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棚卸表の書き方|条文が求める記載事項と、手書きした棚卸表をスキャンして捨てられない理由

青色申告法人・個人の青色申告者の棚卸表には、条文が定める記載事項があります。法人税法施行規則56条2項と所得税法施行規則60条3項が求めているのは、棚卸資産の種類・品質・型の異なるごとに、数量・単価・金額の3つを記載することです。この2規定が記載事項として直接列挙する項目の説明であり、単価の評価方法や保存には別の要件があります。

棚卸実施日・商号・実施者の記名押印・評価方法名は、この2規定が直接列挙する記載事項には含まれていません。あった方がよい欄と、無いと条文違反になる欄は別物なので、この記事では最初にそこを分けます。

そして、いちばん見落とされているのが保存の側です。棚卸表は決算関係書類なので、電子帳簿保存法のスキャナ保存の対象から外されています(電子帳簿保存法施行規則2条4項)。つまり紙に手書きした棚卸表は、スキャンしても原本の紙を捨てられません。印刷したフォーマットに現場で数量を書き込む運用も、同じ結末になります。以下、記載事項・基準日・数える対象・単価・手順・保存の形・保存期間の順に、条文と国税庁の一問一答の原文で確認します。

青色の棚卸表に直接列挙された記載事項

青色申告法人の棚卸表について定めているのは、法人税法施行規則56条です。見出しは「たな卸表の作成」で、2項の前段がこう書いています。

前項に規定するたな卸については、たな卸表を作成し、たな卸資産の種類、品質及び型の異なるごとに数量、単価及び金額を記載しなければならない。

個人の青色申告者については所得税法施行規則60条(決算)の3項で、ほぼ同じ文です。

前二項に規定する棚卸しを行う場合には、棚卸表を作成し、棚卸資産の種類、品質、型等の異なるごとに、数量、単価及び金額を記載しなければならない。

読み方は2段構えです。「種類・品質・型の異なるごと」は行を分ける単位で、「数量・単価・金額」が各行に書く値です。法人側は「種類、品質及び型」と3つを並べ、個人側は「種類、品質、型等」と受け皿を付けている点だけが違います。

異なる種類・品質・型を混ぜない条文が求めるのは、種類・品質・型等の異なるごとの区分です。異なるものを「商品A 合計200個」のようにまとめ、区分ごとの数量・単価・金額が分からなくなる集約は避けます。同じ種類・品質・型のものまで別々の行にするという規定ではなく、季節外れという理由だけで品質が異なるとも限りません。

では、よく「必須項目」として紹介される欄はどうなるのか。以下の表の「要求されていない」は、法規則56条2項・所規則60条3項が記載事項として直接列挙していないという意味です。実務上の欄は、後から数量や計算の経緯を説明できるように設けるとよいでしょう。

欄条文の要求かどう考えるか
種類・品質・型(行を分ける単位)要求されている青色が対象の法規則56条2項・所規則60条3項。異なる種類等を混在させない
数量要求されている同上。単位(個・kg・ケース)は書かないと数量の意味が決まらない
単価要求されている同上。値は選定した評価方法で計算した価額(後述)
金額要求されている同上。数量×単価
棚卸しの日要求されていない基準日は条文が指定しているので(後述)、書いておくと基準日どおりに数えた証拠になる
保管場所・棚番号要求されていない複数拠点なら二重カウントと数え漏れの確認に効く
実施者・確認者の記名要求されていない数える人と集計する人を分ける運用にするなら、その記録として使う
商号・評価方法の記載要求されていない届出により選定する場合のほか、未届出等では法定評価方法が適用される。この2規定は評価方法名の記載を直接列挙していない
税込か税抜か要求されていないただし単価の意味が変わる。経理方式と揃え、表のどこかに明示する

新たに青色申告者となった年は期首にも棚卸し

法人税法施行規則56条1項は、青色申告法人の各事業年度終了の日を棚卸しの基準日としています。所得税法施行規則60条1項は、個人の青色申告者について毎年12月31日とし、年の中途の死亡・出国に係る同項所定の確定申告規定が適用される場合は死亡の日又は出国の時に読み替えます。これは法定基準日の説明であり、月次に作成した決算関係書類を保存不要とする意味ではありません。

