に関する別の要件で確認します。

業務記述書や流れ図は、指定様式で作る必要がありますか?

内部統制の実施基準に掲載された業務記述書や流れ図は参考例であり、その様式で作成する必要はありません。業務の概要を整理・記録する際、既存の文書を利用し、必要に応じて補足する方法も示されています。

承認印があれば、内部統制が有効といえますか?

承認印だけでは判断できません。確認対象と権限が適切に設計され、その内容どおりに承認されたかを確かめる必要があります。支払業務の点検例なら、申請資料と承認履歴をたどり、支払根拠の確認や承認後の変更管理も調べます。

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出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税理士・公認会計士・弁護士等にご確認ください。

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