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退職証明書 — 労働基準法22条は「請求されたら」しか義務にしていない。そして、書いてよい事項を選ぶのは労働者の側

結論から言うと、退職証明書は、労働者が請求して初めて交付義務が生じる書類です(労働基準法22条1項)。退職者全員に会社が自発的に配る義務はありません。裏を返すと、請求があれば会社は断れません。応じなければ罰金の対象になります。

もうひとつ、実務でいちばん誤解されているのがここです。証明できる事項は5つに限られていて、しかも「労働者の請求しない事項を記入してはならない」という逆向きの禁止まで条文にあります(同条3項)。全部書いてあげるのが親切、ではありません。退職の事由を書かないでほしいと請求されたら、書かないのが条文どおりです。

そして退職証明書は、ハローワークから届く離職票とは別の書類です。離職票は雇用保険法7条に基づいて会社が行政に届け出た結果として交付されるもので、退職証明書は会社が本人に直接渡すものです。求められる場面も、根拠になっている法律も違います。在職中の資格取得届も同じ7条に基づく会社の届出で、加入条件と届出済みかの確認方法は雇用保険の加入条件で整理しています。

  1. 交付義務は「請求されたとき」だけ(労働基準法22条1項)。条文の言葉は遅滞なくで、何日以内とは書かれていない
  2. 証明事項は5つ — 使用期間・業務の種類・その事業における地位・賃金・退職の事由(解雇のときはその理由を含む)
  3. 請求されていない事項は書いてはいけない(同条3項)。退職理由を伏せた証明書を求めることができる
  4. 解雇理由証明書は同条2項の別物。請求できるのは解雇予告の日から退職の日までの間。しかもただし書がある
  5. 罰則は逆転している。交付しない(1〜3項)は30万円以下の罰金、ブラックリスト目的の記載(4項)は6月以下の拘禁刑も入る
  6. 法定様式は無い。労働者名簿には様式第19号があるのに、退職証明書には施行規則の定めが1つも無い
  7. 請求できる期間は2年。賃金(当分の間3年)より先に消える(労働基準法115条)

この記事のいちばん踏み込んだところは、労働者名簿の記載事項を定めた労働基準法施行規則53条1項5号が、22条1項とまったく同じかっこ書きを持っているという点です。つまり会社は、請求されていなくても、退職の事由と解雇の理由を記録として持っていることが法令上の前提になっています。22条が作っているのは「調べて書く義務」ではなく、すでに持っている情報を本人に出す義務です。

交付義務は「請求されたら」 — 労働基準法22条1項の5つの事項

根拠は労働基準法22条1項です。見出しは「退職時等の証明」で、条文はこうなっています。

労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

読むときに落としやすい点が3つあります。

1つめは、義務が発動するのは「請求した場合においては」だけだということです。退職者に何も言われていないのに証明書を作って渡す義務は、この条文からは出てきません。逆に、退職から半年経っていようと、請求されれば交付義務が生じます(ただし後述のとおり、請求権そのものには2年の時効があります)。

2つめは、証明できる事項が限定列挙されていることです。条文が挙げているのは次の5つで、これ以外の事項はこの条文の対象ではありません。

証明事項実際に書く内容の例
使用期間2019年4月1日から2026年8月31日まで
業務の種類経理事務(売掛金管理、月次決算補助)
その事業における地位経理課 主任
賃金基本給 月額28万円(退職時)
退職の事由自己都合による退職/解雇のときはその理由を含む

上の表は条文の要約と記載例です。逐語ではありません。

「勤務態度」「人物評価」「同僚との関係」といった事項は、この5つのどれにも当たりません。転職先が推薦状のようなものを期待していても、労働基準法22条の証明書はそれに答える書類ではありません。

3つめは、「遅滞なく」という言葉に日数が書かれていないことです。労働基準法23条は、退職時の金品の返還について「七日以内に」と日数で書いています。同じ退職まわりの条文でありながら、22条は日数を書かず「遅滞なく」で済ませています。条文が日数を書き分けている以上、22条に7日という日数を持ち込むことはできません。実務では、請求を受けたら特段の事情なく先延ばしにしない、という運用になります。

