終身雇用とは|無期雇用・定年との違いと会社規程の読み方
終身雇用とは、同じ企業で定年まで働くことを前提とする雇用慣行です。一生の雇用や、同じ仕事・給与の維持を保証する言葉ではありません。
会社の制度を読むときは、雇用契約の期間、定年、定年後の継続雇用、賃金・評価を分けて確認します。この記事では制度の違いと社内資料の読み方を表にまとめ、意識調査の割合が何を示すかも整理します。
終身雇用・無期雇用・年功序列の違い
終身雇用は雇い続ける慣行、無期雇用は契約期間の区分、年功序列は賃金・昇進の考え方です。同じ会社で組み合わされることはありますが、同じ意味ではありません。
| 言葉 | 何を表すか | 混同しやすい点 |
|---|---|---|
| 終身雇用・長期雇用慣行 | 同じ企業で長く働くことを前提とする雇用のあり方 | 「終身」は死亡まで働くという意味ではない |
| 無期雇用 | 労働契約に期間の定めがないこと | 契約期間が無期でも、定年や退職の定めは別に確認する |
| 有期雇用 | 労働契約に期間の定めがあること | 長く勤めていても、現在の契約期間の区分は別の確認が必要 |
| 年功序列・年功賃金 | 年齢や勤続年数を重視する賃金・昇進の考え方 | 長期雇用という方針だけで昇給額が決まるわけではない |
| 成果主義・職務に応じた処遇 | 成果や担当する仕事を評価・賃金に反映する考え方 | 賃金制度の変更と、雇用期間の変更は分けて読む |
労働政策研究・研修機構の勤労生活に関する調査も、終身雇用への評価と年功賃金への評価を別に尋ねています。会社の案内に「長く働ける」とあっても、それだけで賃金表や配置の条件まで読み取ることはできません。
また、無期転換は有期契約を期間の定めのない契約に変える制度です。無期転換時の労働条件は、契約期間と別段の定めがある部分を除き、従前と同じになります。そのため、正社員化や昇給とは区別します。申込みの条件や特例は無期転換の解説で確認できます。
職務・役割と給与の関係はジョブ型雇用の社内文書の確認表で扱っています。本記事では、雇用を続ける方針と、その間の処遇を決める資料を読み分けます。
定年・継続雇用の制度を区別する
長期雇用という方針と、法律が事業主に求める措置は別です。とくに、定年の引上げと定年後の再雇用を同じものとして扱わないようにします。
以下は民間企業の船員を除く労働者についての制度の区別です。根拠は高年齢者雇用安定法の定年・雇用確保・就業確保の規定。就業確保の行は努力義務です。個人の無条件な雇用保証を示す表ではありません。
| 制度・対象事業主 | 法が求めること | 取り違えない点 |
|---|---|---|
| 定年を定める場合 | 定年は60歳以上。ただし省令所定の困難業務に従事する労働者を除く | 定年そのものを設ける義務ではない |
| 定年を65歳未満に定める場合 | 65歳までの定年引上げ・継続雇用制度の導入・定年廃止のいずれかの措置が必要 | 定年延長だけが対応方法ではない |
| 定年が65歳以上70歳未満、又は継続雇用制度がある場合(70歳以上までの制度を除く) | 70歳までの就業確保の努力義務 | 定年引上げ・継続雇用・定年廃止に加え、所定の創業支援等措置も選択肢 |
雇用確保措置の継続雇用制度は、現に雇用する希望者全員が対象です。ただし、年齢以外の就業規則上の解雇・退職事由に該当し、客観的合理性・社会的相当性がある場合などは、不継続が認められます。
就業確保の創業支援等措置には、労働契約以外の契約による業務委託や社会貢献事業への従事が含まれます。導入には、過半数労働組合、なければ過半数代表者の同意を省令所定の方法で得るなどの条件があります。会社が一方的に雇用を業務委託へ置き換える意味ではありません。
就業確保の継続雇用には、本人の希望を前提に、他の事業主との契約に基づき雇用を確保する方法も含まれます。措置ごとの要件は厚生労働省「高年齢者の雇用」にまとまっています。
個人の再雇用前後の仕事内容・勤務時間・給与を比べるときは、嘱託社員の契約条件の確認表へ進んでください。会社が採用している制度を確認してから、個人の契約条件を読みます。
メリットと、見直しで問題になること
長期雇用の効果は、賃金・登用の仕組みと合わせて読みます。一方、年功中心の評価や配置と組み合わされると、中途採用者や多様な働き方に合わない場合があります。
