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棚卸しのやり方と手順|実地棚卸の準備・数量差異・廃棄の仕訳例

棚卸しは、在庫の数量と状態を現物で確かめ、帳簿との差を調べて決算の在庫を確定する作業です。数え終わっても、入出庫の記録漏れや集計ミスが残っていれば完了ではありません。

実務では、対象と締切を決める→数える→再確認する→期末の数量に直す→原因別に差異を処理する、の順で進めます。この記事では会社の商品在庫を中心に、担当者が残す資料と仕訳例までを示します。

棚卸表の記載・保存は棚卸表の書き方、単価の計算は棚卸資産の評価方法で確認できます。

棚卸しの全体像と完了の目安

現場で数えた記録と、経理が決算に使う期末残高をつなげます。以下は社内手順の一例であり、担当人数や数え方を法令が一律に指定しているという意味ではありません。

工程作業次の担当に渡すもの
事前準備対象品目・保管場所・単位・担当を決める対象一覧、区画図、担当表
締切の管理いつの数量かを固定し、入出庫と伝票の境界をそろえる締切時刻、前後の伝票、移動記録
現物確認品目・数量・状態を記録し、計数済みの場所を示す計数票、リスト外品目、不良品の記録
再確認と調査数え直し、単位・記録・計上時期の誤りを調べる訂正履歴、原因別の差異一覧
期末への調整棚卸時点と期末の間の移動を加減する期末数量への調整表
決算への反映適用される評価方法で金額を計算し、処理を承認する確定棚卸表、仕訳、根拠資料
棚卸しから決算までの流れ 現物の数量・状態計数票に記録帳簿と照合再確認・原因調査期末数量へ調整移動の根拠を残す適用する方法で評価承認・仕訳・決算
数量の差と単価の問題を分ける流れです。上から下へ進み、期末の数量と評価額を決算へつなげます。

法人税法施行規則56条は、青色申告法人について事業年度末の棚卸等の事績を記録し、種類・品質・型の異なるごとに数量・単価・金額を棚卸表へ記載するよう求めています。現場の計数票は、その表を作るための基礎資料になります。

準備:対象・場所・数える単位をそろえる

先に「どの商品を、どこで、何の単位で数えるか」を一覧にします。帳簿の品名と棚の表示が違う場合は、品目コードや型番で対応を付けてから配布します。

棚卸資産には商品・製品だけでなく、仕掛品、原材料、貯蔵中の消耗品なども含まれます(法人税法施行令10条)。ここでは商品を扱い、製造途中の原価集計や固定資産の現物照合は別の作業として整理します。

帳簿から作るリストは便利ですが、リストに載っていない現物を発見した場合の追記欄も用意します。リストの行を埋める作業だけでは、未登録の商品や別の棚へ移した品目を拾いにくくなります。

預け在庫・預り在庫・未着品の確認表

倉庫にあるものが、そのまま自社の期末在庫になるとは限りません。法人税法29条の期末に有する棚卸資産という範囲を踏まえ、場所と所有関係、売上・仕入の計上基準を資料で照合します。

見つけた在庫確かめること確認資料の例
社外へ預けている商品自社に帰属する期末在庫か。社内分と重複集計していないか預け先の在庫報告、預り証、委託契約
他社から預かる商品他社所有の預り品か。自社の商品と区別されているか預り台帳、契約書、相手先への確認記録
輸送中・未入荷の商品期末に自社が有する資産か。仕入計上と数量集計が対応しているか売買契約、出荷通知、輸送・検収資料
発送済み・返品に関係する商品売上計上・返品の確定時期と在庫から外す時期が対応しているか出荷票、検収記録、返品合意、受領記録

未着品は「届いていないから除く」、出荷品は「倉庫を出たから除く」と即断しません。契約内容や採用する計上基準で確認し、確認中の品目は数量と論点を一覧にして経理へ渡します。