請求しない事項は書いてはいけない — 3項という逆向きの義務

ここが、退職証明書がほかの証明書と決定的に違うところです。同じ22条の3項が、こう定めています。

前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。

証明書は「出す義務」だけでできているのではなく、「書かない義務」とセットになっています。前項の5つのうち、どれを証明してもらうかを選ぶのは労働者の側です。

実務でこれが効く場面

退職の事由が懲戒解雇や、会社と揉めた末の退職だった場合、労働者は「使用期間と業務の種類だけを証明してほしい」と範囲を指定して請求できます。このとき会社が親切のつもりで退職の事由まで書き足すと、3項違反になります。転職先に提出する書類なので、書かれた1行がその人の再就職を直接左右します。

会社側の運用としては、請求を口頭で受けないのが安全です。5つの事項を並べたチェック欄のある請求書を用意して、どれを証明するかを本人にチェックしてもらう。そうすれば「請求された範囲」が記録として残り、書きすぎも書き足りなさも防げます。労働基準法は請求の方式を定めていないので、この様式は会社が自由に決めてかまいません。

なお3項は「前二項の証明書には」と書いています。1項の退職証明書と、次に見る2項の解雇理由証明書の両方に、同じ制限がかかります。

解雇理由証明書は別の条文 — 退職日で締め切られる

解雇された人が「なぜ解雇されたのか」を書面で求めるとき、根拠は1項ではなく2項です。条文はこうです。

労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。

1項との違いは時期です。2項が対象にしているのは、解雇の予告がされた日から退職の日までの間、つまりまだ在職している期間です。労働基準法20条1項が少なくとも30日前の予告を求めているので、この窓はふつう30日間あります。

解雇の予告 退職の日 原則30日以上(労基法20条1項) 22条2項 解雇理由証明書 22条1項 退職証明書 この間に自分から辞めると、2項ただし書で退職日以後は交付されない 在職中 退職後
労働基準法22条は、退職日をはさんで2つの条文に分かれている。2項(解雇理由証明書)は在職中しか請求できず、ただし書がその窓をさらに狭める。

そして、この条文でいちばん見落とされるのがただし書です。解雇の予告がされた後に、労働者が「その解雇以外の事由により」退職した場合、退職の日以後は交付が要らなくなります。

予告期間中に自分から辞表を出すと、解雇理由証明書は取れなくなる

解雇を予告された人が、次が決まったなどの理由で予告期間の途中に自分から退職届を出すと、退職の事由は「解雇」ではなく自己都合になります。すると2項ただし書に当たり、会社は退職日以後、解雇理由証明書を交付しなくてよいことになります。解雇の当否を争う可能性があるなら、在職中に請求しておくことの意味がここにあります。

ただし、退職日を過ぎても1項の退職証明書は請求できます。1項の証明事項には「退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)」が入っているからです。実際に解雇で退職した人であれば、退職後は1項で解雇の理由の証明を求めることになります。2項が独立して置かれているのは、まだ退職していない段階で理由を知る道を作るためだと読めます。

罰則が逆転している — 出さないより「余計なことを書く」方が重い

22条には4項があります。ここだけ、罰則の重さが違います。

使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

いわゆるブラックリストの禁止です。証明書に、外からは意味の分からない記号を書き入れて、次の勤め先に「この人は採るな」と伝える行為を名指しで禁じています。

罰則の条文を突き合わせると、順序が直感と逆になっています。

違反の内容根拠罰則
交付しない(1項)/在職中の解雇理由証明書を交付しない(2項)/請求されていない事項を書く(3項)労働基準法120条1号30万円以下の罰金
第三者と謀って就業を妨げる目的の通信をする/秘密の記号を記入する(4項)労働基準法119条1号6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金

