総資産回転率とは?計算式・平均総資産の求め方と期末残高との差
総資産回転率は、売上高を総資産で割り、資産に対してどれだけ売上を生み出したかを見る指標です。この記事では、財務省の法人企業統計にそろえ、分母に期首・期末の平均総資産を使います。単位は「回」です。
決算書から売上高と資産合計を拾い、下の参照表に当てはめれば計算できます。期末の資産だけで割る方法との差も、同じ架空の決算で確かめます。
計算式と決算書から拾う数字
総資産回転率=当期売上高÷期首・期末平均総資産です。平均総資産は、対象決算期間の期首総資産と期末総資産を足し、2で割ります。
| 使う数字 | 参照する資料・箇所 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 当期売上高 | 対象期間の損益計算書の売上高 | 利益や入金額に置き換えない |
| 期首総資産 | 期首に対応する前期末貸借対照表の資産合計 | 前期末と当期末を取り違えない |
| 期末総資産 | 当期末貸借対照表の資産合計 | 流動資産や純資産だけを拾わない |
法人企業統計では、この指標を「総資本回転率」と呼びます。算式は財務省「法人企業統計における財務営業比率の算式」に掲載されています。
総資産は貸借対照表の資産合計です。法人企業統計の総資本は「負債+特別法上の準備金+純資産」とされ、資産の調達側から見た合計に当たります。分母を自己資本だけに置き換えると、別の指標になります。
平均総資産と期末残高の計算例
分母の基準が違うと、同じ決算でも回転率が変わることがあります。まず平均総資産を求め、次に売上高を割る順にすると検算しやすくなります。
次の仮設例は、税抜経理の単体会社の通期決算です。この単体通期決算の仮設例では年間売上高は120百万円、期首総資産は60百万円、期末総資産は100百万円とします。金額の単位は百万円です。
| 項目 | 仮設例の値 | 資料上の位置 |
|---|---|---|
| 年間売上高 | 120 | 当期の損益計算書 |
| 期首総資産 | 60 | 前期末の貸借対照表・資産合計 |
| 期末総資産 | 100 | 当期末の貸借対照表・資産合計 |
同じ単体通期決算の仮設例(年間売上高120、期首総資産60、期末総資産100、金額は百万円)を使います。平均総資産と期末残高だけの計算を比べ、中間計算は丸めず、回転率は小数第3位を四捨五入して表示します。
| 計算するもの | 計算過程 | 結果 |
|---|---|---|
| 期首・期末平均総資産 | (60+100)÷2 | 80百万円 |
| 平均総資産による回転率 | 120÷80 | 1.50回 |
| 期末残高だけによる回転率 | 120÷100 | 1.20回 |
| 平均基準から期末基準を引いた差 | 1.50−1.20 | 0.30回 |
この仮設例では期末に資産が増えているため、期末残高だけで割った値のほうが低く出ます。売上や事業の効率が変わったのではなく、計算に使った分母が違うためです。
社内資料には「期首・期末平均で計算」と書き添えます。期末残高による簡便値を使う資料と比較するときは、同じ基準で計算し直してください。
比較前にそろえる条件
比較では、売上高の期間と総資産の範囲をそろえます。比率だけを転記せず、元の決算期間・資料名・算式も記録すると、翌期の担当者が再計算できます。
| 条件 | 確認する内容 |
|---|---|
| 決算期間 | 通期同士で比較する。短期決算や中間累計を通期と混ぜない |
| 金額の単位 | 売上高と総資産を、円・千円・百万円など同じ単位にそろえる |
| 連結・単体 | 連結売上高には連結総資産、単体売上高には単体総資産を対応させる |
| 残高の基準 | 期首・期末平均か期末だけか。比較相手と同じ基準にする |
| 資料の条件 | 会計基準、連結範囲、統計の対象年度・業種・企業規模を記録する |
期首・期末の平均は、期中の月次残高を平均した値とは異なります。期中に大きな設備取得や事業譲受があった場合は、その時期も注記し、期首・期末だけでは見えない動きを補います。
