商品有高帳の書き方|先入先出法・移動平均法の記入例と残高照合
商品有高帳は、商品ごとの受入・払出・残高を、数量・単価・原価金額で記録する帳簿です。仕入れたら受入、販売したら払出に記入し、残っている商品の内訳を追います。販売時の払出金額も、売価ではなく原価で書きます。
書き方で迷いやすいのは、仕入単価が変わった後の払出です。この記事では、同じ架空の入出庫を先入先出法と移動平均法で記入し、月末残高まで照合します。評価方法の選定・変更と実地棚卸の記録は、それぞれの解説で確認できます。
商品有高帳に記入する欄
同じ種類・品質・型の商品ごとに、入出庫と残高を分けて記録します。異なる商品の数量を足すと、単価と数量の対応が失われます。商品名に加え、品番と数量の単位を帳簿の冒頭に置くと照合しやすくなります。
| 欄 | 記入する内容 | 確認する資料の例 |
|---|---|---|
| 日付・摘要 | 取引日、仕入・売上などの区分、伝票番号 | 入出庫伝票・納品書 |
| 受入 | 入ってきた数量、取得原価の単価、金額 | 仕入明細・入荷記録 |
| 払出 | 出ていった数量、払出原価の単価、金額 | 出荷記録と原価の計算 |
| 残高 | 取引後に残る数量、原価の単価、金額 | 直前残高に受入・払出を反映 |
この表は帳簿記入のための欄の整理です。税法で定められた統一様式や、記載義務の一覧を示したものではありません。取引番号を摘要に残すのは、後で仕入明細や出荷記録に戻れるようにするための運用例です。
日々の有高を記録する目的は、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】」でも、在庫管理や棚卸表作成時の参照として説明されています。帳簿があるだけで実際の在庫数量まで確定するわけではありません。
同じ入出庫で記入するための設例
以下は同じ種類・品質・型の商品Aの架空の当月取引です。金額は税抜の原価で、返品・値引・諸掛・棚卸差異・評価損はなく、平均単価に端数は生じません。月初繰越の後、仕入と売上が次の順に発生したものとします。
| 取引順・摘要 | 数量 | 取得原価の単価 | 原価金額 |
|---|---|---|---|
| 月初繰越 | 100個 | 100円 | 10,000円 |
| 最初の仕入 | 100個 | 140円 | 14,000円 |
| 最初の売上 | 150個 | 後の表で算出 | 後の表で算出 |
| 次の仕入 | 50個 | 180円 | 9,000円 |
| 次の売上 | 40個 | 後の表で算出 | 後の表で算出 |
売上の行には販売した数量を置き、払出原価の単価は方法ごとに求めます。販売単価と売上金額は、この原価の帳簿とは別に管理します。以下の表では日付・伝票番号の代わりに取引順を使い、数量・単価・金額の動きが見えるようにしています。
先入先出法:単価別に残高を残す
同じ種類・品質・型の商品について、先に取得した原価から順に払出へ配分します。新しい仕入をしても古い残高の単価は混ぜず、残った取得単価ごとに数量と金額を分けます。
税務上の先入先出法も、同種・同品質・同型の期末在庫を直近の取得分から順に構成するとみなす定義です。法人税法施行令の棚卸資産の評価方法の規定で確認できます。実際の倉庫で古い商品から出庫したと断定する意味ではありません。
先入先出法による、同じ種類・品質・型の商品Aの架空の当月記入例です。税抜原価で、返品・値引・諸掛・棚卸差異・評価損はありません。各受入・払出欄は「数量 × 単価 = 金額」、残高欄は取得原価別の内訳を示します。
| 摘要 | 受入 | 払出 | 取引後の残高 |
|---|---|---|---|
| 月初繰越 | 100個 × 100円 = 10,000円 | 記入なし | 100個 × 100円 = 10,000円 |
| 最初の仕入 | 100個 × 140円 = 14,000円 | 記入なし | 100個 × 100円 100個 × 140円 合計24,000円 |
| 最初の売上 | 記入なし | 100個 × 100円 + 50個 × 140円 = 17,000円 | 50個 × 140円 = 7,000円 |
| 次の仕入 | 50個 × 180円 = 9,000円 | 記入なし | 50個 × 140円 50個 × 180円 合計16,000円 |
| 次の売上 | 記入なし | 40個 × 140円 = 5,600円 | 10個 × 140円 50個 × 180円 合計10,400円 |
払出数量が古い単価の残高を超えると、次の取得単価へ進みます。残高を合計金額だけにすると、次の払出で使う単価が分からなくなります。実務の帳票では、取得単価ごとの行や明細を残して照合します。