上の表は条文の要約です。逐語ではありません。

119条1号が列挙している条文を見ると、この位置づけがはっきりします。そこに並んでいるのは、3条(均等待遇)、4条(男女同一賃金)、16条(賠償予定の禁止)、17条(前借金相殺の禁止)、19条(解雇制限)、20条(解雇の予告)といった、労働基準法の中でも中核にある禁止規定です。22条4項は、解雇制限や解雇予告と同じ列に置かれています。一方、証明書を交付しないことは120条1号のほうで、こちらは罰金だけです。

実務への含意は単純です。迷ったときは「書かない」側に倒すのが、条文の重みづけに沿っています。書きすぎのリスクは、出し渋りのリスクより重く扱われています。

法定様式が無い — 労働者名簿には様式第19号があるのに

退職証明書には、法令が定めた様式がありません。労働基準法施行規則の全文を確認しても、22条を受けた規定は置かれていません。これは、同じ労働基準法の書類のなかでは異例です。

書類根拠法定様式記載事項の法定
労働者名簿法107条・規則53条様式第19号あり(6号)
賃金台帳法108条・規則54条ありあり(8号)
退職証明書法22条1項無し条文本文の5つの事項のみ

上の表は条文の要約です。逐語ではありません。

様式が無いということは、会社が自分で作ってよいということです。用紙の体裁も、社印の有無も、法令上の要求ではありません。実務では会社名・所在地・代表者名・作成日と、証明した事項を並べ、記名押印する形が一般的です。

ここでもう一段踏み込みます。労働者名簿の記載事項を定めた施行規則53条1項5号は、22条1項とまったく同じかっこ書きを持っています。

退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)

労働者名簿は、請求の有無に関係なく作成・保存が義務づけられている法定三帳簿のひとつです。つまり会社は、誰にも請求されていない段階で、すでに退職の事由と解雇の理由を書き留めていることが法令上の前提になっています。22条が新たに求めているのは調査や作文ではなく、手元にある記録を本人に出すことです。「理由をまとめるのに時間がかかる」という説明が条文と噛み合わないのは、このためです。

従業員30人未満の会社で、ひとつだけ非対称が起きる

施行規則53条2項は、常時30人未満の労働者を使用する事業について、労働者名簿への「従事する業務の種類」の記入を免除しています。ところが労働基準法22条1項には規模による例外がありません。名簿に書かなくてよい会社でも、証明書では「業務の種類」を請求されれば証明することになります。名簿を写せば済む会社と、そうでない会社が分かれるのはここです。

控えは何年持つか — 起算日は「退職の日」

交付した証明書の控えは、労働基準法109条の保存義務に含まれます。

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

本則は5年ですが、附則143条1項が「当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする」と読み替えています。実務上はいまも3年です。

起算日は、労働基準法施行規則56条1項が種類ごとに定めています。退職証明書の控えは同項3号の「雇入れ又は退職に関する書類」に当たり、起算日は労働者の退職又は死亡の日です。作成日でも交付日でもありません。

書類起算日(規則56条1項)
労働者名簿労働者の死亡、退職又は解雇の日(1号)
賃金台帳最後の記入をした日(2号)
雇入れ又は退職に関する書類労働者の退職又は死亡の日(3号)
災害補償に関する書類災害補償を終わつた日(4号)
賃金その他労働関係に関する重要な書類その完結の日(5号)

上の表は条文の要約です。逐語ではありません。

退職の1年後に証明書を請求されて交付した場合でも、起算日は退職の日のままなので、控えの保存期間は残り2年しかありません。交付日から3年ではない点に注意が要ります。

請求できるのは2年 — 賃金より先に消える

証明書を請求する権利にも期限があります。労働基準法115条です。

この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

退職証明書の請求権は賃金でも災害補償でもないので、「その他の請求権」として2年です。

ここで見落としやすいのが、附則143条3項の読み替えの範囲です。附則が書き換えているのは「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」という部分だけで、退職手当を5年、それ以外の賃金を当分の間3年に分けています。「その他の請求権」の2年には手を付けていません