利点の欄は、長期雇用と年功賃金のもとで技能習得や協力が促されるという説明です。この制度では外部採用を制限し、年齢・勤続年数・査定に基づく社内の昇給・昇進を整えています。技能が陳腐化しにくく環境変化が緩やかな場合に合理性があるとされ、変化が速い場合は限界もあります。右欄は任意の社内確認例です。
| 観点 | 期待される利点 | 社内で確かめること |
|---|---|---|
| 技能の蓄積 | 社内の業務や技術を継続的に学ぶ機会を持ちやすい | 育成計画と担当業務がつながっているか |
| 組織内の協力 | 社内の知識や経験を共有し、協力する動機につながり得る | 知識が特定の担当者だけに集中していないか |
| 評価と登用 | 長い期間の経験や成長を処遇に反映できる | 勤続年数だけで、中途採用者の経験や職務を見落としていないか |
| 働き方と配置 | 社内で担当を変えながら経験を蓄積できる | 勤務時間・勤務地の制約がある人も能力を生かせるか |
利点や課題の背景は、内閣府「経済財政白書・働き方の多様化に向けて求められる変革」で説明されています。長期雇用と年功的処遇を組み合わせた仕組みの分析であり、長く雇えば費用が下がる、成果が上がる、といった効果を保証するものではありません。
経理担当が人件費資料を作る場合も、「終身雇用だから毎年同額を昇給させる」と置くのではなく、会社の賃金表・昇給条件・人員構成を確認します。これは予算作成時の資料整理の例で、特定の賃金制度への移行を勧めるものではありません。
「崩壊した」「何割が終身雇用か」の読み方
支持する人の割合と、導入している企業の割合は別の数字です。記事で割合を見つけたら、まず調査年・対象者・質問文を確認します。
JILPTの2021年調査では、全国20歳以上の男女の回答における終身雇用の支持割合は82.0%で、「良いことだと思う」と「どちらかといえば良いことだと思う」の合計です。
この全国20歳以上男女を対象とする調査は2021年9月24日から10月17日に実施され、有効回答は2,388人です。資料の公表日は2025年6月27日であり、公表年の状況を測った調査ではありません。
| 指標 | 何を数えるか | それだけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 終身雇用の支持割合 | 質問に対して肯定的に答えた人の割合 | 回答者の会社が終身雇用を採用しているか |
| 長期勤続者の割合 | 定められた勤続期間に該当する人の割合 | 将来、定年まで雇用されるか |
| 長期雇用を重視する企業の割合 | 調査対象企業の人事方針に関する回答の割合 | 個々の労働契約でどの条件が約束されているか |
この表は指標を読むための整理です。掲載した支持割合から、日本の企業全体の導入率や、今後の制度の消滅時期を推定してはいません。「崩壊」という言葉だけで自社の契約条件を読み替えず、どの制度を何の資料で変更するのかを確認します。
会社規程と契約を読む参照表
契約期間の欄だけで、終身雇用の約束や会社制度の全体像は判断できません。雇用の継続と処遇を別々の資料で確認し、資料が食い違う部分を労務担当へ戻すと整理できます。
以下は社内資料をそろえるための任意の参照表です。法定様式や必要書類の全件一覧ではなく、会社ごとの適用範囲・規程の版・個別合意を確認するための例です。
| 知りたいこと | 開く資料の例 | 読み取って記録すること |
|---|---|---|
| 契約の期間 | 労働条件通知書・雇用契約書 | 期間の定めの有無と、適用する社員区分 |
| 雇用が終了する定め | 就業規則の定年・退職の項目 | 対象者、定年に達した際の退職の時点 |
| 定年後の制度 | 継続雇用規程・関連する就業規則 | 会社が採用した措置の種類と対象範囲 |
| 給与・昇給・評価 | 賃金規程・賃金表・評価規程 | 支給条件、昇給の判定、職務や評価との対応 |
| 担当業務と異動 | 契約書類・配置に関する規程 | 業務・勤務地の範囲と、変更の扱い |
| 制度を見直す場合 | 変更前後の規程・個別合意・周知の記録 | 何を変えるか、誰にいつ適用するか、確認が残る箇所 |
労働条件の変更では、本人との合意と、就業規則による変更の要件を分けます。合意のない不利益変更には制限があり、就業規則の変更による場合も周知と合理性などの確認が必要です。