移動平均法:仕入のたびに単価を更新
同じ種類・品質・型の商品を仕入れるたびに、直前の残高と仕入分を合わせて平均単価を求めます。計算は「残高金額と仕入金額の合計 ÷ 残高数量と仕入数量の合計」です。仕入単価どうしを単純に平均するのではなく、数量で加重します。
通常の仕入と販売を扱うこの設例では、販売による払出だけでは平均単価を改定しません。法人税法施行令の移動平均法の定義も、同じ種類等の棚卸資産を取得する都度、保有分と取得分の数量・取得価額から単価を改定する仕組みです。
移動平均法による、同じ種類・品質・型の商品Aの架空の当月記入例です。税抜原価で、返品・値引・諸掛・棚卸差異・評価損はなく、平均単価に端数は生じません。残高欄は「数量 × 平均単価 = 金額」です。
| 摘要 | 受入 | 払出 | 取引後の残高 |
|---|---|---|---|
| 月初繰越 | 100個 × 100円 = 10,000円 | 記入なし | 100個 × 100円 = 10,000円 |
| 最初の仕入 | 100個 × 140円 = 14,000円 | 記入なし | 200個 × 120円 = 24,000円 |
| 最初の売上 | 記入なし | 150個 × 120円 = 18,000円 | 50個 × 120円 = 6,000円 |
| 次の仕入 | 50個 × 180円 = 9,000円 | 記入なし | 100個 × 150円 = 15,000円 |
| 次の売上 | 記入なし | 40個 × 150円 = 6,000円 | 60個 × 150円 = 9,000円 |
同じ種類・品質・型の商品Aの架空の当月設例における、移動平均単価の計算です。税抜原価で返品・値引・諸掛・棚卸差異・評価損はなく、平均単価に端数は生じません。仕入直前の残高を分子と分母の両方に使います。
| 更新する時点 | 計算式 |
|---|---|
| 最初の仕入後 | (10,000円 + 14,000円)÷(100個 + 100個)= 120円 |
| 次の仕入後 | (6,000円 + 9,000円)÷(50個 + 50個)= 150円 |
後の仕入で使うのは、その直前に残っている商品の原価です。既に払い出した商品の金額を分子へ戻すと、この移動平均の計算にはなりません。
端数が出る取引はこの設例の対象外です。実際の記帳では、単価の保持桁数、払出金額の丸め、残高金額の引継ぎを社内ルールやシステム設定と突き合わせ、表示単価と内部計算の精度を区別します。
月末は数量と原価金額を別々に照合
数量の照合は「月初数量 + 当月受入数量 − 当月払出数量 = 月末数量」です。原価金額も、受入・払出・残高のつながりを確かめます。以下は返品や差異などがない設例の検算であり、税務上の評価損や調整まで含めた決算額ではありません。
同じ種類・品質・型の商品Aの架空の当月設例を検算します。税抜原価で、返品・値引・諸掛・棚卸差異・評価損はありません。金額の払出合計は販売分だけを集め、月末残高を含めません。
| 確認項目 | 先入先出法 | 移動平均法 |
|---|---|---|
| 月末数量 | 100個 + 100個 − 150個 + 50個 − 40個 = 60個 | 100個 + 100個 − 150個 + 50個 − 40個 = 60個 |
| 販売分の払出原価合計 | 17,000円 + 5,600円 = 22,600円 | 18,000円 + 6,000円 = 24,000円 |
| 月末残高金額 | 10,400円 | 9,000円 |
| 月初と仕入の原価合計との一致 | 22,600円 + 10,400円 = 33,000円 | 24,000円 + 9,000円 = 33,000円 |
数量が一致していても、払出原価と残高金額の配分は方法によって変わります。数量を直す作業と、金額の計算方法を確かめる作業を分けると、原因を絞り込めます。
次月繰越は販売による払出と分ける
紙の帳簿などで、月末の残高を払出欄へ「次月繰越」として記入し、受入・払出の両側を締め切る様式があります。この繰越は翌月へ残高を移す表示で、顧客へ販売した取引ではありません。販売分の原価を集計するときは、摘要で繰越行を区別します。
翌月の開始残高には、前月末の数量と原価の内訳を引き継ぎます。先入先出法なら取得単価別の内訳、移動平均法なら残高数量・平均単価・残高金額を確認します。システムが自動で繰越を処理する場合は、締切用の払出を重ねて登録しないよう、帳票の表示と実取引を分けて照合します。
同じ種類・品質・型の商品Aの架空の当月設例から、翌月への繰越部分を抜き出した記入例です。税抜原価で返品・値引・諸掛・棚卸差異・評価損はなく、端数も生じません。ここでは次月繰越を払出欄に置いて締め切る様式を使います。