平均総資産がゼロなら、割り算ができないため回転率は算出しません。残高や単位の入力誤りがないかを先に確認します。
高い・低いときに確認すること
回転率が高いほど、同じ資産額に対する売上高が大きいことを表します。利益や売掛金の回収状況はこの算式に入っていないため、回転率だけで黒字・資金繰りの良し悪しは判断できません。
目安を探すときは、同じ年度・業種・規模の資料を、同じ分母基準で比べます。本記事では業種を横断する合格ラインを置きません。自社の前年から動いた場合は、次のように元の金額へ戻って確かめます。
| 比較の条件・動き | 算式から分かること | 社内で確認する資料 |
|---|---|---|
| 平均総資産が同じで、売上高が減った | 回転率は下がる | 売上台帳で対象期間・部門別の増減を確認 |
| 正の売上高が同じで、平均総資産が増えた | 回転率は下がる | 資産明細で現預金・債権・在庫・設備の増減を確認 |
| 売上高も平均総資産も増減した | 両方の金額を使って再計算する | 決算書と資産明細、取得・売却の時期を確認 |
上の比較は売上高・平均総資産が正の場合です。資産が増えたという理由だけで、設備や在庫の処分が必要とは決まりません。増減の内容と事業計画を合わせて確認します。
ROA・売上債権回転率との違い
総資産回転率は資産全体と売上高の関係を見ます。利益を分子にするROA、債権に範囲を絞る売上債権回転率、流動資産と流動負債を比べる流動比率とは、答える問いが異なります。
| 指標 | 確認する関係 |
|---|---|
| 総資産回転率 | 当期売上高と期首・期末平均総資産 |
| ROA(総資産利益率) | 利益と総資産。使う利益の種類も確認する |
| 売上債権回転率 | 売上高と売掛金・受取手形などの売上債権 |
| 流動比率 | 流動資産と流動負債。短期の支払能力を見る |
財務省の総資本経常利益率の分解式では、期首・期末平均の総資本回転率に、経常利益を分子にした売上高経常利益率を掛けます。売上に対する利益の割合と、資産に対する売上の大きさを分けて確認できます。
利益の段階やROAとの関係はROE・ROAの解説、支払能力を見る比率は流動比率の解説で扱います。
商品の売価と原価から粗利率を確認するリンク先は商品の粗利率・原価率を計算するツールです。総資産回転率や会社全体のROAを算出するものではありません。
総資産回転率は、当期売上高を期首・期末平均総資産で割って求めます。計算に使った売上高・残高・対象期間・単位・連結か単体かを記録し、同じ基準で比べます。
よくある質問
総資産回転率の単位は%ですか?
単位は「回」です。当期売上高を期首・期末平均総資産で割った値をそのまま示し、百分率に直しません。
総資産回転率と総資本回転率は同じですか?
同じ指標として使われます。法人企業統計の名称は総資本回転率で、売上高を期首・期末平均の総資本で割ります。比較時には名前だけでなく、平均残高か期末残高かも確認してください。
期末の総資産だけで計算してもよいですか?
簡便値としては計算できますが、法人企業統計の算式は期首・期末平均です。期末だけで計算した資料にはその旨を記し、平均基準の数値と混ぜずに比べます。
高ければ利益も多いといえますか?
利益が多いとは限りません。総資産回転率の分子は売上高で、費用は反映しません。利益を確認するには、売上高利益率やROAも併せて見ます。
出典
算式と平均残高の定義は、財務省の法人企業統計の解説に対応しています。
- 財務省財務総合政策研究所「法人企業統計における財務営業比率の算式」:総資本回転率、期首・期末平均の注、流動比率、売上債権回転期間。
- 財務省財務総合政策研究所「キーワードで見る法人企業統計・総資本利益率」:総資本の定義と、売上高利益率・総資本回転率への分解。
計算例の金額は説明用の仮設値です。特定企業の実績・業種平均・目標水準や、投資判断を示すものではありません。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。