そして、ほとんどの解説が落としているのが所得税法施行規則60条2項です。その年に新たに青色申告者となった者は、その年1月1日(年の中途で業務を開始した場合はその開始日)にも棚卸しをしなければならないと定めています。つまり新たに青色申告者となった年は(既存事業から青色に切り替えた年も含め)、期首と期末の2回棚卸表を作ることになります。期首在庫がゼロなら記載はゼロで済みますが、個人事業を引き継いだ場合や在庫を持ち込んで開業した場合は、この期首の棚卸表が売上原価の出発点になります。

基準日と違う日に数えたときここでは青色申告法人の事業年度末・個人の青色申告者の通常の年末を例に、基準日の数量に合わせる作業を説明します。年末が繁忙期で12月29日に数えたのなら、その日から12月31日までの入荷と出荷を足し引きして、基準日時点の数量に直す作業が別に必要になります。棚卸表に書くのは、直したあとの数量です。この加減算の記録が残っていないと、棚卸表の数量が何時点のものか説明できなくなります。

何を数えるか — 施行令が7号で決めている

棚卸資産の範囲は、所得税法施行令3条と法人税法施行令10条が、同じ7つの号で定めています。条文の文言はどちらもほぼ同じです。

号資産数え忘れやすいもの
1号商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)副産物・作業くずが括弧書きで含まれている。売れる端材・スクラップは在庫
2号半製品そのままでも売れる中間品
3号仕掛品(半成工事を含む。)半成工事=完成していない工事。建設・受託開発で漏れやすい
4号主要原材料—
5号補助原材料包装材・ラベル・調味料など。主要原材料と別の号で挙げられている
6号消耗品で貯蔵中のもの「貯蔵中」が条件。未使用のまま在庫している事務用消耗品はここ
7号前各号に掲げる資産に準ずるもの受け皿の号。1〜6号に当てはめにくいものを捨てる根拠にはならない

実務で効くのは1号の括弧書き(副産物・作業くず)、3号の半成工事、6号の「貯蔵中」です。倉庫にあるかどうかではなく、この7号のどれかに当たるかどうかで決まります。預け在庫・委託販売中の在庫・仕入れたが入荷前の在庫のように、場所と所有が一致しないものは、所有している側が数えることになります。

単価欄は自由記入ではない

棚卸表でいちばん誤解されているのが単価欄です。法人税法施行規則56条2項の後段、所得税法施行規則60条3項の後段はどちらも、単価について「……により計算した価額を記載するものとする」という形で、書いてよい値を縛っています。縛りの中身は、その事業者が選定した評価の方法(税務署長の承認を受けた特別な評価方法・変更承認を受けた方法を含み、法定評価方法の適用を受ける事業者についてはその定められた方法)で計算した価額です。

言い換えると、単価欄に書けるのは「適用される評価方法で計算した単価」(変更承認後の方法・法定評価方法を含む)です。評価方法を届け出ていなければ法定評価方法(最終仕入原価法による原価法)になるので、直近の仕入単価が評価額になる場合もありますが、それは届け出ていない結果として法定評価方法が適用されているという意味です。評価方法6種と低価法の中身、届出と変更の期限は別の記事で条文どおりに並べています。

この記事では評価方法の中身は扱いません原価法6種(個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法)と低価法の定義、選定の単位、届出・変更承認の期限は 棚卸資産の評価方法6種の違い にまとめてあります。単価をどう計算するかで迷っているなら、先にそちらを読んでから棚卸表の単価欄を埋めるのが順序として正しくなります。