| 記入行 | 先入先出法 | 移動平均法 |
|---|---|---|
| 当月末・払出欄の次月繰越 | 10個 × 140円 + 50個 × 180円 = 10,400円 | 60個 × 150円 = 9,000円 |
| 翌月初・受入欄の前月繰越 | 10個 × 140円 + 50個 × 180円 = 10,400円 | 60個 × 150円 = 9,000円 |
返品・値引・棚卸差異の確認表
残高が合わないときは、数量と金額のどちらが動く取引かを確認します。次の表は照合のための運用例です。特定の会計ソフトの入力方法や、税法上の訂正様式を指定するものではありません。
| 起きたこと | まず確認するもの | 記録に残すこと |
|---|---|---|
| 仕入先への返品 | 元の仕入伝票、返品数量、元の取得原価 | 返品と元取引の対応、数量・金額の減少 |
| 顧客からの返品 | 元の出荷記録と払出原価、戻った商品の状態 | 再入庫数量と原価の対応、売価との区別 |
| 仕入の値引 | 値引明細、対象商品と対象となる取得分 | 現物返品の有無、原価金額の修正内容 |
| 売上の値引 | 売上明細、商品が実際に戻ったか | 値引だけを数量の戻りと取り違えない |
| 帳簿より実地数量が少ない | 出荷未記帳、入荷二重計上、数え間違い、破損など | 再確認した伝票、差異の原因と修正内容 |
返品を赤字で元の欄から引くか、逆側の欄に記入するかは、使用する帳票やシステムの方式に合わせます。途中で方式を混ぜると集計の符号を誤りやすくなります。平均単価を使う場合も、返品時の金額を見ただけで現在の平均単価を掛けず、元の原価と修正後の残高を確認します。
実地数量と差がある場合、原因を調べずに帳簿を現物へ合わせるだけでは、記入漏れや重複の場所が残りません。棚卸表の作成手順で実地数量を確認し、商品有高帳側では取引日・伝票番号・入出庫数量をたどります。
また、商品有高帳の記入例を見て、税務上の期末評価方法まで変更できると判断しないようにします。届出や変更手続の確認は棚卸資産の評価方法、売上原価と決算表示の関係は売上原価の記事で扱っています。
売上高と、別に確認した売上原価から粗利率を計算する →まとめ
商品有高帳では、受入・払出・残高を商品の数量と原価でつなぎます。同じ種類・品質・型の商品について、先入先出法は取得単価別の残高を残し、移動平均法は仕入の都度、残高と仕入分から単価を更新します。
月末は数量と原価金額を別々に照合します。次月繰越は販売分の払出に混ぜず、実地数量との差異は伝票へ戻って原因を確かめます。
よくある質問
商品有高帳は売価と原価のどちらで書きますか?
この記事の数量・原価を管理する商品有高帳は、受入も払出も原価で記入します。販売時の売価を払出単価にすると、原価で記録した残高とつながりません。売上金額は別に管理します。
移動平均単価は売上のたびにも計算しますか?
通常の仕入と販売を扱うこの記事の設例では、販売による払出だけでは計算し直しません。同じ種類・品質・型の商品の仕入時に、直前残高と仕入分の金額・数量から更新します。返品や値引はこの設例に含まず、元取引の原価と修正後残高を確認します。
次月繰越の金額も売上原価に足しますか?
足しません。締切のため払出欄に置いた次月繰越は、翌月に引き継ぐ在庫の原価です。販売分の払出原価を集計するときは、次月繰越の行を除いて集めます。
商品有高帳があれば実地棚卸は省けますか?
帳簿の残高だけでは、現物の不足や破損、記入漏れを確認できません。実地で数えた数量と帳簿数量を突き合わせ、差があれば入出庫記録と数え方を調べます。商品有高帳と棚卸表は、その照合に使う別の記録です。
出典
払出原価と残高の計算例は架空の取引です。評価方法の定義と、商品有高帳の役割は次の資料で確認できます。
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」棚卸資産の評価の方法(先入先出法・移動平均法の定義)
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】」商品有高帳に関する設問(日々の在庫管理・棚卸表作成時の参照という役割)
返品・差異の確認表と伝票照合は、帳簿のつながりを確認するための運用例です。商品の取得価額に含める費用、税務上の評価方法の届出・変更、低価評価、保存要件の詳細はこの記事の計算例に含めていません。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の税務判断は税務署や税理士へご確認ください。個別の税務・労務相談には応じられません。