締切:入出庫を止められない場合も記録する

数える時刻と帳簿を抽出する時刻をそろえるのが出発点です。可能な現場では入出庫を止め、停止できない場合は、数えている区画を通る移動を別に記録する運用を決めます。

移動記録には品目・数量・単位・時刻・移動元・移動先・伝票番号を残します。さらに、その移動が「計数前」か「計数後」か分かるようにします。後で通常の入出庫履歴へ戻す際にも、同じ移動を重ねて補正しないためです。

締切付近の出来事現場で残す記録経理側の確認
計数済み区画へ入荷通常在庫と分けた置場、入荷時刻、数量計数票に含まれているか、仕入計上時点と整合するか
数えた商品を出荷出荷票と対象区画、計数後の移動である旨棚卸数量からの調整と売上・原価の計上時点
別の倉庫へ移動移動元と先で共通の移動番号を使用両拠点で計上したり、どちらからも漏れたりしていないか
返品を受け入れ受入時刻、商品状態、返品理由と相手先返品の確定、売上訂正、在庫への復帰の対応

締切の前後で最後・最初に処理した伝票を控えておくと、どちらの期に含めたかをたどれます。伝票番号だけでなく、取引内容と実際の受渡しも確かめます。

現物確認:数えた印と再カウントを残す

現場では、決めた順路で棚を確認し、品目・単位・数量を計数票に記録します。確認済みの区画に印を付け、未確認の区画と区別します。

箱の表示だけで数を決めず、開封済みの端数を確認します。商品名が同じでも型・容量・品質が違うものは分け、リスト外の商品は別欄へ追記します。現物がない行も空欄のままにせず、「未確認」と「現物なし」を区別します。

再カウントは、差異が出た品目や記録が曖昧な品目を優先する手順にします。最初の記録を消して数値だけを置き換えず、再確認した数量・担当・理由がたどれる形にします。可能なら別の担当者が、初回の数量を見ずに確認します。

実地で確かめるのは数量だけではありません。破損、期限切れ、品質変化、長期滞留などは品目ごとに記録し、写真や検品記録と結び付けます。ただし、品質の記録と評価額の引下げは別の工程です。

差異調査:帳簿を直す前に原因を分ける

差異が出たら、再カウント→単位と品目の確認→入出庫・伝票・締切の確認へ進めます。帳簿の誤りなら元の記録を訂正し、所在不明の数量を残った差額だけで説明しないようにします。

原因の候補突き合わせる資料直す箇所・残す記録
数え間違い・箱の換算違い再計数票、箱の入数、品目マスター計数票の訂正履歴。帳簿側を無理に動かさない
別品目・別拠点との混同型番、棚番号、移動伝票、他拠点の計数票誤った品目・拠点の記録を訂正し、集計を再照合
仕入・出庫の未記録や重複納品書、検収記録、出荷票、入力履歴元の取引を訂正。原因伝票と訂正伝票を対応付ける
期をまたぐ計上時期のずれ契約、受渡しの証拠、締切前後の記録数量調整と売上・仕入の計上時期を合わせる
実際の紛失・減耗調査報告、再計数票、入出庫履歴減少の事実と原因、責任者の判断を残す
廃棄済みなのに帳簿が残る廃棄記録、対象品の写真、引渡し記録等廃棄した数量・実施日・帳簿金額を対応付ける

数量が多い側の差も、見つかった分をすぐ利益にするのではなく、仕入の未記帳や他社預り品の混入を調べます。原因に応じた仕訳を先に直し、その後で数量と会計残高を再照合する順序です。

調査が終わらない場合は、未確認事項・調べた資料・担当・確認期限を記録して責任者へ渡します。根拠のない数字合わせで調査済みにしないことが、翌期の差異の再発を追う手掛かりになります。

期末数量への調整を計算例で確認する

実地棚卸が期末と別の時点なら、その間の取引をたどって期末数量を計算します。物理的に動いた数量だけでなく、自社在庫に含める計上基準との対応も確認します。

以下は商品Aだけの数量の設例です。棚卸は期末より前に行い、棚卸時点から期末までの入庫・出庫は自社の所有・計上基準に一致するものと仮定します。返品など他の移動はなく、未記帳の訂正を別途重ねて加減しません。