数える手順と、帳簿と合わなかったとき

条文が求めているのは「基準日の数量・単価・金額が、種類・品質・型ごとに書かれた表」です。その1枚を作るために現場でやることを、条文の要求から逆算して並べます。

順やること条文のどこに効くか
1行を分ける単位を先に決める(種類・品質・型の一覧を作る)異なる種類・品質・型を混在させ、区分ごとの数量・単価・金額が分からなくなる集約を避けるため。数えてから分け直すのは手戻りになる
2「何時時点の在庫か」を決めて、入出荷と伝票を止める基準日時点の数量にするため。数えている間に動くと数量が確定しない
3保管場所を区画に割り、区画ごとに担当を決める二重カウントと数え漏れを防ぐため。棚の裏・通路・別拠点を割り当てから外さない
4数量を単位つきで記録する(個・kg・ケースを混ぜない)単位が違うと数量×単価が合わない。ケース入数の換算は表の外でやらない
5品質の落ちたものに印を付けて行を分ける品質の区分と単価の引下げは別問題。単価は適用される評価方法によって計算し、品質低下だけで引き下げない
6選定した評価方法で単価を決め、数量×単価で金額を出す単価欄の縛り(前節)
7帳簿在庫と突き合わせ、差の原因を確かめる数量そのものではなく、数量と適用される評価方法による単価から金額を計算する

法人税法施行規則56条2項・所得税法施行規則60条3項が求めているのは、種類・品質・型等の異なるごとの数量・単価・金額の記載です。単価には、適用される評価方法により計算した価額を記載します。帳簿の数字に実地を合わせる(=数えた数量を書き換える)と、棚卸表が実地棚卸の記録でなくなります。

ただし、差の全部を棚卸減耗として処理する前に、伝票の記帳漏れ・二重計上・計上時期のずれを確かめます。基準日の前後に出荷した分を止め忘れていた、という理由なら帳簿の側を直せば差は消えます。差の金額がそのまま当期の利益に効くので、「合わなかったので差額を減耗にした」で止めると、原因が翌期も残ります。

棚卸表をどう作ったか 紙に手書きした /印刷して手書きで追記した 自己が一貫して 電子計算機を使用して作成 スキャンだけで原本廃棄は不可 スキャナ保存は対象外 (電帳規則2条4項) 電磁的記録のまま保存できる 電帳法4条2項 +規則2条2項の3要件 紙で保存してもよい(電子保存は任意) 撮影マイクロフィルムの特例あり
棚卸表は決算関係書類なのでスキャナ保存の対象外。スキャンは参照用に作れても、原本保存の代替にはならない。撮影マイクロフィルム保存の特例は本文参照。

手書きでいいのか — スキャナ保存の対象外

棚卸表を手書きで作ること自体は問題ありません。青色の記載事項を定める上記2規定には様式指定がありませんが、適用される評価方法で単価を計算し、保存の要件も満たす必要があります。問題はそのあとです。

電子帳簿保存法は、紙で作った国税関係書類をスキャンして電磁的記録で保存する道(法4条3項)を用意していますが、対象から外される書類が財務省令に委ねられています。その財務省令=電子帳簿保存法施行規則2条4項がこう書いています。

法第四条第三項に規定する財務省令で定める書類は、国税関係書類のうち、棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類とする。

名指しで棚卸表が挙げられています。国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月)」問1の説明にある「帳簿書類の形態別保存の可否一覧」(本文4・5頁)でも、棚卸表・貸借対照表・損益計算書などの行は、スキャン文書の欄が1年目から7年目まで全部「×」になっています(同じ表で、紙と電磁的記録の欄は「◎」です)。ただし、この一覧には6・7年目の撮影マイクロフィルム保存も示されています(法規則59条3項・所規則63条5項に基づく所定の方法)。これはスキャンデータによる代替とは異なる保存方法であり、紙以外の法定保存方法をすべて否定するものではありません。

したがって、紙に手書きした棚卸表は、スキャンしても紙の原本を捨てられません。請求書や領収書ならスキャナ保存の要件を満たせば紙を廃棄できますが、棚卸表にはその道がありません。

印刷後に手書きで追記した場合表計算ソフトで棚卸表のフォーマットを作り、印刷して現場に持ち込み、数量を手書きで書き込むという運用では、保存方法の区別が必要です。ところが一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月)問24は、「電子計算機により作成した国税関係書類を書面に出力し、それに手書により新たな情報を付加したものは、一貫して電子計算機を使用して作成したものではないので、その書類については、書面により保存しなければならないこととなります」と答えています。手書きで数量を入れた紙が棚卸表なら、その紙が保存対象です。