請求権期間根拠
退職手当5年法115条・附則143条3項の読み替え後
賃金(退職手当を除く)当分の間3年同上
災害補償その他の請求権
退職証明書の請求はここ
2年法115条(読み替えの対象外)

上の表は条文の要約です。逐語ではありません。

結果として、未払い残業代を請求できる期間(3年)より、退職証明書を請求できる期間(2年)のほうが短いという並びになります。退職から時間が経ってから争いになった場合、賃金は請求できても証明書は請求できない、という順序で権利が消えていきます。

離職票・離職証明書との違い — 誰が誰に出す書類か

退職時に出てくる紙は複数あり、名前が似ているので混同されます。整理すると、「誰が誰に出すか」で3つに分かれます

退職証明書離職証明書・離職票健康保険の資格喪失を示す書類
根拠法労働基準法22条雇用保険法7条ほか会社または健康保険組合の運用
誰から誰へ会社 → 本人会社 → 行政(→ 本人へ離職票)会社・保険者 → 本人
発動の条件本人の請求本人の請求によらず会社の届出義務本人の依頼
主な用途転職先への提出、国民健康保険の手続き失業等給付の手続き国民健康保険・国民年金の手続き
法定様式無しあり無し

上の表は条文の要約と実務の整理です。逐語ではありません。

雇用保険法7条は、事業主に対して、雇用する労働者が被保険者でなくなったことなどを厚生労働大臣に届け出るよう求めています。名宛人が行政です。その届出(離職証明書)を受けて、公共職業安定所から離職票が交付されます。ここには本人の請求という条件がありません。一方、労働基準法22条1項は名宛人が本人で、請求が条件です。同じ「退職したこと」を示す紙でも、条文の作りが正反対です。

離職票がいつ届くか、届かないときにどうするかは、離職票とは?いつ届く・届かないときの対処法で条文の側から整理しています。

国民健康保険の窓口で求められる理由

退職して会社の健康保険を抜けると、国民健康保険に入る手続きが要ります。このとき窓口で「退職日が分かる書類」を求められ、退職証明書を使う場面があります。なぜそれが要るのかは、国民健康保険法施行規則を読むと分かります。

会社の健康保険の被保険者でなくなったことで国民健康保険の資格を取得した場合の届出は、同規則3条にあります。そして3条は、記載事項を2条1項各号(現住所と従前の住所を除く)に丸投げしています。その2条1項2号がこれです。

資格取得の年月日及びその理由

届書に「いつ」と「なぜ」を書かせる作りになっています。窓口が退職日の分かる書類を見たがるのは、この2つを確かめるためです。

条文には「添付書類」の定めが無い

国民健康保険法施行規則3条が求めているのは、記載事項を書いた届書の提出だけで、退職証明書や資格喪失証明書を添付せよという文言は置かれていません。窓口の求めは、記載内容を確認するための市町村ごとの運用です。どの書類で足りるかは市町村によって違うので、出かける前に自分の市区町村の案内を確認するのが確実です。

期限は同規則3条に書かれていて、14日以内です。退職日の翌日から数えます。離職票は退職日から届くまでに日数がかかるため、この14日に間に合わないことがあります。会社にその場で請求できる退職証明書のほうが早く手に入るのは、この場面です。

退職日から14日以内、解雇予告の30日前を、実際の日付で数える(営業日・期限計算ツール)

よくある質問

Q. 退職者全員に退職証明書を渡さなければいけませんか?

A. その義務はありません。労働基準法22条1項は、労働者が使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない、と定めています。義務が生じるのは請求があったときです。ただし請求があった場合に断ることはできず、応じなければ労働基準法120条1号により30万円以下の罰金の対象になります。会社としては、退職手続きの案内に請求できる旨を書いておき、請求を受けたらどの事項を証明するかを本人に選んでもらう形にしておくと、交付漏れと書きすぎの両方を防げます。