商品Aの実地数量から期末数量への調整例
項目数量確認する記録
棚卸時点の実地数量120個確定した計数票
棚卸後から期末までの入庫+15個入荷・検収と仕入の記録
棚卸後から期末までの出庫−25個出荷と売上・原価の記録
期末数量110個実地数量+入庫−出庫

期末より後に数えた場合は、自社の所有・計上基準に合う取引に限って、期末後から棚卸時点までの入庫を引き、出庫を加えてさかのぼります。移動記録で既に補正した取引を、伝票訂正の段階でもう一度足し引きしないようにします。

国税庁の個人向け「青色申告の決算の手引き(一般用)」は、多忙で年末に数えられない場合の前後日の棚卸について、年末現在へ計算し、その計算方法を明らかにしておくよう説明しています。

同じ個人向け手引きでは、商品出入帳などで毎日の在庫量を明らかにし、毎年一定時期に実地で正否を確かめている場合、記録から年末残高を計算して年末の実地棚卸を省略できるとしています。単に在庫システムを導入している、という条件だけの説明ではありません。

上の個人向け手引きの説明は通常の年末決算を対象とし、年の中途の死亡・出国等は扱っていません。会社は自社の事業年度末を基準に確認します。

数量不足・廃棄・評価損の仕訳を分ける

現物が減った損失と、現物はあるが価値が下がった評価損は別です。以下の区分は社内整理の例であり、会計上の損失を記帳すれば税務上も損金になるという説明ではありません。

状態数量の扱い確認資料の例
数量不足再計数・記録訂正後に、実際に足りない分を確認差異調査表、再計数票、承認記録
実際の廃棄廃棄済みの数量を在庫から外す廃棄明細、実施日の記録、写真、業者の証明等
評価損の検討現物の数量を残し、評価額の問題として整理状態記録、販売実績、処分見込価額の資料

廃棄予定品は、まだ廃棄していない段階で数量を消しません。現物の数量と状態を記録し、評価の要否、廃棄の承認、実際の処分を分けて管理します。

商品勘定を直接減らす場合の独立した例

以下は互いに独立した商品在庫の仕訳例です。商品勘定を直接減らす方式を仮定し、帳簿単価は適用する評価方法で確定した額とします。消費税の仕訳は省略し、保険金・求償権はない設例です。数量と単価は仮定値で、税務上の損金算入を保証するものではありません。

商品勘定を減らす会計仕訳の設例
設例と計算借方貸方
商品帳簿数量100個、実地97個。調査で数量不足を確認。帳簿単価1,000円なら差3個分棚卸減耗損 3,000円商品 3,000円
商品5個を実際に廃棄。帳簿単価1,000円なら5個分商品廃棄損 5,000円商品 5,000円
現物の商品5個は残る。帳簿単価1,000円から会計上確定した評価単価600円へ切り下げる設例商品評価損 2,000円商品 2,000円

科目名は例示です。売上原価への含め方や損失の表示区分は、採用する会計基準・原因・重要性等に応じて確認します。盗難等で求償権や保険金が生じるケースは、この仕訳例の対象外です。

三分法では損失を二重に費用へ入れない

仕入勘定を使う三分法では、期首商品の振戻しと期末商品の繰延べを行います。期末数量を実地に合わせることで数量不足や廃棄による減少が売上原価に含まれている場合は、別掲する損失を売上原価から振り替えます。

以下は三分法で、期首商品の振戻しは済んでいる別の設例です。減少前の商品数量110個、帳簿単価1,000円とし、数量不足3個と廃棄済み5個を当期損失として確認しています。残る商品は102個で評価損はありません。消費税・保険金・求償権はなく、単価は適用する評価方法で確定済みとします。

三分法で期末商品と別掲損失を整理する例
処理借方貸方
期末の商品を繰り延べる商品 102,000円仕入 102,000円
売上原価に含まれた数量不足を別掲する棚卸減耗損 3,000円仕入 3,000円
売上原価に含まれた廃棄損を別掲する商品廃棄損 5,000円仕入 5,000円