電子ファイルとして作った場合は、電子帳簿保存法4条2項が「自己が一貫して電子計算機を使用して作成する場合には……電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる」と定めているので、印刷せずに電磁的記録のまま保存できます。満たすべき要件は施行規則2条2項(同3項で書類に準用)の次の3つで、タイムスタンプは出てきません。

要件中身条文
システム関係書類の備付けシステムの概要書・開発時に作成した書類・操作説明書・事務手続を明らかにした書類。市販のソフトを使うなら概要書と開発時書類は不要、処理を外部に委託している場合は操作説明書を省略できるが、委託先が保存義務者の開発したプログラムを使う場合は除く規則2条2項1号イ〜ニ
見読可能装置の備付け等保存場所にパソコン・プログラム・ディスプレイ・プリンタとその操作説明書を備え、画面と書面に整然とした形式・明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておく規則2条2項2号
ダウンロードの求めに応じること税務職員からデータの提示・提出を求められたら応じられるようにしておく。取引年月日その他の日付を検索条件にでき、範囲を指定して条件を設定できる検索機能を確保している場合は不要規則2条2項3号(規則2条3項の読替え)

電子保存への切り替えは、期の途中からでもできます。一問一答 問6は、帳簿は課税期間の開始の日から備え付けて順次記録していくものなので原則として期の中途から電子保存はできないが、国税関係書類は作成されると直ちに保存されるものなので、課税期間の中途からでもそれ以後の作成分を電磁的記録により保存できると説明しています。棚卸表は書類なので、今期の期末から電子にする、という進め方ができます。

保存するのはどの時点のファイルか、という点も一問一答 問23が答えています。相手方に交付しない書類(決算関係書類等)については「その書類の性質に応じ、その書類の作成を了したと認められる時点の電磁的記録」です。集計途中の版ではなく、確定した棚卸表を保存します。

保存期間 — 法人は原則7年・個人は青色7年/白色5年

棚卸表は、帳簿ではなく書類として保存期間が決まっています。ここで白色申告の扱いだけが他と違うので、まとめて表にします。

区分棚卸表の保存期間起算日条文
法人(青色申告法人)7年書類の作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から通常2月を経過した日(延長等は下記)法規則59条1項2号・2項
法人(青色以外の普通法人等)7年同上法規則67条1項2号・2項
法人(欠損金の繰越し等の適用条件を満たす欠損発生年度の分)10年(平成30年4月1日前開始年度は9年)同上法規則26条の3第1項
個人事業(青色申告者)7年書類の作成又は受領の日の属する年の翌年3月15日の翌日所規則63条1項2号・4項
個人事業(白色申告者)5年同上所規則102条3項1号・4項

白色申告で7年になるのは第1項の帳簿(収入金額や必要経費を記載した法定帳簿)だけです。所得税法施行規則102条4項は、帳簿を7年間としつつ、括弧書きで「その他の帳簿及び前項各号に掲げる書類にあつては、五年間」と分けています。前項(3項)1号が「その年の決算に関して作成した棚卸表その他の書類」なので、白色の棚卸表は5年です。国税庁の一問一答 問3に付いている保存期間の参考表も、白色申告者の「決算に関して作成した棚卸表その他の書類」を5年としています。白色申告の帳簿・書類の期間の全体像は 白色申告のやり方 にまとめてあります。

法人の起算日と10年保存の条件法規則59条2項の「二月」には「以下この項において同じ」とあり、書類にも月数の読替えが及びます。法75条の2第1項による申告期限延長がある年度は、書類の作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から延長月数+2月を経過した日が起算日です。1か月延長なら3月となります。また、清算中の内国法人の残余財産確定年度は1月となる規定もあります(通算法人で通算親法人の事業年度末に終了する年度を除く)。
10年保存は、法規則26条の3の欠損金の繰越し等の適用を受けようとする場合に、その欠損金額が生じた年度の書類について、この起算日から数えます。単なる会計上の赤字を一律に10年とする説明ではありません。一問一答の保存期間表は、青色繰越欠損金又は青色申告書を提出しなかった年度の災害損失金額が生じた場合を挙げ、平成30年4月1日前開始年度は9年としています。

