仕掛品とは|原価の集計・期末残高の照合表と完成時の仕訳例
仕掛品(しかかりひん)は、製造途中の未完成品です。自社が販売目的で保有するものは棚卸資産に含まれ、そこまでに投入した原価を集計します。
経理で確かめるのは、現場に残る未完成分と、帳簿に残る原価が合っているかです。完成した分は製品へ振り替え、未完成分の明細合計を仕掛品勘定の残高と照合します。
この記事は製造業の有形製品を対象に、ロット別の原価明細と仕訳を架空例でつなげます。建設工事、ソフトウェア、役務契約の収益認識は対象外です。
原材料・仕掛品・製品の区分
区分の出発点は、期末時点で製造がどこまで進んでいるかです。発注済みか、請求書が届いたかだけでは、未完成分の原価は分かりません。
| 区分 | 状態の例 | 照合する資料の例 |
|---|---|---|
| 原材料 | 加工に使う前の素材・部品 | 材料の在庫明細・払出記録 |
| 仕掛品 | 製造中で未完成のロット | 製造指図書・工程記録・原価明細 |
| 製品 | 自社で製造を完了した完成品 | 完成報告・製品受入記録 |
半製品という区分もあります。中間工程を終えて独立した物品として管理するものがある場合は、仕掛品との区分を工程表や社内の勘定科目定義と照らして確認します。半製品も仕掛品も棚卸資産に含まれます。
ロット別の原価明細を作る
製造指図書などの番号で、材料の消費額、製造にかかった労務費、配賦した製造間接費をひも付けます。材料の購入額と消費額、給与の支払額と当月の製造に対応する労務費を混ぜないことが出発点です。
共通費を割り振る場合は、作業時間や機械時間など、採用している配賦基準と計算資料を残します。基準の選び方や予定配賦の差額は配賦の計算と仕訳で扱います。
以下は架空の当月原価明細です。Aは月末までに完成、Bは未完成とし、月初原価はAに属します。円単位で端数はなく、評価損・仕損・副産物・原価差額はない前提です。間接費は配賦済みの額を使います。
| 項目 | 完成したA | 未完成のB | 合計 |
|---|---|---|---|
| 月初原価 | 200,000円 | 0円 | 200,000円 |
| 当月の材料費 | 220,000円 | 80,000円 | 300,000円 |
| 当月の労務費 | 150,000円 | 50,000円 | 200,000円 |
| 当月の製造間接費 | 80,000円 | 20,000円 | 100,000円 |
| 原価合計 | 650,000円 | 150,000円 | 800,000円 |
この架空例では、完成したAの原価を製品へ移し、未完成のBの原価を仕掛品に残します。未完成だからといって、投入済みの原価を完成予定の売価に置き換えるわけではありません。
税務では、原価に算入しないことができる費用、小規模等で配賦が困難な場合の取扱い、給付金や副産物等による調整があります。詳しくは製造原価と法人税の取扱いと、国税庁「法人税基本通達」製造等に係る棚卸資産を確認してください。
投入・完成時の仕訳例
ここでは、原価を仕掛品に継続記録する方式で示します。材料はすでに原材料勘定にあり、労務費と製造間接費は費用勘定に集計済みとします。購入時や給与支払時の仕訳は省略しています。
上の架空例と同じ当月取引です。金額は消費税の仕訳を省いた原価額で、評価損・仕損・副産物・原価差額はありません。完成原価と販売原価を追えるよう、説明用の勘定科目で示します。
| 処理 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 当月の材料消費を集計 | 仕掛品 300,000円 | 原材料 300,000円 |
| 当月の労務費を集計 | 仕掛品 200,000円 | 労務費 200,000円 |
| 当月の間接費を配賦 | 仕掛品 100,000円 | 製造間接費 100,000円 |
| Aが完成 | 製品 650,000円 | 仕掛品 650,000円 |
この架空例でAを当月中に全量販売した場合の原価仕訳は、借方「売上原価650,000円」/貸方「製品650,000円」です。売上の仕訳は別に記帳します。
完成と販売は別の出来事です。完成したものの販売していないAは、製品勘定に残ります。完成報告と出荷記録を同じ資料で済ませず、それぞれの振替を確認します。
期末に同じ残高をもう一度足さない
継続記録で仕掛品に原価が残っている場合、その残高を期末に同額だけ追加計上すると二重計上になります。先に帳簿残高と未完成明細を比べ、差があれば原因に応じて修正します。
一方、期中は製造費用として処理し、決算で未完成分を資産へ振り替える記帳方式もあります。自社がどちらの方式か、期首・期末の振替勘定がどこに集計されるかを確認してから処理します。上の継続記録例に、期末一括計上の仕訳をそのまま重ねないでください。
期末仕掛品の照合表と確認手順
現場の未完成明細、原価集計表、仕掛品勘定の順で照合します。帳簿の差額を埋めるために未完成額を逆算すると、完成品の振替漏れや材料の集計漏れが残るためです。