Q. 退職理由を書かないでほしいと言われました。書かなくてよいのですか?

A. 書いてはいけません。労働基準法22条3項が、前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない、と定めています。1項が挙げる5つの事項のうちどれを証明してもらうかを選ぶのは労働者の側で、会社が親切のつもりで請求されていない事項を書き足すと、この3項に違反することになります。この違反も労働基準法120条1号の対象です。実務としては、5つの事項をチェック欄にした請求書を用意し、本人がチェックした範囲だけを証明する形にしておくと、請求された範囲が記録として残ります。

Q. 解雇理由証明書は、退職した後でも請求できますか?

A. 労働基準法22条2項に基づく解雇理由証明書は、解雇の予告がされた日から退職の日までの間に請求するものなので、その期間を過ぎると2項では請求できません。さらに2項にはただし書があり、解雇の予告がされた日以後に労働者がその解雇以外の事由により退職した場合は、退職の日以後、使用者は交付を要しないとされています。予告期間の途中で自分から退職届を出すと、この場合に当たります。ただし、実際に解雇によって退職したのであれば、退職後は同条1項で請求できます。1項の証明事項には退職の事由が含まれ、そのかっこ書きが、退職の事由が解雇の場合にあつてはその理由を含む、としているためです。

Q. 決まった様式やテンプレートはありますか?

A. 法令が定めた様式はありません。労働基準法施行規則には、労働者名簿について様式第19号を、賃金台帳について記載すべき事項を定めた規定がありますが、22条の証明書について様式を定めた規定は置かれていません。したがって用紙の体裁は会社が自由に決められます。実務では、会社名・所在地・代表者名・作成年月日と、証明した事項を並べ、記名押印する形が一般的です。重要なのは体裁ではなく、労働者が請求した事項だけが書かれていることと、書かれた内容が労働者名簿などの記録と食い違っていないことです。

Q. 交付した証明書の控えは、何年保存すればよいですか?

A. 労働基準法109条は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならないと定めていますが、附則143条1項が当分の間これを三年間と読み替えているため、実務上は3年です。起算日は労働基準法施行規則56条1項3号により、雇入れ又は退職に関する書類については労働者の退職又は死亡の日となります。交付した日からではありません。したがって退職から1年後に請求を受けて交付した場合、その控えを保存する期間は残り2年ということになります。

Q. 退職からどのくらい経つと請求できなくなりますか?

A. 労働基準法115条により、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅するとされています。退職証明書の請求権は賃金の請求権でも災害補償の請求権でもないため、この二年に当たります。なお同条の賃金の請求権については附則143条3項が読み替えを置いており、退職手当は5年、退職手当を除く賃金は当分の間3年です。読み替えの対象は賃金の請求権の部分だけなので、その他の請求権の2年はそのまま残っています。結果として、未払い賃金を請求できる期間よりも、退職証明書を請求できる期間のほうが短くなります。

Q. 離職票が届く前に国民健康保険の手続きをしたいのですが、退職証明書で足りますか?

A. 市町村によって扱いが異なるため、事前の確認が要ります。国民健康保険法施行規則3条は、会社の健康保険の被保険者でなくなったことにより資格を取得した場合の届出について、同規則2条1項各号の事項を記載した届書を14日以内に提出することを求めています。そこに含まれるのが資格取得の年月日及びその理由で、窓口が退職日の分かる書類を求めるのはこの2つを確認するためです。規則には添付書類の定めが置かれていないため、どの書類で足りるかは市町村ごとの運用になります。退職証明書は会社にその場で請求できるぶん、行政の処理を経る離職票よりも早く手に入る点が実務上の利点です。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。解雇の当否、退職の事由の評価、証明書の記載をめぐる争いについては、社会保険労務士または弁護士にご確認ください。国民健康保険の手続きに必要な書類は市区町村によって異なるため、お住まいの市区町村にご確認ください。

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