免税から課税に変わる年は、明細書類の保存が調整の条件になる

免税事業者から課税事業者になった課税期間には、その前日に持っている棚卸資産のうち、免税だった期間中に仕入れたものについて、消費税額を仕入税額控除に加えられる調整があります(消費税法36条1項)。加える金額は、取得に要した費用の額として政令で定める金額に110分の7.8(軽減税率の対象なら108分の6.24)を掛けて計算します。

この調整には条件が付いています。同条2項の前段がこう書いています。

前項の規定は、事業者が政令で定めるところにより同項に規定する棚卸資産又は課税貨物の明細を記録した書類を保存しない場合には、当該保存のない棚卸資産又は課税貨物については、適用しない。

「適用しない」と書かれています。明細を記録した書類が無ければ、その棚卸資産の分は控除に加えられません。同項にはただし書があり、災害その他やむを得ない事情により保存できなかったことを事業者が証明した場合は除かれますが、普通に作り忘れた場合はこのただし書には乗りません。

逆向き、つまり課税事業者から免税事業者になる場合は、切替日前日の属する課税期間に仕入れた棚卸資産に係る消費税額を、その課税期間の仕入控除税額に含めないことになります(同条5項)。調整額を計算するため切替日前日の資産を把握しますが、2項の「保存がなければ適用しない」という条件は1項の免税から課税への調整に対応するもので、5項の逆方向に同じ条件を付ける規定ではありません。

まとめ
  • 青色申告法人・個人の青色申告者の記載事項を定める2規定には様式指定は無い。種類・品質・型の異なるごとに、数量・単価・金額(法規則56条2項/所規則60条3項)
  • 棚卸実施日・商号・実施者の記名押印・評価方法名は上記2規定が直接列挙する記載事項には含まれない
  • 青色申告法人は事業年度末、個人の青色申告者は12月31日(所定の死亡・出国の確定申告の場合は死亡の日・出国の時)。新たに青色申告者となった年は1月1日(年中に業務開始した場合は開始日)にも棚卸しが要る(所規則60条2項)
  • 数える対象は所令3条/法令10条の7号。副産物・作業くず・半成工事・貯蔵中の消耗品まで入る
  • 単価は自由記入ではなく選定した評価方法で計算した価額。届け出ていなければ法定評価方法が適用される
  • ★棚卸表はスキャナ保存の対象外(電帳規則2条4項)。紙に手書きした棚卸表はスキャンしても紙を捨てられない
  • ★電子で作った表を印刷して手書きで数量を足すと「一貫して電子計算機を使用して作成」に当たらない(一問一答 問24)=その紙を保存する
  • 電子のまま保存する要件は3つ(システム関係書類・見読可能装置・ダウンロードの求め)。タイムスタンプは要件ではない
  • 保存期間は法人は原則7年(欠損金の繰越し等の条件により欠損発生年度は10年、平成30年4月1日前開始年度は9年)・個人の青色7年・白色5年
  • 免税から課税への調整は、明細を記録した書類の保存が条件(消費税法36条2項。災害等で保存できなかったことを証明した場合を除く)。課税から免税への調整(5項)にこの条件を拡張しない

よくある質問

棚卸表に決まった様式はありますか?

青色の棚卸表の記載事項を定める次の2規定には様式の指定はありません。法人税法施行規則56条2項は青色申告法人、所得税法施行規則60条3項は個人の青色申告者について、棚卸資産の種類・品質・型の異なるごとに数量・単価・金額を記載しなければならないと定めています。エクセルでも手書きでも、この3つを種類・品質・型ごとに記載します。単価は適用される評価方法で計算し、保存についても別途要件を満たします。異なる種類・品質・型を混在させ、区分ごとの数量等を判別できない集約は、この記載事項を満たしません。

棚卸表は手書きでも大丈夫ですか?

手書きで作ること自体は問題ありません。様式の定めが無いためです。ただし、スキャンした電子コピーだけで原本保存に代えることはできません。撮影マイクロフィルムによる6・7年目の保存の特例は本文で説明しています。棚卸表は決算関係書類として電子帳簿保存法4条3項のスキャナ保存の対象から除かれており(電子帳簿保存法施行規則2条4項が「棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類」を名指ししています)、スキャンしても紙の原本を捨てられません。電子で保存したいなら、最初から表計算ソフトなどで作成して完成させます。

エクセルの棚卸表を印刷して、現場で数量を手書きしています。これは電子で保存できますか?