架空例の月末照合です。月初原価は完成ロットAに属し、上の原価明細・継続記録の仕訳を使用します。評価損・仕損・副産物・原価差額がない前提で、円未満の端数は生じません。
| 確認項目 | 金額・計算 |
|---|---|
| 月初仕掛品 | 200,000円 |
| 当月の投入原価 | 300,000円+200,000円+100,000円=600,000円 |
| Aの完成振替 | 650,000円を控除 |
| 仕掛品勘定の月末残高 | 200,000円+600,000円−650,000円=150,000円 |
| 未完成Bの原価明細 | 80,000円+50,000円+20,000円=150,000円 |
| 照合結果 | 帳簿残高と未完成明細が一致 |
現場から集める明細の項目
次の表は社内の照合表を作るための項目例です。法定様式ではありません。自社の製造指図書や原価計算表と同じ番号を使うと、差が出たときに資料へ戻れます。
| 項目 | 記録する内容 | 突き合わせる資料 |
|---|---|---|
| 識別番号・品名 | 製造指図番号、ロット、品名 | 製造指図書・受注資料 |
| 所在・数量 | 置場、外注先、実在する未完成数量 | 現場記録・外注先の確認資料 |
| 工程の状態 | どの工程まで進んだか、確認した日 | 工程表・作業日報 |
| 原価の内訳 | 材料費、労務費、配賦費用、原価合計 | 払出記録・工数記録・配賦計算表 |
| 完成・移動の有無 | 完成日、製品への移動、外注先への移動 | 完成報告・受入記録・移動伝票 |
| 滞留・変更の状況 | 作業停止、仕様変更、受注取消の有無 | 製造担当者の報告・変更資料 |
| 確認の記録 | 確認者、元帳との照合結果、差異の理由 | 原価明細・仕掛品元帳 |
外注先で加工中の自社所有品も確認対象から漏らさないようにします。他社から預かって加工している物との区別を付け、所有関係を発注書や契約資料に戻って確認します。
差がある場合は、完成済みロットが未完成一覧に残っていないか、材料の返却や外注費の集計が漏れていないか、振替を重複していないかを調べます。判明した原因・修正内容・確認者を明細に残します。
工程の進捗度と、原価の発生割合は同じとは限りません。材料投入の時点と加工費の発生の仕方が異なるため、完成予定原価全体に一律の完成度を掛ける計算は、このロット別集計例では使っていません。
現物数量の確認と締切の進め方は棚卸しの手順、評価方法の選定は棚卸資産の評価方法で確認できます。
滞留品と評価の確認
未完成品が現場にあることと、集計した原価を回収できることは別に確かめます。受注取消や仕様変更で止まったロットは、完成・販売の見込みと追加費用を製造・営業の資料で確認します。
正味売却価額は、売価(購買市場と区別される場合は売却市場の時価)から、見積追加製造原価と見積販売直接経費を差し引いた額です。未完成品については、完成までに必要な追加費用を落とさないようにします。
評価の取扱いの例として、営業循環から外れた滞留品等で合理的な価額算定が難しい場合の代替処理があります。原材料等で再調達原価の方が把握しやすく、正味売却価額が連動すると想定される場合は、継続適用を条件に再調達原価を使う取扱いもあります。適用する会計の枠組みと税務上の損金算入の要件は分けて確認します。滞留日数だけで自動的に税務上の損金になるとは判断しません。
消費税計算ツールを開くこの計算ツールへのリンクは税込・税抜の金額確認用です。仕掛品の評価額や原価配賦を計算するものではありません。
未完成ロットの現場明細、原価の内訳、完成時の振替、元帳との照合結果をそろえます。記帳方式を確認し、帳簿に残っている仕掛品を期末に重ねて計上しないことが要点です。
よくある質問
仕掛品は費用ですか、資産ですか?
自社が販売目的で保有する製造途中の未完成品は、棚卸資産に含まれます。材料費や労務費などを原価として集計し、完成分と未完成分を区分します。
製品が完成したときの仕訳は?
原価を継続記録する例では、借方を製品、貸方を仕掛品として、完成分の原価を振り替えます。販売時には販売分を売上原価へ振り替えるため、完成と販売を分けて確認します。
期末に仕掛品を追加計上するのですか?
記帳方式によります。継続記録ですでに未完成分が仕掛品に残っている場合、同じ額をさらに追加すると二重計上になります。期中に費用処理して期末に資産へ振り替える方式と混ぜず、元帳残高と未完成明細を照合します。
仕掛品が長く残っているときは?
完成振替の漏れと、作業停止・受注取消などによる滞留を区別します。滞留なら完成・販売の見込みと追加費用を確認し、適用する会計の枠組みに従って評価を検討します。税務上の損金算入は別の要件確認が必要です。
出典
- 企業会計基準委員会「棚卸資産の評価に関する会計基準」:棚卸資産の範囲、取得原価と払出原価、通常販売目的の棚卸資産の評価。
- 国税庁「法人税基本通達」第5章第1節第2款「製造等に係る棚卸資産」:製造原価の範囲、非算入費用、小規模等での配賦、給付金・副産物等の調整。