この三分法の設例で別掲する損失は合計8,000円です。期末商品を実地数量で繰り延べたうえで、さらに商品勘定を同じ損失額だけ減らすと、残すべき商品と費用の対応が崩れます。自社がどの方式で記帳しているかを先に確認します。

評価損は数量と税務要件を別に確認する

原価法を使う法人が通常の在庫の評価損を税務上の損金にするには、法人税法33条2項の所定の事実と損金経理が必要で、算入額も評価直前の帳簿価額と事業年度末の価額との差額が上限です。低価法による評価や法的整理に伴う評価換えは、ここで説明する扱いとは分けます。

法人税法施行令68条は、棚卸資産について災害による著しい損傷、著しい陳腐化、それらに準ずる特別の事実を挙げています。単に古くなった、長く売れていない、というメモだけで要件を満たすと決めないようにします。

法人税基本通達の棚卸資産の評価損では、著しい陳腐化は、物質的な欠陥がないのに経済的環境の変化で価値が著しく減少し、今後回復しないと認められる状態を指します。破損等でも通常の方法では販売できない状態かを確認し、単なる物価変動・過剰生産・建値変更による値下がりと区別します。

棚卸担当者は、状態と数量、販売状況などの事実を残します。評価の計算と税務の判断は経理側で行い、数量の記録を値下げの仕訳だけで置き換えないようにします。

決算へ渡す資料と最終チェック

最後に、確定した期末数量へ適用される評価方法の単価を対応付けます。数量が正しくても、売価をそのまま棚卸単価に使ったり、帳簿と異なる単位を掛けたりすると金額が合いません。

法人税法29条は法人の期末棚卸資産の評価を、所得税法47条は居住者の事業所得に関する期末棚卸資産の評価を定めています。評価方法の選定・未選定時の扱いなどは、評価方法の記事で確認してください。

国税庁の個人向け手引きの棚卸表作成欄は、数量などを記録したメモ等の原始記録を棚卸表と一緒に保存するよう説明しています。会社の社内手順でも、計数票から確定表・訂正・承認・仕訳へたどれるよう、根拠をまとめておくと確認が進みます。

棚卸表の法定の記載事項や保存の媒体・期間は、棚卸表の書き方と保存方法にまとめています。集計途中の数字を上書きする日々の在庫表と、決算の確定記録を分けて管理します。

消費税の計算機で税込・税抜を換算する

この計算機は数量差異や評価方法の適否を判定するものではありません。

棚卸しを終えるときの確認

数えた結果を残し、差異の原因を調べ、期末数量と評価額を決算へつなげます。数量不足、実際の廃棄、現物が残る評価損を分けると、訂正する記録と仕訳が整理できます。

よくある質問

棚卸しで帳簿と数量が合わないときはどうしますか?

先に再カウントし、品目・単位・保管場所・締切前後の入出庫・記帳漏れを調べます。記録の誤りなら元の取引を訂正し、実際の不足なら調査結果を残して損失処理を検討します。差額の全部をすぐ棚卸減耗損にする方法ではありません。

倉庫にない預け在庫や未着品も数えますか?

自社が期末に有する在庫かを確認します。預け先の報告や契約・輸送・検収資料を照合し、社内在庫との二重計上を防ぎます。未着品は未入荷という理由だけで除かず、所有関係と仕入の計上基準を確かめます。

棚卸しの間も入出庫が続く場合はどうしますか?

移動を別記録にし、品目・数量・時刻と計数前後の区分を残す運用にします。計数済みの区画への入荷や出荷を追跡して、棚卸数量へ反映します。同じ取引を入出庫の補正と帳簿訂正で二重に加減しないよう確認します。

廃棄予定の商品は棚卸数量から外せますか?

予定だけで数量から外しません。現物の数量と状態を記録し、評価損の検討と実際の廃棄を分けます。廃棄した場合は対象品・数量・実施日が分かる記録を残し、帳簿金額と対応付けます。

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出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。棚卸資産の帰属、損失・評価損の計上や税務上の扱いは契約や資産の状況等によって異なります。実際の申告・処理にあたっては、顧問税理士または所轄の税務署へご確認ください。

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