その手書きした紙が棚卸表であれば、紙で保存することになります。電子帳簿保存法4条2項が電磁的記録で保存できるのは「自己が一貫して電子計算機を使用して作成する」書類に限られており、国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月)問24は、電子計算機で作成した書類を書面に出力して手書きで新たな情報を付加したものは一貫して電子計算機を使用して作成したものではないため書面により保存しなければならない、と答えています。

棚卸表の保存期間は何年ですか?

法人は原則7年です(法人税法施行規則59条1項2号・67条1項2号・2項)。欠損金の繰越し等の適用を受けようとする場合は、欠損金が生じた年度の分を10年保存します(同規則26条の3。平成30年4月1日前開始年度は9年)。個人事業は青色申告者が7年(所得税法施行規則63条1項2号)、白色申告者は5年です(同規則102条3項1号・4項)。起算日は、法人では書類の作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から通常2月を経過した日です。法75条の2第1項の申告期限延長があれば延長月数を加え、所定の清算年度は1月に読み替えます(本文参照)。個人では書類の作成又は受領の日の属する年の翌年3月15日の翌日です。

棚卸しは12月31日にやらないといけないのですか?

所得税法施行規則60条1項は、個人の青色申告者について毎年12月31日を基準日とし、所定の年中死亡・出国の確定申告規定が適用される場合は死亡の日又は出国の時と定めています(青色申告法人は法人税法施行規則56条1項で各事業年度終了の日です)。条文が求めているのは基準日時点の数量なので、都合で別の日に数えたときは、その日から基準日までの入荷・出荷を足し引きして基準日の数量に直し、その計算の記録を残すことになります。棚卸表に書くのは、直したあとの数量です。

棚卸表と在庫管理表は同じものですか?

別のものとして扱うほうが安全です。在庫管理表を日々上書きして履歴を残さない運用では、基準日時点の状態を後から再現できません。これに対して棚卸表は、法人税法施行規則59条1項2号などが決算関係書類として保存を求めている書類で、基準日時点の数量・単価・金額を固定して残すものです。在庫管理システムから基準日の一覧を出力して棚卸表にすることはできますが、その出力を保存期間まで固定して保存する形にしておく必要があります。

帳簿の在庫数と実地の数量が合いません。どちらを棚卸表に書きますか?

実際に数えた数量です。棚卸表は実地に数えた結果を記録する書類なので、帳簿の数字に合わせて数量を書き換えると、実地棚卸の記録ではなくなります。ただし差の全部をすぐ棚卸減耗として処理するのではなく、基準日をまたぐ売上・仕入の計上時期のずれ、伝票の記帳漏れ、二重計上を先に確かめます。それらが原因であれば帳簿の側を直すことで差が消えます。差の金額はそのまま当期の損益に影響します。

免税事業者から課税事業者になりました。棚卸表で何かできることはありますか?

課税事業者になる日の前日に持っている棚卸資産のうち、免税だった期間中に仕入れたものについて、消費税額を仕入税額控除に加える調整があります(消費税法36条1項)。金額は取得に要した費用の額として政令で定める金額に110分の7.8、軽減税率の対象であれば108分の6.24を掛けて計算します。ただし同条2項が、棚卸資産の明細を記録した書類を保存しない場合はその棚卸資産について適用しないと定めています(災害その他やむを得ない事情により保存できなかったことを証明した場合を除きます)。切替日の前日時点の棚卸資産の明細を残しておくことが条件になります。

次に読む

出典

法人税法施行規則・所得税法施行規則・電子帳簿保存法施行規則の条文(e-Gov法令検索)と、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月)」で確認。

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。棚卸資産に当たるかどうかの判断、棚卸差異の処理、評価損の計上の可否、消費税の調整の適用は、事業の内容や資産の状況によって結論が分かれることがあります。申告書の作成にあたっては顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。なお、法人税の申告書に添付する勘定科目内訳明細書(棚卸資産の内訳書)の記載方法は、この記事では扱っていません。

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