制度変更の確認では、個別合意、就業規則の最低基準、法令・労働協約との関係も整理します。法令・労働協約との関係も含む詳しい整理は、就業規則の効力と変更の解説と労働契約法の労働条件変更の規定を参照してください。
また、労働契約法が適用される労働者の解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない場合、権利濫用として無効です。「終身雇用の見直し」という名称で、この判断が不要になるわけではありません。
上の労働契約法の説明は、公務員や同居親族だけを使用する場合の契約など、同法の適用外は対象にしていません。解雇制限・予告などの手続も別に関わるため、個別の適法性は社内資料だけで確定せず、労務担当や専門家に確認します。
架空例:人事から届いた方針を読み分ける
「長期雇用を維持し、給与は役割に応じて見直す」という社内方針なら、雇用の継続と給与の変更を分けて記録します。次は経理担当が資料を整理する架空例で、契約条項や適法な制度変更のひな形ではありません。
会社から方針だけが届き、具体的な変更条件はまだ確認できていないという架空の記入例です。経理担当は方針の文言を給与計算の確定条件に置き換えず、資料と未確認点を対応づけます。
| 届いた方針 | 記録する確認点 | 給与処理前にそろえる資料 |
|---|---|---|
| 長期雇用を維持する | 雇用契約の期間や定年規程を変える話を含むかは未確認 | 対象社員区分の契約書類・適用する規程 |
| 役割に応じた給与にする | 変わる給与項目、役割の定義、適用開始が未確認 | 新旧の賃金規程・賃金表・確定した個人別条件 |
| 社内異動で育成する | 担当変更と契約上の業務・勤務地の範囲の整合を確認 | 配置に関する規程と本人の契約書類 |
給与担当への連絡は、制度名よりも「どの規程の、どの条件を、誰に、いつから適用するか」を明確にすると照合しやすくなります。確認が済んだ条件と残る確認事項を分けて引き継ぐと、推測による給与変更を防ぎやすくなります。
勤続期間と勤務条件から有給休暇の付与日数を確認する終身雇用という方針は、雇用期間・定年・賃金条件をまとめて決めるものではありません。会社の制度は資料ごとに読み、統計は調査対象と質問の内容を確かめます。
よくある質問
終身雇用と無期雇用は同じですか?
同じではありません。終身雇用は長期に雇用する慣行、無期雇用は契約期間に定めがないことです。無期契約でも、定年や退職の条件は契約・規程を別に確認します。
終身雇用なら、給与は勤続年数とともに上がりますか?
終身雇用という方針だけでは決まりません。年功賃金は賃金の決め方であり、長期雇用とは区別します。適用する賃金表・昇給条件・評価規程で確認します。
終身雇用は法律で義務付けられていますか?
終身雇用という慣行を、全企業共通の雇用保証義務として扱うことはできません。定年や継続雇用については別に法定の措置があり、労働契約法が適用される労働者の解雇にも、客観的合理性・社会的相当性を欠くと無効になる制限があります。
終身雇用の支持率から、導入している会社の割合が分かりますか?
分かりません。支持率は回答者の評価を表し、企業の制度導入の割合とは分母も質問も異なります。調査年と対象者、肯定回答の集計方法を確認して読みます。
出典
- 労働政策研究・研修機構「第8回勤労生活に関する調査」終身雇用と年功賃金の定義、調査概要、支持割合。
- 内閣府「経済財政白書・働き方の多様化に向けて求められる変革」日本的雇用慣行の特徴、技能の育成、多様な人材の活躍に関する課題。
- e-Gov法令検索「労働契約法」労働条件の確認・変更、解雇、無期転換、適用除外。
- e-Gov法令検索「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」定年、雇用確保措置、就業確保措置。
- 厚生労働省「高年齢者の雇用」「高年齢者雇用安定法Q&A」制度の区別と継続雇用制度の対象・例外。
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。個別の税務・労務相談には応じられません。契約変更・解雇や待遇の判断は、社会保険労務士・弁護士、所轄の労働基準監督署・都道府県労働局へご確認ください。